Freebie
2020/11/19
(景品、販促品など)無料でもらえるもの
初めて目にすると「フリスビー」に見えたりする字面。
“freebee” と表記されることもあるから、なおさらだろう。
ともに、「2音節」の名詞。
アクセント(強勢)も、初っ端の「第1音節」に置く。
「音節」(syllable、シラブル)とは、発音の最小単位。
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日本語の場合、原則として「仮名一字が1音節」。
そのため、音節を意識する機会は乏しい。
→ 音節の差異が顕著な日英比較は、”integrity” 参照
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複数形は “freebies“
- “Don’t miss out on our freebies ! ”
(弊社の景品をお見逃しなく。)
◆ 無論、 “flying disk”(円盤)の商標名 “Frisbee” とは、完全別物。
どちらも、辞書では重要度・頻出度とも、ノーマーク。
マイナーな単語である。
現代社会では、なにかと幅を利かせる “freebie”。
初見で誤解を生む酷似ぶりなので、本稿で取り上げてみたい。
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◆ 2010年頃より数年間、世界的に盛り上がったのが、
「フリー戦略」と称するマーケティング手法。
基本サービス無料による集客と認知拡大を目指す。
その上で、一部ユーザーの有料サービス利用により、
利益を求めるビジネスモデルである。
潮流を作った作品がこちら。
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https://amzn.to/2RSq1oH
NHK出版、2009年刊
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著者アンダーソン(1961~)は、”Wired” 誌の
当時の編集長。
2004年、「ロングテール」という概念をもたらした。
2007年には、米『タイム』の
「世界でもっとも影響力のある100人」に選出。
原書は各国でベストセラーに。
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https://amzn.to/2FZrr9V
Hyperion、2009年刊
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◆ “freebie” の活用は、はるか昔に遡る。
手始めに、食品用ゼラチン「ジェロ」(JELL-O)。
1897年発明。
売り上げ不振を挽回するべく、1904年からレシピ冊子
を無料配布。
その数1万冊。
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↑ 無料のレシピ (1930年版)
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Quick
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◆ お次は、安全剃刀の「ジレット」(Gillette)。
1904年に特許取得。
本体を無料または大幅値引きし、替え刃を有料に。
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↑ 特許 (1904年11月15日付)
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Gillette
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◆ いずれも、本書で紹介された古典的事例である。
両者とも、現在に至るまで、高い商品認知度を誇る。
21世紀に入ってからも、無料キャンペーンは
盛んに行われている。
パソコン・携帯本体を無料にして、各通信会社が
激しく競い合っていた頃を思い出す。
低価のプリンター本体と高価なカートリッジ
を対象とするサプライ・ビジネスも完全定着している。
製品・サービスの「初回無料」や「初月無料」は、
いたって当たり前になり、新鮮味を失った当世である。
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とりわけ「景品」「粗品」「ノベルティ」が
好きな方は少なくない。ー
けいひん【景品】
1. 商品に添えて脚に贈る品。景物。
2. 催し物の参加者に与える品。
(広辞苑 第七版)
そしな【粗品】
2. 景品。粗景。
(三省堂国語辞典 第七版)
ノベルティ(英 novelty)
宣伝・集客目的で会社名、商品名などを
入れて配布する贈答用の品物。
「ノベルティグッズ」
(精選版 日本国語大辞典)
一等席の乗り物や一流ホテルのアメニティグッズなら、
大勢の食指が動くだろう。
アメニティグッズ【amenity goods】
ホテルなどのバスルームの備品。石鹸、
シャンプー、歯ブラシ、整髪用具など、
宿泊客が持ち帰り可能なもの。
バス-アメニティー。
(大辞林 第三版)
もとよりお持ち帰り用の備品。
「料金込みだから…」
とバッグにぎゅう詰め。
企業のノベルティも同様。
「宣伝用の記念品だし…」
と配布者の前をうろちょろ往来。
仕入予算が不要なため、転売にも打ってつけ。
入手困難な「お宝」品として、高値が付いたりする。
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【参考】 ※ 外部サイト
- ホテルの備品を3人に1人が「持ち帰りすぎている」問題
2019年2月26日付
– - ホテルから持ち帰ってOKなアイテム22選
2020年2月12日付
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「ブラックフライデー」とは、
感謝祭(11月第4木曜日)の翌日の金曜日
◆ このような「景品」や「販促物」こそ、”freebie” の代表格。
無償提供の意図は多岐に渡るものの、一様に無料である。
“freebie” の語原は不明とされている。
だが、どの語原辞典を調べても、次の2点に争いはない。
- “free”(無料)の意味合いを含む
- 1942年には使われていた
英英辞典で一律に “informal” 扱いされているのは、
正体不詳であることが一因となっていると推察できる。
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◆ 既述のように、意味は「無料でもらえるもの」。
4大学習英英辞典(EFL辞典)の語釈は次の通り。
ハイライトが「無料」の意。
“freebie”
■ informal
something that you are given free, usually
by a company.
(LDOCE6、ロングマン)
■ informal
something that is given to somebody without
payment, usually by a company.
(OALD9、オックスフォード)
■ informal
something that is given to you without you
having to pay for it, especially as a way of
attracting your support for or interest in something.
(CALD4、ケンブリッジ)
■ informal
a freebie is something that you are given, usually
by a company, without having to pay for it.
(COBUILD9、コウビルド)
【発音】 fríbi
【音節】 free-bie (2音節)
※ 下線は引用者
可算名詞で、複数形は “freebies“。
日本語の「ただ(只)」は、時に卑しい印象を放つ。
片や “freebie” は、ソフトでかわいらしい語感を伴うせいか、
下卑た感じは少ない。
もっとも、「ただ」には違いない。
無代を潔しとしない者には、好まれない言葉であろう。
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◆ 蛇足ながら触れると、弊サイトは無料で公開中。
これは “freebie” なのだろうか。
たぶん、否。
そこで、先の英英語釈と突合してみる。
まず、物品を提供(”something given to you”)していない。
また、会社(”a company”)でもない。
さらに、宣伝や販売促進の意識はないに等しい。
”as a way of attracting your support for or interest”
(下線部)に及んでは、的外れ。
したがって、上掲の定義には該当しないと考える。
なにより、35年以上続けている「単語帳」の一環として、
管理人(Mickey)自身が好き勝手に楽しんでいるサイト。
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今後も無料で続けます。
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【景品サイト】 ※ “freebies” の具体例を確認するのに便利
- TheFreeSite.com – Home of the Web’s Best Freebies
https://www.thefreesite.com/
– - Freebies.org
https://freebies.org/
– - “31 Best Websites for Scoring Freebies”
https://www.huffpost.com/entry/31-best-websites-for-scor_b_7292692
2017年12月6日付
ー - “Master list of freebie websites”
https://www.yourmodernfamily.com/freebie-websites/
2017年7月28日付
【類似表現】
■ “giveaway“、 “give-away“
– 可算名詞「無料サンプル」「景品」
「うっかり漏らしてしまうもの」
– 形容詞「無料の」「投げ売り(捨て値)の」
【発音】 ˈɡɪvəˌweɪ
【音節】 give-a-way (3音節)