Did I miss something ?
2020/07/10
私は何か逃しましたか?
雰囲気がどうも変。
何か裏があるのか。
こうして胸がざわめき立つ際、
相手に探りを入れるのに使う常套句
が表題の、
Did I miss something ?
映画やドラマにも出てくることが少なくない(後述)。
もっとも、額面通りの素直な意図で、自分が認識して
いない点を確認するために使うこともある。
現在形として使われる典型文言は、
Am I missing something ?
–
◆ 本稿では、通常の確認用途ではなく、疑念を晴らす
ための使い方を中心に見ていきたい。
なぜなら、他意のない発言よりも、腹を探ったり、
息巻く時に飛び出す場面の方が目立つと感じるからである。
何よりも、月並み用途ではつまらない。
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◆ 副詞 “here”(ここで)を後付けする言い回しも定着している。
「今」「この場で」といった切迫した空気を醸し出すことで、
相手にぐっと圧力を加える効果がある。
相手を疑うあまり、凄みを利かせて詰問する勢い。
- Did I miss something here ?
- Am I missing something here ?
和訳はなかなか難しい。
全体像をつかみ、当人の思いを込める工夫が必要。
- なんか隠してない?
- なんか文句あっか?
- 言うべきことあるなら、さっさと言え。
- 何なの?
険悪な顔つきで浴びせられた時には、受け手にとって、
抗しきれない重圧になりうる。
それが当初からの思惑であったりする。
あたかも当てこすり。
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◆ 以下の動画をご覧いただければと思う。
各2~3秒程度。
それぞれクリックすると、音声が聞ける。
–
発言者は、総じてしかめっ面。
単なる質問でないことが明らかである。
内心は、ぶりぶり怒っているのだろう。
猜疑心たっぷりで、怒りと悔しさをこらえた表情である。
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【関連表現】
- “without my knowledge”
https://mickeyweb.info/archives/37936
(私に無断で、私の知らぬ間に)
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◆ 質問文としては、いずれも難しくない。
“Did I miss something ? “
“Am I missing something ? “
単語と文法は、以下のようにすっきりシンプルである。
まず、表題 “Did I miss something ? ” から。
直訳は「私は何か逃しましたか?」
- 一人称の過去単数の助動詞 “did“
- 一人称の単数主格 “I“(私は)
- 他動詞 “miss“(逃す)
- 代名詞 “something“(何か)
“did” は、助動詞としての “do” の過去形。
一般動詞の疑問文や否定文に用いられるのが、
助動詞 “do”。
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ここでは “miss” がその一般動詞。
“miss” には、他動詞・自動詞・可算名詞がある。
語源は、古英語「的を当て損なう」(missan)。
【発音】 mís (1音節)
表題では、他動詞「逃す」で、基本そのもの。
–
◆ 一方、”Am I missing something ? ” の直訳は、
「私は何か逃していますか?」
- 一人称の現在単数のbe動詞 “am“
- 一人称の単数主格 “I“(私は)
- 他動詞の現在分詞 “missing“(逃している)
- 代名詞 “something“(何か)
“am” は「be動詞」の代表格。
その他のbe動詞は、be、was、been、will be、is、were、are。
–
be動詞の疑問文には、助動詞 “do” は使わないのが基本。
他動詞 “miss” は、ここでは現在分詞の中の
現在進行形 “missing”。
ー
現在分詞には、他に過去進行形と未来進行形がある。
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◆ 以上が単語と文法の概要である。
–
中級学習者であれば、難なく理解できるレベル。
だが先述したように、確認用の疑問文を取り上げるのが
本稿の狙いではない。
先の動画が示すような「何なの」系の使い道に着目している。
- “Did I miss something? “
(私は何か逃しましたか?)
– - “Am I missing something? “
(私は何か逃していますか?)
どうして、これらが聞きとがめる文句となるのか。
その理由を理解するには、先の文法・単語の分析は
直接役立たない。
言語面よりも、人間の心理作用が問われる。
つまり、<英語>の問題ではないと考えられる。
したがって、私たち日本人にとっては、日本語から
考察する方が早い。
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◆ 例えば、次のような流れ。
- “Did I miss something ? “
→ 私が知るべきことが何かあったのですか? →
あったなら、知るべきことを教えて →
ないわけないでしょ、お前の顔に書いてあるぜ →
うそつくな! こそこそしやがって! 文句あっか!
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– - “Am I missing something ? “
→ 私が知るべきことが何かありますか? →
あるなら、知るべきことを教えて → 早く言えよ!→
何もったいぶってるんだ!→ どうせ俺に不利なことだろ?→
お前、何なの? 隠すなよ! ふざけるな!
あくまで仮定した情動。
–
若干極端だが、発言者の心情を推察すると、
こんな感じではなかろうか。
言語とは関係ない印象。
理由もなく、自分だけ差し置かれた立場に追いやられれば、
憤怒が込み上げてくるのは、大半の人にとって普通の反応。
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◆ だから、本音では、
” Are you hiding something from me ? “
(何か隠し事してない?)
などと対峙したいものの、さすがに気が引ける。
勘違いだったら困る。
そのため、持って回った言い方で、少しでもリスクを回避する。
おそらく、”Did I miss something ? ” には、そんな動機が
織り込まれている。
–
◆ 個人的には、
” You’re hiding something from me, right ? “
(何か隠してるよな、そうだろ?)
などと追及したくもなるが、やはり相手と状況を考慮して
言葉は選ぶべき。
“Did I miss something ? ” は、もっと無難に、
微妙な場面で使える表現に違いない。
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