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What is the significance of - ?

      2024/03/01

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 8 minutes

~  の意義とは、何か。

事物の目的や価値を問う際に用いる表現。

堅めで知的な言い回し である。

” of ”  の後に、 意義を知りたい目的を置く。

” significance ”  の定訳は「 意義 」。

「 意義 」 の響きも堅めで知的。

語感が似通うばかりでない。

両者の使用場面は重なる場合が多い。

その対象にどんな意義があるのか。

真剣な考察を促す典型表現である。

時事・学術をはじめ、 多岐に渡る分野の評論・
論文でも、よく起用される。

教材でも見かける。

検索 かけても、 わんさか出てくる。

◆  ” What is the significance of – ”  は、

意義を  明らかにする  ためだけの表現ではない。

襟を正し、 再検討を提起するためにも役立つ。

事業では特に、 目的や価値を見直す機会を設けることで、
立ち止まって三思し、 結果的に軌道修正できたりする。

新規まき直し  の必要性に気づくケースもある。

他者に直接質す場面のみならず、
自問・自省する内容の手記やエッセイにも使える。

つまり、 筆舌不問かつ自他不問。
さらに、 公私不問だから強い。

時に、 四角四面すぎて、 うっとうしい弱みを帯びる
ものの、 仕事とプライベートで重宝するに違いない。

ぜひ、 押さえておきたい。


◆  表現のポイントは、名詞 ” significance “。

先述の通り「 意義 」が定訳。

  いぎ【意義】

■  1. ある言葉によって表される内容
特に、その言葉に固有の内容概念
2.物事が他との関連において固有にもつ価値重要性

( 大辞林 第四版 )


■  《名》
1. 言葉などの表現によってあらわされる意味内容
2. 言葉、事柄、行為などが現実にもつ価値ねうち
多く、重要なものをいうのに用いる

( 精選版 日本国語大辞典 )


■  1. 意味。わけ。言語学では、特に「意味」と区別
して「一つの語が文脈を離れてもさし得る内容」の意
に使うこともある。
2. 物事が他との連関において持つ価値重要さ

( 広辞苑 第七版 )

 

■  (名)
1.  それ( をする/がある )ことで生まれる、すぐれた価値
2.  〔文〕 ことばの意味

( 三省堂国語辞典 第八版 )

 

■  《名》
1.  記号(特に、ことば)の表す内容。 意味。
2.  物事の持つ価値重要性。 意味。

( 明鏡国語辞典 第三版 )


◆  国語辞典5点の語釈は、きれいに二分されている。

表題  ” What is the significance of – ? ” の 日常用法では、
特定の言葉の意味・概念など聞いていない  のが一般的。

主な趣旨は、「 語意 」「 語義 」ではなく、
以下を確かめること。

  •  価値
  •  重要性
  •  ねうち

語釈の青ハイライト部に該当する。

高等教育における研究では、「 語意 」「 語義 」で
用いることもあるが、ビジネス用途やプライベート
であれば、大抵は「 価値 」や「 重要性 」で。

私たち英語学習者は、「その言葉の意味は?」という風
に使えるが、一般社会ではやはり後者中心。

「 語意 」の例として、

  • What is the significance of the word “Amen”
    in a prayer ?
    (お祈りで唱える「アーメン」の意義は何でしょう。)
  • What is the significance of the word ” KY ” ?
    (「KY」ってどういう意味でしょうか。)

いずれも難なく通じるが、” significance ” は御大層で場違いな感がある。

なんとなく仰々しいのである。

「 KYって何?」なら、 次の聞き方の方がずっと自然。

  •  What does the word ” KY ” mean  ?
  •  What does ” KY ” stand for  ?

単なる意味の確認に、” significance ” が飛び出すと、
聞かれた側もきっと身構えてしまう。


◆  日本語でも「 意義 」と大上段に振りかぶるより、
「 どんな意味ですか? 」くらいが普通だろう。

ここで、上掲の国語辞典の補足説明をご案内。

「 意味 」と「 意義 」の違いを、上述の各語釈直後に記す。

  いぎ【意義】

■  〔 2.  類義の語に「意味」があるが、「意味」は言語や
行為によって示される内容、また物事が持つ価値をいう。
それに対し、「意義」はある言葉が表す内容、また、物事
他の物との関係において持つ固有の重要な価値をいう 〕

( 大辞林 第四版 )



■   
1. 「意味」のほうが用法が広く、かつ一般的
(「意味する・ある意味で」などの言い方は「意義」にはない)。
「意義」は文脈を離れても成立する抽象的内容、
「意味」は文脈的・具体的内容を表す傾向がある。
2. 「意味」よりも改まった言い方

( 明鏡国語辞典 第三版 )


先の『 精選版 日本国語大辞典 』にも「 重要なものをいう 」
( 赤ハイライト )とあったが、補足説明でも
「 重要 」がキーワード。

繰り返すと、表題の  ” significance ” では、「 語意 」「 語義 」よりは、

  •  価値
  •  重要性
  •  ねうち

 

◆  4大学習英英辞典( EFL辞典 )の語釈はこちら。

significance

■  noun  [singular, uncountable]
1.  the importance of an event, action etc, 
especially because of the effects or influence 
it will have in the future.
2.  the meaning of a word, sign, action etc,
especially when this is not immediately clear.

( LDOCE6、ロングマン )

 

■  noun [uncountable, countable]
1.  the importance of something, especially when
this has an effect on what happens in the future.
2.  the meaning of something.

( OALD9、オックスフォード )

 

■  noun [uncountable]
1.  importance
2.  special meaning

( CALD4、ケンブリッジ )

 

■  noun [uncountable]
The significance of something is the importance
that is has, usually because it will have an effect
on a situation or show something about a situation.

( COBUILD9、コウビルド )

 

【発音】  signífikəns
【音節】  sig-nif-i-cance  (4音節)


英英4点のうち、COBUILD以外の語釈もまた二分
されている。

再び、共通キーワードにハイライト。
先ほどの国語辞典とかなり似通った中身である。

着目すべきは、英英語釈(1)” importance ” と
(2)” meaning ” は、 国語辞典5点と 順序が真逆
に近い点。

つまり、EFL辞典の語釈(1)は、過半の国語辞典の(2)に該当 。

COBUILDに至っては、” meaning ”  = 「 語意 」「 語義 」
の解説は一切省かれている。

語義の配列は、各辞書の編集方針に従う。

学習者向けに特化されたEFL辞典は、発生順ではなく、
使用頻度順 に語義が並ぶのが基本。

【参照】  ” just checking in

したがって、配列の先立つ語釈こそ、頻出度は高い。

4大EFL辞典すべてが、 ” importance ”  = 「 重要性 」 を優先する。

” meaning ”  = 「 語意 」「 語義 」より重視していると考えられる。


◆  もっとも、英単語全体における ” significance ” の
位置づけはそれほど高くはない。

” LDOCE6 ” の指標によれば、名詞 ” significance ” は、

  • 重要 :<3001~6000語以内>
  • 書き言葉の頻出:3000語圏外
  • 話し言葉の頻出:3000語圏外

    【発音】  signífikəns
    【音節】  sig-nif-i-cance  (4音節)

形容詞 ” significant ” の方が、重要度も頻出度も上回る。

  • 重要最上位 <トップ3000語以内>
  • 書き言葉の頻出最上位 <トップ1000語以内>
  • 話し言葉の頻出:<1001~2000語以内>

    【発音】  signífikənt
    【音節】  sig-nif-i-cant  (4音節)

“This post was significantly revised in 2023.”
( この投稿は2023年に大幅に改定された。)

—–【発音】  signífikəntly
—–【音節】  sig-nif-i-cant-ly (5音節)

◆  ” significance ” が名詞である点に争いはない。

しかし、「 可算名詞 」「 不可算名詞 」「 単数名詞 」に
論が分かれることが、上記EFL辞典より分かる。

決して珍しくない辞典間のばらつきである。

単数名詞( singular noun )とは、
単数形で使われるのが一般的な名詞

その他の辞書を調べても、「 不可算名詞 」だけは
記載があった。

ゆえに、” significance ” の原則は「 不可算名詞
と考えられる。


◆  加えて、英和辞典4点をチェック。

significance

  不可算名詞
1.  ((正式)) 意義、意味(meaning);意味ありげなこと
2.  重要性、重大さ《importance より堅い語》
3.  《統計》有意性

ジーニアス英和大辞典

 

  名詞
1.  重要性大切さ重大さ(   importance SYN)
2.  意味のあること;意味[いわく]ありげなこと、
意味深長(expressiveness、meaningfulness、suggestiveness)
3.  意味、意義(meaning)、趣旨(import)(   meaning SYN)
4.  【統計】 有意性

研究社 新英和大辞典 第6版 )

 

  名詞
1.  重要さ、重大性(   importance 類語)
2.  意味、意義、趣旨(   meaning 類語)
意味深長(expressiveness、meaningfulness、suggestiveness)
3. (1)意味のあること;<表情などが>意味ありげなこと、
意味深いこと
(2)《統計》有意性

ランダムハウス英和大辞典 第2版

 

■  名詞
重要性( importance )、重大性意味、意義、趣旨
意味あること、意味深長;《統計上の》有意(性)

リーダーズ英和辞典 第3版+リーダーズプラス

 

【発音】  signífikəns
【音節】  sig-nif-i-cance  (4音節)

※  SYN  =  synonym  =  同義語


これまで通り、ざっと色分けしてみた。

EFL辞典と異なり、語義の配列にばらつきが見られる。

それでも、国語辞典、EFL辞典に見られた語釈2つは
明記されている。


◆  本稿では、国語5点、EFL4点、英和4点の合計13冊の
辞書比較をしてきた。

引用した全辞書は、 アプリ版 も発売中。

※  2024年3月 現在

それなりに需要があることを示唆している。

とりわけ、 EFLと英和の各4点は、 中級学習者 なら、
一度は見聞きしたことのある定番辞書である。

  ” significance ”  = 「 意義 」  と、 定訳が 確立している
ために、 各語釈を 突き合わせる 作業に紙幅を費やしてきた。

語釈が相当似ていると感じるが、 いかがだろう。


◆  ” significance ”  の語源は、 ラテン語  ” significantia ” で、
「 意味 」 「 真意 」のこと。

初出は13~14世紀。

一方、 日本語「 意義 」 の 「 重要性 」 については、
日本最初の哲学辞典である 『 哲学字彙 』 ( 1881年刊 ) が、

「  Import   意義、 旨趣  」 と示す。

※  後述

「 定訳 」 と称するに、 ふさわしい重なり具合なのも、
当然な感がある。


◆  仕上げは文法。    難しくない。

  •  疑問代名詞  ” what ” ( 何 )
  •  be動詞  ” is ” ( である )
    ※  人称 数 直説法 在形
    →  通称 「 三単現 ( さんたんげん ) 」
  •  定冠詞  ” the ” ( その )
  •  名詞  ” significance ” ( 意義 )
  •  前置詞  ” of ” ( ~ の )
    ※  所属関係


” of ” に続く目的語を指し、「 ~ のその意義は何であるか 」が直訳。

複数の「 意義 」が存在する場合、不定冠詞を用いて、
a significance ” と表す使い方もある。

すなわち、可算または単数名詞扱いの  “ significance ” である。

ところが、表題では、あたかも詰問するかのように 追及の上、
以下をはっきりさせるのが主目的。

  •  価値
  •  重要性
  •  ねうち

これらがいくつも存在するのは妙。

よって、文脈上限定的となり、定冠詞 ” the ” 。


◆  最後に、今月2019年4月に発表された見出しをご紹介。

主にQ&A( 質疑応答 )サイトと個人ブログから採集したもの。

「 意義とは何ぞや 」の問いかけは事々しい。
ヘッドラインとしては、なかなか出番がない模様。

今月のニュース見出しを飾った形跡は見当たらない。
これといってめぼしい記事は見つからなかった。

 

Credit : Event Horizon Telescope collaboration et al.
参考記事 : ノーベル物理学賞、ブラックホール研究の3氏に

  • “What is the significance of the black hole ? ”
    (ブラックホールの意義とは何か。)
  • “What Is The Significance Of Social Media
    In Digital Marketing ? ”
    (デジタルマーケティングにおけるソーシャルメディア
    の意義とは何か。)
  • “What Is the Significance of the Baptism of Jesus Christ ? ”
    (キリストの洗礼の意義とは何か。)
  • “What is the significance of pi in mathematics”
    (数学のパイの意味は何か。)
  • “What is the significance of the atomic number, Z ? ”
    (原子番号の「Z」の意味は何か。)


例文5つのうち、最後の2文はEFL辞典の語義(2)に属する。

すなわち、” meaning ”  = 「 語意 」「 語義 」

既に ” Amen ” と ” KY ” を引き合いに出して、解説を試みたものの、
あえて焦点より外した用法である。

Q&Aサイトから引用したため、こうなってしまった。


◆  これでは示しがつかない。

埋め合わせに、普遍的で大味な問いを掲げ、
しかつめ顔にて本稿を締めたい。

  • “What is the significance of life ? ”
    (人生の意義とは何か。)
  • “What is the significance of education ? ”
    (教育の意義とは何か。)
  • “What is the significance of democracy in society ? ”
    (社会における民主主義の意義とは何か。)
  • “What is the significance of my job in my life ? ”
    (我が人生における仕事の意義とは何か。)
  • “What is the significance of learning English in your life ? ”
    (ご自分の人生において、英語を学ぶ意義とは何か。)

 

◆  ご参考までに、本稿で引用した辞書の見所を並べてみる。

まず、日本最大の国語辞典の名を誇る『 日国 』がこちら。

前出の『 精選版 日本国語大辞典 』の本家本元( 全13巻+別巻 )である。

『 精選版 』の記述に加え、「 語源 」と「 用例 」が詳しい。

「 意義 」全文。

日本国語大辞典 第二版 』 第1巻、 p. 856.
小学館 ( 2000年刊 ) より転載


上記傍線の 『 哲学字彙 』( てつがくじい ) は、 以下

国立国会図書館デジタルコレクション 」 にて。

1884年( 明治17年 )刊の改訂増補版。

奥付 

 

「 Meaning   義理  旨趣  旨意  意義 」

 

「 Import   意義  旨趣 」
「 Important   重大  緊要 」

 

「 Significance   旨趣 」

 

哲学字彙 改訂増補

井上哲次郎、 有賀長雄 (著)
東洋館、 1884年刊
https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000001-I000001240968-00


◇  国立国会図書館蔵書   NDLデジタルコレクション
『 哲学字彙 改訂増補 』
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/994560/1

 

※  傍線は引用者


マイクロフィルムとはいえ、 外観は 「 自炊本 」 の仲間。

1880年代に出版されたためか、 やや読みづらい。

インターネットで無料公開されており、 感謝千万。

◆  日本最大の国語辞典をご案内したとなれば、
世界最大の英語辞典もご覧に入れたくなってくる。

“ The Oxford English Dictionary ”  の  “ significance ” 全文。

併せて ” significant ” も。

◇  名詞  significance ”  / signífikəns /  sig-nif-i-cance (4音節) 

“Significance.”  The Oxford English Dictionary.  2nd ed. 1989.

 

◇  形容詞  significant ”  / signífikənt /  sig-nif-i-cant (4音節)

“Significant.”  The Oxford English Dictionary.  2nd ed. 1989.


◆  “ OED “ ( オーイーディー ) の略称で名高いのが、 上の
“ The Oxford English Dictionary ” ( オックスフォード英語辞典 )。

[ 公式サイト ]  →  http://www.oed.com/

1884年にイギリスで刊行が始まり、 最新版の第2版は1989年刊。

全20巻、 2万1730頁、 29万1500の見出し語、 62kg。

語義の配列は、 頻出順ではなく、 発生順の 「 歴史主義 」。

成り立ちを、 系統的にたどれる利点がある。

▼ 「 縮刷版 」 及び 「 CD-ROM版 」 も発売されている  ▼

[ 両方入手済み ]  →  辞書の「自炊」と辞書アプリ

“ OED ”  編集主幹の  James Murray  博士 ( 1837-1915 )
については、 ” in place ” で触れている ( 写真入り )。

 

 

 

 

 

 

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