プロ翻訳者の単語帳

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Comfortable in one’s own skin

      2019/03/06

ありのままの〇〇自身で心地よい 

インタビュー記事などで、比較的よく見かける。
自己啓発系では安定した人気を誇るトピック。
検索するとわんさと現れる。

今月発表の記事も即座にヒット。例えば、

・”Feeling Comfortable in Your Own Skin
ーー2018年10月1日付
・”Tips for Being Comfortable in Your Own Skin
ーー2018年10月1日付
・”Get Comfortable in Your Own Skin
ーー2018年10月11日付


人生訓として引用されることも珍しくない。
名うてのセレブを男女1名ずつ挙げると、

月並みの言い回しなのに、2018年10月現在、
主要な英英辞典に掲載なし。

奇怪である。

英和辞典も同様。
有名どころでは、唯一『英辞郎 on the WEB』
に載っている。

  • comfortable in one’s skin
    《be ~》ありのままの姿でいて心地良い[いる余裕がある]

    〔表現パターン〕”comfortable in one’s (own) skin
  • “comfortable enough in one’s own skin”
    《be ~》あるがままの自分でいることに
    満ち足りた気持ちを持っている[十分満足を感じている]

    https://eow.alc.co.jp/search?q=skin+comfortable
    2018年10月17日アクセス

3大学習英英辞典(EFL辞典)を含む、
いつもの英英紹介は不可能である。

代わりに、オンラインの “Wiktionary” より語釈をご案内したい。
EFL辞書に比べて信用性は検証されていないものの、少なくとも
本件については、一定水準に達していると考える。

“comfortable in one’s own skin”

Adjective

(idiomatic) Relaxed and confident in one’s manner
of presenting oneself and interacting with others;
conveying the impression that one has a clear, satisfying
understanding of one’s own abilities and situation.

Alternative forms:
comfortable in one’s skin

Synonyms:
natural,
self-assured

https://en.wiktionary.org/wiki/comfortable_in_one%27s_own_skin

※「ウィクショナリー
wiki を使った参加型プロジェクト。多言語の多機能辞典を目指す。
https://ja.wiktionary.org/wiki/メインページ

先の『英辞郎 on the WEB』と等しく、
形容詞 “own” 抜きの代替表現も明記している。

◆ “own skin” は「自身の皮膚」なので、
直訳は「〇〇自身の皮膚の中で心地よい」。
〇〇は単数の所有格(後述)。

何気にエロいが、そうでない。

当人が今の自分に満足している状態を表す。
傍から見ても<自然体>であることがポイント。
つまり、その人らしい、ありのままの様子

上掲 “Wiktionary” の同義語(synonyms)にも、
natural“(自然体)と記載されている。

「状態」を示すから、形容詞句である。同じく、
adjective” とある。

見苦しい程度の自己愛(narcissism)や自己満足
(self-complacent) は対象外。
作為的な要素も趣旨にそぐわない。

総じて好意的に使われる言葉。

◆ “one’s” には、単数の所有格を入れるのが一般的。
人称代名詞であれば、”my”、”his”、”her” を中心とする。

所有格により、中身は二分される。

  1. 自分 “my” の心情
    → 自分を受容(self-acceptance)し、
    心安らかな(peace of mind) 現在を吐露
  2. 身近な他者 “his”、”her” の様相
    → 伸びらかで幸せそうな知人の有様を描写

他者の場合、本当に心地よいか分からない。
あくまでも、表現者が推察した内容となる。
だが、日常的に接していれば、普段の言動と雰囲気から
概ね感じ取ることができる。

そもそも、よく知らない人には適用しない表現である。

◆ さっそく単語と文法を見ていく。

■ “comfortable
形容詞のみの単語。
語源は、アングロフランス語「慰めとなる」(confortable)。
発音は、kʌ́mftəbl

基本的意味は、
「心地よい」「気持ちよい」
「気楽である」「心休まる」

【参照】 “I don’t feel comfortable.“(適切だと思いません。)

■ “own” 
形容詞・他動詞・自動詞(まれ)がある。
語源は、古英語「所有された」(āgen)。
発音は、óun

日常的に頻出なのは、形容詞「自身の」「自身で」及び
他動詞「所有する」。

ここでは形容詞で、所有格(one’s)の直後に置き、「〇〇自身の」。
主に単数の所有格(”my”、”his”、”her”)が該当する点は既に述べた。
さらに、”own” 抜きの表記も上記辞書で確認してきた。

【参照】”on one’s terms“(〜の示す条件通りに)

■ “skin” 
名詞・他動詞・自動詞がある。
語源は、古ノルド語「皮」(skinn)。
発音は、skín

なかなか多義であるが、基本的意味はどれも語源に忠実。
すなわち「皮」から連想できるものばかり。

表題では、名詞「皮膚」。
最も基本的な語義だが、可算と不可算を兼ねるのが特色。

ちなみに「スキンシップ」は和製語。

  スキンシップ(和製語 skinship)
肌の触れ合いによる親密な交流。
(広辞苑 第七版)

この意味合いの英語は、”personal contact” や
“physical contact” が一般的。
“skinship” は、医学用語の「皮膚感覚」を指す。

ついでに触れると、避妊具「スキン」も和製語に準じる
感がある。

英和大辞典で “skin” を引くと、こんな扱い。

skin” と言えば「皮膚」。 これが英語の一般認識。

ところが、手元の国語辞典5点の「スキン」も、
「コンドーム」を語義にすべて含むから混乱する。

1969年にオカモト(当時「岡本理研ゴム」)が発売した
コンドーム「スキンレススキン」。今なお健在のシリーズ商品。
この商品名が、避妊具「スキン」の全国普及に拍車をかけた。

「コンドーム」「ルーデサック」「衛生サック」と比較すると、
なるほど「スキン」の語感が最も親しみやすい気がする。

なにせ「コンドーム」の語源は、18世紀英王室の医師の名前。
子音の強い固有名詞で、日本人には発音(kɑ́ndəm)しにくい。

とにかく、日常英語での “skin” は避妊具の別称にならない
と覚えておく方が無難。

普段遣いには、”condom” または “rubber”(ゴム)が適切。

 

◆ 以上、”comfortable”、”own”、”skin” を見てきたが、
これらの3語に “in” と所有格を加えると、どうなるか。

  • 形容詞 “comfortable“(心地よい)
  • 位置の前置詞 “in“(~の中で)
  • 単数の所有格 “my“、”his“、”her” いずれか(○○)
  • 形容詞 “own” (自身の)
  • 名詞 “skin“(肌)

まとめると「〇〇自身の皮膚の中で心地よい」。
転じて「ありのままの○○自身で心地よい」。

所有格次第で和訳は変わるが、趣旨(上の赤字)は安定している。
定訳はないので、全体的なバランスを勘案して訳すとよい。

なお、エロスと直接関係ない件は力説してきた通り。
それでも、本来の意味をもじって、性的な方面に流用する
ケースは珍しくない。

雑誌名など、使用メディアからほぼ判別できるため、
心配無用である。

◆ 大多数の人間にとって、人生で最も難しい課題の
一つは「自分を受け入れること」であろう。

特に、10代から30代は、競争と試練の連続。
人によっては、つらいだけの時代。
敗北が続けば、「ありのままの自分」など許せるわけない。

今、激しい劣等感と自己嫌悪、それゆえの希死念慮などに
苦しんでいるお若い方でも、納得の行く生き方を無我夢中で
模索し、正しい方法で努めれば、なんとか等身大の自分を
受容(accept)できるようになってくる。

短所込みで。(accept imperfection)

もはや自分を受け入れるしかない、という加齢に伴う諦念
も影響するだろう。

しかしそれにも増して、自我むき出しで、がむしゃら戦った
体験が、後々豊かな落ち着きをもたらす。経験上そう思う。

 

image.pngThe moment will arrive when you
are comfortable with who you are.
ありのままの自分を心地よく感じる時が、きっとやってくる。

 

長年の戦いの果てに、ようやく自分自身と折り合いをつけ、
現状に合点が行くようになっていく不思議。

“Time works wonders.”(時のもたらす奇跡。)

長期的に見れば、人生はそこそこ帳尻が合っていたりする。
中高年の知人を見渡しても、日頃の姿勢が相応に反映された
具合に、程よく収まっている印象が強い。

【参照】 “test of time“(時の試練)

これまで “comfortable in one’s own skin” の出てくる記事
を多数読み重ねてきたが、確かにこの傾向を看取できる。

無論、春秋に富む男女が理解するには無理がある。
生きてきた歳月が足りないから。

この意味で、中高年にこそ似つかわしい「人間の成熟」を示す
表現であると考えられる。

若い時分の厳しい苦闘が、ある種の安らぎとして報われた結果。
生きてきた勇気へのご褒美。勝ち負けを超越した平らかな境地。

それが “comfortable in one’s own skin” なのかもしれない。

【類似表現】
“at peace with”
https://mickeyweb.info/archives/9300
(心穏やかでいる、安心している)

“just a phase”
https://mickeyweb.info/archives/19819
(ほんの一過性にすぎない)


【関連表現】 ※ “skin” つながり
“get under (somebody’s) skin”
https://mickeyweb.info/archives/32972
(~をいらいらさせる、~を怒らせる)

 

<参考記事>  ※ 外部サイト、英文

・”Two Simple Tricks to Be More Comfortable in Your Own Skin
ーー2009年12月3日付

・”Being Comfortable in One’s Own Skin: Ugh
ーー2010年12月6日付

・”Top 10 Ways to Be Comfortable in Your Own Skin
ーー2012年1月11日付

・”How to Become a Woman Comfortable in Her Own Skin
ーー2014年5月12日付

・”The Best Kept Secret to Feeling Comfortable In Your Own Skin
ーー2015年4月25日付

・”How to be comfortable in your own skin… be brave, be vulnerable.
ーー2015年5月11日付

・”15 Ways To Feel More Comfortable In Your Own Skin Every Day
ーー2016年7月9日付

・”HOW TO FEEL COMFORTABLE IN YOUR OWN SKIN
ーー2017年4月10日付

・”6 Ways to Feel Comfortable in Your Own Skin
ーー2017年5月18日付

・”How I learned to be comfortable in my own skin
ーー2017年8月28日付

・”I’m Finally Learning How To Be Comfortable In My Own Skin
ーー2018年1月3日付

・”How to Be Comfortable in Your Own Skin (with Pictures)
ーー2018年2月3日付

・”15 People Who Are *Too* Comfortable In Their Own Skin
ーー2018年2月6日付

・”WHAT IT REALLY MEANS TO BE COMFORTABLE IN YOUR OWN SKIN
ーー2018年4月17日付

・”How to be Comfortable in Your Own Skin – The Good Men Project
ーー2018年5月1日付

・”How To Be Comfortable In Your Own Skin
ーー2018年5月20日付

・”Top Tips for Feeling Comfortable in Your Own Skin
ーー2018年9月28日付

 

 

 

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