プロ翻訳者の単語帳

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By all accounts / From all accounts

      2020/01/01

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 2 minutes

皆の話によれば、誰に聞いても

両フレーズとも、文頭・文中・文末に使える。
文面・口頭不問。

文頭かつ口頭が、最もよくあるパターンであろう。
それを裏付ける確実な統計は見つからないが、
インターネット検索結果及び個人的な経験から、
こう推測する。

◆ 代表的な使用場面は、自分の話を正当化する際。
その根拠または情報源の提示に起用する表現である。

  • 誰に聞いても、こうである
  • みんな、そう言ってる
  • 誰の目から見ても、こんな感じ

どこか言い訳がましい印象を帯びるが、
常日頃からよく聞く口吻である。

実際、かなりのケースでは、感情丸出しの論理。
「誰」や「みんな」の検証を経ずに使われているから。
これが、言い訳がましく感じる一因となる。

例えば、ビジネス会議で発言する際に、自説の論拠として、
「誰に聞いても」「みんな」「誰の目からも見ても」などと
述べても、説得力はない。
相手にされないほど、稚拙な論理展開に他ならない。

にもかかわらず、日常ではまかり通っている論じ方である。
これぞ「日常社会」と「プロの世界」の違いを示す一例。
後者では通用しなくても、前者では普通のこと。

英語講座が「日常会話」と「ビジネス英語」にくっきり分かれて
いるのも、こうした違いから納得できるのではないだろうか。
表現もさることながら、適用される論理まで違っていたりする。
「英会話」といえば、通常は「日常会話」を指す。

◆ この点、日本語も英語も大して変わらない。
意見の根拠や情報源を、他者に求める傾向は大勢にみられ、
プライベートでは許される場合が多い。

明らかに合理的でない流れであっても、
このような論の運び方でその場を切り抜けられたりする。
反論されないことも珍しくない。

こうして、日常レベルの論法として重宝されるため、
“by all accounts” の出番が絶えない。
これが、本稿で取り上げる理由である。

by / from all accounts” =

  • according to what a lot of people say.
    (ロングマン、LDOCE6)
  • according to what other people say.
    (オックスフォード、OALD9)
  • as said by most people.
    (ケンブリッジ、CALD4)※ 下線は引用者

3大学習英英辞典(EFL辞典)の語釈は、そろって簡潔。
上記の “people” とは、「世間一般の人々」で、
「世間」そのものも表す。

日本語の「世間」は多義だが、該当する意味は次の通り。

世間」=
社会。世の中。また、世の中の人々。
(広辞苑 第七版)

要するに、「世間」を拠り所にするのが、
“by all accounts” と “from all accounts”。

日常使用であれば、日本語同様、普通に通じる論法である
ことは、既に説明した。

◆ では、文法面を見ていこう。

ポイントは、”accounts“。
可算名詞 “account” の複数形。
このフレーズでは、”s” つきの複数形が常。

“account” には、名詞の他、自動詞と他動詞がある。
語源は、古フランス語「計算する」(acont)。

名詞は、可算と不可算を兼ねる。
– 可算名詞「話」「報告」「釈明」「勘定」「口座」
– 不可算名詞「考慮」「根拠」「重要性」「利益」
「責任」→ “accountability” 参照

名詞 “account” は、英単語として最頻出かつ最重要。
口語・文面とも、頻出は<トップ1000語以内>。
重要も<トップ3000語以内>。
両方とも、最高ランクである。
(ロングマン、LDOCE6 の表記より)

ここでは、可算名詞「話」。
形容詞 “all“(すべての)で修飾すると、
「すべての話」。

準拠の前置詞 “by“(~によって)または
根拠の前置詞 “from“(~から)を加えると、
直訳は「すべての話から」「すべての話によって」。
転じて「誰に聞いても」の意味合い。

ここでの「話」とは、先に触れた「世間」のイメージ。
科学的根拠よりも、口コミと伝聞の要素が強い。

“That was, from all accounts, a great presentation.”
(皆の話によれば、素晴らしいプレゼンだった。)

By all accounts, the situation is getting worse.”
(誰に聞いても、状況は悪化している。)

“She is fun to be with, from all accounts.”
(みんなが言うには、彼女は一緒にいて楽しい人。)

From all accounts, this workplace is toxic.”
(皆の話からすると、この職場は有害だ。)

“She is second to none, by all accounts.
(誰に聞いても、彼女に比肩する者はいない。)

”They seem, from all accounts, happily married.”
(皆の話によれば、彼らは幸せな結婚生活を送っているようだ。)

【類似表現】
by one’s own account
(~の話によると)

※ “one’s” は、人称代名詞の所有格が一般的。
my / your / his / her / their / our / its

前置詞 “by” と 可算名詞 “account” は、
表題と同一用法。ただし、こちらは単数形が常。

たとえ、所有格が複数形 “their” であっても、
“account” のまま。

例えば、以下の英英辞典でも、単数形となっている。
・ Collins の項目立て
“by their own account
・ Macmillan の例文
“By their own account, the politicians wanted
the matter kept secret.”

【関連表現】
“accountable”
https://mickeyweb.info/archives/21196
(責任・説明責任を負う)

“unaccounted for”
https://mickeyweb.info/archives/24131
(行方不明である)

 

 

 

 

 

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