【転職】英語を使う仕事に変えるべきか
2023/10/30
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職業柄、 英語学習者から、 転職のご相談を受けることがある。
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英語が大好きで、長年勉強してきた。でも、今の仕事では英語を使わない。
転職すべきでしょうか。
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転職には、 ご本人の 年齢・資質・諸条件 が影響する。
ご家族の構成が大事な要素となるのは言うまでもない。
よって、 一様に返答できないし、 正答は人それぞれだろう。
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◇ たったひとつ、 私が全員にご紹介する持論がある。
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実務で使う英語と学習者向けの英語には、隔たり があると思います。
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◆ ビジネスのような激しく動く実社会で使う英語
と、概して静的な学習に適した英語はやはり異なる。
普段から英語を使っているか否かは、 当人の発する
英語を見聞きすれば、 比較的簡単に判断可能な印象。
すなわち、 4技能 ( 聞く ・ 読む ・ 書く ・ 話す ) のうち、
英語の運用能力は 「 書く 」 と 「 話す 」 に表れやすい。
- 「 書く 」 と 「 話す 」 → 産出能力 output skills
- 「 聞く 」 と 「 読む 」 → 受容能力 receptive skills
基礎文法を体得していないと、 外語はまともに書けない。
見る人が見れば、 実力が分かるということ。–
- 【 日本語能力試験 】 レベル別 できること一覧
https://www.jlpt.jp/about/pdf/cdslist_all_2020.pdf
– - 【 TOEIC L&R 】 スコア別 できること一覧
https://www.iibc-global.org/toeic/test/lr/guide04/guide04_02/score_descriptor.html
▲ 作文・口述抜きで、 こうして評価するのは、 へんちきりん
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◆ 日本人が書く英語教育系のメルマガを、 私は多数購読している。
取り上げる表現及び解説により、 発信者の英語力は推量可能。
めったに使われない英語表現が、 頻繁に記載されていれば、
ご自身の実生活で、 英語は疎遠であることが明らかになる。
おそらく、 和英辞典などから抜き出したのだろう。
英語ができるふりを装っても、 結局ばれるわけだ。
真っ当な発信者を探す方が難しい感で、 もう 詐欺師 だらけ。
詐欺師呼ばわりは失敬だが、 見分けのつかない学習者に、
器量不足の者が企画した商材を売りつけるのは許せない。
たとえ見破っても、見抜いたことは、おくびにも出さない。
お見通しでも、 わざわざ口を出すことなく、 黙っている。
けれども、 ご当人に対する心証は、 悪化してしまう。
かくして、 見栄っ張りは信用を損ね、 運を落とす。
残念なことに、 日本は 「 詐欺教材大国 」。
好例は、「 文法不要 」 「 カタカナで学ぶ 」 「 聞き流すだけ 」。
昔から、 出ては消えての繰り返し。
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「 英語は簡単 」 などと、 気安くほざく人間 ( 国籍不問 ) は、日本語と英語の 「 全体像 」 をまるで理解していない勉強不足の不届き者、
または、 飛び抜けて俊逸な才覚の持ち主のいずれか。
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–日英の 「 4技能 」 を 厳密に試験 すれば判明する。
日本語と英語、 両方の 「 4技能 」 すべてが大事。
殊に、 産出能力 ( 書く・話す ) をしっかり検査。
言語の真の運用能力は、 「 書く 」 に表れやすい。
その場で 課題を出し、 実力を確認するとよい。
詐欺師かどうか、 すぐ分かる。
残念ながら、 詐欺師だらけ。
外語の場合、 基礎文法を知らないと、 まともに書けない。
「 4技能 」 のうち、 「 書く力 」 はごまかしにくい。
したがって、 日頃の学習量と取り組み姿勢を反映する。
今は機械翻訳 ( AI ) が身近にあり、 見抜きづらい。
日本語ペラペラの 英語教育系 YouTubers の一部に、 要注意。
参考にはなるものの、 学術的な裏付けに欠けた感覚的理解
に基づく生半可な知識をまき散らしている諸賢がのさばる。
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ペラペラでも、 両言語をその場で書かせれば、 正体はバレる。地味で地道な長期的研鑽を要するのが、 「 書く力 」。
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「 日本語と英語の違い 」 より
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さらなる裏話は、 ” conclusive ” に記した ( 地図入り )。
◆ 以下、 ” conclusive ” より再掲。
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社外はもちろん、 社内会議でも録音禁止の状況は珍しくない。
私の現職でも、 秘密録音を禁ずる旨が明文化されている。
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( 中略 )
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そこで、 耳で聞き取り、 書き取る ( dictation ) 形式で記録する。
使用言語で筆記しないと、 ここ一番の時に引用 ( quote ) できず、
「 言った言わない 」 ( a he-said she-said situation ) を招く。
そのため、 その時の使用言語で書き留める能力がビジネスでは入用。
しかしながら、 和文の議事録 ( meeting minutes ) の作成業務は、
日本語 「 ペラペラ 」 な英語母語話者には依頼しかねるのが常例。
日本語を書く能力が足りないから。
「 ビジネス英語 」 に相応する、 ご本人の 「 ビジネス日本語 」
の運用能力を問われれば、 日本語母語話者としては即答に窮する。
既出の言葉を流用してみると、 「 まあまあ微妙 」。
私の率直な回答は、 「 聞く・話すの特化型、 だと思います 」。
事務系業務は根強い文書主義 ( 電子文書 含む ) であり、
読み書き能力なしで 「 堪能 」 とは評価できないと考える。
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「 ビジネス日本語ができる 」 水準に達していないことは、 うちら
に求められる 「 ビジネス英語 」 の目安に突き合わせて推論できる。
読み書きできず 「 ビジネス英語ができる 」 では一笑される日本人。
こうした 「 ペラペラ 」 が非常に多い 実情を意識しておきたい。
そうすれば、 不勉強な 「 ペラペラ 」 には惑わされにくくなる。
音が極端に少ない日本語の 「 聞く 」 「 話す 」 の難易度は
そう高くない一方、 「 書く 」 「 読む 」 がとても難しい。
日本語の特徴 ( 初級・中級 ) である。
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日本人の皆様、 「 ペラペラ 」 にだまされることなかれ。
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がらんどうな 「 ペラペラ 」 を見破れず、 憧れる人が多すぎ。–
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▲▲ 再掲終わり ▲▲
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◆ 日本語があまり読めないということは、
日本の英語学習者向けに書かれた日本語の参考書を、
どれも精読できていないと推断できる。
日本人が取り組む教材を、 よく知らないということ。
英語を教わる側であるなら、 もしやと不安になる。–
そういう 日本語ペラペラYouTubers の背後には、
日本語の有名参考書が、 これ見よがしに飾ってあったりする。
「 ご自分でお読みになりましたか ? 」
それとなく尋ねてみたくなる。
もし読んでないなら、 画面に映さない方がよい気がする。
教える側として、 いくらなんでも恥ずかしい。
integrity の弱みをさらけ出す。
本格的な語学訓練においては、 華やかな局面はごく一部。
慎ましくしたたかな根気で、 へこたれずに粘り抜く営為。
文法を含む言語理論を修得するには、
文献を渉猟し、 閲読する必要がある。
その道のプロなら、 言うに及ばない習わし。
当人の日本語の読み書きについて意地汚く指摘したいのではない。
そうではなく、 外語習得の真の難しさを知るに至るほどには、
努力してこなかったことと、 その自覚が足りないことを述べたい。
日本語ペラペラと言っても、 満足に読み書きできないのであれば、
先述の日本語の難しさに、 真っ向から挑んでこなかったのだろう。
外語習得の困難を知覚する語学力に未達なのではと疑いたくなる。
英語の4技能を希求する私たちの、 あの血眼の奮励を思い起こせ。
毎晩の自習、 定期試験・受験・資格の対策、どれほど勉強したか。
地道な努力を積み上げて習熟した人は、 たやすく報われない骨身を
削る難路を這いつくばってきたから、 気安く 「 簡単 」 と言わない。
◆ 実務では、英語はあくまで、 コミュニケーション手段。
文法や丁寧さは二の次で、 スピードが求められる。
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職場は学校ではない。
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「 労働の対価 」 として、 お金をいただいているのだ。
社会人として、 コストと利害関係の分別は欠かせない。
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◆ 転職を重ねた結果、 私は正規社員 ( 正規職員 ) として、
「 産学官軍 」 に従事した。
- 「 産 」 + 「 学 」 = 10年以上
- 「 官 」 + 「 軍 」 = 15年以上
計画したのではなく、 図らずも雑多なキャリアが仕上がった。
使う英語は様々であったが、 日本の一般学習者
が接するであろう英語とは、 程遠かった気がする。
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◆ 生意気にも、 率直な感想を申し上げると、 こんな具合。
大勢が損得ずくで活発に活動する現場の英語と、 授業料で運営
され、 高い素養を積んだ先生方が手取り足取り教えてくれる、
学校の英語が同じわけない。
すごい剣幕で主張が飛び出し、 感情丸出しで議論が高潮する、
荒れ模様の会合に臨んでいる際、 ふと思う。
「 常々英語を使っていない限り、 こりゃ聞き取れないわ … 」
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◆ 端的に言うと、「 プロとアマは違う 」。
文法にやや難があっても、 相手に通じればまずOK。
些細な文法ミスを、 わざわざ指導する人は想定しにくい。
直属上司さえ、 注意を与えず、 スルー するのが一般的。
先生ではないのだから、 当たり前。
「 他人の弱点にかまう暇なんかない 」 という雰囲気。
本心はともかく、 いちいち気に留めないのが、 仕事のできる人。
仕事のできる人は、 余計な仕事を増やさない。
外資系の場合、 自分の仕事をさっさと終えて、 定時に
上がるのが常だったりするから、 当然かもしれない。
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日常業務では、完璧な文法 や 過剰な礼儀 は、
さほど期待されない。
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そんなことより、スピード優先。
それが実務であり、プロの世界。
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特殊分野を除けば、どこも似たり寄ったりだろう。
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英検1級 や 国連英検特A級 などの資格は、私も持っているが、
必置資格ではないため、 実務上、 なんの意味もないに等しい。
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TOEICで満点を取るよりも、
英語の会議に参加し、
自分の意見を発言 できる方が
ずっと価値がある。
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私はこう考える。–
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使える英語を本気で身につけたければ、
英語を年中使う職場に移る方がよい
かもしれません。
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◆ 以下、 ” no need ” より再掲。
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英語を盛んに使って仕事する実務家は、 TOEIC に構わない方が大半。天下に威勢を示す TOEIC の弊害を、 苦々しく受け止める人も目立つ。
高得点なのに即戦力から程遠い、 多数の社会人にお会いするとこうなる。
洋画どころか、 定例会議で聞き取れないのだから、 発言には至らない。
まるで冗談だが、 よくある実話。
ナレーターやキャスターら、 プロのしゃべりに慣れてはまる、落とし穴。
プロ音声と違い、 速度も口調も間合いも容赦のないのが、リアルな社会。
もごもごしてる間に、びゅんびゅん意見が飛び交い、スルーされてお終い。
敢えないものである。
一体、なにを試験してるのか、 との疑念と警戒心が沸き起こってくる。
「 TOEIC満点 」 と自惚れを口走れば、 笑い者にならぬとも限らない。
話題の糸口になりえないくらい、 皆一様に歯牙にも掛けない印象。
「 すごいけど、 よくそんなヒマあるな … 」 本音はこんな感じか。
「 録音相手に、 なにやってんのやら … 」 空しくならないのかねぇ。
生身の人間相手に勤しんでくれば、 人為的な匂いを敏感に嗅ぎ取る。
「 ごっこ遊び 」。
人間相手に英語を使う機会が増えてくると、 こう感じるようになる。
録音音声は模造品にすぎないと、 まざまざと実感できるようになる。
実際にやり取りして得る体験は、 試験とは別物であることが分かる。
容易に感づく。
試験と違い、 理解できなければ、 確認させていただくこともできる。
双方向のコミュニケーションが生じる瞬間であり、 生の英語の出番。
羨望の的となる 「 TOEIC満点 」 を誇負する振る舞いが、 大概の
実務家の目にどのように映っているか、 ご想像いただければと思う。
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◆ 常日頃から外国人に接し、 一緒に仕事したり、 遊んだり、
けんかしたりしないと、 身につかないことはかなり多い。
この辺りは、 語学力以外に 「 異文化理解力 」 も問われる。
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–とにかく英語で、 日々揉まれる必要がある。
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言語習得の決め手は、持続性。
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一度学んだら終わりではなく、使ってなんぼ。
日常における使用がすべて。
” Think globally, act locally ” などと世に喧伝されるが、
高度な語学に関しては、 そうは問屋が卸さないと感じる。
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多様性( diversities )に恵まれた、 ダイバーシティ環境の
職場で、 長年働いた経験をお持ちの方であれば、 以上の話
はご理解いただけるであろう。
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前出の4技能を万遍なく、 一定水準以上まで会得するには、
それに似つかわしい環境を、どうにか整える覚悟を要する。
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例えば、 年収が下がっても、 英語を使う職に変えられるか。
▲ 日本の公務員を退職する際の私が、 こういう状況だった。
- 当時の自分としては、 並々ならぬ勇気を奮い立たせたものだ
- 「 絶対に後悔したくない ! 」 と奮起し、安定した職を捨てた
- 案の定、 失った身代・逃した好機・切ない苦痛 は数多生じた
- 何十年も経た現在は、 それでも正しい決断だったと結論する
- 上長の命に従う公僕では、 早晩必ず行き詰まる気質ゆえに、
公務員を続けていたら、 メンタルやられて、 今頃死んでいた
→ ” toxic relationship ” 参照
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この点の心構えは、 初学者・初級者レベルと大きく異なる。
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繰り返すと、 ご家族を含む諸々に影響が及ぶため、 動かない方が
都合がよく、 望ましい方々もきっとおられるはず。
幸せの形は各人各様であり、 総合的なバランスが重要と考える。
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中級までの英語力で納得できれば、 さして痛みは伴わない。
そもそも、 高レベルの外語が、 我が人生に本当に必要なのか。
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高みを目指せば、 相応のリスクと犠牲を伴うのが、 この世の理。
生半な努力では、 中途半端な立場に自身を追いやることになる。
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上に行けば行くほど、 競争は激しく、 持って生まれた素質も問われる。
全身全霊の努力にもかかわらず、 思い通りに進まない残酷もありうる。
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なまじっかな才能は取り扱いに注意、 かえって破滅を招く危険がある。
安定第一で進められる一般的な人とは違い、 迷いに心を乱されやすい。
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◆ 不首尾に終わっても、 耐えられますか。
いざという時、 思い切って、 方向転換できますか。
気持ちを切り替える勇気と決断力と実行力があれば、 まずは大丈夫。
たとえ、 うまくいかなくても、 本物の努力は糧になると私は信じる。
真剣な努力が実らないのはつらく、 悔しく、 情けなく、 自己嫌悪と
屈辱感に苦しむが、 より自分にふさわしい道が開けることも多々ある。
そもそも、 「 未来は誰にも分からない 」 ですから。
けれども、 まぎれもない現実の話、 いつまでも挫折感・敗北感・
後悔など、 否定感情にとらわれて、 おかしくなる人が多すぎる。
何人も身近に見てきました。
絶望に押しつぶされたのか。
挑戦しなければ、 もっと幸せに生きられたかもしれない人たち …
胸が痛む。
よく考えてみたい。
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目標が違うプロ・セミプロの基準は別で、 軌を一にするはずないのが常識。同じ野球でも、 「 プロ野球 」 と 「 高校野球 」 を同水準で論じない。
どちらも食うか食われるかの真剣勝負だが、 同じ土俵で向かい合わない。
あるいは、 草野球を楽しむアマチュア選手にプロ野球の厳しさは不相応。
並々ならぬ犠牲を伴うのがプロの道、 無報酬で立ち入るべき世界でない。
こと英語教育に限っては、 久しく混こぜにしてきた異常さに気づくべし。
–” conclusive “ より
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◆ 私個人の基本方針は、
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チャンスがあるなら、
ぜひ活かそう
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うかうかしていると、 あっという間に年老いて、 機会を 失う。
被扶養者なしの健康な若者であれば、 トライしたらよいと思う。
被扶養者ありなら、 全体的にバランスよく折り合いをつけたい。
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■ 英語をどう使って < 残りの人生 > を過ごすか
■ 「 ライフスタイル 」「 人生観 」 の考察も大切
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英語を使わなくても、 普通に生きていける日本
という国で、 真摯に英語と付き合う ためには
「 今後の生き方 」 に思案を巡らす必要がある。
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英語でなにをしたいのか。
どんな未来にしたいのか。
ご自分の切実な 「 内なる声 」 に向き合おう。
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【参照】 ” conclusive ”