Bombshell
2020/12/02
爆弾、 突発事件、 衝撃
“bombshell” には、名詞と形容詞がある。
最も基本となるのが、可算名詞。
形容詞はマイナー用法。
英単語全体から見れば、重要でも頻出でもない。
今回調べた 9点の英英辞典すべてがノーマーク。
例えば、LDOCE6(ロングマン)では、全3項目ランク外。
-
重要度 : 9000語圏外
-
書き言葉の頻出度 : 3000語圏外
- 話し言葉の頻出度 : 3000語圏外
しかし、ニュース見出しにはちょくちょく顔を出す。
重要でも頻出でもない割に、いざお出ましの際は、
強烈な存在感を放つ “bombshell”。
記事の中身は、軒並み衝撃的である。
“bombshell” の描く「衝撃」は、度合いの激しさ及び
変化や動きが突然の様子、すなわち急激さの両方をカバーする。
その結果「 思いがけない出来事 」を表すことに。
ひいては「 突発事件 」を指す。
受け手にとっては予想外。
「寝耳に水!」「不意打ち!」と激しく動揺し、
ぶったまげたり、びっくり仰天したり。
程度の差はあれど、天下の耳目を驚かす出来事こそ、
“bombshell”。
–
◆ 語原は、名詞 “bomb“(爆弾)+ 名詞 “shell“(砲弾)。
この上なく物騒な2語が合体したもの。
内容が激しくなるのは自然の数。
- 語原通りの「 爆発物 」としての初出は、18世紀(1708年)
- ここから展開した「 思いがけない出来事 」は、19世紀(1860年)
- さらに発展した俗語「 官能的で魅力のある女性 」は、20世紀(1942年)
(語原サイト https://www.etymonline.com より)
“bombshell” の主な意味は上記3つのハイライト。
派生の流れを追うのは、難しくない。
こんな感じ。
ー
どちらも感情の高ぶりを覚えがちの対象であろう。
” a blonde bombshell ” ときたら 「 ブロンド美人 」。
先の英英9点全部が記載する語釈である。
例えば、
“blonde bombshell”
humorous a sexually attractive woman
with light-coloured hair.
(LDOCE6、ロングマン)
“a blond(e) bombshell”
a very attractive woman with blonde hair.
(OALD9、オックスフォード)
※ 下線は引用者
LDOCE が “sexually” と明け透けに説明するのに
対し、OALD は “very attractive” と控え目。
“blond bombshell” で、”b” と “b”。
2単語が出だしで韻を踏み、耳心地がよい。
これは「頭韻(とういん)」である。
(head rhyme、alliteration)
同例を挙げると、
有名な頭韻の商標名・固有名詞の例は、
“first and foremost” で一覧にした。
–
◆ 「頭韻」の反対は「脚韻(きゃくいん)」。
この “end rhyme” の一例は、”nitty-gritty“。
“blond bombshell” は、妙になまめかしく、
同時に迫力のみなぎる語感を印象づける。
“blond” も “bombshell” も、子音 “b” から始まる(頭子音)。
–
[b] は、英日共通の破裂音 (はれつおん)。–
–
具体的には「有声両唇破裂音」。
–
多くの言語に存在する音である。
頭子音が韻を踏んでおり、日本語ネイティブにも
威勢のよい雰囲氣を読み取ることができる。
- 日本語音声の [b] 例 → 「ぶか」 「ぶき」 「ぶし」
※ ぶ = [bɯ]、 ば = [ba]、 べ = [be]、 ぼ = [bo]
の頭子音
– - 英語音声の [b] 例 → “bad” “book” “booze“
口角泡を飛ばして、
- バカ!
- ブタ!
- ババァ!
- ブス!
- ボイン!
とありったけのいけず口ぬかす場面の語調は激しい。
皆一様に、有声両唇破裂音。
ー
ー
◆ “blonde bombshell” 系の使い道は、いかんせん限られる。
時事ニュースとビジネスでは、魅惑の匂い立つ「悩殺的な美女」
は場違い。 お堅いメディアにそぐわない。
したがって、ニュース用法としては、語原に沿った「爆弾」。
そして「突発事件」。
この辺の意味合いが一般的。
3大学習英英辞典(EFL辞典)でも明らか。
持ち前の「激しさ」は、下線の形容詞が示す。
“bombshell”
■ an unexpected and very shocking piece of news.
(LDOCE6、ロングマン)
■ Usually singular, informal
an event or a piece of news which is unexpected
and usually unpleasant.
(OALD9、オックスフォード)
■ INFORMAL
a sudden and often unpleasant piece of news.
(CALD4、ケンブリッジ)
※ 下線は引用者
【発音】 bɑ́mʃɛ̀l
【音節】 bomb-shell (2音節)
OALD と CALD は “informal” と表示する。
くだけた表現、非正式ということ。
OALDの “usually singular” は「通常は単数名詞」の意。
–
単数名詞(singular noun)とは、
単数形で使われるのが一般的な名詞。
英英辞書では “S” または “sing” と略記されたりする。
単数名詞の辞書表示には、かなりのばらつきがみられる。
他の2点には記されていない。
–
◆ 多用される名詞用例3つ。
-
bombshell announcement
(爆弾発表) -
bombshell question
(爆弾質問) -
bombshell statement
(爆弾発言)
3つとも「爆弾」が定訳なのは分かりやすい。
日本のメディアも使う言い回しだからである。
動詞を用いて表現すると、
- “He dropped his bombshell during the press conference.”
- “He dropped a bombshell during the press conference.”
(彼はその記者会見中に爆弾〇〇をした。)
他動詞 “drop”(落とす)で「爆弾を落とす」が直訳。
- 彼は会見中に爆弾発表をした。
- 彼は会見中に爆弾質問をした。
- 彼は会見中に爆弾発言をした。
- 彼は会見中に爆弾宣言をした。
「爆弾を落とす」は比喩であるのが通例なので、
状況に応じて和訳は違ってくる。
「○○」で示しているのはそのため。
“drop” の代わりに、他動詞 “explode“(爆発させる)もOK。
意味が重なるのは、中級学習者なら理解できよう。
また、自動詞 “come” や be動詞を用いて、
- His bombshell came during the press conference.
- The bombshell came during the press conference.
- His came as a bombshell
- A came as a bombshell
- His was a bombshell
ここに示した黄ハイライトは、次のコロケーション辞典
にそのまま記載されている。
時制により、語形変化を伴うのは言うまでもない。
【例】 come → came (過去形)
“Oxford Collocations Dictionary for
Students of English“(アプリ版)より転載
–
–
–
『新編 英和活用大辞典』(アプリ版)より転載
ともに定評のある辞典。
重要度・頻出度が大半の辞書でランク外にもかかわらず、
でかでかと取り上げられる “bombshell”。
マイナーな単語のはずなのに、なぜ?
英単語全体から見た評価と、実務における有用性の差異
を示唆するものと考えられる。
要は、<実務上の需要> が高い。
以下に似通う持ち味である。
◆ 2019年新年早々、大々的に発表されたニュース見出し
から、”bombshell” を抽出してみた。
※ 2019年1月7日 初稿時点
- “Dow slides after X delivers bombshell warning”
(NYダウ、X社の衝撃発表後に急落)
ー - “Dow falls 660 points on X bombshell”
(NYダウ、X社の爆弾発言で660ドル安)
ー - “ROYAL BOMBSHELL: Letter reveals how
Queen Begged King not to abdicate”
(王室の衝撃事実:王に退位せぬよう女王は
手紙でどう懇願したか)
ー - “Y Makes Bombshell Admission About Not
Being The Greatest Of All-Time”
(Yの爆弾告白:自分は史上最高の選手でない)
ー - “Z bombshell: President can be indicted in office”
(Zの爆弾発言:大統領は在任中でも告発されうる)
ー - “MD Drops Bombshell About 5G Technology Dangers”
(5G通信の危険性について医師が爆弾発言)
ー
採集に要したのは、たった5分。
本当にもてもての有様であった。
–
◆ 2020年以降のニュース報道からも、追加でご紹介。
- “The Royal Family has officially responded to
the bombshell news that they are stepping down.”
(王室は彼らが離脱するとの衝撃ニュースに公式対応)
– - “President’s Tax Records Bombshell”
(大統領の納税記録の衝撃)
ー
◇ 「見出し」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語
< コロケーションについて >
・ “aware”
・ LDOCE(ロングマン現代英英辞典)
・ 辞書の「自炊」と辞書アプリ
・ 英語辞書は「紙」か「電子版」か
–
【実例】 ※ 辞書アプリの転載あり
“threshold“、”damage“、 “scrutiny“、
“backdrop“、”paperwork“、”struggle”、
“downfall“、”alternative”、”feasible”、
“disparity“、”presence”