Open fire
2022/08/03
発砲する
銃撃につきまとう表現が ” open fire “。
< 2語ワンセット > で 「 発砲する 」。
本来、この用法は アメリカ英語 とされるが、
現在はニュースで頻用されている。
初めて見聞きすると意味不明かもしれないが、
分かりやすいイメージなので、一度学べば大丈夫。
これがイメージ。
あくまでイメージ。
実際に射撃してみれば分かるが、銃が
こんな派手な火を発することはない。
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◆ イギリス英語の ” open fire ” は、「 暖炉( の火 )」
も意味する。
可算名詞である。
同じく可算名詞の ” fireplace “( 暖炉 ) の同義語。
【発音】 fáiərplèis
【音節】 fire-place (2音節)
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ニュース用法では、ほとんど「 銃を撃つ 」。
報道価値 を帯びるゆえなのは、言うまでもない。
- “The police opened fire on an unarmed man.”
(警官が武器を持たないの男性に発砲した。)
(警察が非武装の男性に発砲した。)
したがって、本稿でも「 発砲 」中心に取り上げる。
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” open fire (on something) “
to start shooting at someone or something.
( ロングマン、 LDOCE6 )
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ひぶたをきる【火蓋を切る】
火蓋を開けて、発火の用意をする。
発砲する。転じて、戦闘行為を開始する。
戦端を開く。
「 幕を切って落とす 」と混同して、
「 火蓋を切って落とす 」ともいう。
( 広辞苑 第七版 )
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◆ 成り立ちは「 火蓋を切る 」に似ている。
–
「 火蓋 」とは、火縄銃の火種が引火しないための
安全装置カバー。
発砲するには、火蓋を開けなくてはならない。
開けて開始 することを「 切る 」と称する。
「 スタートを切る 」と似通う。
この「 切る 」が、 ” open “。
次に説明するように、” open fire ” と重なる。
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◆ “ open ” には、 形容詞・他動詞・自動詞・名詞がある。
【発音】 óupn
【音節】 o-pen (2音節)
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語源は、古英語「 開ける 」( open )。
語源そのままの「 開いた 」「 オープン 」との共通イメージ
でほぼ一貫しているので、 比較的理解しやすい。
ここでは、他動詞「 始める 」。
開けて開始 する感じ。
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◆ ” fire ” にも、形容詞・他動詞・自動詞・名詞がある。
【発音】 fáiər
【音節】 fi-re (2音節)
–
語源は、古英語「 火、炎 」( fȳr )。
こちらも語源に忠実で、多義であるものの、「 火 」の
有する激しいイメージを貫くので分かりやすい。
ここでは、名詞 「 発射 」「 射撃 」。
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名詞 ” fire ” は、 可算名詞と不可算名詞を兼ねる。
「 発射 」「 射撃 」は、不可算名詞が通例。
したがって、 無冠詞で用いられる。
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◆ 類似表現を挙げる。
- ” cease fire “ ( 射撃をやめる )
◇ 号令 「 撃ち方止め!」
◇ 1語の可算名詞 ” ceasefire ” は、 「 停戦 」
– - ” return fire ” ( 撃ち返す )
–
- ” pour fire “ ( 砲火を浴びせる )
※ 動詞は、すべて他動詞
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◆ ” open fire ” は、「 発射を始める 」「 射撃を始める 」。
端的に 「 発砲する 」。
より抽象的に 「 攻撃する 」 を意味することもあるが、
最近のニュースメディアでは 「 発砲する 」 ばかりの印象。
「 これが現実の姿 」 というのもはばかれるほど、
近年多発しているのが、
- open fire incidents ( 発砲事件 )
殊に、 アメリカの乱射事件 ( shooting spree )
は、 学校及び職場における銃乱射が目立つ。
【参考】 ※ 外部サイト
「 米国の銃問題 」 のニュース ( CNN )
https://www.cnn.co.jp/topic/us-gun-violence/
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◆ 悲しいかな、” open fire ” の <見出し> 抽出は簡単。
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今年2017年に限定しても、無数出てくる。
たった2分の検索で、これだけ 採集 できた。
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< 今年 2017年 ニュース見出し >
- “XX Forces kill three civilians in an open fire incident”
(発砲事件でXX軍が一般市民3名を殺害) ※ 形容詞用法
– - “Gunmen in Halloween masks open fire“
(ハロウィンマスク姿の銃撃犯が乱射)
–
(テキサスで男が発砲、20名以上死亡)
–
- “XX
(XX軍が攻撃から逃れた一般市民に発砲)
–
- “Police mistakenly open fire on actor playing bank robber”
(銀行強盗役の役者に警察が誤って発砲)
– - “Security forces open fire on protesters”
(治安部隊が抗議者に発砲)
– - “An employee open fire on co-workers”
(従業員が同僚に発砲)
–
上記例文からも分かるように、標的には対象の前置詞
” on ” が多用される。
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目標の前置詞 ” at ” でも代替可能な場合が大半だが、
” open fire ” では ” on ” がより一般的な印象。–
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◇ 「見出し」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語
【関連表現】
- ” Smoking gun ”
https://mickeyweb.info/archives/10380
( 決定的証拠 )
– - ” Caliber ”
https://mickeyweb.info/archives/11166
( 能力のある )
– - ” deadly force ”
( 殺傷能力のある武器 )
– - ” deadly weapon ”
( 凶器 )
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◆ 最後に、乱射に巻き込まれた際のハウツーをご紹介。
まず、 米連邦政府と米軍機関が公式発表した、啓発ポスターのうち、2枚。
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” How to respond when an active shooter is in your vicinity “
( 銃撃事件への対応 - 自分の周辺に銃撃犯がいる場合 )1. 逃げろ 2. 隠れろ 3. 戦え
https://patriot1tech.com/in-the-news/active-shooter-resources-dhs-gov/
2019年発行
https://www.msc.navy.mil/sealift/2016/January/activeshooter.htm(リンク切れ)
2016年発行
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職場配布用と想定し、 1点目をざっと和訳してみた ( 参考和訳 )。
「 走る 」のが苦手な年配者などに配慮し、 ” run ” を「 逃げる 」と訳した。
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「 3. 戦う( Fight )」の ” throw items at the active shooter “。
最後の手段として、「 物を投げつける 」ことを推奨するとは …
丸腰でやむを得ないにしても、 訳していて、 つい笑ってしまった。
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◆ こちらは、 避難訓練当日に届いた職場メールの本文。
2021年11月に受信した実物。
自然災害の多い日本には、 火事・地震対策の避難訓練はあるが、
乱射事件のおそれがある国では、 こうした訓練も行われている。
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” Exercise, Exercise, Exercise ” は、「 これは訓練です 」の意。
訓練前に周知するため、 文面のみならず、 館内放送・公共放送など
でも使われる、決まり文句。–
【参考】 ※ YouTube
https://www.youtube.com/results?search_query=%22+Exercise%2C%C2%A0+Exercise%2C%C2%A0+Exercise+%22
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こうして ” Exercise ” を3回反復するパターンが、 最も一般的。
官公庁や米軍でも使われている。
通りがかりの人を含む、 受け手の誤解と混乱を招かないために、
訓練実施中も、 3回反復をワンセットで繰り返し流したりする。
【発音】 éksərsàiz
【音節】 ex-er-cise (3音節)
語源は、ラテン語 「 訓練した 」( exercitium )。
◆ ” lockdown ” とは、「 封鎖 」を意味する「 ロックダウン 」。
2020~2022年、COVID-19( 新型コロナウイルス感染症 )の際は、
「 都市封鎖 」 と和訳されていたが、 カタカナ「 ロックダウン 」
の方が、 大手メディアでは好まれた模様。
名詞としての初出は1974~1975年で、 割かし新しい。
感染病の他にも、 上掲のような安全を脅かす事件発生時に、
特定の場に人々を閉じ込めておくことで、 避難させる目的。
同時に、立入禁止にして、外部からの流入を禁じるのが原則。
【発音】 lɔ́kdòun
【音節】 lock-down (2音節)
さらに、 囚人の場合は、 独房への監禁( 独房収容 )を指し、
これまた安全確保を旨とする。
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◆ 日本の学校でも行われる消防訓練は、” a fire drill “。
前掲メールにも、” part of a drill ” ( 訓練の一部 ) と書いてある。
【発音】 dril
【音節】 drill (1音節)
反復練習する 「 ドリル 」、 穴あけ工具の「 ドリル 」と同一。
語源は、オランダ語 「 穴をあける 」( drillen )。
◆ 以下、 ” Smoking gun ” より再掲。
< 銃 >
- gun ( 銃 ) ※ 頻出
- handgun ( 拳銃 )
- machine gun ( 機関銃 )
- pistol ( 拳銃 )
- revolver ( 回転式連発拳銃 )
- shotgun ( 散弾銃 )
- open fire ( 発砲する )
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< 軍事・行政用語 >
” Japan’s Shinzo Abe Fatally Shot in the Heart With Homemade Gun ”
https://www.thedailybeast.com/shinzo-abe-reportedly-shot-in-the-chest-on-nara-street-during-speech-and-rushed-to-hospital
2022年7月8日付
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【参考】
アメリカ合衆国憲法 修正第2条 ( 武器保有権 )
Right to Bear Arms
Constitution of the United States Second Amendment
A well regulated Militia, being necessary to the security of a free State,
the right of the people to keep and bear Arms, shall not be infringed.Ratified December 15, 1791.
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< 参考和訳 >
武器保有権
アメリカ合衆国憲法 修正第2条
規律ある市民軍は、自由な国家の安全のために必要であるため、
国民が武器を保有し携行する権利は、これを侵してはならない。
1791年12月15日成立
https://constitution.congress.gov/constitution/amendment-2/
https://constitutioncenter.org/interactive-constitution/amendment/amendment-ii
https://americancenterjapan.com/aboutusa/laws/2569/