プロ翻訳者の単語帳

Professional Interpreter / Translator at Government Agency

Follow through

      2020/09/24

(1)  最後まで約束を守り通す      (2)  最後までやり抜く

この2つの意味は、大して違わない。
二分して分かりやすくしたものの、趣旨は同じ。

完遂する」とひと括りにしても、的外れとまでは言えない。

  かんすい【完遂】

完全に成し遂げること。
|最後までやり遂げること。
(精選版 日本国語大辞典)

終わりまですっかりなしとげること。
(明鏡国語辞典 第二版)

何があっても「最後まで」「終わりまで」突き進むのが、
“follow through”。

それぞれ図で表すと、こんな具合。

(1)  最後まで約束を守り通す

取り決めに従う

(2)  最後までやり抜く

 

目標を遂行する

 

◆  “follow through” のあかつきには、小躍りしたくなる
喜びと、果てしない安堵が胸いっぱいに広がったりする。

あぁ、やっと終わった …  よかった …

誰しも味わったことのある満足感ではないだろうか。

目的を追求し、立派にやり抜いたのだから、
本人に自信と達成感をもたらすに違いない。

行動力と実力を発揮して生み出した成果。
信用が増し、周囲の評価もぐっと上がる。

こうして、すがすがしい好感を与えるのが、
“follow through” の基本イメージ。

やり遂げる人は、このような効果に精通している。

◆  “follow through” は、句動詞(phrasal verb)。

  • 動詞 “follow
  • 副詞 “through

句動詞 “follow through” は、自動詞にも他動詞にもなる。
すなわち「句自動詞」及び「句他動詞」。

句動詞の場合、自他動詞を兼ねるものは少数派である。
「句自動詞」または「句他動詞」のいずれかが一般的。

<句自動詞と句他動詞の区別>

数あるオンライン英英辞書のうち、
句自動詞と句他動詞の区別が明確なのが、
マクミラン

他に比べると、識別が容易。

※  2020年9月現在

“follow through”

PHRASAL VERB
[INTRANSITIVE / TRANSITIVE]
to continue doing something until it has been completed.

https://www.macmillandictionary.com/dictionary/british/follow-through_1

【発音】  ˈfɑːl.oʊ.θruː
【強勢(アクセント)】  fóllow thróugh 

まずは、「句動詞」のおさらい。

「前置詞または副詞と一緒に用いることで、
元々の動詞とは異なる意味となる複数の単語」

これが、句動詞基本定義。

定義を当てはめると、

  • “follow” →「元々の動詞
  • “through” →「副詞」

そして、”follow through” の内容は、既記の通り、

(1)  最後まで約束を守り通す
(2)  最後までやり抜く

(1) と (2) は、“follow” に通じるため
「異なる意味」ではないだろう。

したがって、句動詞 “follow through” は、
定義にぴたりと当てはまるものではない。

定義にあつらえ向きの句動詞を挙げると、例えば、

  • rule out”     ※  句他動詞
    (排除する、不可能にする)
  • beef up”     ※  句他動詞
    (強化する、増強する)
  • square off”     ※  句自動詞
    (対決する構えをとる、対決する)

「元々の動詞」である “rule”、”beef”、”square”
から推測しにくい意味をなす。

皆目見当がつかない「複数の単語」セット。

よって、3つとも句動詞の基本的定義に該当する。
いわば「句動詞中の句動詞」。

◆  これから表題 “follow through” を分解していく。

2単語の中身とつながりを確認し、「句動詞中の句動詞」に
なりえない理由を考察してみたい。

■  “follow” には、他動詞・自動詞・名詞がある。

【発音】   fɑ́lou
【音節】   fol-low  (2音節)
【活用形】  follows – followed – followed – following

語源は、古英語「後についていく」「従う」(folgian)。
どの品詞の語義も、語源に忠実なものが中心。

「追う」と押さえておけば、基本はOK。

– 他動詞「~に続く」「~についていく」
– 自動詞「~に続く」「~についていく」
– 名詞「追うこと」     ※  マイナー用法

自他動詞の基本的意味は重なり合う。

自他動詞を兼ねる “follow through” から推察できるように、
“follow” は自動詞も他動詞も等しく存在感が強い

現に、動詞 “follow” は英単語として最頻出かつ最重要。

  • 重要:最上位 <トップ3000語以内>
  • 書き言葉の頻出:最上位 <トップ1000語以内>
  • 話し言葉の頻出:最上位 <トップ1000語以内>
    (ロングマン、LDOCE6 の表記より)

全項目、最高ランクの位置づけを誇る。

◆  おまけに、SNSが隆興する昨今、カタカナ「フォロー」
の出番もひっきりない。

日本の世間一般に普及し、日頃から身近に感じるレベル。

特定の人を「フォローする」と言えば、固定読者になること。
「フォロアー」は 名詞 “follower” で、その固定読者を指す。

『広辞苑』の「1. 追跡」の範疇であり、”follow” の語源に沿う。

  フォロー【follow】

1. 追跡すること。
2. 補い助けること。
(広辞苑 第七版)

※  語釈該当引用

一方、「2. 補い助けること」は、和製語に近い。

“follow” 単独で他者を支援する意味合いは、英語にはないと考える。

今回、4大学習英英辞典(EFL辞典)に加えて、
ネイティブ用辞書など5点の “follow” を丹念に調べてみた。

結果として、”help” や “assist” 周辺の語義は見つからなかった。

名詞 “follow-up” または 句動詞 “follow up” であれば、
かすかに要素を含むかもしれないが、これらの意味も、
継続調査」「追跡調査」「追い打ちをかける」が普通。

相手のためよりは、目的に向けての補足に主眼を置く。
むしろ利己的な印象。

「他者の補助」を意味する “follow” を、私は見聞きしたことはない。
好意的に他者を助ける “follow-up” にも、ほとんど接したことがない。

にもかかわらず、調べた国語辞典5点全部がその種の「補う」を記す。
そのため、「2. 補い助けること」は和製語に近いと考える。

  動詞 “follow” の基本イメージ  
■  目標達成のために、ひたすら追い続ける
■  執念深いほど生真面目な執拗さを帯びる

真摯な「追求」こそ、”follow” の持ち味。
だが、ガツガツしたしつこさは、対人関係では嫌われがち。

“follow” は、思いやりから漂う、心温まる雰囲気とは無縁である。
既述の「すがすがしい好感」とは、主に実行力に対する称賛。

上掲の図を、今一度ご覧いただければと思う。

「最後まで」「終わりまで」従う真剣勝負の世界。
「新人をフォローする」みたいな親身な情はそぐわない。

「部下をフォローした」と業務報告すべく、

  • I followed her.

見上げた話だが、この表現はまずい。

ことによると
彼女を尾行した になってしまう。

助けるどころか、ストーカー。

日本流の「フォロー」=「2. 補い助けること」
ならば、上記の英文の方が適切。

シンプルな上、変に勘ぐられないで済む。
英語ネイティブもよく使う。


◆  一途なひたむきさが持ち前の “follow” に、
副詞 “through” を付け足すとどうなるか。

“through” もまた、生一本な性質を有する。

■  “through” には、前置詞・副詞・形容詞がある。

【発音】  θru  (1音節)

→  “th”(θ) の発音は、”smooth out” 参照

語源は、古英語「通して」(thurh)。
“follow” と同じく、語源に忠実な語義中心。

– 前置詞「~を通り抜けて」「~を貫いて」「~を通して」
– 副詞「通り抜けて」「ずっと」「通しで」「最後まで」
– 形容詞「通り抜けられる」「直通の」

漢字「」を多用する、この一覧から読み取れるように、
「通る」「貫通」の意味合いばかりで、まさに語源通り。

ゴール目指して一筋を貫く様子が “through” であり、
自律的でポジティブな語感を放つ。

sit through” より再掲すると、

 

前置詞と副詞の “through” は、重要度・頻出度とも最上位を占める。
こちらも、動詞 “follow” と同様。

“follow through” では、副詞の “follow”。

若者に人気の和製俗語「スルー」は、煩わしさを「切り抜ける」
ための、胸のすくような対抗手段を表す。

以下、”shrug off”(受け流す、あしらう)より、これまた再掲。

  スルー【through】

■  原義は通過などを意味する前置詞・副詞・形容詞
俗に、やり過ごすこと。気にしないこと。無視すること。
(大辞林 第三版)

■  〔俗〕聞き流すこと。やり過ごすこと。無視。
(明鏡国語辞典 第二版)


◆  “through” は、ひたすら追求の “follow” と似た者同士で、相性抜群。

2語が組む相乗効果により「完遂」するまでの描写が強化されていく感じ。

動詞 “follow” と内容がかぶるため、
元々の動詞とは異なる意味」を旨とする
句動詞の定義から外れる。

その反面、”follow through” の一貫性は理解しやすく、強みとなる。

中級学習者なら、英文の語釈もすっと把握できる。

“follow through”

■  to do what needs to be done to complete
something or make it successful.
(LDOCE6、ロングマン)

“follow through (with something)”
“follow something through

■  to finish something that you have started.
(OALD9、オックスフォード)

【発音】  ˈfɑːl.oʊ.θruː
【強勢(アクセント)】  fóllow thróugh  


◆  句動詞として、2つの意味があることは冒頭で触れた。

(1)  最後まで約束を守り通す

  • ”She failed to follow through on her commitment.”
    (彼女は約束を守らなかった。)
  • “The government did not follow through on policy promises.”
    (政府は方針の公約を守らなかった。)
  • “It is important to follow through all the rules.”
    (すべてのルールに従うことが大切である。)
  • “How to Follow Through on Your New Year’s Resolution”
    (新年の抱負を守り通す方法)
  • “To follow through is to take action that has been planned.”
    (遂行するとは、計画された行動を起こすことです。)

 

(2)  最後までやり抜く

  • “How to follow through with your marathon”
    (マラソンを完走する方法)
  • “My son wants to be a doctor.
    Hopefully, he will follow through.”
    (息子は医者になりたがっている。
    達成できればいいのですが。)
  • “Don’t just say it, let’s follow through on it.”
    (口先だけでなく、これをやり抜きましょう。)
  • “He never follows through to the end.”
    (彼は最後までやり抜いたことがない。)
  • “We will follow through on tougher background checks.”
    (より厳しい身元調査を遂行します。)

以上は、(1) と (2) の区別が比較的容易な文。

◆  続いて、応用編。

2019年8月~9月発表のニュースから抽出。

  • “US and China follow through on tariff threat”
    (米中が制裁関税を発動)
  • “The US administration wants China to follow through 
    on its promise to buy more US agricultural products.”
    (米国政府は、米農産物の購入量を増やすとの約束を
    守るよう中国に求めている。)
  • “China did not follow through on its plan to buy more
    American agricultural products.”
    (中国は米農産物の購入量を増やす計画を守らなかった。)
  • “UN Chief Appeals for Donors to Follow Through on
    Ebola Pledges”
    (国連事務総長、エボラ公約を守るよう援助団体に懇願)
  • “G7 should follow through with African aid promises.”
    (G7はアフリカ支援の約束を守るべきである。)
  • “President talks tough to adversaries –
    but doesn’t always follow through
    (敵に対して強気な発言をする大統領、
    だが遂行するとは限らない)

(1) か (2) か、迷いそうなものも含まれる。

しかし、両者の意味
は大同小異。
それほど神経質になる必要はない。
この点も、冒頭で述べた。

 

◆  本稿で挙げた用途は、日常会話及びビジネス場面である。

スポーツで使う “follow through” は、日英ともども有力らしい。
今回調べた英英・英和・国語辞典のすべてに載っていた。

名詞の初出は1869年。 ゴルフのスイングから始まった模様。

とんと不案内な分野なので、めぼしい語釈をそのままご紹介する。

  フォロースルー【follow-through】

■  野球・テニス・ゴルフなどで、打球の際、
最後まで振り切ること。
(精選版 日本国語大辞典)

■  [球技で]投球や打球のあと、うでをそのまま
ふりきる動作。
(三省堂国語辞典 第七版)

次いで、EFL辞典から2点。

“follow through”

■  phrasal verb with follow (verb)
to complete the movement of hitting, kicking, or 
throwing a ball by continuing to move your arm or 
leg in the same direction.
(CALD4、ケンブリッジ)

“follow-through”

■  noun [singular]
the continued movement of your arm after you 
have hit the ball in tennis, golf etc.
(LDOCE6、ロングマン)

※   [singular] は「単数名詞」のことで、
単数形で使われるのが一般的な名詞

【発音】  ˈfɑːl.oʊ.θruː
【強勢(アクセント)】  fóllow thróugh  

 

 

 

 

 

 

Sponsored Link




Jetpack

 - 英語, 英語フレーズ