プロ翻訳者の単語帳

Professional Interpreter / Translator at Government Agency

Bear with me.

      2023/04/11

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 5 minutes

ご辛抱願います。

長い会議で、 時々耳にする。

「 ご辛抱 」 同様、 やや堅めの表現である。

日本の辞書にはあまり紹介されていない模様。

◆  ” bear ” には、 自動詞と他動詞がある。

【発音】  bέər  (1音節)
【活用形】  bears – borebornebearing

古英語 「 産む 」( beran )が原義。

片や、 動物のクマ( 熊 )は、 古英語「 茶色い動物 」( bera )が語源。

 

発音が同じ ” bear “( 熊 ) は、語源の異なる別物

  •  ” poke the bear ”  ( トラブルを招く )
    →  直訳  「 熊を突っつく 」

    【発音】  póuk  (1音節)

 

◆  自動詞も他動詞も、 非常に多義。

どれも意味がかけ離れているので、 かなり厄介。

ここまで分かりにくい動詞は珍しい印象。

どちらかと言えば、他動詞中心の動詞であり、
自動詞の記載が欠けている辞書はあっても、
他動詞  ” bear ”  がない辞書は見当たらない。

柱となる語義を各5つ挙げる。

–  他動詞 「 産む 」「 耐える 」「 運ぶ 」「 抱く( 後述 ) 」「 持つ( 後述 ) 」
–  自動詞 「 もたれかかる 」「 進む 」「 位置する 」「 産む 」「 耐える 」

表題 ” bear with me ” の直訳は、「 私に我慢して」。

” bear with me ” を、 自動詞( vi  =  verb intransitive
の例文に入れている辞書もある。

例えば、こちらの 『 研究社 新英和大辞典 第6版 』。

自動詞 vi  =  verb intransitive  



『 研究社 新英和大辞典 第6版 』
研究社、2002年刊 ( ロゴヴィスタ  アプリ版 )
…  ” bear 1 ”  の語釈より



一方、他動詞の句動詞( phrasal verb transitive )とする辞書もある。

すなわち、句他動詞( transitive phrasal verb )。

例えば、マクミランのオンライン辞書。

句自動詞 phrasal verb  transitive


https://www.macmillandictionary.com/dictionary/british/bear-with

※  2022年6月16日 アクセス

◆  他動詞と自動詞は、 目的語・前置詞の有無 で区別するのが基礎知識。

動詞直後に目的語あり  →  他動詞
動詞直後に前置詞あり  →  自動詞

自動詞は、自己完結するから「 動詞 」。
他動詞は、他者に影響を与えるので「 動詞 」。

けれども、 実際にはそう単純ではなく、 辞書によって解釈が分かれる
ケースは少なくない。

時に、 目的語・前置詞の有無で判断できないあいまいな要素も帯びる
ことは、 中級学習者  
であれば覚えておきたい。

自他動詞の別を明記しない有名どころの辞書( COBUILD など )の
存在する一因となっているかもしれない。

初学者・初級者は、 上記の原則通りでよい。

 

◆  ” bear with – ” は、 4大学習英英辞典 ( EFL辞典 )のすべてに、
句動詞 ( phrasal verb ) として項目立てされている。


■  bear with  somebody / something

1.  bear with me spoken used to ask someone politely to
wait while you find out information, finish what you are doing etc.
2.  to be patient or continue to do something difficult or unpleasant.

( LDOCE6、ロングマン )

■  bear with  somebody / something

​to be patient with somebody/something.

( OALD10、オックスフォード )

■  bear with  somebody

to be patient and wait while someone does something.

( CALD4、ケンブリッジ )

■  bear with

If you ask someone to bear with you, you are asking them
to be patient.

( COBUILD9、コウビルド )

※  ハイライトは引用者


◆  4辞書に共通する  ” patient “( ハイライト部分 )は、
形容詞 「 我慢強い 」「 辛抱強い 」の意。

語源は、 ラテン語 「 苦しむ 」 ( patiēns )。

これは、 ラテン語  ” patī ” ( 苦しむ )の現在分詞形である。

主な同語源は、 ” passion ”  と  ” passive “。

【発音】  péiʃənt
【音節】  pa-tient  (2音節)

どの語釈も、” be patient ” と書いてあり、
これが  ” bear with ” の意味につながる。

” be patient ” は、「 我慢強くなって 」「 辛抱強くなって 」。

” be ” は、 状態の自動詞「 である 」。

命令・要求の自動詞「 ~ しなさい 」や
助動詞「 ~ してください 」もあるものの、
和訳時の意味合いは、 概ね似通う基礎文法。

” patient ”  は形容詞なのに、 ” bear ” は動詞。

英語の形容詞は、 日本語の形容詞と異なり、
動詞がつかない限り、 述語になりえない。

だから、 動詞 ” be ” を伴い、” be patient ” となる。

結果的に、 次の2つはほぼ等しいと4辞書は述べている。

  • 動詞  “ be ” + 形容詞  ” patient
  • 動詞  ” bear

日英の形容詞の相違は、” aware ” にて詳説している。

◆  ” bear with me ” は、 性質的に「 お願い 」である。

そのため、「 お願い 」 の副詞または間投詞  ” please ” を、
前後に置く使用場面が目立つ。

【参照】  「 半命令形  Please 」 に注意


” bear with ” に続く人称代名詞は、 目的格

人称代名詞であれば、
me / you / him / her / us / them / it。

発言趣旨から、よく使われるのは、 ” I ”  の目的格  ” me “。

複数であれば、 ” we ”  の目的格  ” us “。

  • “Please bear with us.”

” with ” は、対象の前置詞  「 ~ に 」「 ~ に対して 」。

  • “Please bear with me for a moment as I explain this.”
    (この件を説明する少しの間、ご辛抱願います。)
  • “Just bear with me while I talk to you.”  ※  冗談っぽく
    (私が話す間、ちょいと我慢しておくれ。)
  • “Please bear with me even if you don’t want to.”
    (嫌でもあっても、どうぞご辛抱ください。)
  • ” We’ll have all the paperwork finished if you
    just bear with me for a few more minutes.”
    ( あと数分ご辛抱いただければ、事務手続きは終わります。)
  • “I am new here, so bear with me for a while please.”
    (私はここに来たばかりなので、しばらくご辛抱いただければ幸いです。)

【関連表現】

  • bear in mind ”    ※  他動詞 「 抱く 」
    ( 心に留める )
  • ” a / the right to bear arms ”    ※  他動詞 「 持つ 」
    ( 武器を所持する権利 ) ( 武器保有権 )   

他動詞 vt  verb transitive



『 研究社 新英和大辞典 第6版 』
研究社、2002年刊 ( ロゴヴィスタ  アプリ版 )
…  ” bear 1 ”  の語釈より

【参考】    ※  他動詞 「 持つ 」   

アメリカ合衆国憲法 修正第2条 ( 武器保有権 )

Right to Bear Arms
Constitution of the United States Second Amendment

A well regulated Militia,  being necessary to the security of a free State,
the right of the people to keep and bear Arms,  shall not be infringed.

Ratified December 15, 1791.


参考和訳 >

武器保有権

アメリカ合衆国憲法 修正第2条

規律ある民兵団は、 自由な国家の安全にとって必要であるため、
国民が武器を保有し携行する権利を侵してはならない。

1791年12月15日成立

https://constitution.congress.gov/constitution/amendment-2/
https://constitutioncenter.org/interactive-constitution/amendment/amendment-ii
https://americancenterjapan.com/aboutusa/laws/2569/

 

趣旨は、 「 自由を守る 」 ことであり、 「 国民の権利 」。

自由を脅かすあらゆる敵から、 自らを守るため国民が武器を保有する権利。

大まかに知るだけでも、 いかに繊細で難しい問題か察することができよう。

【参考】    ※  外部サイト

 「 米国の銃問題 」 のニュース ( CNN )

https://www.cnn.co.jp/topic/us-gun-violence/

 

 

CATEGORY ( カテゴリー )

Sponsored Link




 - 英語, 英語フレーズ

プロ翻訳者の単語帳をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む