食ってかかる、激しく非難する
反発する相手に、激しい口調で立ち向かうこと。
自分より立場の強い相手に使う場合が多い。
通常の批判・非難とは毛色が変わっている。
いい大人が、権力的なものに反抗するイメージ。
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◆ “lash out” の象徴的な使用場面は、次の3つ。
- lash out at prosecutors
(検察官に食ってかかる) - lash out in courtroom
(法廷で暴言を履く) - lash out at the media
(メディアを激しく批判する)
“lash out” は、激しい情動を伴う。
そのため、一般読者の好奇心を刺激する。
確かに、有名人が舌鋒鋭くブチ切れる構図は、
何事かとそそるものがある。
例えば、過激な表現と週刊誌の相性のよさは、
日本でも見られる傾向である。
保守系のお堅い新聞が “criticize” や “denounce”
を使う状況に、英文週刊誌は句動詞 “lash out”
を起用したりする。
現在の “TIME” 誌 や “Newsweek” 誌もこの範疇。
動詞「非難」実用トップ6
※ 私見
- criticize(自動詞・他動詞)
- blame(他動詞・名詞)※ 弱い非難
- attack(自動詞・他動詞)←「非難」は他動詞のみ
- accuse(自動詞・他動詞)
- condemn(他動詞のみ)
- denounce(他動詞のみ)
※ “slam“(激しく非難する)より再掲
ニュースメディアに出てくる “lash out” の
印象は、以上のように、とかく強烈なのが特色。
だが、ニュアンスに下品さはない。
ごく普通の句動詞なので、一般紙に用いても
不適切ではない。
週刊誌に比べると、日々のニュースでは
激しい感情の描写を避けがちなため、
結果的に先述の現象が見られるということ。
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◆ 句動詞 “lash out” の意味は2つ。
いずれも自動詞の句動詞なので、句自動詞。
■ “lash out (at somebody/something)“
1. to suddenly try to hit somebody/something.
2. to criticize somebody in an angry way.
(オックスフォード、OALD9)
■ “lash out“
1. to suddenly speak angrily to someone
or criticize someone angrily.
2. to try to hit someone with a series of
violent uncontrolled movements.
(ロングマン、LDOCE6)
■ “lash out“
to suddenly attack someone or something
physically or criticize him, her, or it in
an angry way.
(ケンブリッジ、CALD4)
【発音】læʃ aʊt
※ 下線は引用者
下線の “criticize” には、先ほど触れた。
注目すべきは、青字部分。
「肉体的にいきなり攻撃する」とあり、かなり物騒な内容。
LDOCE6 に至っては、”uncontrolled” とあり、自制不能
の激烈さ。
“criticize” と異なり、肉体的な暴力である。
手向かう暴挙は非日常な行為。
腕力に訴える暴行沙汰では、”assault” や “attack”
が一般的。
この用途の “lash out” が、ニュース報道で
使われた例を、見聞きしたことはほとんどない。
<副詞>を添えるケースならある。
- “A disgruntled employee lashed out violently.”
(不満を抱いた従業員が大暴れした。)
※ “violently“(乱暴に)が副詞
“lash out” のニュース用法は、口頭の
「食ってかかる」「激しく非難する」
が中心。
“criticize” と同義。
–肉体的な暴力の “lash out”–
—は、ニュース報道ではまれ–
なお、”lash out” には、「散財する」の意味もある。
こちらは句自動詞に加えて、句他動詞としても使える。
ただし、イギリス英語固有なので、本稿では取り上げない。
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◆ “lash” には、名詞・他動詞・自動詞がある。
語源は、擬音語の “lashe”で、中英語由来。
「ピシッ」と鞭(むち)で打つ音が “lash”。
– 可算名詞「鞭の一打ち」「まつげ」「激しい非難」
– 他動詞「鞭で打つ「激しく非難する」
– 自動詞「激しく打つ」「激しく非難する」
“lash” は、他動詞も字動詞も「激しく非難する」
を意味する。
ところが、副詞 “out” がつく句動詞では、
自動詞のみ。
したがって、表題の “lash out” は句自動詞。
もっとも、イギリス英語の「散財する」が
他動詞になる点は、既記の通り。
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◆ 副詞 “out” は非常に多義だが、
句動詞 “lash out” では「徹底的に」の
意味合いで、激しく非難することを示す。
この副詞用法には、次のような表現がある。
- clean out(徹底して掃除する)
- tired out(疲れきった)
- burn out(燃え尽きる)
- iron out(問題を解決する)※ 小規模な問題
- hash out(徹底的に議論する)
- spell out(詳しく説明する)
- map out(綿密に計画を立てる)
- talk things out(徹底的に話し合う)【参照】句動詞の副詞 “out” 30例
“lash out” に目的語が続く場合、多用される
前置詞は “at” または “against“。
いずれも、対抗する相手に逆らう前置詞。
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◆ 2018年発表の<ニュース見出し>を7点挙げる。
上に楯突く覇気みたいなものを、どこか感じ取れるだろう。
- “F1 teams lash out at fuel allowance increase”
(F1チームが燃料割当量の増加を激しく非難)
– - “Investors lash out against CEO pay”
(CEO報酬に投資家が激しく批判)
– - “Be Prepared for President to Lash Out
Rather Than Resign”
(大統領の辞職よりも、毒舌を覚悟せよ)
– - “Protesters lash out against X”
(デモ参加者がX社を激しく批判)
– - “Angry Parents Lash Out at School District”
(怒った親が学区を激しく非難)
– - “Finally out of prison, two men lash out
at the prosecutors”
(やっと出所した男2人は、検察官を激しく非難)
– - “Family Court outcome causes man to lash out”
(家裁決定に男が暴言)
– - “President lashes out at massive fine”
(大統領は莫大な制裁金を激しく非難)
※ 「見出し」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語
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【類似表現】
“slam“
https://mickeyweb.info/archives/14790
(激しく非難する)
“point the finger”
https://mickeyweb.info/archives/22974
(公然と非難する、責める、名指しする)
“lambaste”
https://mickeyweb.info/archives/14647
(酷評する、非難する)