発砲する
銃撃につきまとう表現が、 ” open fire “。
< 2語ワンセット > で、 「 発砲する 」。
本来、この用法は アメリカ英語 とされるが、
現在はニュースで頻用されている。
初めて見聞きすると意味不明かもしれないが、
分かりやすいイメージなので、一度学べば大丈夫。
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これがイメージ。
あくまでイメージ。
実際に射撃してみれば分かるが、銃が
こんな派手な火を発することはない。
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◆ イギリス英語の ” open fire ” は、「 暖炉( の火 )」
も意味する。
可算名詞である。
同じく可算名詞の ” fireplace “( 暖炉 ) の同義語。
【発音】 fáiərplèis
【音節】 fire-place (2音節)
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ニュース用法では、 ほとんど「 銃を撃つ 」。
報道価値 を帯びるゆえなのは、 言うまでもない。
- “The police opened fire on an unarmed man.”
(警官が武器を持たないの男性に発砲した。)
(警察が非武装の男性に発砲した。)
したがって、 本稿でも「 発砲 」 中心に取り上げる。
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” open fire (on something) “
to start shooting at someone or something.
( ロングマン、 LDOCE6 )
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ひぶたをきる【火蓋を切る】
火蓋を開けて、 発火の用意をする。
発砲する。 転じて、 戦闘行為を開始する。
戦端を開く。
「 幕を切って落とす 」 と混同して、
「 火蓋を切って落とす 」 ともいう。
( 広辞苑 第七版 )
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◆ 成り立ちは 「 火蓋を切る 」 に似ている。
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「 火蓋 」 とは、火縄銃の火種が引火しないための
安全装置カバー。
発砲するには、火蓋を開けなくてはならない。
開けて開始 することを「 切る 」と称する。
「 スタートを切る 」 と似通う。
この「 切る 」が、 ” open “。
次に説明するように、” open fire ” と重なる。
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◆ “ open ” には、 形容詞・他動詞・自動詞・名詞がある。
【発音】 óupn
【音節】 o-pen (2音節)
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語源は、古英語「 開ける 」( open )。
語源そのままの「 開いた 」「 オープン 」との共通イメージ
でほぼ一貫しているので、 比較的理解しやすい。
ここでは、他動詞「 始める 」。
開けて開始 する感じ。
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◆ ” fire ” にも、 形容詞・他動詞・自動詞・名詞がある。
【発音】 fáiər
【音節】 fi-re (2音節)
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語源は、 古英語 「 火、炎 」( fȳr )。
こちらも語源に忠実で、多義であるものの、 「 火 」の
有する激しいイメージを貫くので分かりやすい。
ここでは、 名詞 「 発射 」「 射撃 」。
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名詞 ” fire ” は、 可算名詞と不可算名詞を兼ねる。
「 発射 」「 射撃 」 は、不可算名詞 ( uncountable noun )
が通例。
したがって、 無冠詞で用いられる。
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◆ 類似表現を挙げる。
- ” cease fire “ ( 射撃をやめる )
◇ 号令 「 撃ち方止め!」
◇ 1語の可算名詞 ” ceasefire ” は、 「 停戦 」
– - ” return fire ” ( 撃ち返す )
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- ” pour fire “ ( 砲火を浴びせる )
※ 動詞は、すべて他動詞
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◆ ” open fire ” は、「 発射を始める 」「 射撃を始める 」。
端的に 「 発砲する 」。
より抽象的に 「 攻撃する 」 を意味することもあるが、
最近のニュースメディアでは 「 発砲する 」 ばかりの印象。
「 これが現実の姿 」 というのもはばかれるほど、
近年多発しているのが、
- open fire incidents ( 発砲事件 )
殊に、 アメリカの乱射事件 ( shooting spree )
は、 学校及び職場における銃乱射が目立つ。
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◆ 悲しいかな、” open fire ” の <見出し> 抽出は簡単。
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今年2017年に限定しても、無数出てくる。
たった2分の検索で、これだけ 採集 できた。
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< 今年 2017年 ニュース見出し >
- “XX Forces kill three civilians in an open fire incident”
(発砲事件でXX軍が一般市民3名を殺害) ※ 形容詞用法
– - “Gunmen in Halloween masks open fire“
(ハロウィンマスク姿の銃撃犯が乱射)
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(テキサスで男が発砲、20名以上死亡)
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- “XX
(XX軍が攻撃から逃れた一般市民に発砲)
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- “Police mistakenly open fire on actor playing bank robber”
(銀行強盗役の役者に警察が誤って発砲)
– - “Security forces open fire on protesters”
(治安部隊が抗議者に発砲)
– - “An employee open fire on co-workers”
(従業員が同僚に発砲)
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上記例文からも分かるように、標的には対象の前置詞
” on ” が多用される。
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目標の前置詞 ” at ” でも代替可能な場合が大半だが、
” open fire ” では ” on ” がより一般的な印象。–
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◇ 「見出し」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語
【関連表現】
- ” Smoking gun ”
https://mickeyweb.info/archives/10380
( 決定的証拠 )
– - ” Caliber ”
https://mickeyweb.info/archives/11166
( 能力のある )
– - ” deadly force ”
( 殺傷能力のある武器 )
– - ” deadly weapon ”
( 凶器 )
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◆ 最後に、乱射に巻き込まれた際のハウツーをご紹介。
まず、 米連邦政府と米軍機関が公式発表した、啓発ポスターのうち、2枚。
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” How to respond when an active shooter is in your vicinity “
( 銃撃事件への対応 - 自分の周辺に銃撃犯がいる場合 )1. 逃げろ 2. 隠れろ 3. 戦え
https://patriot1tech.com/in-the-news/active-shooter-resources-dhs-gov/
2019年発行
https://www.msc.navy.mil/sealift/2016/January/activeshooter.htm( リンク切れ )
2016年発行
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職場配布用と想定し、 1点目をざっと和訳してみた ( 参考和訳 )。
「 走る 」 のが苦手な年配者などに配慮し、 ” run ” を 「 逃げる 」 と訳した。
動詞 ” run ” には他動詞と自動詞があり、 自動詞 ” run ” は 「 逃げる 」 でも
よく使う。
- ” Run while you can.”
( 逃げられるうちに逃げろ。)
【発音】 rʌ́n
【音節】 run (1音節)
【活用】 runs – ran – run – running
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/ʌ/ は、 「 ア 」 を短く発する短母音 ( short vowel )
で、 口を小さく開ける。
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「 3. 戦う( Fight )」の ” throw items at the active shooter “。
最後の手段として、「 物を投げつける 」ことを推奨するとは …
丸腰でやむを得ないにしても、 訳していて、 つい笑ってしまった。
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◆ こちらは、 避難訓練当日に届いた職場メールの本文。
2021年11月に受信した実物。
自然災害の多い日本には、 火事・地震対策の避難訓練はあるが、
乱射事件のおそれがある国では、 こうした訓練も行われている。
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” Exercise, Exercise, Exercise ” は、「 これは訓練です 」の意。
訓練前に周知するため、 文面のみならず、 館内放送・公共放送など
でも使われる、決まり文句。–
【参考】 ※ YouTube
https://www.youtube.com/results?search_query=%22+Exercise%2C%C2%A0+Exercise%2C%C2%A0+Exercise+%22
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こうして ” Exercise ” を3回反復するパターンが、 最も一般的。
略記は ” EX “。
官公庁や米軍でも使われている。
通りがかりの人を含む、 受け手の誤解と混乱を招かないために、
訓練実施中も、 3回反復をワンセットで繰り返し流したりする。
【発音】 éksərsàiz
【音節】 ex-er-cise (3音節)
語源は、ラテン語 「 訓練した 」( exercitium )。
◆ 2024年5月実施の訓練前。
メールの件名は、 ” EX EX EX SHELTER IN PLACE EX EX EX “。
” Shelter in place ” とは、 「 外出禁止 」 「 屋内退避 」 の発令。
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All messages will begin and end with
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” EXERCISE, EXERCISE, EXERCISE. ”
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” Excercise Excercise Excercise ” を略して、 ” EX EX EX “。
世界中に巣ごもりを強いた ” COVID-19 ” のような感染症の拡大や、
有害な化学物質・放射性物質が放出された際に、 屋内へ避難させる。
【発音】 koʊ.vɪd.naɪnˈtiːn
Coronavirus Disease 2019 ( 新型コロナウイルス感染症 )
【発音】 kəˈroʊ.nəˌvaɪ.rəs
” Shelter in place ” については、 別稿 ” In place ” に詳述した。
◆ 2023年2月実施の訓練前。
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訓練終了の通知。
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Secure From Training Environment
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【発音】 sikjúrl
【音節】 se-cure (2音節)
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「 警報解除 」 で有力なのは、 ” all clear “。
警報解除の信号や合図として使われる言い回し。
メール通知では、
- ” X has declared ALL CLEAR from Lockdown. ”
( Xは、ロックダウンの解除を宣言した。)
” all clear ” は、 検査などに無事通過した時も使われる文言。
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※ 2023年9月 アクセス
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本文には、 こんな業務命令も記載されている。
- “Resume normal operations. ”
( 通常稼働を再開せよ。)
( 通常業務を再開せよ。)
【発音】 rizúːm
【音節】 re-sume (2音節)
◆ ” lockdown ” とは、「 封鎖 」 を意味する 「 ロックダウン 」。
【発音】 lɔ́kdòun
【音節】 lock-down (2音節)
先述の COVID-19 ( 新型コロナウイルス感染症 ) の際は、
「 都市封鎖 」 と和訳されていたが、 カタカナ 「 ロックダウン 」
の方が、 大手メディアでは好まれた模様。
名詞 ” lockdown ” の初出は1974~1975年で、 割かし新しい。
感染病の他にも、 上掲のような安全を脅かす事件発生時に、
特定の場に人々を閉じ込めておくことで、 避難させる目的。
同時に、 立入禁止にして、 外部からの流入を禁じるのが原則。
さらに、 囚人の場合は、 独房への監禁( 独房収容 )を指し、
これまた安全確保を旨とする。
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◆ 2023年5月実施の訓練前。
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◆ 日本の学校でも行われる消防訓練は、” a fire drill “。
前掲の赤枠のメール2件にも、” part of a drill ” ( 訓練の一部 )
と書いてある。
【発音】 dril
【音節】 drill (1音節)
反復練習する 「 ドリル 」、 穴あけ工具の「 ドリル 」と同一。
語源は、オランダ語 「 穴をあける 」( drillen )。
◆ 以下、 ” Smoking gun ” より再掲。
< 銃 >
- gun ( 銃 ) ※ 頻出
- handgun ( 拳銃 )
- machine gun ( 機関銃 )
- pistol ( 拳銃 )
- revolver ( 回転式連発拳銃 )
- shotgun ( 散弾銃 )
- open fire ( 発砲する )
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< 軍事・行政用語 >
” Japan’s Shinzo Abe Fatally Shot in the Heart With Homemade Gun ”
https://www.thedailybeast.com/shinzo-abe-reportedly-shot-in-the-chest-on-nara-street-during-speech-and-rushed-to-hospital
2022年7月8日付
【参照】 「 Gmail 」で作る単語帳
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【参考】
アメリカ合衆国憲法 修正第2条 ( 武器保有権 )
Right to Bear Arms
Constitution of the United States Second Amendment
A well regulated Militia, being necessary to the security of a free State,
the right of the people to keep and bear Arms, shall not be infringed.Ratified December 15, 1791.
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< 参考和訳 >
武器保有権
アメリカ合衆国憲法 修正第2条
規律ある民兵団は、 自由な国家の安全にとって必要であるため、
国民が武器を保有し携行する権利を侵してはならない。
1791年12月15日成立
https://constitution.congress.gov/constitution/amendment-2/
https://constitutioncenter.org/interactive-constitution/amendment/amendment-ii
https://americancenterjapan.com/aboutusa/laws/2569/
趣旨は 「 自由を守る 」 ことであり、 「 国民の権利 」。
自由を脅かすあらゆる敵から、 自らを守るため国民が武器を保有する権利。
大まかに知るだけでも、 いかに繊細で難しい問題か察することができよう。