What is the significance of - ?
2024/11/01
~ の意義とは、何か。
事物の目的や価値を問う際に用いる表現。
堅めで知的な言い回し である。
” of ” の後に、 意義を知りたい目的を置く。
” significance ” の定訳は「 意義 」。
「 意義 」 の響きも堅めで知的。
語感が似通うばかりでない。
両者の使用場面は重なる場合が多い。
その対象にどんな意義があるのか。
真剣な考察を促す典型表現である。
時事・学術をはじめ、 多岐に渡る分野の評論・
論文でも、よく起用される。–
教材でも見かける。
検索 かけても、 わんさか出てくる。
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◆ ” What is the significance of – ” は、
意義を 明らかにする ためだけの表現ではない。
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襟を正し、 再検討を提起するためにも役立つ。
ー
事業では特に、 目的や価値を見直す機会を設けることで、
立ち止まって三思し、 結果的に軌道修正できたりする。
新規まき直し の必要性に気づくケースもある。
他者に直接質す場面のみならず、
自問・自省する内容の手記やエッセイにも使える。
つまり、 筆舌不問かつ自他不問。
さらに、 公私不問だから強い。
時に、 四角四面すぎて、 うっとうしい弱みを帯びる
ものの、 仕事とプライベートで重宝するに違いない。
ぜひ、 押さえておきたい。
ー
ー
◆ 表現のポイントは、名詞 ” significance “。
ー
先述の通り「 意義 」が定訳。
いぎ【意義】
■ 1. ある言葉によって表される内容。
特に、その言葉に固有の内容・概念。
2.物事が他との関連において固有にもつ価値や重要性。
( 大辞林 第四版 )
ー
■ 《名》
1. 言葉などの表現によってあらわされる意味、内容。
2. 言葉、事柄、行為などが現実にもつ価値。 ねうち。
多く、重要なものをいうのに用いる。
( 精選版 日本国語大辞典 )
ー
■ 1. 意味。わけ。言語学では、特に「意味」と区別
して「一つの語が文脈を離れてもさし得る内容」の意
に使うこともある。
2. 物事が他との連関において持つ価値・重要さ。
( 広辞苑 第七版 )
■ (名)
1. それ( をする/がある )ことで生まれる、すぐれた価値。
2. 〔文〕 ことばの意味。
( 三省堂国語辞典 第八版 )
■ 《名》
1. 記号(特に、ことば)の表す内容。 意味。
2. 物事の持つ価値や重要性。 意味。
( 明鏡国語辞典 第三版 )
–
◆ 国語辞典5点の語釈は、きれいに二分されている。
表題 ” What is the significance of – ? ” の 日常用法では、
特定の言葉の意味・概念など聞いていない のが一般的。
主な趣旨は、「 語意 」「 語義 」ではなく、
以下を確かめること。
- 価値
- 重要性
- ねうち
語釈の青ハイライト部に該当する。
高等教育における研究では、「 語意 」「 語義 」で
用いることもあるが、ビジネス用途やプライベート
であれば、大抵は「 価値 」や「 重要性 」で。
私たち英語学習者は、「その言葉の意味は?」という風
に使えるが、一般社会ではやはり後者中心。
「 語意 」の例として、
- What is the significance of the word “Amen”
in a prayer ?
(お祈りで唱える「アーメン」の意義は何でしょう。)
ー - What is the significance of the word ” KY ” ?
(「KY」ってどういう意味でしょうか。)
いずれも難なく通じるが、” significance ” は御大層で場違いな感がある。
なんとなく仰々しいのである。
「 KYって何?」なら、 次の聞き方の方がずっと自然。
- What does the word ” KY ” mean ?
- What does ” KY ” stand for ?
単なる意味の確認に、” significance ” が飛び出すと、
聞かれた側もきっと身構えてしまう。
ー
ー
◆ 日本語でも「 意義 」と大上段に振りかぶるより、
「 どんな意味ですか? 」くらいが普通だろう。
ここで、上掲の国語辞典の補足説明をご案内。
「 意味 」と「 意義 」の違いを、上述の各語釈直後に記す。
–
いぎ【意義】
■ 〔 2. 類義の語に「意味」があるが、「意味」は言語や
行為によって示される内容、また物事が持つ価値をいう。
それに対し、「意義」はある言葉が表す内容、また、物事
が他の物との関係において持つ固有の重要な価値をいう 〕
( 大辞林 第四版 )
ー
■ 1. 「意味」のほうが用法が広く、かつ一般的
(「意味する・ある意味で」などの言い方は「意義」にはない)。
「意義」は文脈を離れても成立する抽象的内容、
「意味」は文脈的・具体的内容を表す傾向がある。
2. 「意味」よりも改まった言い方。
( 明鏡国語辞典 第三版 )
–
先の『 精選版 日本国語大辞典 』にも「 重要なものをいう 」
( 赤ハイライト )とあったが、補足説明でも「 重要 」がキーワード。
繰り返すと、表題の ” significance ” では、「 語意 」「 語義 」よりは、
- 価値
- 重要性
- ねうち
◆ 4大学習英英辞典( EFL辞典 )の語釈はこちら。
–
” significance “
■ noun [singular, uncountable]
1. the importance of an event, action etc,
especially because of the effects or influence
it will have in the future.
2. the meaning of a word, sign, action etc,
especially when this is not immediately clear.
( LDOCE6、ロングマン )
■ noun [uncountable, countable]
1. the importance of something, especially when
this has an effect on what happens in the future.
2. the meaning of something.
( OALD9、オックスフォード )
■ noun [uncountable]
1. importance
2. special meaning
( CALD4、ケンブリッジ )
■ noun [uncountable]
The significance of something is the importance
that is has, usually because it will have an effect
on a situation or show something about a situation.
( COBUILD9、コウビルド )
【発音】 signífikəns
【音節】 sig-nif-i-cance (4音節)
–
英英4点のうち、COBUILD以外の語釈もまた二分
されている。
再び、共通キーワードにハイライト。
先ほどの国語辞典とかなり似通った中身である。
着目すべきは、英英語釈(1)” importance ” と
(2)” meaning ” は、 国語辞典5点と 順序が真逆
に近い点。
つまり、EFL辞典の語釈(1)は、過半の国語辞典の(2)に該当 。
COBUILDに至っては、” meaning ” = 「 語意 」「 語義 」
の解説は一切省かれている。
語義の配列は、各辞書の編集方針に従う。
学習者向けに特化されたEFL辞典は、発生順ではなく、
使用頻度順 に語義が並ぶのが基本。
ー
【参照】 ” just checking in ”
ー
したがって、配列の先立つ語釈こそ、頻出度は高い。
4大EFL辞典すべてが、 ” importance ” = 「 重要性 」 を優先する。
” meaning ” = 「 語意 」「 語義 」より重視していると考えられる。
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ー
◆ もっとも、英単語全体における ” significance ” の
位置づけはそれほど高くはない。
ー
” LDOCE6 ” の指標によれば、名詞 ” significance ” は、
- 重要度 :<3001~6000語以内>
- 書き言葉の頻出度:3000語圏外
- 話し言葉の頻出度:3000語圏外
–
【発音】 signífikəns
【音節】 sig-nif-i-cance (4音節)
形容詞 ” significant ” の方が、重要度も頻出度も上回る。
- 重要度 :最上位 <トップ3000語以内>
- 書き言葉の頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
- 話し言葉の頻出度:<1001~2000語以内>
–
【発音】 signífikənt
【音節】 sig-nif-i-cant (4音節)
“This post was significantly revised in 2023.”
( この投稿は2023年に大幅に改定された。)
—–【発音】 signífikəntly
—–【音節】 sig-nif-i-cant-ly (5音節)
–
◆ ” significance ” が名詞である点に争いはない。
–
しかし、「 可算名詞 」「 不可算名詞 」「 単数名詞 」に
論が分かれることが、上記EFL辞典より分かる。
決して珍しくない辞典間のばらつきである。
単数名詞( singular noun )とは、
単数形で使われるのが一般的な名詞。
その他の辞書を調べても、「 不可算名詞 」だけは
記載があった。
ー
ゆえに、” significance ” の原則は「 不可算名詞 」
と考えられる。
ー
ー
◆ 加えて、英和辞典4点をチェック。
–
” significance “
■ 不可算名詞
1. ((正式)) 意義、意味(meaning);意味ありげなこと
2. 重要性、重大さ《importance より堅い語》
3. 《統計》有意性
( ジーニアス英和大辞典 )
■ 名詞
1. 重要性、大切さ、重大さ( → importance SYN)
2. 意味のあること;意味[いわく]ありげなこと、
意味深長(expressiveness、meaningfulness、suggestiveness)
3. 意味、意義(meaning)、趣旨(import)( → meaning SYN)
4. 【統計】 有意性
( 研究社 新英和大辞典 第6版 )
■ 名詞
1. 重要さ、重大性( → importance 類語)
2. 意味、意義、趣旨( → meaning 類語)
意味深長(expressiveness、meaningfulness、suggestiveness)
3. (1)意味のあること;<表情などが>意味ありげなこと、
意味深いこと
(2)《統計》有意性
( ランダムハウス英和大辞典 第2版 )
■ 名詞
重要性( importance )、重大性;意味、意義、趣旨;
意味あること、意味深長;《統計上の》有意(性)
【発音】 signífikəns
【音節】 sig-nif-i-cance (4音節)
※ SYN = synonym = 同義語
–
これまで通り、ざっと色分けしてみた。
EFL辞典と異なり、語義の配列にばらつきが見られる。
それでも、国語辞典、EFL辞典に見られた語釈2つは
明記されている。
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◆ 本稿では、国語5点、EFL4点、英和4点の合計13冊の
辞書比較をしてきた。
引用した全辞書は、 アプリ版 も発売中。
※ 2024年11月 現在
それなりに需要があることを示唆している。
とりわけ、 EFLと英和の各4点は、 中級学習者 なら、
一度は見聞きしたことのある定番辞書である。
” significance ” = 「 意義 」 と、 定訳が 確立している
ために、 各語釈を 突き合わせる 作業に紙幅を費やしてきた。
語釈が相当似ていると感じるが、 いかがだろう。
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◆ ” significance ” の語源は、 ラテン語 ” significantia ” で、
「 意味 」 「 真意 」のこと。
初出は13~14世紀。
一方、 日本語「 意義 」 の 「 重要性 」 については、
日本最初の哲学辞典である 『 哲学字彙 』 ( 1881年刊 ) が、
「 Import 意義、 旨趣 」 と示す。
※ 後述
「 定訳 」 と称するに、 ふさわしい重なり具合なのも、
当然な感がある。
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◆ 仕上げは文法。 難しくない。
- 疑問代名詞 ” what ” ( 何 )
– - be動詞 ” is ” ( である )
※ 三人称 単数 直説法 現在形
→ 通称 「 三単現 ( さんたんげん ) 」
– - 定冠詞 ” the ” ( その )
– - 名詞 ” significance ” ( 意義 )
– - 前置詞 ” of ” ( ~ の )
※ 所属関係
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” of ” に続く目的語を指し、「 ~ のその意義は何であるか 」が直訳。
複数の「 意義 」が存在する場合、不定冠詞を用いて、
” a significance ” と表す使い方もある。
すなわち、可算または単数名詞扱いの “ significance ” である。
ところが、表題では、あたかも詰問するかのように 追及の上、
以下をはっきりさせるのが主目的。
- 価値
- 重要性
- ねうち
これらがいくつも存在するのは妙。
よって、文脈上限定的となり、定冠詞 ” the ” 。
ー
ー
◆ 最後に、今月2019年4月に発表された見出しをご紹介。
主にQ&A( 質疑応答 )サイトと個人ブログから採集したもの。
「 意義とは何ぞや 」の問いかけは事々しい。
ヘッドラインとしては、なかなか出番がない模様。
今月のニュース見出しを飾った形跡は見当たらない。
これといってめぼしい記事は見つからなかった。
Credit : Event Horizon Telescope collaboration et al.
参考記事 : ノーベル物理学賞、ブラックホール研究の3氏に
–
- “What is the significance of the black hole ? ”
(ブラックホールの意義とは何か。)
ー - “What Is The Significance Of Social Media
In Digital Marketing ? ”
(デジタルマーケティングにおけるソーシャルメディア
の意義とは何か。)
ー - “What Is the Significance of the Baptism of Jesus Christ ? ”
(キリストの洗礼の意義とは何か。)
ー - “What is the significance of pi in mathematics”
(数学のパイの意味は何か。)
ー - “What is the significance of the atomic number, Z ? ”
(原子番号の「Z」の意味は何か。)
ー
例文5つのうち、最後の2文はEFL辞典の語義(2)に属する。
すなわち、” meaning ” = 「 語意 」「 語義 」。
既に ” Amen ” と ” KY ” を引き合いに出して、解説を試みたものの、
あえて焦点より外した用法である。
Q&Aサイトから引用したため、こうなってしまった。
ー
ー
◆ これでは示しがつかない。
埋め合わせに、普遍的で大味な問いを掲げ、
しかつめ顔にて本稿を締めたい。
- “What is the significance of life ? ”
(人生の意義とは何か。)
– - “What is the significance of education ? ”
(教育の意義とは何か。)
– - “What is the significance of democracy in society ? ”
(社会における民主主義の意義とは何か。)
– - “What is the significance of my job in my life ? ”
(我が人生における仕事の意義とは何か。)
– - “What is the significance of learning English in your life ? ”
(ご自分の人生において、英語を学ぶ意義とは何か。)
◆ ご参考までに、本稿で引用した辞書の見所を並べてみる。
前出の『 精選版 日本国語大辞典 』の本家本元( 全13巻+別巻 )である。
『 精選版 』の記述に加え、「 語源 」と「 用例 」が詳しい。
「 意義 」全文。
–
『 日本国語大辞典 第二版 』 第1巻、 p. 856.
小学館 ( 2000年刊 ) より転載
–
上記傍線の 『 哲学字彙 』( てつがくじい ) は、 以下
「 国立国会図書館デジタルコレクション 」 にて。
1884年( 明治17年 )刊の改訂増補版。
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奥付 ↑
「 Meaning 義理 旨趣 旨意 意義 」 ↑
「 Import 意義 旨趣 」 ↑
「 Important 重大 緊要 」 ↑
「 Significance 旨趣 」 ↑
『 哲学字彙 改訂増補 』
井上哲次郎、 有賀長雄 (著)
東洋館、 1884年刊
https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000001-I000001240968-00
◇ 国立国会図書館蔵書 NDLデジタルコレクション
『 哲学字彙 改訂増補 』
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/994560/1
※ 傍線は引用者
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マイクロフィルムとはいえ、 外観は 「 自炊本 」 の仲間。
1880年代に出版されたためか、 やや読みづらい。
インターネットで無料公開されており、 感謝千万。
–
- 個人向けデジタル化資料送信サービス ( 個人送信 )
https://www.ndl.go.jp/jp/use/digital_transmission/individuals_index.html
※ 2022年5月開始 ↓
–
法改正で実現した国会図書館のウェブサービスがコロナ禍でヒット
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20221025/se1/00m/020/057000c
2022年10月13日付
– - 国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/
–
◆ 日本最大の国語辞典をご案内したとなれば、
世界最大の英語辞典もご覧に入れたくなってくる。
“ The Oxford English Dictionary ” の “ significance ” 全文。
併せて ” significant ” も。
–
◇ 名詞 “ significance ” / signífikəns / sig-nif-i-cance (4音節)
“Significance.” The Oxford English Dictionary. 2nd ed. 1989.
◇ 形容詞 “ significant ” / signífikənt / sig-nif-i-cant (4音節)
“Significant.” The Oxford English Dictionary. 2nd ed. 1989.
–
◆ “ OED “ ( オーイーディー ) の略称で名高いのが、 上の
“ The Oxford English Dictionary ” ( オックスフォード英語辞典 )。
–[ 公式サイト ] → http://www.oed.com/
1884年にイギリスで刊行が始まり、 最新版の第2版は1989年刊。
全20巻、 2万1730頁、 29万1500の見出し語、
語義の配列は、 頻出順ではなく、 発生順の 「 歴史主義 」。
成り立ちを、 系統的にたどれる利点がある。
▼ 「 縮刷版 」 及び 「 CD-ROM版 」 も発売されている ▼
–[ 両方入手済み ] → 辞書の「自炊」と辞書アプリ
“ OED ” 編集主幹の James Murray 博士 ( 1837-1915 )
については、 ” in place ” で触れている ( 写真入り )。