プロ翻訳者の単語帳

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Acting

      2021/04/21

一時的な代行、 代理 

組織に属しておられる方であれば、出張などで
一時不在の管理職のために、代理・代行が指名される
状況をご存知であろう。

通常業務が滞らないよう、部下らに一時的に兼任させる。

時には、承認・決裁まで代行するので、必ずしも形式的な
臨時職というわけでない。

責務の度合いは、代行する職務内容に左右されるが、
兼任者の負担が増すのは確実。

外資系では「 彼女は、今、アクティング 」などと言って、
代行中の状態を表現したりする。

  兼務
  兼任
  代行
  代理

つまり、代わりにやっている状態が  ” acting “

【発音】   ǽktiŋ
【音節】   act-ing  (2音節)

「状態」を示すので、形容詞(adjective)。

形容詞ゆえ、直接名詞を飾るのでなければ、
be動詞 」に続くのが基本パターンになる。

※ 「 be動詞 」= be、am、was、been、will be、is、were、are

なぜ「 be動詞 」に続くのかは、” aware ” や ” vocal about ” で詳述した。 

” acting “

doing the work of another person for a short time.
SYN: temporary
(オックスフォード、OALD9

※  SYN  =  synonym  =  同義語、下線は引用者

【発音】   ǽktiŋ
【音節】   act-ing  (2音節)


形容詞 “acting” は、代行する職位にかぶさる形が基本。

さらに、後付けカッコの表記も、頻繁に見かける。

  • acting captain
  • acting chairperson
  • acting manager
  • acting head
  • acting chief
  • acting director
  • acting president
  • acting mayor (市長)
  • acting leader
  • acting successor (後任者)
  • Acting Secretary of Defense (国防長官代行)
    →  「 国防長官代行 」の実物署名を、本稿末尾に掲載

< 後付けカッコ例 >

  • chief (acting)
  • manager (acting)
  • Secretary of the Navy (Acting)
    →  主要メディアは「海軍長官代行」と和訳

< 後付けカッコなし例 >

  • Secretary of the Navy, Acting
    →  主要メディアは「海軍長官代行」と和訳 

以上が代表例。

職名の前または後に、”acting” を挿入するだけだから、
そう難しくないだろう。

◆  それより、分かりにくいのは、役職と冠詞の関係。

< 冠詞の原則 >

  官職・身分を表す語が「補語」となる時は、無冠詞

「補語」(complement)

英文法では主語や目的語の性質・状態を表す
名詞・形容詞をいう。

(広辞苑 第七版)

→  主語・目的語に対し、述語の働きをして、
意味を補う 名詞または形容詞

【発音】
名詞    kɑ́mpləmənt
動詞    kɑ́mpləmènt

【音節】
名詞    com-ple-ment  (3音節)
動詞    com-ple-ment  (3音節)

英語の5文型の「C」こそ、”complement”。

  •  第2文型    SVC ( 主語+動詞+補語
  •  第5文型    SVOC ( 主語+動詞+目的語+補語

上掲の代表例にある “acting” 直後の単語
( president、chairperson など )が
補語になる場合、冠詞(a / an、the)は不要。

それが原則。

通常の「補語」例は下線部。

  • Mary is honest.(形容詞)
  • He is a teacher.(名詞)
  • She made him mad.(形容詞)

「官職・身分を表す語」が補語の例は、次の通り。

  • He was elected leader.
  • She was appointed chairperson.
  • His father is president of this firm.
  • We selected her captain.
  • I was removed as head of the group.

下線が補語で、先の原則に従い無冠詞となる。

< 注意点 >

その職にある人が一人に限られる場合、
または世襲か選挙などで選ばれる地位が条件となる。

私たち日本人学習者には分かりにくい、役職の冠詞。

そこで、こんな視点で考えてみるとよい。

◇ 「 官職・身分を表す語 」が補語の場合、その人を、

個々の「 人間 」としてではなく、
単なる「 役割
として見ている。

「役割」は  抽象的  な概念  =  冠詞は不要

抽象的  =  カタチがない

★「 人間扱い 」していない ★

【参照】   ” in place “、 ” take action “、 ” paperwork

上述の例では、

  • He was elected leader.
    →  選ばれた「リーダー」の役割
  • She was appointed chairperson.
    →  選ばれた・唯一の「会長」の役割
  • His father is president of this firm.
    →  唯一の「社長」の役割
  • We selected her captain.
    →  選ばれた・唯一の「キャプテン」の役割

下線部は、単なる「役割」で、「機能」に過ぎない

役割 」「 機能 」は、抽象的 な概念

 カタチがない から、冠詞も不要

★「 人間扱い 」していない ★

なお、実際の使用例を多数調べると、
ここに記した<冠詞の原則>が厳密に適用
されていないケースも少なくない。

 

◆ 職名・職位・肩書(job titles)は、組織により大差がある。

外国企業の場合、一般的な日本企業の職名に該当するものが
見当たらないことが多々ある。

それらしきものがあっても、地位の立ち位置が大いに異なること
が少なくない。

好例は、”vice president“。

副大統領」または「副社長」が定訳。
日本のほとんどの企業では、副社長は役員職である。

ところが、一部の米国企業では、普通の管理職を指す。

そのため、“vice presidents” が社内にごろごろいたりする。
当然のことながら、職級は格別高くない。

“vice president” を寄こすと連絡を受け、かしこまって
厚遇したところ、実は課長相当だった。

こんな肩透かしを食らった経験が、私にも何度かある。

外国企業の “job titles” は、和訳する者にとって、
鬼門なのである。

職級の誤解・誤認は、社内外問わず問題になる。
実態より、高すぎても低すぎても不都合が生じがち。

相手のポジションを勘案して対応を決めるのが、
ビジネス社会の慣習だからである。

詳細を組織に確認するのがベストだが、
それができない時は、無理に漢字に置き換えずに、
カタカナで表すこともしばしば。

外資系の企業に、カタカナ職が多い一因は、
こうした 誤解を予防するため。

組織に与えうる潜在リスクを考慮の上、
「誤解されやすい」和訳よりも、「理解されにくい」原文を
採用した結果であろう。

 

◆ “acting” は、不在時の 一時的な任務

上述OALD9の下線部、” a short time “、” temporary
が明記する。

常置ポジションである、
「 副〇〇 」( vice – )「〇〇補佐」( deputy – )
とは扱いが異なるのが一般的。

“acting” の意味合いは、同じく形容詞の
「暫定」( interim )に似ている。

  • interim CEO
  • interim executive director
  • interim president

米アップル社の故スティーブ・ジョブズは、
1997年から2000年まで、「 暫定CEO
を勤めた。

【参考記事】      ※   外部サイト

interim

intended to last for only a short time until 
somebody / something more permanent 
is found.

(オックスフォード、OALD9)

【発音】   íntərim
【音節】   in-ter-im  (3音節)

 

  ざんてい【暫定】

本式に決定せず、しばらくそれと定めること。
臨時の措置。

(広辞苑 第七版)

※  下線は引用者


◆  加えて、名詞  ” relief ”  も使われる。

「 交代要員 」の意で、野球の救援投手「リリーフ」がこれ。

【発音】   rilíːf
【音節】   re-lief  (2音節)

一時的な「 代理 」以外にも、正式決定した「 後継者 」も意味する。

文面からはいずれとも解釈できるが、事情通なら判別可能。

  •  “My relief will be Mr. X.”
    (私の代理は、Xさんとなります。)
    (私の後継者は、Xさんとなります。)

動詞では、”relieve”(交代する)。

自動詞と他動詞があるが、他動詞中心。
自動詞の載っていない中型辞書もある。

【発音】   rilíːv
【音節】   re-lieve  (2音節)
【活用形】  relieves – relieved – relieved – relieving

  • “X relieved Y as Captain.”
    (XはYとキャプテンを交代した。)
    (XはYの次のキャプテンになった。)
  • “X relieved Y.”
    (XはYと交代した。)
    (XはYの後任となった。)

◆  繰り返すが、職名と職級は組織次第。

実に多彩を極める。

本稿の内容が該当しない組織も普通に存在する。

あくまでも、一般論をご紹介した。

 

しばし President 代行

 

  • “He became acting president while
    his father was in the hospital.”
    (父親の入院中、彼が社長代理となった。)
    ◇  補語なので、無冠詞
  • “He has been appointed acting division 
    head until a replacement can be found.”
    (後任が見つかるまで、彼がディビジョンヘッド
    代行となった。)
    ◇  補語なので、無冠詞

  • “They accomplished everything under acting captain
    T. Johnson.”
    (キャプテン代理のT. ジョンソンの指揮下で、
    彼らはすべてを成し遂げた。)
    ◇  補語なので、無冠詞

  • “She stepped in as acting chief.”
    (彼女がチーフ代行となった。)
    ◇  補語なので、無冠詞

  • “I will be the acting director until then.”
    (それまで私がディレクター代理となります。)
  • “Her acting successor is her son.”
    (彼女の息子が後任代理である。)

【関連表現】

“fill in for”
https://mickeyweb.info/archives/6085
(~の代役を務める)

“on behalf of”
https://mickeyweb.info/archives/21017
(~の代理として、~を代表して)

“step down”
https://mickeyweb.info/archives/21087
辞任する

“sit in for – ”
(~の代役を務める)

 

 

【参考記事】      ※   外部サイト

リチャード・スペンサー国防長官代行の署名 ( 一般公開済み )

2019年7月15日付 米軍と国防総省の職員に向けた就任文書

件名 : 国防長官代行に就任

「 本日より( effective immediately )、国防長官代行に就任いたしました。 」

署名の直下 ” Acting ” に着目

【出典】   https://news.usni.org/2019/07/15/letter-from-acting-secretary-of-defense-richard-v-spencer-to-pentagon

 

 

 

 

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