苦情、告発
苦情を意味する「クレーム」は、”complaint” が適切。
「クレーム」は、和製英語に限りなく近い。
それでも『広辞苑』をはじめとする
主な国語辞典には、”claim” が添えてある。
誤解を招くので、改善すべきと考える。
(参考:”miss out“)
◆ 英語 “claim” の基本的意味は、
– 名詞「要求」
– 他動詞「要求する」
– 自動詞「権利を主張する」
確かに「クレーム」に沿ったイメージ。
しかし「権利としての要求」が本義。
よって「苦情」そのものではない。
日本人にとって、”complaint”(kəmpléint)より
発音しやすい点も、定着につながったのだろう。
◆ “complaint” は名詞のみ。
可算名詞と不可算名詞を兼ねるが、基本は可算。
自動詞・他動詞 “complain”(不満を言う)
と同様、「悲しむ」を意味する古フランス語が語源。
名詞 “complaint” は、厳密には多義である。
ただ、どれも「苦情」に準ずるネガティブイメージ
で一貫しており、理解はそう難しくない。
– 一般「苦情」「不満」「不平」
– 法律「告発」「告訴」「訴状」
– 医学「病気」
次の基本を押さえる
◆ “complaint”
(苦情)(不満)(告発)
◆ “file a complaint”
(苦情を申し立てる)(訴えを起こす)
※ “file” には、自動詞・他動詞・名詞がある
ここでは、他動詞「申し立てる」
“complaint” 直後の前置詞は、
“about” “of” “against” “with” “for” “on” “to”
など多岐に渡り、それぞれ意味が異なる。
しかし一般用途や通常業務レベルでは、
それほどの厳密さは求められない。
何事も厳格に適用しようとすると流れが停滞し、
活力が失われる。
英語学習でも同様で、細かいことに拘りすぎると、
きっと難渋して行き詰る。
諸説紛々の文法解釈などに、
時間をかけ過ぎてはならないと考える。
一般学習者にとっては、まず基本が大事。
本稿であれば、上記の太字部分である。
もし正式に苦情を申し入れる場合は、しっかり調べ、
時に専門家の支援を受けて、正確に文書作成する。
“He received a complaint from his student.”
(彼は生徒から苦情を受けました。)
“A sexual harassment complaint was filed against him”
(彼に対するセクハラの苦情が申し立てられた。)
“She has to respond to a customer complaint.”
(お客様からの苦情に彼女は対応しなければならない。)
“Our customer support is inundated with complaints.”
“Our customer support is swamped with complaints.”
(弊社のカスタマーサポートには苦情が殺到しています。)
“I have no complaints about my life here.”
(ここでの生活に不満はない。)
“I have a lot of complaints against you.”
(あなたへの苦情がたくさんある。)
“Allegedly, the manager misjudged the
priority of the complaint.”
(マネージャーは、その苦情の優先順位の
判断を間違ったらしい。)
“Most complaints stem from negligent employees.”
(ほとんどの苦情は、怠慢な従業員が原因です。)
“We are getting a ton of complaints.”
“We are getting tons of complaints.”
(大量の苦情が入っている。)
“Don’t move forward with the complaint.”
(その苦情を申し立てるな。)
(その苦情手続きを進めるな。)
“I want you to sum up her complaints.”
(彼女のクレームを要約してくれ。)
“It might be premature to file a complaint.”
(苦情を申し立てるのは時期尚早かもしれない。)