プロ翻訳者の単語帳

Professional Interpreter / Translator at Government Agency

Acting

      2022/05/23

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 5 minutes

一時的な代行、  代理 

組織に属しておられる方であれば、出張などで
一時不在の管理職のために、代理・代行が指名される
状況をご存知であろう。

通常業務が滞らないよう、部下らに一時的に兼任させる。

時には、承認・決裁まで代行するので、必ずしも形式的な
臨時職というわけでない。

責務の度合いは、代行する職務内容に左右されるが、
兼任者の負担が増すのは確実。

外資系では「 彼女は、今、アクティング 」などと言って、
代行中の状態( 立ち位置・立場 )を表現したりする。

■  兼務
■  兼任
■  代行
■  代理


つまり、代わりにやっている状態が  ” acting “

【発音】  ǽktiŋ
【音節】  act-ing  (2音節)

「 状態 」を示すので、 形容詞( adjective )。

形容詞ゆえ、直接名詞を飾るのでなければ、
be動詞 」に続くのが基本パターンになる。

※ 「 be動詞 」= be、am、was、been、will be、is、were、are

なぜ「 be動詞 」に続くのかは、” aware ” と ” vocal about ” で詳述した。 

” acting “

doing the work of another person for a short time.
SYN: temporary
(オックスフォード、OALD9

※  SYN  =  synonym  =  同義語、下線は引用者

【発音】  ǽktiŋ
【音節】  act-ing  (2音節)


形容詞 ” acting ” は、 代行する職位にかぶさる形が基本。

さらに、後付けカッコの表記も、頻繁に用いられる。

日本の一般紙でも、( 代行 )という後付けカッコを見かける。

その原文を確認すると、 ” acting ”  が大半である。

  •  acting captain
  •  acting chairperson
  •  acting manager
  •  acting head
  •  acting chief
  •  acting director
  •  acting president
  •  acting mayor ( 市長代理 )
  •  acting leader
  •  acting successor ( 後任者代行 )
  •  Acting Secretary of the Treasury ( 財務長官代行 )
  •  Acting Secretary of Defense ( 国防長官代行 )
    →  「 国防長官代行 」の実物署名を、 本稿末尾に掲載

< 後付けカッコ例 >

  •  chief (acting)
  •  manager (acting)
  •  Secretary of the Treasury (Acting)
  •  Secretary of the Navy (Acting)
    →  主要メディアは「 海軍長官代行 」と和訳

< 後付けカッコなし例 >

  •  Secretary of the Navy,  Acting
    →  主要メディアは「 海軍長官代行 」と和訳 


以上が代表例。

短期間だけ代わる際、メール末尾の署名には、こう書いたりする。

Taro Yama  (Mr.)
Customer Service Manager  (Acting)
through June 30, 2021


2021年6月30日まで、 期間限定の代行。

カスタマーサービスマネージャーを兼務することに
なった  Mr. Yama  が、 自分のメールに記載する。

「 カスタマーサービスマネージャー代行 」の立場で
出すメールに用いる署名であり、 本職用のメールでは、
自分本来の署名にして使い分ける。

無用の混乱を予防するためで、社内外を問わず使える。

(Mr.) は性別を示し、 女性なら (Ms.) 。

日本名から性別を見分けられない相手を想定して、
(Mr.)  または  (Ms.)  と書くのだが、 必須ではないだろう。

後釜が予定通りに着任できない場合、
しれっと日付を延長することもある。

◆  職名の前または後に、” acting ” を挿入するだけだから、
そう難しくない。

それより、分かりにくいのは、役職と冠詞の関係。

< 冠詞の原則 >

  官職・身分を表す語が 「 補語 」 となる時は、 無冠詞

「 補語 」 ( complement )

英文法では主語や目的語の性質・状態を表す
名詞・形容詞をいう。

( 広辞苑 第七版 )

→  主語・目的語に対し、述語の働きをして、
意味を補う 名詞 または 形容詞

【発音】
名詞   kɑ́mpləmənt
動詞   kɑ́mpləmènt

【音節】
名詞   com-ple-ment  (3音節)
動詞   com-ple-ment  (3音節)


◇ 
英語の5文型の 「 C 」 こそ、 ” complement “。

  •  第2文型    SVC  ( 主語+動詞+補語
  •  第5文型    SVOC  ( 主語+動詞+目的語+補語

「 基本5文型 」 とは、英文の分類を指すのではなく、
「 動詞 」 の種類を区別するための文法用語。


◆  上掲例にある ” acting ” 直後の単語
( president、chairperson など )が
補語になる場合、冠詞(a / an、the)は不要。

それが原則。

通常の「補語」例は下線部。

  • Mary is honest. ( 形容詞 )
  • He is a teacher. ( 名詞 )
  • She made him mad. ( 形容詞 )

「 官職・身分を表す語 」が補語の例は、次の通り。

  • He was elected leader.
  • She was appointed chairperson.
  • His father is president of this firm.
  • We selected her captain.
  • I was removed as head of the group.

下線が補語で、先の原則に従い無冠詞となる。

< 注意点 >

その職にある人が一人に限られる場合、
または世襲か選挙などで選ばれる地位が条件となる。

私たち日本人学習者には分かりにくい、役職の冠詞。

そこで、こんな視点で考えてみるとよい。

◇ 「 官職・身分を表す語 」が補語の場合、その人を、

個々の「 人間 」としてではなく、
単なる「 役割
として見ている。

「 役割 」は、 抽象的 な概念

抽象的  =  カタチがない


カタチがない
から、冠詞不要

 

★ 「 人間扱い 」してない ★

 

【参照】   ” in place “、 ” take action “、 ” paperwork


上述の例では、

  • He was elected leader.
    →  選ばれた「 リーダー 」の役割
  • She was appointed chairperson.
    →  選ばれた・唯一の「 会長 」の役割
  • His father is president of this firm.
    →  唯一の「 社長 」の役割
  • We selected her captain.
    →  選ばれた・唯一の「 キャプテン 」の役割

下線部は、単なる「 役割 」で、「 機能 」に過ぎない

役割 」 「 機能 」は、 抽象的 な概念


カタチがない
から、 冠詞不要

 

★ 「 人間扱い 」してない ★


なお、実際の使用例を多数調べると、
ここに記した < 冠詞の原則 > が厳密に適用
されていないケースも少なくない模様。

 

◆  職名・職位・肩書( job titles )は、組織により大差がある。

外国企業の場合、一般的な日本企業の呼び名に該当するものが
見当たらないことが多々ある。

それらしきものがあっても、地位の位置づけが異なること
が少なくない。

好例は、” vice president “。

副大統領 」または「 副社長 」が定訳。

日本のほとんどの企業では、副社長は役員職である。

ところが、一部の米国企業では、普通の管理職 を指す。

そのため、” vice presidents ” が社内にごろごろいたりする。

当然のことながら、 職級は格別高くない。

” vice president ” を寄こす旨の通知を受け、かしこまって
厚遇したところ、 実は課長相当だった。

こんな肩透かしを食らった経験が、 私にも何度かある。

外国企業の ” job titles ” は、和訳する者にとって、
なかなかの鬼門なのである。

職級の誤解・誤認は、 社内外問わず問題になる。

実態より、高すぎても低すぎても不都合が生じがち。

相手のポジションを勘案して対応を決めるのが、
ビジネス社会の慣習だからである。

詳細を組織に確認するのがベストだが、
それができない時は、無理に漢字に置き換えずに、
カタカナで表すこともしばしば。

外資系の企業に、カタカナ職が多い一因は、
こうした  誤解を予防するため。

組織に与えうる潜在リスクを考慮の上、
「 誤解されやすい 」和訳よりも、「 理解されにくい 」原文を
採用した結果であろう。

 

◆  ” acting ” は、不在時の 一時的な任務

上述OALD9の下線部、” a short time “、” temporary
が明記する。

常置ポジションである、
「 副〇〇 」( vice – )「 〇〇補佐 」( deputy – )
とは扱いが異なるのが一般的。

” acting ” の意味合いは、同じく形容詞の
「暫定」( interim )に似ている。

  •  interim CEO
  •  interim executive director
  •  interim president
  •  interim prime minister

米アップル社の故スティーブ・ジョブズは、
1997年から2000年まで、「 暫定CEO 」を勤めた。

【参考記事】      ※   外部サイト

interim

intended to last for only a short time until 
somebody / something more permanent 
is found.

( オックスフォード、OALD9 )

【発音】  íntərim
【音節】  in-ter-im  (3音節)

 

  ざんてい【暫定】

本式に決定せず、しばらくそれと定めること。
臨時の措置。

( 広辞苑 第七版 )

※  下線は引用者

  • “I will serve as your leader in the interim until
    a permanent replacement is identified.”
    (正規の後任者が決定するまで、暫定的にリーダーを
    務めさせていただきます。)

◆  加えて、名詞  “ relief ”  も使われる。

「 交代要員 」の意で、野球の救援投手「リリーフ」がこれ。

【発音】  rilíːf
【音節】  re-lief  (2音節)

一時的な「 代理 」以外にも、正式決定した「 後継者 」も意味する。

文面からはいずれとも解釈できるが、事情通なら判別可能。

  •  “My relief will be Mr. X.”
    (私の代理は、Xさんとなります。)
    (私の後継者は、Xさんとなります。)

動詞では、 “ relieve “( 交代する )。

自動詞と他動詞があるが、 他動詞中心。

自動詞の載っていない中型辞書もある。

【発音】  rilíːv
【音節】  re-lieve  (2音節)
【活用形】  relieves – relieved – relieved – relieving

  • “X relieved Y as Captain.”
    (XはYとキャプテンを交代した。)
    (XはYの次のキャプテンになった。)
  • “X relieved Y.”
    (XはYと交代した。)
    (XはYの後任となった。)
  • “She was relieved due to a loss of confidence in her ability
    to perform her duties. ”
    (職務遂行能力に対する信用を失い、彼女は解任された。)

◆  繰り返すと、 職名と職級は組織次第。

実に多彩を極める呼び名。

本稿の内容が該当しない組織も普通に存在する。

あくまでも、一般論をご紹介した。

 

しばし President 代行

 

  • “He became acting president while
    his father was in the hospital.”
    (父親の入院中、彼が社長代理となった。)
  • “He has been appointed acting division 
    head until a replacement can be found.”
    (後任が見つかるまで、彼がディビジョンヘッド
    代行となった。)

  • “They accomplished everything under acting captain
    T. Johnson.”
    (キャプテン代理のT. ジョンソンの指揮下で、
    彼らはすべてを成し遂げた。)

  • “She stepped in as acting chief.”
    (彼女がチーフ代行となった。)

  • “I will be the acting director until then.”
    (それまで私がディレクター代理となります。)
  • “Her acting successor is her son.”
    (彼女の息子が後任代理である。)

【関連表現】

 

 

【参考記事】      ※   外部サイト

リチャード・スペンサー国防長官代行の署名 ( 一般公開済み )

2019年7月15日付 米軍と国防総省の職員に向けた就任文書

件名 : 国防長官代行に就任

「 本日より( effective immediately )、国防長官代行に就任いたしました。 」

Letter from Acting Secretary of Defense
Richard V. Spencer to Pentagon

署名の直下 ” Acting ” に着目

【出典】
https://news.usni.org/2019/07/15/letter-from-acting-secretary-of-defense-richard-v-spencer-to-pentagon

 

 

 

Sponsored Link




Jetpack

 - 英単語, 英語