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Acting

      2018/03/30

一時的な代行、代理 

組織に属しておられる方であれば、出張などで
一時不在の管理職のために、代理・代行が指名される
状況をご存知であろう。

通常業務が滞らないよう、直近部下などに一時的に
兼任させる。
時には承認・決裁も代行するので、形式的な臨時職
というわけでない。

責務の度合いは、代行する職務内容に左右されるが、
兼任者の負担が増すのは確実。

兼務、つまり代理している状態が “acting” である。
状態を示すので、形容詞。

“acting” =
doing the work of another person for a short time.
SYN: temporary
(オックスフォード、OALD9

※ 下線は引用者、SYN=同義語(synonym)

【発音】ǽktiŋ

形容詞 “acting” は、代行する職位にかぶさる形が基本。
※ 後付けのカッコ(acting)もある

  • acting captain
  • acting chairman
  • acting manager
  • acting head
  • acting chief
  • acting director
  • acting president
  • acting mayor(市長)
  • acting leader
  • acting successor(後任者)

<後付けカッコ例>

  • chief (acting)
  • manager (acting)

以上が代表例。
職名の前に “acting” を挿入するだけだから、
難しくないだろう。

それより分かりにくいのは、役職と冠詞の関係。

<冠詞の原則>
官職・身分を表す語が補語になる時は無冠詞

補語」(complement)=
英文法では主語や目的語の性質・状態を表す
名詞・形容詞をいう。
(広辞苑 第七版)

→ 主語・目的語に対し、述語の働きをして、
意味を補う名詞または形容詞

上掲の代表例にある “acting” 直後の単語
(president、chairman など)が
補語になる場合、冠詞(a / an、the)は不要。
それが原則。

通常の「補語」例は下線部。

  • Mary is honest.(形容詞)
  • He is a teacher.(名詞)
  • She made him mad.(形容詞)

「官職・身分を表す語」が補語の例は、次の通り。

  • He was elected leader.
  • She was appointed chairman.
  • His father is president of this firm.
  • We selected her captain.

下線が補語で、先の原則に従い無冠詞となる。
<注意点>その職にある人が一人に限られる場合、
または世襲か選挙などで選ばれる地位が条件となる。

私たち日本人学習者には分かりにくい冠詞。

そこで、こんな視点で考えてみるとよい。

官職・身分を表す語」が補語の場合、
その人を、
個々の人間>としてではなく、
単なる<役割>
として見ている。

<役割>は抽象的な概念=冠詞は不要

上述の例では、

  • He was elected leader.
    → 選ばれた「リーダー」の役割
  • She was appointed chairman.
    → 選ばれた・唯一の「会長」の役割
  • His father is president of this firm.
    → 唯一の「社長」の役割
  • We selected her captain.
    → 選ばれた・唯一の「キャプテン」の役割

下線部は、単なる「役割」で「機能」に過ぎない。

「役割」「機能」は抽象的な概念。
カタチがないから、冠詞も不要。

つまり、<人間扱い>していない。

なお、実際の使用例を多数調べると、
ここに記した<冠詞の原則>が厳密に適用
されていないケースも少なくない。

◆ 職名・職位・肩書(job titles)は、組織により大差がある。
外国企業の場合、一般的な日本企業の職名に該当するものが
見当たらないことが多々ある。

それらしきものがあっても、実は職級が大いに異なること
が少なくない。

好例は、”vice president“。
副大統領」または「副社長」が定訳。
日本のほとんどの企業では、副社長は役員職である。

ところが、一部の米国企業では、普通の管理職を指す。
そのため、”vice presidents” が社内にごろごろいたりする。
当然のことながら、職級は格別高くない。

“vice president” を寄こすと連絡を受け、かしこまって
厚遇したところ、実際は課長相当だった。
こんな肩透かしを食らった経験が、私にも何度かある。

外国企業の “job titles” は、和訳する者にとって、
鬼門なのである。

職級の誤解・誤認は、社内外問わず問題になる。
実態より、高すぎても低すぎても不都合が生じがち。
相手のポジションを勘案して対応を決めるのが、
ビジネス社会の慣習だからである。

詳細を組織に確認するのがベストだが、
それができない時は、無理に漢字に置き換えずに、
カタカナで表すこともしばしば。

外資系の企業に、カタカナ職が多い理由のひとつが、
以上の誤解を予防するため。

組織に与えうる潜在リスクを考慮の上、
誤解されやすい和文名よりも、理解されにくい表記を
採用した結果であろう。

◆ “acting” は、不在時の一時的な任務
上述OALD9には、”a short time“、”temporary

常置ポジションである、
「副〇〇」(vice – )「〇〇補佐」(deputy – )
とは扱いが異なるのが一般的。

“acting” の意味合いは、同じく形容詞の
「暫定」(interim)に似ている。
発音:íntərim

  • interim CEO
  • interim executive director
  • interim president

米アップル社の故スティーブ・ジョブズは、
1997年から2000年まで、「暫定CEO」
を勤めた。

・ 1997年 “interim CEO” 就任記事:
Jobs named interim Apple CEO
・ 2000年 “full-time CEO” 就任動画(3m17s):
Macworld 2000-Steve Jobs Becomes iCEO

interim” =
intended to last for only a short time until 
somebody / something more permanent 
is found.
(オックスフォード、OALD9)

ざんてい【暫定】
本式に決定せず、しばらくそれと定めること。
臨時の措置。
(広辞苑 第七版)

※ 下線は引用者

繰り返すが、職名とその職級は組織次第。
本稿の内容が該当しない組織も普通に存在する。
あくまでも、一般論をご紹介した。

 

“He became acting president while
his father was in the hospital.”
(父親の入院中、彼が社長代理となった。)
※ 補語なので無冠詞

“He has been appointed acting division 
head until a replacement can be found.”
(後任が見つかるまで、彼がディビジョンヘッド
代行となった。)
※ 補語なので無冠詞

“They accomplished everything under acting captain
T. Johnson.”
(キャプテン代理のT. ジョンソンの指揮下で、
彼らはすべてを成し遂げた。)
※ 補語なので無冠詞

“I will be the acting director until then.”
(それまで私がディレクター代理となります。)

“Her acting successor is her son.”
(彼女の息子が後任代理である。)

【類似表現】

“fill in for”
https://mickeyweb.info/archives/6085
(~の代役を務める)

“on behalf of”
https://mickeyweb.info/archives/21017
(~の代理として、~を代表して)

“sit in for – ”
(~の代役を務める)

 

 

 

 

 

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