誰にも負けない、 人後に落ちない
直訳は「誰に対しても2番目にない」(後述)。
2番目にないとは、それに劣る順位にもならない
ことを前提とするため、残りは1番目のみ。
したがって「誰にも負けない」に。
ただし、単独1位のみならず、同列1位であってもよい
との解釈もある。
英英辞典も、同列1位を匂わすものとそうでない
ものとに分かれる。
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◆ 以下、英英6点を調べた結果である。
“second to none”
◇ “LDOCE6” のみ、“be second to none”
<単独1位>
- to be the best.
(ロングマン、LDOCE6) - nobody is better.
(オックスフォード、OALD9) ※ 独立項目ないため、例文より - the best.
(マックミラン) - better than all others of the same kind.
(メリアム ウェブスター)
<同列1位もあり>
- as good as or better than all others.
(ケンブリッジ、CALD4) - it is very good indeed or the best that there is.
(コリンズ / COBUILD)
一見、くだらない比較かもしれない。
だが、勝負事の場合、同列1位を許すか否かで
ランキングの全体像は違ってくる。
また和訳時も、何かと考慮する必要がある。
6辞書の共通項は、より勝る者がいない
この要件であれば、単独1位、同列1位ともに満たす。
“second to none” の定訳に近いのが、「人後に落ちない」。
人後(じんご)とは、「他人のあと」のこと。
「人後に落ちない」
■ 他人にひけをとらない。人に劣らない。
(広辞苑 第七版)
■ 人のあとになる。他人より劣る。他人の風下(かざした)
に立つ。おくれをとる。ひけをとる。
(精選版 日本国語大辞典)
上の2点の国語辞典の語釈すべてが、先の「より勝る者がいない」
の要件を満たす。
もちろん、単独・同列云々は一切不問。
堅い表現であるため、文脈・文体上、違和感なく適用できるかを
別とすれば、定訳として十分な内容である。
この2点の示す語釈は、”second to none” の主な和訳がそろっている。
英和辞典だけでなく、国語辞典を上手に取り入れると、和訳が楽に
なる好例である。
類語辞典も便利。
私はどれも常時活用している。
【参考】 辞書の「自炊」と辞書アプリ
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◆ “second to none” の単語は、全部が基礎レベル。
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ひとつずつ見ていこう。
1) “second” には、形容詞・副詞・名詞・他動詞がある。
【発音】 sékənd
【音節】 sec-ond (2音節)
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語源は、ラテン語「2番目の」(secundus)。
カタカナ「セカンド」「セコンド」もこの通り。
平板で、均一なリズムの日本語では、
4音節の「 セ – カ – ン – ド 」。
英語では2音節で、初っ端の第1音節にアクセント(強勢)。
セカン デユッ
「音節」(syllable、シラブル)とは、発音の最小単位。
→ 音節の差異が顕著な日英比較は、”integrity” 参照
◆ “second” の基本的意味は語源「2番目の」を貫く。
例外的なのは、他動詞「援助する」「賛成する」。
これとても、 ボクシングの「セコンド」=「介添人」
をイメージすれば、どうにか「援助する」に結びつく。
【注意】
「秒」「一瞬」を意味する “second” の語源
は同源(2番目の)だが、現在は別単語とされる。
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英和、英英辞典でも、別項目扱いされている。
発音は同じ。
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【発音】 sékənd
【音節】 sec-ond (2音節)
表題では、形容詞「2番目の」転じて「劣る」。
“second to – ” のフレーズで「~に劣る」となる。
2) “to” は、行為などの対象の前置詞「~に対して」「~にとって」。
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形容詞 “second” に伴うため、「~に対して2番目の」
転じて「~に対して劣る」。
形容詞(斜体)+ 対象 “to” の例
- “I’m new to here.”
(ここに来たばかりです。)(ここの新人です。)
– - ”She is kind to others.”
(彼女は他人に対して親切)
– - ”His story is known to everyone.”
(彼の話は全員にとって知っていること。)
– - ”He seems nice to me.”
(私にとって、彼はいい人に思える。)
3) “none” には、代名詞・副詞・形容詞がある。
【発音】 nʌ́n (1音節)
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語源は、古英語「ひとつもない」(nān)。
これは、” no + one ” を意味する。
◇ no one, not one, nobody より文語的
( 『ランダムハウス英和大辞典 第2版 』 )
語源から推定できるように、基本は代名詞。
代名詞 “none” は、”no” の代名詞用法に相当する。
“second to none” でもその通りで、「誰も~ない」。
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< “none” の単複 >
代名詞 “none” は、単数扱いと複数扱いのいずれもある。
辞書を読んでもすっきりしないのは、例外がいくつかあるため。
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基本は次の通り。
(1) “none” が指す名詞(多くが “none of” の直後)
が可算名詞の複数形である場合、単複いずれもOKだが、
複数扱いが通例。
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殊に “not one” の意味を強調したい時には、単数を使う。
- None are completely satisfied.
- None is completely satisfied.
(完全に満足している人はいない。)
– - None of us were there at the time.
- None of us was there at the time.
(その時、我々の中でそこにいた人はいなかった。)
(2) “none” が指す名詞が、不可算名詞または単数形
の代名詞の場合は、単数扱い。
- None of the furniture is worth buying. ※ 不可算名詞
(これらの家具のどれも買うに値するものはない。)
– - It is none of your business. ※ 不可算名詞
(それは余計なお世話です。)
– - None of this makes sense. ※ 単数形の代名詞
(このどれも意味をなさない。)
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◆ 前出の『ランダムハウス』を再び引用すると、
( 『ランダムハウス英和大辞典 第2版 』 “none” )
以上より、3語を組み合わせると、
冒頭の「誰に対しても2番目にない」。
]”second to – “(上記の青字)の「~に劣る」を代入すると、
「誰に対しても劣らない」となる。
「人後に落ちない」との意味はそう難しくないが、
文法面はなかなか奥深い。
それでも、シンプルな3単語のおかげで、一度理解しておけば、
ご自分でも手軽に使えるようになるはず。
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◆ 基本は「be動詞」に続く。
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先の “LDOCE6” の項目立て通りである(上記の緑字)。
“second to none” の<3語ワンセット>で、形容詞
の意味合いをもつため、「be動詞」に続くのが基本。
なぜ、基本として「be動詞」に続くのかは、”aware”、
”vocal about”、”conclusive” で詳述した。
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ぴんとくることがなければ、おさらいしていただければ幸い。
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以下のような短文から、使い方を学び取るとよい。
–
負けないで
–
“As a runner, he is second to none.”
(彼はランナーとしては誰にも負けない。)
“She is second to none, by all accounts.”
(誰に聞いても、彼女に比肩する者はない。)
“The quality of this product is second to none.”
(この製品の品質に並ぶものはない。)
“His record as a pitcher is second to none.”
(ピッチャーとしての彼の成績に迫る者はいない。)
“Her performance is second to none.”
(彼女の実績に匹敵する者はいない。)
“Their customer service is second to none.”
(あの会社のカスタマーサービスは唯一無二のもの。)
–
“Her expertise and devotion to duty are second to none.”
(彼女の専門知識と職務への熱意に肩を並べる者はいない。)
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【関連表現】
- “second to last“
(最後から2番目)
– - “second only to – ”
(~に次いで2番目)
– - “hands down”
https://mickeyweb.info/archives/26312
(楽々、断然)