プロ翻訳者の単語帳

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In place

      2020/09/18

(1)  正しい位置に     (2)  準備万端に     (3)  実施されて

上記3つの「状態」を表す<2語ワンセット>。

「状態」なので、形容詞 の役割を担う熟語。

(1) → (2) → (3) と順繰りに派生した。

成り立ちは分かりやすい。

この流れをイメージできるよう、どでかく図示してみたい。

(1)  正しい位置に

手始めに、パズルで例える。

目的の場所・位置(place)に、
ぴったりはめこむ(in)状態。

これが “in place” 本来の意味である。

まさに額面通り。

続く(2)と(3)は、ここから発展した。

正しい位置に、ぴったり配置


こうして、あの手この手で万全の策を講ずるならば、
結果的に用意万端ととのう。

そこから「準備万端に」の意味合いに。


(2)  準備万端に

準備ばっちり


「準備万端」の勢いに乗って、しっかり行動に移す

「実施された」「施行された」状態に至る。

かくして、そのまま意味をなすことに。


(3)  実施されて

The new Reiwa era is now in place.
【墨書出典】  https://www.sankei.com/politics/news/190419———-


以上3つが “in place” の主な意味。


◆  上図はイメージに過ぎない。

それでも、最初に “in place” の感触をざっくりつかめれば、
話は円滑に進む。 視覚的な手掛かり
の一助になればと願う。

さっそく、語義を逐一検討していこう。

 

(1) 正しい位置に  


目的の場所・位置(place)に、
ぴったりはめこむ(in)状態。

◆  “place“ には、名詞・他動詞・自動詞がある。

【発音】   pléis  (1音節)

語源は、ラテン語「広い通り」(plātea)。

– 名詞「場所」「位置」「地域」「土地」「店」
– 他動詞「置く」「任命する」「注文する」
– 自動詞「入賞する」「好成績を収める」

名詞 “place” には、可算名詞と不可算名詞がある。

◆  “in place” の場合、無冠詞から推知されるように、不可算名詞

正しい位置に、ぴったり配置」という 抽象概念

としての位置だから、「抽象名詞」。

そのため、不可算。

適材適所 と似通う表現
→  特定の場所を、取り立てて指し示す意図はない

■ 「場違いの “out of place(後述)
■ 「時間と場所 “
time and place

と同類の “place”。

ぼんやりして、つかみどころのない「抽象名詞」
なので、「不可
算名詞」である。

“time” も “place” も、可算・不可算兼用だが、ここでは不可算。

不可算ゆえに、不定冠詞 “a” はつかない。

◆  一方、”a better place” や “final resting place” は、

用途を特定・限定した 具体的な場所 を指すため、可算名詞

の “place” となる。

こうした視座は、可算名詞と不可算名詞の区別 の要点そのもの。
中級学習者 の実力相応の難易度なので、必ず押さえておきたい。

初学者・初級者 の視点であれば、もっとシンプルに
目に見えるか」「形があるか」「絵に描けるか


【参考】     ※  外部サイト
可算と不可算を見分ける簡単なコツ
可算と不可算を兼ねる名詞について
可算と不可算についてよくある質問
不可算名詞は「物質」「抽象」「固有」の3つ

【参照】   “take action“、  “acting“、  “paperwork

こちらも、同様。

◇  I need to find love !   A love that will last forever.

  • 1文目の “love”:
    ぼんやりして、つかみどころのない「抽象名詞」の「愛」
    → 「不可算名詞」だから、無冠詞
  • 2文目の “love”:
    「永遠の愛」として特定・限定した、具体的な「愛」
    → 「可算名詞」だから、”a” つき

◇  を見つけなければ   永遠に続くを。

そんな「愛」は、衆生界では得難いことからも想像つくだろうが、
つかみどころのない「抽象」「不可算」こそ、名詞 “love” の原則。

もっとも、「恋人」を意味する “love” なら、基本は「可算名詞」。
本物の「恋人」かは不問。  一応、可視の生物ということで、可算。

【発音】   lʌv  (1音節)


◆  不可算名詞の “place”(場所、位置) に付随する “in” は、
これまた場所・位置を表す前置詞。

「~に」「~で」「~の中に」などと和訳される。
前置詞 “in” の最も基本となる意味である。

“in place” を直訳すると、「場所に」「場所で」。

(1)では「正しい位置に、ぴったり配置」の文脈で使う。

  • “The computers are all in place.”
    (コンピュータはすべてそろっています。)
  • “I screwed the lid in place.”
    (蓋を正しい場所にねじ止めした。)

  • “He taped tiles back in place.”
    (彼はタイルを元通りに貼り直した。)

  • “Every hair on her head is in place.”
    (彼女の髪はきれいに整えられている。)

  • “All the necessary parts are in place.”
    (必要な部品のすべてがそろっている。)
  • “My dislocated jaw is back in place.”
    (外れた顎が元の位置
    に戻った。)


◆  “COVID-19” 関連の頻出表現        ※  2020年8月追記

【発音】   ˌkoʊ.vɪd.naɪnˈtiːn

Coronavirus Disease 2019 (新型コロナウイルス感染症)

【発音】  kəˈroʊ.nəˌvaɪ.rəs


2020年3~7月の米国発ニュース見出しをご案内する。

“X” とは、外出禁止令の対象地域。

  • “X ordered to shelter in place
  • “X directs all personnel to Shelter In Place
  • “X residents need to remain Sheltered-In-Place
  • “X remains in a Shelter-In-Place posture”
  • “Continued Shelter-in-Place for X for 4/1 through 4/5″
  • “X discusses extension to shelter in place
  • “X won’t be lifting shelter-in-place orders anytime soon”
  • “X will be lifting the shelter in place very soon”
  • “X ordered personnel to shelter in place for four hours”

■  shelter in place
■  shelter-in-place

  • 外出禁止
  • 屋内退避

今回の “COVID-19” のような感染症の拡大や、有害な
化学物質・放射性物質が放出された際に、屋内へ避難すること。

  • “Execute your shelter-in-place procedures immediately.”
    (屋内退避の手続きを直ちに実行すること。)
  • Shelter-In-Place order remains in effect
    until further notice.”
    (別途通知するまで、外出禁止令は効力を有する。)
  • “For now, our Shelter-In-Place order stays in effect.”
    (当面、外出禁止令は効力を有する。)

米国の公衆衛生(public health) 用語として確立している。


◆  2020年3月下旬に、私が受信したメール文言をご紹介。

Subject : Shelter-in-Place for X

Residents should remain in their homes
to the maximum extent possible.
Remain in place and wait for further instructions.

(件名 : X地区は外出禁止
住民は、可能な限り自宅にいること。
その場で、次の指示を待つこと。)

行政などによる警告・勧告(warning)は、

■  shelter in place warning
■  shelter-in-place warning

略して、

■  SIP
■  SPW

  • 外出禁止令
  • 屋内退避令

この用法の “in place” は、(1) 正しい位置に

(2) 準備万端に としても、概ね筋は通る。

(3) 実施されて でも通じそうだが、本来の意味合いは次の通り。

米疾病対策センター(CDC)の解説から一部引用したものである。

  • “Once you and your family are in place,
    listen carefully for new information. ”
    (あなたとご家族が適切な場所を確保した後は、
    最新情報の収集に努めてください。)
    https://emergency.cdc.gov/shelterinplace.asp

2020年4月、地球をうねる潮流は「人類みな巣ごもり」か。

  • “People around the world are sheltering in place.”
    (世界中の人々が外出を控えている。)

◆  加えて、2020年3月発表のニュース見出しがこちら。

  • “Lockdown in place until June”
    (6月まで都市封鎖を実施)
  • “Lockdown to be in place until at least June,
    warns government scientist”
    (少なくとも6月まで都市封鎖を実施、政府の科学者が警告)

上記2つの “in place” は、(3) 実施れて


◆ “shelter in place” の趣旨は、

安全な場所を目指して「移動」することではない

そうではなく、

■  Get Inside, Stay Inside
■  Stay Indoors

現在いる建物から「動かない」こと。

外出時なら、最寄りの屋内が原則。

■  Stay at home
■  Stay-at-home
■  Stay home

現実として、自宅内がほとんど。

■  Stay in place
■  Stay Put

その場から動くな。
じっとしてろ。

 

Simon Winchester, ”The Meaning of Everything: The Story of the Oxford English Dictionary“ Oxford University Press  (2d ed. 2018).

学帽をきっちりかぶる (”academic cap firmly in place“)、
OED” 編集主幹の James Murray 博士  (1837-1915)

独学で言語学を学んだ偉人。 この著作の主人公の1人。

博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話』(邦題)

1998年に英国で刊行されたベストセラー。 2019年に映画化。


■  OED (オーイーディー)

=  “The Oxford English Dictionary” (オックスフォード英語辞典)

[公式サイト] →   http://www.oed.com/

1884年にイギリスで刊行が始まり、最新版の第2版は1989年刊。

全20巻、2万1730頁、29万1500の見出し語、62kg。
世界最大の英語辞典である。

語義の配列は、頻出順ではなく、発生順の「歴史主義」。
語義を系統的にたどれる利点がある。

▼「縮刷版」及び「CD-ROM版」も発売されている ▼

[両方入手済み] →   辞書の「自炊」と辞書アプリ

in place

  • すっぽりかっちり頭に被さる帽子 … (1) 正しい位置に
  • “as a symbol” 以下が帯びる含み … (2) 準備万端に

(2) 準備万端に  


時々、(1)との違いがはっきりしないケースがある。

特に、主体が人間の場合。

例えば、

  • “The stage is set, the players are in place.”
  • “All the awardees are in place.”
  • “With all the performers in place, we are ready to rehearse.”

ざっと読むと、全員が「定位置にいる」のか「準備万端」なのか、
よく分からない。

  ばんたん【万端】

  • (その事に関する)あらゆる事柄。
    また、あらゆる手段。万般。
    (広辞苑 第七版)
  • (1) さまざまのものごと。一切。
    (2)〔俗〕〔「万端ととのう」から誤解して〕
    ととのっていること。万全。
    (三省堂国語辞典 第七版)

一切の準備が整った様子が「準備万端」。
各自が「持ち場にいる」ことが前提となる。

無生物と異なり、正しい位置に配置された効果として、
(2)の「準備万端に」の和訳が多用される印象がある。

とすれば、こんな風に訳せる。

  • “The stage is set, the players are in place.”
    (舞台も演者も準備万端だ。)
    (お膳立ては整い、人も準備万端だ。)
  • “All the awardees are in place.”
    (受賞者の顔ぶれはそろった。)

  • “With all the performers in place, we are ready to rehearse.”
    (すべての演者がそろい、リハーサルの用意ができている。)

(1)も(2)も、英語なら同じ “in place”。
どちらも「正しくそろっている」ことに違いない。

矛盾が生じにくいため、和訳者の解釈に任されたりもする。
この辺りは、そう神経質にならなくてもよいだろう。

その反面、「準備万端に」では不自然になる例はある。
無生物を主題とする(1)の文例を再掲すると、

  • “The computers are all in place.”
  • “I screwed the lid in place.”
  • “He taped tiles back in place.”
  • “Every hair on her head is in place.”
  • “All the necessary parts are in place.”
  • “My dislocated jaw is back in place.”

ひとつ挙げると、

  • “Every hair on her head is in place.”
    (彼女の髪はきれいに整えられている。)

頭髪が一糸乱れぬ姿であるが、これを「準備万端」
を用いて訳すとすれば「彼女の髪は準備万端だ。」

きれいに整っている有様は伝わるものの、描写があいまいに。
こうなると「あるべき位置にある」ニュアンスが低減してしまう。

つまり、「場所・位置」としての “place” の存在感が強めなのが(1)。

(1)こそが、”in place” の「本来の意味」かつ「額面通り」と
先述したのは、こういうことである。

 

(3) 実施されて  


こちらは(2)以上に、「場所・位置」としての “place” から遠ざかる。

確かに、毛色の変わった意味合いである。
しかし、意味の成り立ちの把握は難しくはない。

繰り返すと、

「準備万端」の勢いに乗って、しっかり行動に移すと、
「実施された」「施行された」状態に至る。

3つの図を見返していただければと思う。


◆  ビジネス場面において
は、この(3)が際立つ感がある。

「実施された」「施行された」の意味からしてビジネス向け。

  じっし【実施】

  • 計画などを実際に執り行うこと。
    (大辞林 第三版)
  • 実際に施行すること。実行。
    (精選版 日本国語大辞典)

  しこう【施行】

  • (1) 実際に行うこと。実施。
    (2) 公布された法令の効力を発揮させること。
    「執行」と区別するために官庁などでは「せこう」
    ということが多い。
    (明鏡国語辞典 第二版)
  • (1) ほどこし行なうこと。政策などを
    実行すること。せぎょう。じぎょう。
    (2) 公布された法令の効力を現実に発生させること。
    〔補注〕法律用語としては「せこう(施行)」と読む
    慣用もある。
    (精選版 日本国語大辞典)
  • “The current Reiwa era has been in place since May 2019.”
    (現行の令和は、2019年5月から施行されている。)

  • “The new system should be fully in place by next week.”
    (来週までに、新しいシステムは完全に実施されるはず。)
  • “This policy was already in place when I got hired.”
    (この方針は、私が採用された時点で既に実施されていた。)

  • “Typhoon Warnings are in place across the Kanto area.”
    (関東地区では台風警報が発令されています。)

  • “Make sure your business continuity plan is in place.”
    (貴社の事業継続計画が実施されていることを確認してください。)

  • “Programs are in place to address students’ concerns.”
    (生徒の懸念に対処するため、各種プログラムが実施されています。)
  • “The details of the plan are not in place yet.”
    (その計画の詳細は、まだ実施されていない。)

  • “We don’t have any rules in place to deal with troubles.”
    (トラブル対応のルールが何も実施されていない。)
  • “A curfew will be in place between 9 p.m. and 6 a.m.”
    (午後9時から翌朝6時まで、夜間外出禁止令が実施される。)

  • “All the restrictions will still be in place.”
    (すべての制限を引き続き実施いたします。)

  • “I hope to have that contract in place by the end of this month.”
    (今月末までに、その契約が実施されていることを希望している。)

  • “There are no safeguards in place to ensure quality.”
    (品質保証のための対策は実施されていない。)
  • “We will continue essential activities with safety measures
    in place.”
    (安全対策を講じた上で、弊社は必要不可欠な活動を継続します。)
  • “Are rescue procedures are in place in the event of an earthquake ? ”
    (地震発生時の救出手順は実施されているか。)

  • “What procedures do you have in place to minimize
    the spread of infections aboard your ships ?
    (感染の拡大を最小限に抑えるため、皆様の船上では
    どのような手順を実施されておられるのでしょうか。)

「実施」や「施行」が、カジュアル会話にそぐわないのは、
日本語でも同じ。

先の(1)(2)に比べて、使用場面が限定されることになる。
その結果、(3)はビジネス用法で引き立つことになる。

◆  これまで見てきた(1)から(3)は、
4大学習英英辞典(EFL辞典)でどう説明されているか。

各語釈と突合の上、青字で付番してみる。

“in place”

  • a) in the correct position→(1)
    b) existing and ready to be used.  →(3)
    (LDOCE6、ロングマン)
  • 1. (also into place)
    in the correct position; ready for something.  →(1)(2)
    2. working or ready to work.  →(3)
    3. (North American English)
    =on the spot (3) [= in one exact place,
    without moving in any direction.]「その場で」→(1)に近い
    (OALD9、オックスフォード)
  • If something is in place, it is in its usual or
    correct position→(1)
    Organized.  →(2)
    (CALD4、ケンブリッジ)
  • If something is in place, it is in its correct or usual position.
    If it is out of place, it is not in its correct or usual position.  →(1)
    – If something such as a law, policy, or an administrative
    structure is in place, it is working or able to be used.  →(3)
    (COBULD9、コウビルド)

※  ハイライト・赤字・下線は引用者

英語学習者向けのEFLは、やはり基本に忠実。
一様に 「(1) 正しい位置に」を筆頭に据える。

すなわち、”correct position“。

至る所で見聞きする「日常英会話」レベルの表現。
out of place” が反意語と書いてある(COBUILD9)。

先ほど、不可算用法の “place” の例として、こう記載した。

■ 「場違いの “out of place”

他方、(2)と(3)は、たいてい仕事関連で接する。

自分がビジネスの世界に身を置くためか、”in place”
と来たら、「位置」云々よりは「準備万端」または「実施」。

“COBUILD9” の下線部、”a law, policy, or an administrative
structure(法律、方針、管理体制)などの堅めの内容は、
「日常英会話」ではなく「ビジネス英語」に属するもの。

“CALD4” は(3)に触れていないので、兄弟辞典を援用する。

“in place”

和訳時の(1)と(2)と打って変わり、4大EFL辞典を含む
英英辞典の語釈では、(2)と(3)の区別に難儀した。

例文を決め手に分別してみたが、幾分心許ない。
それでも、3語義の大筋を示す趣旨は達成できたと考える

 

◆  “in place” は、<2語ワンセット>で「状態」を表すと冒頭で述べた。

それゆえ「形容詞の役割」を担う熟語である点にも言及した。

その「状態」とは、図示した3つが中心。

(1) 正しい位置に
(2) 準備万端に
(3) 実施されて

形容詞ゆえに、「be動詞」に続くのが基本パターンになる。

本稿で示した例文でも、be動詞(※) の直後の “in place”
が過半数を占める。 ぜひご確認いただきたい。

(※)be、am、was、been、will be、is、were、are

なぜ、形容詞が「be動詞」に続くのかは、”aware”、”vocal about”、
conclusive” で詳述した。

英文法の基本であるので、ぴんとくることがなければ、
この機会におさらいしていただくとよいかもしれない。

 

【関連表現】

“in place of – ”
(~の代わりに)

 

 

 

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