Step down
2020/01/10
辞任する
退任劇に頻出の句動詞。
耳目をひく公職や役職から退く際に、
よく使われる。
名の知られた司会者やキャスターが辞める時にも
欠かせない。
口頭に限らず、音声・文面の時事ニュース
でも用いられる。
–
◆「辞任する」の英語表現は、容易なものが多い。
- leave
他動詞・自動詞
– - resign (from)
他動詞・自動詞
– - retire (from)
他動詞・自動詞
– - quit (from)
他動詞・自動詞
これらと比較しても、”step down” は
身近で分かりやすい。
–
その一因は、イメージしやすい点にある。
上の図柄は、小学生でも理解できるだろう。
階段をずんずん上る様子が “step up”、
とぼとぼ下るのが “step down”。
基本はこんな感じ。
“step down”
(also step aside)
to leave your job or official position,
because you want to or because you
should.
(ロングマン、LDOCE6)
※ 下線は引用者
もっとも、LDOCE6の下線が示すように、
辞任の動機は不問。
–
自己都合または解任、いずれもありうる。
ニュース沙汰になる “step down” に後者が
多い実情は、あえて言うまでもない。
ー
◆ “step” には、名詞・自動詞・他動詞がある。
【発音】 stép
–
語源は、古英語「歩み」(stæpe)。
“step” は、「ステップを踏む」の「ステップ」。
「歩調」や「段階」の意味で、
カタカナでも普及している。
さらに専門用語としての「ステップダウン」と
「ステップダウン」は、自動車業界や金融業界
で定着している。
名詞は非常に多義だが、基本的意味は語源に沿う。
– 名詞「歩み」「一歩」「手段」「階段」
– 自動詞「進む」「踏む」「行動する」
– 他動詞「進める」「踏み入れる」
自動詞と他動詞は、ほぼ重なる。
ここでは、自動詞「進む」。
副詞 “down”(下へ)を伴い、「下へ進む」。
すなわち「降りる」で「辞任」の意に。
「辞職」でもよい。
「辞任」
任務を辞職すること。今まで従っていた
職務を自分の意志でやめること。
「辞職」
職を自分からやめること。
(広辞苑 第七版)
「下へ進む」なので、「下がる」「下げる」
の意味もある。
- “step down the voltage”
(電圧を下げる) - “step down to 5V”
(5ボルトに下げる)
だが、ニュースやビジネスで “step down”
と言えば、「辞任する」が最頻出の用法。
冒頭に挙げた通りである。
ー
◆「辞任する」の “step down” の主なパターン
は、次の2つ。
1) step down as –
(~としての職を退く)
→ 役割の前置詞 “as”
–
2) step down from –
(~から辞任する、~を辞任する)
→ 分離の前置詞 “from”
それぞれ見ていく。
1) step down as –(~としての職を退く)
“as” の直後に、名詞を置く。
たとえ可算名詞であっても、
唯一の役職の場合、無冠詞と
なるのが通例。
- “She has stepped down as president.”
(彼女は社長を辞任した。)
ー - “He stepped down as CEO.”
(彼はCEOを辞任した。)
ー - “XX CEO plans to step down”
(XX社のCEOが辞任予定)
ー - “She stepped down as captain.”
(彼女はキャプテンを辞任した。)
ー - “He stepped down as group leader.”
(彼は班長を辞任した。)
ー - His legacy would be in good hands
if he stepped down as manager.
(彼がマネージャーを辞任しても、
彼の業績は安全に守られるだろう。)ー
ー - “She stepped down as a teacher.”
(彼女は教師を辞職した。)
ー
2) step down from –(~を辞任する)
上述 “as” と同様に、唯一の役職の場合、
無冠詞となるのが通例。
役職そのものを指す前置詞 “as” と異なり、
“from” はその位置づけを示すに過ぎない。
そのため、通常は “post“、”role“、”position”
など、<地位>を表す可算名詞を役職の直後
(または前)に加える。
- “She has stepped down from president post.”
(彼女は社長を辞任した。)
ー - “He stepped down from CEO role.”
(彼はCEOを辞任した。)
ー - “She steps down from chairman position.”
(彼女は会長を辞任した。)
ー - “He was forced to step down
from his position as president.”
(彼は社長の職を追われた。)
ー - “She has stepped down from all official duties.”
(彼女はすべての公務から退いた。)
ー - “He will be stepping down from the morning show.”
(その朝のショーから彼は退く予定である。)–
ー
◆ なお、”step down” には、「辞任する」では
なく、「退位する」の意味もある。
こちらは、王族・皇族に用いる用法。
【同義語】abdicate / ǽbdikèit / 他動詞・自動詞
- “the first emperor to step down in 200 years”
- “the first emperor to abdicate in 200 years”
(200年ぶりに退位される天皇)
ー - “The Queen is preparing to step down from throne.”
- “The Queen is preparing to abdicate the throne.”
(女王は王位を退く準備をしている。)
ー - “The Royal Family has officially responded to
the bombshell news that they are stepping down.”
(王室は彼らが離脱するとの衝撃ニュースに公式対応)
※ 実際の内容は “abdicate”(退位)ではなく、王室離脱
【関連表現】
–
“step in”
https://mickeyweb.info/archives/12903
(介入する)
”Take baby steps”
https://mickeyweb.info/archives/215
(少しずつ前進する。)
“step-by-step” ※ 形容詞
(一歩一歩、段階的に)