対決する構えをとる、 対決する、 対戦する
けんか腰で、にらみ合う様子を表す句動詞。
自動詞の句動詞なので、「句自動詞」
(intransitive phrasal verb)。
※ 句他動詞扱いする辞書もある
“Cambridge Academic Content Dictionary” など
ハイフン入りの複合語 “square-off” は、可算名詞
- 対決
- 対戦
■ 「ニュース見出し」の “square off”
→ 選挙 と スポーツ の話題が目立つ
「 対決 」 「 対戦 」 の意味合い
初めて “square off” に接すると、意味の推測は困難だろう。
“square” も “off” も分かるのに、”square off” は想像がつかない。
何だか悔しい。
見出しをちょくちょく飾る以上、突飛な英語ではない。
中級学習者であれば、押さえておきたい句動詞である。
◆ 「句動詞」(phrasal verb) の基本的定義は、こちら。
「前置詞または副詞と一緒に用いることで、
元々の動詞とは異なる意味となる複数の単語」。
“square off” は、この定義にぴったりであり、
「句動詞中の句動詞」と言える。
“square” の主要な意味は、名詞「正方形」(後述)。
しかし “square off” では、動詞 “square”。
“off” は副詞。
【参考】
「句動詞」「句自動詞」「句他動詞」について
https://mickeyweb.info/
◆ “square” には、名詞・形容詞・副詞・他動詞・自動詞がある。
【発音】 skwέər (1音節)
割と多義な基礎単語である。
- 重要度:最上位 <トップ3000語以内>
- 書き言葉の頻出度:<2001~3000語以内>
- 話し言葉の頻出度:<1001~2000語以内>
(ロングマン、LDOCE6 の表記より)
語源は、俗ラテン語「正方形にする」(exquadrāre)。
「正方形」は語源そのもの。
◇ “square” の基本的意味は、
-
名詞 「正方形」 「2乗(平方)」 「四角い広場」
※ 円形の広場は “circle” -
形容詞 「正方形の」 「直角の」 「2乗の(平方の)」 「公平な」 「互角の」
-
副詞 「四角に」 「直角の」 「公平に」 「まっすぐに」
-
他動詞 「四角にする」 「直角にする」 「互角にする」
-
自動詞 「直角になる」 「一致する」 「身構える」
基本的な語義だけでも、これほど挙げられる。
確実に多義だが、語源の「正方形」から派生した
意味合いが大方を占める。
–
◆ これに、副詞 “off“ を加えるとどうなるか。
【発音】 ɔf (1音節)
頻出・重要の度合いは、”square” をはるかに上回る。
- 重要度:最上位 <トップ3000語以内>
- 書き言葉の頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
- 話し言葉の頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
どれも最高ランクの位置づけ。
英単語全体から見ても、最頻出かつ最重要。
前置詞・副詞・名詞・形容詞・他動詞・自動詞がそろう。
非常に多義だが、どの品詞も “off” の原義「離れて」
から派生する意味中心なので、比較的理解しやすい。
ここでの副詞 “off” は、原義に直結する、基本的語義「切り離す」。
“square off ” → 四角に切り落とす
特に、四隅をきれいに見せるため、四角に切ること。
これが、”square off” の本来の意味である。
–
◆ もちろん、ニュース用法は異なる。
では、なぜ「対決する構えをとる」になるのか。
冒頭に記したように、”square off” は句自動詞。
つまり、動詞 “square” は自動詞であり、上記
によれば「身構える」が該当すると予想がつく。
“square off” が「対決」につながる経緯を調べた
が、なかなか確実な情報は得られなかった。
確実なのは、初出年。
「対決」「対戦」を意味する “square off” の初出は、1837年。
www.merriam-webster.com/dictionary
昔から使われている割に、語源不詳の句動詞は、
珍しいと私の経験からは感じる。
–
◆ “square off” の意味自体は明瞭である。
- 四角に切り落とす
- 対決する構えをみせる
この2つであり、ニュース用法は後者である。
- 対決する
- 対戦する
前述の通り、複合語 “square-off” は可算名詞で、
- 対決
- 対戦
◆ 「アメリカ英語」と明記する辞書が多い(緑字)。
3大学習英英辞典(EFL辞典)も次の通り。
■ square off
US
to prepare to fight, compete, or argue with
someone.
(CALD4、ケンブリッジ)
■ square off (against somebody)
(North American English)
to fight or prepare to fight somebody.
(OALD9、オックスフォード)
■ square off
American English
to get ready to fight someone.
(LDOCE6、ロングマン)
【アクセント】 squáre óff
だが、例外もある。
この辞書では「イギリス英語」と表示する。
■ square off in British
verb
(intr, adverb)
to assume a posture of offence or
defence, as in boxing.
Collins English Dictionary
◇ “intr” = “intransitive” (自動詞)
※ 下線は引用者
意味のシンプルさは、これら4点の辞書から自明であろう。
最後に挙げた “Collins” の下線部に説明されているように、
ボクシング で 「 攻防で身構える 」姿、すなわち
「 打ち合いの構え 」 には頻出な表現である。
◆ 上掲黄枠の通り、選挙 と スポーツ によく使われる印象。
そこで、直近のニュース見出しから、例文抽出した。
すべて2018年5月27日(※)発表、採れたてほやほや。
※ 本稿の初稿日。 現地時間の5月26日分も含む。
- “Ohtani, Angels set to square off with Yankees”
(大谷とエンゼルス、ヤンキーズとの対決に臨む)
–
※ “Shohei Ohtani and the Los Angeles Angels
face the New York Yankees on Sunday.”
と同記事のキャプションにある。
「エンゼルスの大谷翔平」ではなく、「大谷翔平とエンゼルス」
と並列扱い。
◇ “set to” = 臨む(句自動詞)
– - “Thousands square off in Berlin far-right rally
and counter demos”
(ベルリンで数千人が極右集会と反対デモとにらみ合い)
–
※ “Thousands of demonstrators for and against
the far-right face off in mass rival rallies in Berlin”
と書き出しにあるので、極右支持派と反対派が対決。
◇ “face off” = 対決する(句自動詞)
– - “Celtics, Cavaliers square off for a trip
to the NBA Finals on Sunday night”
(セルティックスとキャヴァリアーズ、
NBA決勝進出をかけて日曜日対決)
–
※ 両方とも、米プロバスケットボール協会(NBA)所属のチーム
– - “Draymond Green, Charles Barkley finally
square off on national TV”
(グリーンとバークレーがついに全国テレビ放送で対決)
–
※ グリーンはNBA「ウォリアーズ」の現役選手。
バークリーは殿堂入りした元スター選手で、2018年現在は解説者。
グリーンのプレイを見て、”I want to punch him in the face so bad.”
(顔面パンチしてやりたい)などと試合解説中に言い放ったことが発端。
ー - “Ontario leaders to square off in crucial
final televised debate before election”
(オンタリオ選挙大詰めの党首テレビ討論対決)
–
初稿執筆時から、24時間以内に発表された “square off” が、
ちょこっと検索するだけで出てくる。
所要時間は5分。
–
「見出しをちょくちょく飾る」と先述したが、大げさではないのである。
◇ 「見出し」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語
【関連表現】
“pick a fight”
https://mickeyweb.info/archives/14725
(けんかを売る)
“back to square one”
https://mickeyweb.info/archives/27475
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