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Miss out

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逃す、   ~ し損なう

「うっかり逃した」といえば、”miss out”。

日常会話でもビジネスでも頻出の句動詞。

発音しやすく語勢もぴったりで、
いかにも英語ネイティブが好みそうな表現である。

◆  ” miss ” には、他動詞・自動詞・名詞がある。

【発音】   mís  (1音節)

語源は、古英語 「 的を当て損なう 」 (missan)。

 どの品詞も、意に反して 「 ~ し損なう 」
 という 残念な要素 を含む。

そこそこ多義だが、
語源に沿って、ネガティブイメージ を貫く
から分かりやすい。


◆  “miss out” は、

享受できたはずの好機を逃した

場合に用いる句動詞 (phrasal verb)。

「 ~ し損なう 」の意味では、主に自動詞として使うので、
「 句自動詞 」。

自ら放棄したわけではなく、
あたら (=可惜) 好機を逃してしまった 」様子。

  あたら 【可惜】

(副)
〔立派なものが相応に扱われていないのを惜しむ意〕
残念なことに、価値のあるものを失うことが惜しまれる
さま。惜しいことに。 もったいなくも。 あったら。

( 大辞林  第四版 )

こうした  不本意な感じ  を伴うのがポイント。

硬軟不問で広範な分野に応用でき、実に便利。

” miss out “

to not have the chance to do something
that you enjoy and that would be good for you.

( ロングマン、LDOCE6 )

ここでの副詞  “ out ” は、常態から離脱した「外れて」。

やり損ねた ことを強調し、心残り 未練 を深める役割。


◆  “miss out on” のパターンが最頻出。

この ” on ” は、関連の前置詞「 ~ を 」「 〜 について 」。

取り逃した対象( 名詞の他、動詞なども可 )を直後に置く。

代わりの前置詞が見つからないほど、”on” の独壇場。

同等の「関連の前置詞」である、“about” では、代替不可。

Don’t miss out !

( お見逃しなく! )– ※  典型宣伝文句

  • Don’t miss out on coupons !
    ( クーポンをお見逃しなく!)

【類似表現】

  • Take advantage of this special offer !
    ( この機会をお見逃しなく!)


◆  なお、句動詞 “miss out” には、
見落とす」 「忘れる」 の意味もある。

こちらは、主として他動詞で使うので、「句他動詞」。

この場合、”miss” と “out” の間に目的語を入れる
使い方が目立つ。

目的語を中間に置かなくても、大抵は問題なく使える。

表題に比べれば、マイナーな印象。

大基本である「 逃す 」「 ~ し損なう 」
に通じるため、本稿では取り上げない。

◆  ” FOMO ” という言葉をご存知だろうか。

fear of missing out “(見逃す恐怖)の略語。

2011年頃より、米国で話題に上りはじめたバズワード。

日本でも見かける機会がある。

SNSのチェックを怠ると不安になる心理を指す。

「 ソーシャル依存症 」とほぼ同義。

FOMO

informal
abbreviation for “fear of missing out”:

a worried feeling that you may miss
exciting events that other people

are going to, especially caused by
things you see on social media.

[example]
Don’t get FOMO. Get a ticket now!

ケンブリッジ、CALD オンライン版 )

◇  アプリ版書籍版の ” CALD4 ” に記載なし

【発音】    fəʊ.məʊ

” informal ” 表示で、「非正式」「くだけた表現」という意味。

性質上、” informal ” なのはやむを得ないだろう。

“ FOMO ” は、こんな症状らしい。

■  16~35歳という広い範囲の年代に起こり、
極端な場合、数十秒~数分ごとにモバイル端末を
チェックせずにいられなくなり、
ストレス症状が起きたり日常生活に支障を来すことがある。
( 2013-9-10 )

知恵蔵mini

■  ネットに四六時中自分を接続していないと取り残される、
情報やチャンスを逃す、他人はその間に成功に近づいて
いくかもしれないという焦り。

グロービス 知見録


◆  ちなみに、カタカナ語の「ミス」。

事実上、和製語に近いと考えられるため、要注意。

  ミス 【miss】

失敗すること。 過失。

(広辞苑 第七版)

上記『 広辞苑 』には “miss” と添えてある。

これらの国語辞典も同様。

  ミス 【miss】

(名)
失敗すること。  やりそこなうこと。

(大辞林 第四版)

 

  ミス 【miss】

《名・自他サ変》
やりそこなうこと。  失敗。

(明鏡国語辞典 第二版)

日本最大の国語辞典と名高い『 日国 』も確認してみる。

前出の国語辞典と同じく、語釈全文。

日本国語大辞典 第二版』第12巻、p. 662、
小学館(2001年刊)より転載

(2)に「取り逃がすこと。」とあるのが新鮮。

本稿の主題 “miss out” そのものである。

さすが、『 日国 』 (にっこく)。

◆  その『 日国 』であっても、語釈の(1)は、上掲の
『 広辞苑 』、『 大辞林 』、『 明鏡 』と一緒で、
失敗 」の意。

確かに、英語の名詞 ” miss ” には、この意味も含む。

可算名詞である。

しかし、動詞用法に比べると、かなりマイナー

「 ミス 」に相応する英語は、” mistake ” の方が適切。

【発音】  mistéik
【音節】  mis-take  (2音節)

名詞・他動詞・自動詞がある。

やはり可算名詞。

【参考】   “complaint

 

◆  一方、以下の国語辞典には、「ミステーク」も書いてある。

黄ハイライトを施した。

  ミス 【miss】

(名・自他サ) [ miss,   mis-  ]
やりそこない。  まちがい。  ミステイク

(三省堂国語辞典  第七版)

 

  ミス (英語表記) miss  

[名]  (スル)  誤ること。  まちがえること。  失敗。  ミステーク

デジタル大辞泉

「ミステークの略」と記す辞書すら存在する。

  ミス  

miss
失敗。「 ミステーク 」の略   [常]

(角川類語新辞典)

 

【関連表現】

 

 

 

 

 

 

 

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