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蔵書の「自炊」記録(7)

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こちらの 連載 でお伝えしたいのは、

  蔵書と自炊全般についての < 考え方 > 

である。

スペース維持の点では共通するものの、
いわゆる 「 断捨離 」 や 「 ミニマリスト 」、
さらに効率化を追求する 「 ライフハック
とは、 自炊の趣旨が大きく異なる。

スキャナーを使った具体的な自炊方法は、 写真満載の
他サイト  や  YouTube で存分に説明されている。

ハウツーを必要とされる方は、 上記リンクをご高覧ください。

 

◆  この連載の想定読者様とは  …

日常生活に本が欠かせない読書家、
及び多数の蔵書を要する職業に就く方々を、
主な読者層に想定している。

■  単なる「 娯楽 」を超えて、

「 読書 = 人生 」の

< 本読み > のための

本の付き合い方


を真剣に考察したい。


◆  本人以外には不用で、 処分に困るのが蔵書である。

蔵書は、 属人的 な性質が強い。

そのため、 蔵書に対する他者の理解は、 望むべくもないのかもしれない。

有名作家の死後、 貴重な蔵書が四散した例は枚挙に暇がない。

多くの場合、古本屋に引き取られるか、 廃棄処分されている。

これは、文学史が証明する事実( 史実 )である。

◆  作家の生前の資力や人気は、さほど関係ないらしい。

ほとんどのご遺族にとって、

大量の本は迷惑千万


文筆稼業を支えた道具なのに、 実に不条理な話である。

一部の作家の蔵書のみが、「 〇〇文庫 」 などと銘打ち、
大学や自治体に引き取られる。

このような幸運なケースとて、 永年死蔵される運命が
待ち構えていたりする。

利用者が少ない割に、 維持管理費がかさみ、 ありがた
迷惑ばりに邪険にされる「 〇〇文庫 」さえ少なくない。

総じて、 これが実態なのである。

 

【参考】    ※  外部サイト

 

◆  「 司馬遼太郎記念館 」( 東大阪市 )に収められた、
作家蔵書の活用事例は、 稀有な例外である。

高さ11メートルの書架に、約2万冊の蔵書


◆  2017年に発行された  紀田順一郎 ( 1935- )
の著書には、 蔵書3万冊を生前処分するに至った苦しい
事情が詳述されている。

鬼籍に入った知人作家の蔵書が散逸したことを慨嘆。

そして、 汗牛充棟 もただならぬ、 自身の大事な蔵書にも、
同じ運命が定まったことを、 受け入れざるない老境の悲哀。

読んでいて、 涙が出る

蔵書一代―なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか
紀田 順一郎(著)、 松籟社、 2017年刊


【参照】  蔵書の「自炊」記録(3)


◆  一般人の蔵書については、言を俟たない。

文化的価値や資産的価値はないに等しい。

もはや、  「 ゴミ 」扱い

そんなものに、 時間と大金をかける方がどうかしている。

「 くだらない 」

読書に親しまない人なら、 一笑に付しても無理はない。

 

◆  しかし、 他人の思惑など、 どうでもいい。

  < 本読み > が目指すべき は、

自分が読みたい本を

いつでも、 どこでも、 自由気ままに読める状態。


蔵書の 自己コントロール権を確保し、

読みたい時に、 好き放題、 読書を楽しむ。

生涯を通じて役立つ  ナレッジベース ( knowledge base )、

自分らしい 【 システム構築 】 である。

◇  手間隙かけて作った  自作の電子ライブラリ

→  読書家にとって
人生の支えとなりうる


若い頃から一緒に人生を歩んできた書物に、

温かく見守られている安心感と心地よさ。

切断しても 「 温もり 」 は消えなかった。


◆  自炊し、 電子化することで、 この取り組みの実効性は高まり、
将来の見通しを立てやすくなる。

万一の際の取り扱いについても、 電子データであれば、 心配無用

なぜなら、 電子データの性質上、「 古本の山 」 や 「 散逸 」
とは無縁だからである。

不要なら、即刻削除 できる。


  •  物理的スペースが不要だと、  ものすごく気楽
  •  引っ越しや地震の面で心強い
  •  保管場所の心配のない   解放感爽快感

 生きることが ぐっと楽に なった 


大げさではなく、  こんな気がする。

蔵書の後処理に他者を煩わせる旨の、 大懸念が払拭でき、

これで、いつでも死ねる …

相反するような安堵が胸に広がった。


これが
、 約 3,500冊 ( 2024年11月 現在 ) を自炊後の実感。

  この 「 さわやかな気分 」 こそ、
   電子化の最大級の利点     


あふれる蔵書に悩む < 本読み > の皆様に、
ぜひとも  味わっていただきたい快感である。

すがすがしいとしか言いようがない。

 

◆  自炊導入のポイント

 切断しても、支障のない本から 着手 


ほんの少しでも、気がかりな本は、 すべて対象外

例えば、「 温もり 」が薄まりそうな気がする愛読書は、 全部除外。

蔵書の  一部  を電子化するだけでも、 相当変わる。

 

◆  もし心理的に抵抗があるならば、 ご自分の蔵書ではなく、

1冊100円未満の古本を、 10冊ほど購入

して試してみるとよい。

専門業者に依頼しても、 ご自身でスキャンしてもOK。

自宅にスキャナー・裁断機がなければ、 レンタル業者
や 「 キンコーズ 」 などのビジネスセンターを活用する。

ネット検索すれば、簡単に調べられる。

◇  まずは、10冊くらい自炊してみて、様子を見よう。

  それから考え始めても、十分間に合う。

なんとなく感触を得たら、本腰を入れて検討すればよい。


◆  いずれの方法でも、お試し予算は1万円以内。

各種ノウハウは、ネット上に転がっている。

日本語の自炊解説書( 電子書籍含む )は、10冊以上、市販されている。

2010年から2023年までに、 10冊以上、 自ら読んだので、間違いない。
( 電子書籍も全部アマゾンで入手可能 )

国立国会図書館デジタルコレクション 」 もかなり参考になる。


発行当時の姿のまま、マイクロフィルム処理またはスキャン
されたものが、 インターネットで無料公開されている。

【例】
What is the significance of – ?  ”
の 『 哲学字彙 』( 1884年刊 )

 

「 マイ本棚 」 を持ち歩ける毎日は、
喜び >  と  自信 >  をもたらす。


なにより、楽しい。

日日是好日。

 

◆  私なりの結果と効果が、

  電子化した 「 マイ本棚 」 の成果物が、弊サイト 


【参照】

・  「 Gmail 」で作る単語帳 
・  英語辞書は「 紙 」か「 電子版 」か
・  辞書の「 自炊 」と辞書アプリ

◆  蔵書の氾濫に困りつつ、 ゆえあって処分できない
< 本読み > の皆様には、

自炊の  一部導入  をおすすめしたい。



きっと人生と読書生活が、 もっと愉快になります。

◇  この連載は今後も続きます。

< 蔵書の「自炊」記録 >  連載一覧

 

 

 

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