~のために、特に努力する
率先して他者を助け、よい結果をもたらした
人を称賛する時に多用される決まり文句。
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まれに、嫌味に使われることがある
自分で自分の身を助ける努力にも使うが、
他者支援について使われる場合が圧倒的多数。
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自助を称える機会が少ないせいでもある。
自分以外への奉仕の称揚が主な使用場面。
その結果、口頭が目立つが、文面でも使える。
■ “go out of your way to do something“
to do something with more effort than
is usual or expected.
(ロングマン、LDOCE6)
■ “go out of one’s way”
make a special effort to do something.
(オックスフォード)
■ “go out of your way”
to try especially hard to do something
good or helpful.
(ケンブリッジ、Academic Content Dictionary)
上記のように、3大EFL辞典系列の語釈は似通う。
所有格にばらつきがあるが、ここは任意。
表題では、所有格の代表形として “one’s” にした。
■ “one’s” には、通常は人称代名詞の
所有格を入れる。
すなわち、次のいずれか。
- my 私の
- your あなたの
- his 彼の
- her 彼女の
- their 彼らの
- our 我々の
- its それの
“one’s” は、所有格の代表形として、
辞書などで起用される。
具体的には、不定代名詞 “one” の所有格が “one’s”。
上記の所有格を代表する。
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いわば、所有格のワイルドカードとして使われる。
また、”to do something” の記載位置が、項目と語釈
に分かれているものの、実質同然なので問題外。
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◆ この表現のポイントは、赤字部分。
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とりわけ、下線部の形容詞 “more” と “special”、
さらに副詞 “especially”。
3つとも<普段以上>の意味合いなので、格別な
努力が欠かせない表現であることを示す。
通常レベルの努力は対象外ということ。
主用途は賛美なので、当然かもしれない。
<普段以上>がどの程度かも一概には言えず、
当人の置かれた立場次第。
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◆ “go out of one’s way to – ” は、所有格を除くと、
基礎単語5語で構成されている。
5語すべてが、英単語として最頻出かつ最重要。
口語・文面とも、頻出度は<トップ1000語以内>。
重要度も<トップ3000語以内>。
どれも最高ランクの位置づけにある。
(ロングマン、LDOCE6 の表記より)
基礎単語ばかりだから、解釈も容易なはず。
しかし、そうでもない。
それゆえに、本稿で取り上げている。
- 自動詞 “go“(出る)
- 副詞 “out“(外に)
- 分離の前置詞 “of“(~から)
- <所有格 ○○>
- 名詞 “way“(道)
- 目的の前置詞 “to“(~のために)
直訳は「~のために、○○の道から外に出る」
中級以上の英語力があれば、すぐ分かる。
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◆ では、なぜこれが「~のために、特に努力する」
を意味するのか。
まずは、単語と文法を見ていこう。
ここでの所有格○○(one’s)は、”way” の持ち主のこと。
例えば、
“his way” であれば「彼の道」。
“your way” であれば「あなたの道」。
無生物でもよい(例文参照)。
名詞 “way” には、可算と不可算がある。
基本は可算名詞。
不可算になる(※)のは、具体的な「道路」でなく、
抽象的な「進路」「進行」。
※ 英英辞書によっては、どちらも可能とする
ここでは、単純な「道」で可算と考えられるが、
解釈は分かれている。
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もっとも、代名詞に続くフレーズのため、冠詞を考慮する
必要はなく、可算・不可算は大きな問題ではない。
また、”go out of one’s way to – ” では、
所有格の単複不問で、単数 “way” が通例。
実例を調べると、”their ways” や “our ways” も
結構見かける。
【名詞 “way” 例】
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・”Have it your way.“
・ “We parted ways.”
・ “Learn – the hard way”
・ “Way to go ! ”
・ “No way ! ”
–
“to” は、目的の前置詞(~のために)。
先の “to do something” で「何かをするために」。
「道から外に出る」理由を “to” に続けて述べる。
自動詞 “go” の語形変化は、
goes – going – went – gone。
内容に応じて “go” を変化させる。
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◆ 次に、文面を検討する。
「○○の道から外に出る」が「特に努力する」
を意味するのは、本来の道から外れることには、
プラスアルファな動機が必要となるから。
普通なら自分のことだけ考えて、自分の道のみ
追求する方が、手間隙いらずである。
その道を外れるには、相当の手間隙に加え、
意欲も勇気も必要。
つまり、動機が確かなものでなければ、自分
の道を外れたりしない。損だからである。
にもかかわらず、あえて道を外れる。
そこにあるのは、「特に努力する」姿。
<普段以上>でなければ実行できない献身で
あることは、これまでの説明で自明だろう。
既記の「通常レベルの努力は対象外」も理解できよう。
他者への尽力を褒め称えることこそ、
この表現の最適な使い道だと思えてくる。
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◆ 定訳がないため、和訳は一筋縄では行かない。
–
どうも恩着せがましくなりがちで、なかなか厄介。
–
使い手との関係を兼ね合いに入れつつ、文脈を
踏まえて和訳する。
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- “Those kids went out their way to assist the old man.”
(あの子たちは、体を張って、その高齢男性を助けたの。)
– - “Those two went out of their way on my behalf.”
(2人は私のためによくしてくれた。)
–– - “She went out of her way to help me out.”
(彼女は私をわざわざ助け出してくれた。)
– - “Let’s go out of our way to support them.”
(彼らを助けてあげようよ。)
– - “Jack has gone out of his way to be with us.”
(我々と合流するために、ジャックはわざわざ来てくれた。)
ー- - “He went out of his way to introduce me to his boss.”
(彼は私をわざわざ上司に紹介してくれた。)ー
– - “The students went out their way to make me
feel comfortable.”
(私を快適にするため、学生たちは頑張ってくれた。)
– - “His company is going out of its way to
raise funds for the charity.” ※ 無生物(会社)
(彼の会社は、その慈善団体の資金調達に乗り出す。)
※ “its” は、単数の3人称
–
上記例文のように「わざわざ」と訳されるケースが多い。
次の語釈 1 の通りである。
わざわざ【態態】
副詞
1.その事だけのために、特に行うさま。特別に。
とりたてて。
2.ことさらに。故意に。わざと。
(広辞苑 第七版)