( 放送禁止用語を 自主規制音で ) ピーと消す
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CNN were unable to bleep out the expletives
on live television.
(CNNは、テレビの生放送で卑語を消せなかった。)NEW YORK DAILY NEWS
2017年1月21日付“expletive“ = 卑語(可算名詞)
【発音】 éksplətiv
【音節】 ex-ple-tive (3音節)【YouTube】
CNN airs Madonna saying “fuck” three times
(マドンナの3度の “fuck” 発言を、CNNがそのまま放送)
https://www.youtube.com/watch?v=mj9nZmjMxkk
全長 24秒 ※ リンク切れ
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マドンナが、一発かました直後の周囲のどよめきが、
事の大きさを示唆する。
口元に幾度か浮かぶ、小悪魔の笑みがなんとも印象的。
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◆ トークショーやインタビューを取り上げた記事で
目につく “bleep out”。
- F-word
- F-bomb
- four-letter word
とも称される “fuck” こそ、 “expletive” の代表格。
【発音】 fʌ́k
【音節】 fuck (1音節)
複数の統計において、No.1 の「罵り言葉」と目されている。
(swear words、 curse words、 cuss words)
洋画ではよく使われている感もある。
しかし、真っ当な<社会人は使わない>と覚えておく方が無難。
米国メディアでは、FCC(連邦通信委員会、Federal
Communications Commission)などが規制する。
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◆ 話者が政治家、作家、学者、企業幹部の場合は、
“bleep out” や “expletive deleted“(卑語省略)の
記載を見かける機会はほとんどない。
属性的に、教養のある高学歴者が中心なので、当然かもしれない。
ところが、俳優・女優、ミュージシャン、アーティスト、
などエンタメ方面の有名人がゲストの際は、それなりに
出てくる表現である。
教養の差以上に、社会的に期待される役割が異なるから、
と私は考えたりもするがいかがだろう。
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◆ “bleep out” 入りの記事では、思う存分に発言して
いる様子が鮮やかに描写されている。
奇譚なく自説をまくし立てており、正直おもしろい。
何よりも<生の英語>のまま。
堂々たる態度で、意図的に禁忌語を使っているのが分かる。
何らかの趣旨があると推察できる。
大人であれば、卑語・放送禁止用語を知っている。
通常、それを口にした際の波及も予想できる。
とすれば、大概が覚悟があっての行動である。
そもそも、不注意で口を滑ったようなケースでは、
書き手も遠慮し、わざわざ書き起こさないもの。
よって、”bleep out” は無用となる。
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◆ “bleep out” が出てくる場面では、本人の強烈な
メッセージまたは承認欲求が背後に潜んでいたりする。
だからこそ、視聴する価値があると私は考えている。
なぜ、この人はこの場でタブー語を用いたのか。
いろいろ考察し調べていくと、確たる動機に
突き当たることも多い。
そうだったのか、と思わず膝を打つ気づきは、知的興奮を伴うもの。
相当のリスクを冒した当人を見直すこともしばしば。–
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公然と卑語を使うことは悪いに違いない。
しかし、自分のキャリア上のリスクを天秤にかけた末の
実行には、額ずきたくもなる。
もっとも、下種張るだけの若い人も少なくない。
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◆ “bleep” には、名詞・自動詞・他動詞がある。
【発音】 bliːp
【音節】 bleep (1音節)
語源は擬声語で、電子的な「ピー」という音
私たち日本人に「ピー」と聞こえる音が、
英語ネイティブには “bleep” だと。
初出は電子機器が普及し始めた1950年代。
– 名詞「ピー(音)」「ペケペケ(卑語の代用)」
– 自動詞「ピーと鳴る」
– 他動詞「ピー(信号音)と消す」
擬声語だけあって、どれも「ピー」つながり。
「擬声語」とは、実際の音を真似た言葉。
擬音語(onomatopoeia)とも言う。
【参照】 “tingling sensation (ASMR)”、 “ring a bell”
「ピー」 対 “bleep“。
犬の鳴き声「わんわん」と “bow-wow” 以上に差を感じる
気がするものの、英語に慣れてくると違和感が薄まってくる。
そして、本当に “bleep” と聞こえてくる。
不思議なものである。
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◆ “bleep out” の “bleep” は、他動詞。
副詞 “out” を加えて、句他動詞「ピーという音で消す」に。
副詞 “out” は非常に多義だが、“bleep out” では
「消える」「なくなる」の意味合い。
この副詞用法には、以下のような句動詞がある。
- put out (明かり・タバコを消す)
- run out (尽きる)
- blow out (吹き消す)
- die out (死に絶える)
- weed out (取り除く)
- sold out (売り切れる)
- wash out (洗い落とす)
- gave out (尽きた)
- turn out (消す)
- fade out (フェードアウトする)
- phase out (段階的になくす)
- black out (真っ暗になる、黒塗りする、失神する)
【参照】 句動詞の副詞 “out” 30選
“bleep out” の場合、上掲の句動詞の大半と異なり、
“bleep” のみで用をなす。
すなわち、“bleep” 単独でも「ピーと消す」。
実際に、”out” 抜きも目立つ。
今回調べた9点の英英辞典のうち、”bleep out” で
項目立てされていたのは、たった2点のみ。
“bleep out”
phrasal verb
In a television or radio programme, when
someone bleeps out an offensive word, they
use an electronic device to make the sound
of a bleep so that people cannot hear the word.
(COBUILD Advanced English Dictionary)
PHRASAL VERB [TRANSITIVE]:
to replace a swear word in a television or radio
broadcast with a short high sound, so that
people are not offended.
(Macmillan Dictionary)
※ phrasal verb (transitive) = 句他動詞
【参考】
「句動詞」「句自動詞」「句他動詞」について
https://mickeyweb.info/
マイナーな句動詞だが、特定場面では欠かせない。
どのような場面かは、説明するに及ばないだろう。
“bleep out” は、初見だと意味を推測しにくい。
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◆ 以下、”out” なしの “bleep” のみで、すべて通用する。
- “We have to bleep out his offensive words.”
(彼の侮辱的な言葉をピーと消さないと。)
– - “They failed to bleep out her swearing.”
(彼らは彼女の罵りをピーと消せなかった。)
– - “All the cuss words had been bleeped out.”
(すべての罵り言葉はピーと消されていた。)
– - “The talk show bleeped out those words.”
(それらの言葉はトークショーではピーと
置き換えられていた。)
– - “Can you bleep that out ? ”
(それ、ピーしてくれる?)
◆ 冒頭に掲げたマドンナ(1958年~)は、デビューした1982年
から現在に至るまで、破廉恥な振る舞いを繰り返してきた確信犯。
最も悪名高いとされるのは、こちらの番組出演。
時は、1994年。
米CBSの看板番組 『レイト・ショー・ウィズ・デイヴィッド・レターマン』 で、
使用済みのパンティを手渡し、葉巻をくゆらせ、下ネタと “fuck” を連発。
【YouTube】
Madonna on Letterman 1994
(Full Uncut Swearing)
https://www.youtube.com/watch?v=PBm5kzTYfNU
全長 22分
◇ “fuck” 発言
3:03、5:51、10:19、10:24、10:27、12:08、12:44、13:19、15:40、15:58、15:59
“bleep out’ なしの、ノーカット版(”full uncut swearing”)である。
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◆ なお、実際のマドンナの知性が高いことは、おびただしい伝記で検証済み。
断トツのキャリア実績に加え、給付型の奨学金を受けて、
名門ミシガン大学に進学した事実からも推し量られる。
・ “the best selling female recording artist of all time”
「世界で最も売れた女性アーティスト」ギネス記録保持者認定
・ List of awards and nominations received by Madonna
・ Madonna’s chart records & achievements
“Madonna holds no less than 16 official Guinness World Records”
・ Madonna’s career in 10 records as Queen of Pop turns 60
2018年8月16日
【関連表現】
“Watch your language.”
“Watch your mouth.”
“Watch your tongue.”
(言葉遣いに気をつけなさい。)
“Your language is too disgusting.”
(あなたの言葉遣いはひどすぎです。)
“Don’t use offensive language.”
(侮辱的な言葉を使うな。)
(攻撃的な言葉を使うな。)
(卑わいな言葉を使うな。)
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【参考サイト】 ※ 外部サイト