辞任する
退任劇に頻出の句動詞。
耳目をひく公職や役職から退く際に、よく使われる。
名の知られた司会者やキャスターが辞める時にも
欠かせない。
口頭に限らず、音声・文面の時事ニュース
でも用いられる。
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◆ 「 辞任する」の英語表現は、 比較的容易。
- leave 他動詞・自動詞
【発音】 líːv
【音節】 leave (1音節)
【活用形】 leaves – left – left – leaving
– - resign ( from ) 他動詞・自動詞
【発音】 rizáin
【音節】 re-sign (2音節)
【活用形】 resigns – resigned – resigned – resigning
– - retire ( from ) 他動詞・自動詞
【発音】 ritáiər
【音節】 re-tire (2音節)
【活用形】 retires – retired – retired – retiring
– - quit ( from ) 他動詞・自動詞
【発音】 kwít
【音節】 quit (1音節)
【活用形】 quits – quited – quited – quitting
これらと比較しても、”step down” は
身近で分かりやすい。
–
その一因は、イメージしやすい点にある。
辞任・辞職・退任
–
階段をずんずん上る様子が ” step up “。
とぼとぼ下るのが ” step down “。
基本はこんな感じ。
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” step down “
( also step aside )
to leave your job or official position,
because you want to or because you
should.
( ロングマン、LDOCE6 )
※ 下線は引用者
–
もっとも、LDOCE6の下線が示すように、辞任の動機は不問。
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自己都合または解任、いずれもありうる。
ニュース沙汰になる ” step down ” に後者が目立つ実情は、
あえて言うまでもない。
ー
◆ “ step ” には、名詞・自動詞・他動詞がある。
【発音】 stép
【音節】 step (1音節)
語源は、古英語「 歩み 」( stæpe )。
「 ステップを踏む 」の「 ステップ 」。
「 歩調 」や「 段階 」の意味で、 カタカナでも普及している。
さらに専門用語としての「 ステップダウン 」と
「 ステップダウン 」は、自動車業界や金融業界
で定着している。
名詞は非常に多義だが、 基本的意味は語源に沿う。
– 名詞 「 歩み 」「 一歩 」「 手段 」「 階段 」
– 自動詞 「 進む 」「 踏む 」「 行動する 」
– 他動詞 「 進める 」「 踏み入れる 」
自動詞と他動詞は、ほぼ重なる。
ここでは、自動詞「 進む 」。
副詞 “ down ”( 下へ )を伴い、「 下へ進む 」。
すなわち「 降りる 」で「 辞任 」の意に。
「 辞職 」 「 退任 」も同趣旨。
–
「 辞任 」
任務を辞職すること。今まで従っていた
職務を自分の意志でやめること。
「 辞職 」
職を自分からやめること。
( 広辞苑 第七版 )
–
「 下へ進む 」なので、「 下がる 」「 下げる 」
の意味もある。
- “step down the voltage”
(電圧を下げる)
– - “step down to 5V”
(5ボルトに下げる)
だが、ニュースやビジネスでの ” step down ” は、
「 辞任する 」 が最頻出の用法。
冒頭に挙げた通りである。
ー
◆ 「 辞任する 」の ” step down ” の主なパターンは、
次の2つ。
1) step down as –
( ~ としての職を退く )
→ 役割の前置詞 ” as “
–
2) step down from –
( ~ から辞任する、 ~ を辞任する )
→ 分離の前置詞 ” from ”
–
それぞれ見ていこう。
1) step down as – ( ~ としての職を退く )
” as ” の直後に、名詞を置く。
たとえ可算名詞であっても、唯一の役職の場合、無冠詞
となるのが通例。
” acting ” で詳らかにしている。
- “She has stepped down as president.”
( 彼女は社長を辞任した。)
ー - “He stepped down as CEO.”
( 彼はCEOを辞任した。)
ー - “The company’s board asked her to step down as CEO.”
( 同社の取締役会は、彼女にCEOを辞任するよう要請した。)
ー - “She stepped down as captain.”
( 彼女はキャプテンを辞任した。)
ー - “He stepped down as group leader.”
( 彼は班長を辞任した。)
ー - His legacy would be in good hands
if he stepped down as manager.
( 彼がマネージャーを辞任しても、
彼の業績は安全に守られるだろう。)ー
ー - “She stepped down as a teacher.”
( 彼女は教師を辞職した。)
ー - “Founder X to step down as CEO of Y”
“Founder X will step down as CEO of Y”
( Y社創業者 X、 CEO退任へ) ※ 見出し
ー - “CEO Steps Down in Shakeup”
( CEOが組織刷新で辞任) ※ 見出し
ー - “XX CEO plans to step down”
( XX社のCEOが辞任予定) ※ 見出し
ー
2) step down from – ( ~ を辞任する )
上述 ” as ” と同様に、唯一の役職の場合、
無冠詞となるのが通例。
役職そのものを指す前置詞 ” as ” と異なり、
” from ” はその位置づけを示すに過ぎない。
そのため、 ” post “、” role “、” position ” など、
< 地位 >を表す可算名詞を役職の直後に加える
ことも多い。
- “She has stepped down from president post.”
(彼女は社長を辞任した。)
ー - “He stepped down from CEO role.”
(彼はCEOを辞任した。)
ー - “She steps down from chairman position.”
(彼女は会長を辞任した。)
ー - “He was forced to step down
from his position as president.”
(彼は社長の職を追われた。)
ー - “She has stepped down from all official duties.”
(彼女はすべての公務から退いた。)
ー - “He will be stepping down from the morning show.”
(その朝のショーから彼は退く予定である。)–
ー
◆ なお、”step down” には、「辞任する」ではなく、
「 退位する 」の意味もある。
こちらは、王族・皇族に用いる用法。
【同義語】 abdicate / 他動詞・自動詞
【発音】 ǽbdikèit
【音節】 ab-di-cate (3音節)
語源は、ラテン語「 宣言して放棄する 」( abdicāre )
の過去分詞 ” abdicātus “。
- “the first emperor to step down in 200 years”
- “the first emperor to abdicate in 200 years”
(200年ぶりに退位される天皇)
ー - “The Queen is preparing to step down from the throne.”
- “The Queen is preparing to abdicate the throne.”
(女王は王位を退く準備をしている。)
ー - “The Royal Family has officially responded to
the bombshell news that they are stepping down.”
(王室は彼らが離脱するとの衝撃ニュースに公式対応)
※ 実際の内容は “abdicate”(退位)ではなく、王室離脱
【関連表現】
–
” step in ”
https://mickeyweb.info/archives/12903
( 介入する )
” Take baby steps ”
https://mickeyweb.info/archives/215
( 少しずつ前進する )
” step-by-step ” ※ 形容詞
( 一歩一歩、 段階的に )