〜 の示す条件通りに
–
You’ll do this on my terms.( こっちの条件でやってもらうぜ。)
–
啖呵( たんか )を切る場面を映画などで目にする。
格好いいシーン。
–
うちの条件通りにやれよ
–
だが、” terms ” の意味が分からないと、
せっかくの見せ所もおじゃんになる。
威勢よく相手をやり込めているのに、
ぽかんと見つめられては台無しだ。
ー
◆ 表題の ” terms ” は、 可算名詞 ” term ” の複数形。
–
” term ” には、名詞と他動詞がある。
語源は、 ラテン語 「 限界 」 ( terminus )。
ー
【発音】 tə́ːrm (1音節)
名詞は非常に多義。
基本的意味だけでも、盛り沢山である。
- 言葉
- 期間
- 任期
- 条件 (複数形)
- 契約 (複数形)
- 間柄 (複数形)
◇ 「 条件 」を意味する際は、複数形 ” terms ” が通例
–
なぜなら、一般的に 「 条件 」 は複数存在するから。
- financial terms
( 金銭的条件 )
日頃、よく見聞きするのは、こちら。
–
– 規約を変えますよ
–
– 規約を変えました
- terms of use
( 使用条件、利用規約 )
– - terms of service
( サービス利用規約 )
– - terms and conditions
( 諸条件 ) ※ 略して、 ” T&Cs “
–
– 条件を理解しました
–
◆ 「 間柄 」「 関係 」も、複数形が原則。
やはり複数存在するのが普通だからである。
“terms” とあれば、「 条件 」や「 間柄 」 ではなく、
単純に 「 言葉 」 の複数形の場合もある。
名詞 ” term ” には、 似通った意味が多く、 紛らわしい。
【例】
米映画 『 愛と追憶の日々 』( 1983年 )の
原題 ” Terms of Endearment ” の直訳は、
「 愛情表現の 条件 」 よりは 「 愛情表現の 言葉 」。
転じて、恋人などの「 愛称 」「 呼びかけ 」を指す。
” darling “、 ” honey “、 ” sweetheart ” が典型。
片や、 他動詞 ” term ” は単純である。
- 称する、 名づける
ー
–
◆ ” on ” は、 手段の前置詞「 ~ によって 」。
ー
◆ ” one’s terms ” の ” one’s ” とは、「 誰々の 」。
【発音】 wˈʌnz (1音節)
–
” one’s ” には、 通常は人称代名詞 ( personal pronoun )の
所有格 ( possessive )を入れる。
- my 私の
- your あなたの
- his 彼の
- her 彼女の
- their 彼らの
- our 我々の
- its それの
” one’s ” は、所有格の代表形 として、
辞書などで起用される。
具体的には、不定代名詞( an indefinite pronoun )
” one ” の所有格が ” one’s “。
上記の所有格を代表する。
–
いわば、 所有格のワイルドカードとして使われる。
–
◆ 代名詞でなく、 固有名詞 や 無生物 でもよい。
- “on Mary’s terms”
( メリーの示す条件通りに )
– - “on the company’s terms”
( その会社の示す条件通りに )
条件 ” terms ” は、文面でも口頭でも多用される。
表題のフレーズ ” on one’s terms ” も同様だが、
< 契約 > や < 注意書き > のような文書でなければ、
このフレーズを目にする機会はそう多くない。
普段は、耳にする機会が上回る印象。
冒頭に記したように、映画のハイライト(見所)
に出てきたりする。
- こっちの言う通りに
- 自分の思う通りに
など、様々な言い回しで表現されている。
–
< その人の示す条件通り > なので、
その人の希望がそのまま反映される
ことが主眼となる。
–
劇中ならば、我を張る場面で、強い意思が表れる
< 決めシーン >として盛り上がるわけである。
常日頃から使う人も少なくない感。
やや芝居がかって聞こえたりする。
日本語の 「 俺の言う通り ~ 」 と粋がる言葉も、
” on my terms ” に重なる。
–
◆ なお、 似た表現に、
- on one’s own terms
(自分の思う通りに)
がある。
“ own ” には、 形容詞・他動詞・自動詞(まれ)がある。
語源は、 古英語 「 所有された 」 ( āgen )。
【発音】 óun (1音節)
日常的に頻出なのは、形容詞「 自身の 」「 自身で 」
及び 他動詞 「 所有する 」。
このフレーズの ” own ” は、
所有格の直後に置き、 所有・関係 を
強調する < 強意 > の形容詞 ” own “
–
< 強意 > の機能なので、 表題と趣旨が変わらない点は、
比較すれば分かるだろう。
–
- on one’s terms
( ○○の示す条件通りに )
– - on one’s own terms
( ○○自身の思う通りに )
–
–「 我の強さ 」 が共通点
良くも悪くも
–
別稿 ” comfortable in one’s own skin ” の 形容詞 ” own ” も同じく省ける。
AI校正を施すと、 冗長として削除されかねない < 強意 > の “own ” である。
対して、 ” To each one’s own. ” や ” You are on your own. ” の形容詞
” own ” は省略できない。
◆ 内容によっては置き換えできないものの、多くは置き換え可能。
できれば、両方とも押さえておきたい。
- “I want to live on my terms.”
“I want to live on my own terms.”
(自分の思い通りに生きたい。)
– - “Beth lived her entire life on her terms.”
“Beth lived her entire life on her own terms.”
(ベスは終生、自分を貫いた。)
– - “I would take my annual leave on my terms.”
“I would take my annual leave on my own terms.”
(年次休暇は自分の都合で取ります。)
– - “My mother died as she lived: on her terms.”
“My mother died as she lived: on her own terms.”
(母の死に方は、その生き様同様、母らしかった。)
– - “Everything had to be on his terms.”
“Everything had to be on his own terms.”
(すべてが彼の意のままでなくてはならなかった。)
– - “Everything is always on her terms.”
“Everything is always on her own terms.”
(全部がいつも彼女の言いなり。)
– - “I’d avoid unwanted suffering and die on my terms.”
“I’d avoid unwanted suffering and die on my own terms.”
(不要な苦しみは避けて、 自分らしく死にたい。)
– - “You have to do this on my terms.”
“You have to do this on my own terms.”
(私の言う条件通りに実行してもらいます。)
– - “I wanted to walk out on my terms
before my time is up.”
“I wanted to walk out on my own terms
before my time is up.”
(自分の時代が終わる前に、自分らしく去りたかった。)
(自分の時代が終わる前に、自分なりに幕を引きたかった。)
–
- “I’d rather fail on my terms.”
“I’d rather fail on my own terms.”
(自分流で失敗する方がましだわ。)
– - “They dropped out on their terms.”
“They dropped out on their own terms.”
(彼らは自分の意思で中退したのです。)
– - “I left the company on my terms.”
“I left the company on my own terms.”
(自分の希望通りにその会社を辞めたんだ。)
– - “To the Japanese, ‘Omotenashi’ comes on their terms.”
“To the Japanese, ‘Omotenashi’ comes on their own terms.”
(日本人の「 おもてなし 」とは、日本人に都合のよい内容だらけ。)
ー→ ある外国人観光客による批判的意見
ー
< 同趣旨の表現 >
- “I walked away from the company.”
(その会社から立ち去った。)
(その会社を自分から辞めた。)
– - “I found happiness on my terms.”
“I found happiness on my own terms.”
(私は幸せを自分らしく見つけた。)
– - “I started living life on my own terms and
I became comfortable in my own skin.”
(自分に正直に生き始めてから、
ありのままの自分に心地よく感じるようになった。)
–
定訳はないに等しいので、 このように工夫して和訳する。
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【関連記事】 ※ 外部サイト
- ” 50 Ways To Live On Your Own Terms ”
( 自分の思い通りに生きる50の方法 )
2017年9月30日付
【類似表現】
■ on one’s accord / by one’s accord
■ on one’s own accord / by one’s own accord
( 自主的に、 独自に )
↑ 辞書・教材は ” on ” ばかりで、 ” by ” は見かけない。
けれども、口頭では、” by ” も負けず劣らず使われている。
- “I came here on my accord. ”
“I came here on my own accord. ”
“I came here by my accord. ”
“I came here by my own accord. ”
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(自主的にここに来ました。)
(自発的にここに来ました。)
(自分の意思でここに来ました。)
–
【発音】 əkɔ́rd
【音節】 ac-cord (2音節)
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