風変わりな、 奇妙な人
風変わりな人物や商品が持てはやされる時代である。
一昔前なら鼻つまみ必至だった、 はちゃめちゃな言動が
話題となり、 YouTube をはじめとする動画にて、
世界中に 拡散 される現象は珍しくなくなっている。
見る分には面白いから、と奇想天外な個性が
受け入れられるようになったのかもしれない。
形容詞 ” wacky ” と可算名詞 ” wacko ” は、
こんな時代を象徴すると考えるのでご紹介したい。
型破りで、人々に楽しい興奮をもたらす突飛な状態が、
” wacky “。
【発音】 wǽki
【音節】 wack-y (2音節)
–
その主体が、名詞 ” wacko “。
【発音】 wǽkou
【音節】 wack-o (2音節)
主体だから、名詞。
” wacko ” には、形容詞 用法もある。 (例文参照)
■ ” wacky ”
informal
silly in an exciting or amusing way.
SYN : crazy
【発音】 wǽki
【音節】 wack-y (2音節)
–
–
□ ” wacko “
informal
a crazy or strange person.
【発音】 wǽkou
【音節】 wack-o (2音節)
–
( ロングマン、LDOCE6 )
–
–
◇ SYN = synonym = 同義語
※ 下線は引用者
–
「 ワッキー 」 と 「 ワッコー 」。
私たち日本人にも、親しみやすい発音。
2語とも ” informal ” と書いてある。
「 くだけた表現、 非正式の表現 」くらいの意。
正式な言い回しではないものの、下品さもない。
その証左に、トークショーなどで司会者が用いたりする。
–
■ ” wacky ” の初出は、1930年代半ば。
語源は、動詞 ” whack “( ひっぱたく )。
【発音】 wǽki
【音節】 wack-y (2音節)
–
–
□ ” wacko ” の初出は、1970年代。
” wacky ” に、接尾辞 ” o “( ~ である人 )を加えたもの。
【発音】 wǽkou
【音節】 wack-o (2音節)
–
◆ 上掲 ” LDOCE6 ” の語釈は、概して好意的である。
その他5点の英英辞典は、以下の通り。
■ ” wacky “( 各上段 )
□ ” wacko “( 各下段 )
–
■ funny or amusing in slightly crazy way.
□ crazy; not sensible
( オックスフォード、OALD9 )
–
■ unusual in a pleasing and exciting or silly way.
□ a person whose behavior is strange and different
from that of most people.
( ケンブリッジ、CALD4 )
–
■ eccentric, unusual, and often funny.
□ you are saying in an unkind way that they are strange
and eccentric.
( コウビルド(COBUILD)/ Collins )
–
■ funny, or silly.
□ crazy, or very strange.
( マクミラン )
–
■ amusing and very strange.
□ a person who is crazy or very strange and unusual.
( メリアム ウェブスター )
–
※ 以上の合計10点すべてに、
” informal “( くだけた表現、非正式の表現 ) 表示あり
–
◆ 形容詞 ” wacky ” の上記語釈では、
「 愉快な 」を意味する “ funny ” と “ amusing ” が最頻出。
一方、可算名詞 ” wacko ” は、
” crazy “( 正気でない ) と ” strange “( 奇妙な )が最多。
以上より、両者の意味合いを感じ取れるのではないだろうか。
定訳に近い日本語は、
- wacky 「 風変わりな 」
- wacko 「 奇妙な人 」
前記 < 緑字 > の比較で見て取れるが、あえて区別するなら
- wacky 好意的
- wacko そうでもない
イメージを率直に言えば、
- wacky 「 変わっている 」
- wacko 「 イカれた 」
–
◆ 国語辞典から引用すると、
- ふうがわり【 風変り 】
おもむき・ありさま・性格・行動などが普通とはちがっていること。
( 広辞苑 第七版 )
– - ふうがわり【 風変(わ)り 】
様子や性質などが普通と変わっている・こと(さま)。
( 大辞林 第四版 )
– - ふうがわり【 風変 】
性癖や様子、行動などが普通と変わっているさま。また、その人。
( 精選版 日本国語大辞典 )
– - ふうがわり【 風変(わ)り 】
様子・行動が普通とは違っていること。そういうもの、または人。
( 岩波 国語辞典 第八版 )
– - ふうがわり【 風変わり 】
様子・性質・行動などが一般と違っていること。
( 明鏡国語辞典 第三版 )
— - ふうがわり【 風変わり 】
ふつうと様子がかわっている状態。
( 三省堂国語辞典 第八版 )
–
以上、 それぞれ語釈全文である。
–
- いかれる
頭がどうかなる。 あるものに心を奪われる。
( 広辞苑 第七版 )
– - いかれる
まともでなくなる。 また、不良じみる。
( 大辞林 第四版 )
– - いかれる
頭の働き、考え方がまともでなくなる。
ふぬけになる。
( 精選版 日本国語大辞典 )
– - いかれる
頭の働きなどがまともでなくなる。
心がすっかり奪われる。
( 岩波 国語辞典 第八版 )
– - いかれる
頭の動きや行動が正常でなくなる。
( 明鏡国語辞典 第三版 )
– - いかれる
まともではない状態になる。
( 三省堂国語辞典 第八版 )
※ 語釈の該当項のみ引用
–
◆ 同時に、主要な英和辞典を4冊調べたものの、英英辞典が
示したような “ wacky ” の好意的な語釈は見当たらなかった。
総じて「 変わっている 」で終始しているのが英和辞典。
一方、英英辞典6点の ” wacky ” 語釈は「 面白い 」が目立つ。
抽象的な様子の言語化なので、日英間には 溝は埋めがたい
要素がつきまとう。
これはやむを得ない。
本家は英英辞典なので、こちらの解釈に軍配が上がるはず。
ともかく、文脈にかなり左右されるため、和訳時は気を遣う。
–
◆ 以前に比べて、社会全体の多様化が進み、普通と普通でない
( unusual )ものの基準があいまいになってきている印象。
日本に限らず、 世界規模で見られる傾向であるらしい。
従来の基準から外れた少数派にとっては、 ようやく個性を発揮
できる時勢が来たのかも。
その代表的な活躍の場が、 先の動画サイトだったりする。
–
変なおじさん
- “My father is wacky.”
(父は風変わりです。)
– - “My father is a wacko.”
(父は変人です。)
– - “There is still a perception of me as a wacko.”
(私を変人扱いする人が今もいるんです。)
– - “I have some wacky ideas.”
(突飛なアイデアがあります。)
– - “I must say her name is so wacky.”
(彼女の名前は変わりすぎてると言わざる得ない。)
– - “My ideas are wacko.” ※ 形容詞用法
(私のアイデアはぶっ飛んでいます。)
– - “I don’t like your wacky opinions.”
“I don’t like your wacko opinions.” ※ 形容詞用法
(あなたの変な意見が気に入らない。)
– - “I have many wacky friends.”
(私はたくさんの風変わりな友人がいる。)
– - “Many of my friends are wackos.”
(私の友人の多くは変人です。)
– - “Welcome to the wacky world of YouTubers.”
(ユーチューバーのイカれた世界にようこそ。)
– - “I watched wacky videos today.”
(今日、おかしなビデオを観ました。)
– - “This guy is a complete wacko.”
(彼は完全にやばい人。)