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Tingling sensation (ASMR)

      2019/07/18

ぞくぞくする感覚

世界的に “ASMR” の動画が広まるにつれて、目にする
機会が増えた。

ASMR動画やブログ・エッセイで見かける可算名詞
医療関係者ではなく、主に一般人の表現に登場する印象がある。

“tingling sensation” は、ぞくぞくする快感 のこと。

ASMR” は、”Autonomous Sensory Meridian Response”
の頭字語(acronym)。直訳自律 感覚 絶頂 反応

発音は、そのままアルファベットを読み上げる A-S-M-R が基本。
別説も存在する。

  • autonomous(形容詞:自治の、自律の)
  • sensory(形容詞:感覚の、知覚の)
  • meridian(名詞:子午線、絶頂、頂点)
  • response(名詞:反応、応答)
    ※ 発音 → 各単語をクリック

私は専門家でないため、生理的反応の詳細な解説は無理。
あくまでも、素人による概論としてご了承いただければと願う。
その代わり、語学面はしっかりご案内できるはず。

◆ 既存の英和辞典で “tingling sensation” を調べると、
ピリピリ感」「ヒリヒリ感」「チクチク感」とある。

やたらと神経質で痛そうな感じで、眉をひそめたくなる。

実際のASMR は、<快感>の権化。
さながら身も心もとろける甘美な陶酔感。

その中枢を担う感覚が、ぴりぴり・ひりひり・ちくちくでは、
ASMRの甘くリラックスしたイメージが台無しである。

実にけしからん。
本稿で取り上げる理由は、この誤解を解きたいから。

愉絶快絶のあまり、
全身がしっぽり潤む気持ちよさ

これが “tingling sensation”。

短期間でジャンルを確立し、動画サイトでも幅を利かせる
ようになったのは、”ASMR” の持ち味である即効性のおかげ。

ネット環境さえあれば、下準備なく味わえる超絶気分。
人種、性別、年齢、経験など、一切不問。
世界的に流行しているのも、調べるほどにうなずける。

耳をすますだけで、自律的な感覚autonomous sensory)
が、最高潮に反応meridian response)する。

音を知覚して得る快感なので、日本で同義扱いされているのが
「音(おと)フェチ」。

近頃は「音フェチ」と検索すれば、”ASMR” が姿を見せる。

音フェチ

音フェチとは、耳をくすぐるように刺激する、麻薬のような
音声の動画につけられるタグである。
ニコニコ大百科

※「フェチ」身体の一部や物品などに過度の執着や
性的興奮を示す傾向。フェティシズム(fetishism)
の略。

定評のある国語辞書(後述の5点含む)には載っていない語。

何だかエロいが、先の「下準備なく味わえる超絶気分」など、
確かに性感に近い。

現に、ASMR” の定着前は、”head orgasm” または
brain orgasm” と呼ばれていた現象に他ならない。

すなわち「頭・脳のオルガスム」。 性的絶頂感 である。

本稿執筆に備え、真面目にリサーチを重ねる最中に、そっち方面
と相当重なる要素に気づき、題材適否の不安が頭をもたげた。

しかし、「人類みな快感好き」と思い返し、敢行してしまった。

先に触れた「既存の英和辞典」とは、オンライン辞書2点を指す。
※ 2018年9月7日アクセス

弊サイトで常々お世話になっている次の英和辞書に、
“tingling sensation” の記載はない。

「ぞくぞく」「ぴりぴり」「ひりひり」「ちくちく」
などの擬態語は、音のしない<状態><心情>を
象徴的に音で表すので、本質的にあいまいである。


◆ そこで、本題に入る前に意味を確認しておこう。

用いた国語辞典は5点。カッコ内は辞書名。凡例は末尾。
本稿に直結する語義を2点ずつ抄出した。

個性的な記述に分かれたゆえ、公平性を期して各2点。

ぞくぞく

■ 期待や快い興奮で気持が高ぶるさま。わくわく。(広)
■ 嬉しさに心が浮きたつさまを表す語。うきうき。(精)

ぴりぴり

■ 不安・恐怖などで神経が張り詰めるさま。
刺激に敏感に反応するさま。(林)
■ 皮膚や粘膜が刺激されて、しびれるような痛み
や辛味を感じるさま。(鏡)

ひりひり

■ 皮膚・のどなどに痛みや辛みなどの刺激を感じるさま。(林)
■ いたみやからみを続けて感じるようす。(三)

ちくちく

■ 肌や心に繰り返し刺されるような痛みを感じるさま。(広)
■ 先のとがったものを浅く繰り返して突き刺すさま。
また、そのような痛みを感じるさま。(鏡)

・(広)広辞苑 第七版
・(精)精選版 日本国語大辞典
・(林)大辞林 第三版
・(三)三省堂国語辞典 第七版
・(鏡)明鏡国語辞典 第二版

※ (精)によれば、4語とも「副詞

こう見ると、「ぴりぴり」「ひりひり」「ちくちく」
は的外れであることが分かる。

◆ “ASMR” は、2010年頃に英語圏の「音フェチ」
から浸透し始め、2014年以降、主に YouTube を
通じて一般人にも知られるようになった。

日本人の動画に “ASMR” の語が目立つようになった
のは 2017年頃。YouTube界で市民権を得るレベル
に達したのも、ちょうどこの頃。

【参照】ASMRという言葉はいつ生まれたの?

比較的新しい概念であるため、情報収集はウェブサイト
中心となった。

◆ 唯一読んだ本はこれ。 今月2018年9月発売。

[Richard, Craig]のBrain Tingles: The Secret to Triggering Autonomous Sensory Meridian Response for Improved Sleep, Stress Relief, and Head-to-Toe Euphoria (English Edition)Brain Tingles
Craig Richard (著) Adams Media (2018/9/4)

“ASMR” の最有力サイトと目される、
ASMR University
の創設者 Craig Richards 博士の著書である。

Newsweekの書評(2018年8月30日付)によれば、
the first book-length how-to guide“(初のハウツー本)。

とすれば、現段階(2018年9月)では、最良の参考書
と考えられる。

使用単語はLDOCE(ロングマン)で十分すぎる難易度。
中級学習者であれば無理なく読めるので、音フェチの
方には手に取っていただければと思う。
キンドル版(計3792頁)の場合、直リンクが豊富に設けられている。

日本のASMRサイトは、先の ASMR University
を参照するものが多い。
盤石な中身を伴うものほど、この傾向が見られる。

とすれば、書籍 Brain Tingles” 組んで学習すれば、
ネット上で情報提供できるレベルに達するかも、と考えた。

それでも、本稿はやはり素人目線による概説である。
内容は受け売りに過ぎない。語学面は通常通り調べている。

 

◆ ぞくぞく感の経路は、ウィキペディア(英語版)には、
次の通り説明されている。

【出典】https://commons.wikimedia.org/wiki/
※ 和訳は追加

オンライン版のMacmillan Dictionary は、
このように表現する。

“ASMR”

a pleasurable tingling that usually begins in 
the head and scalp and moves down the 
neck and back, triggered by soft whispering 
sound or rustling sounds.(下線は引用者)

https://www.macmillandictionary.com/dictionary

“rusting sound” = サラサラ、カサカサという音

【発音】 A-S-M-R  

ある刺激を引き金に、無意識に感じる心地よさ。
未知の部分も残るが、その「ぞくぞく感」が脳内
から生じるのは、検証済みである。

上掲の本によれば、ASMR とは “biological response”
(生物学的な反応)であり、最重要の脳内ホルモンとして、

を挙げている。
その他、明記されている脳内物質は、

ASMR の引き金は、”make you feel relaxed”
(気分をリラックスさせる)なものと書いてある。

ASMRの興味深い点は、この引き金(トリガー、trigger)
が人それぞれ異なること。

その後の生理的反応、つまり “tingling sensation”
(ぞくぞく感)をはじめとする快感の構造に大差は
見られない。

しかるに、引き金「トリガー」の好き嫌いの個人差は激しい。

その筆頭は「咀嚼音」(そしゃくおん、eating sounds)。
気持ち悪いと嫌悪丸出しの人もいれば、うっとり
聞き惚れる人もいる。

また同じ咀嚼音でも、人間の「クチャラー」は絶対無理だが、
子犬・子猫がクチャクチャするのは、かわいくて大好き
という人も少なくない。不思議なものだ。

タイピング音」も好みが分かれる代表格。
キーボードのカチカチ音は、職場を思い出すから
拷問と言う人がいる一方、入眠時に活用する人も
大勢いるとか。

万人受けする音には「耳かき」や「水の流れ
が挙げられる。

◆ “tingling sensation” は<2語ワンセット>
の可算名詞と記したが、分解するとこうなる。

tingling(発音はクリック)

  • 可算名詞「うずき」「痛み」
  • 形容詞「ちくちくする」「ひりひりする」

もともとは動詞 “tingle” 由来。

  • 自動詞「ひりひりする」「ぞくぞくする」
  • 他動詞「ひりひりさせる」「ぞくぞくさせる」
  • 可算名詞「うずき」「ひりひりする痛み」

「ぞくぞくする興奮」
→ 名詞 “tingling” と重なる意味。
ー 既述の題名 ”Brain Tingles” は可算名詞の複数形

“tingle” の語源は、中英語の動詞「チリンチリン鳴る」(tinklen)。-.
→ “ring a bell” 参照

実際の音を真似た擬音語onomatopoeia擬声語)。

無音の<状態><心情>を象徴的に表す
「ぞくぞく」「ちくちく」「ひりひり」
などの擬態語と異なる。

動詞 “tingle” の現在分詞としても “tingling” は使われる。

sensation は、名詞のみ。

語源は、中世ラテン語「感覚」(sēnsātiō)。
“feeling” より堅めの語である。
可算と不可算を兼ねるが、この区別が複雑である。

可算・不可算「感覚」「感じ」
※ 外的刺激に対する感覚(五感
可算「感じ」
不可算「(主に触覚による)感覚」
可算「センセーション」「物議」

センセーション【sensation】

人の耳目をひくこと。世間をあっと言わせる事件。
大騒ぎ。大評判。
(広辞苑 第七版)

→ 英語では「可算名詞

英英辞書によっても、可算、不可算の多少
のばらつきが見受けられるから厄介である。

3大学習英英辞典(EFL辞典)で最も分かりやすい
と感じた語釈は、LDOCE6。

“sensation”

noun
1. [countable, uncountable]
a feeling that you get from one of your five
senses, especially the sense of touch.

burning / prickling / tingling  etc sensation

2. [countable] a feeling that is difficult to describe, 
caused by a particular event, experience, or memory.
strange / curious / odd sensation

3. [uncountable]
the ability to feel things, especially through your
sense of touch.

4. [countable usually singular]
extreme excitement or interest, or someone or
something that causes this.

cause / create a sensation
pop / fashion / media etc sensation

(LDOCE6、ロングマン)

※ “singular” = singular noun = 単数名詞
—-→ 単数形で使われるのが一般的な名詞
“usually singular” は「単数名詞が通例」。

“tingling sensation” はハイライトの通り、
可算・不可算兼用として扱われている。

一方、OALD9 では、”a” つきの可算名詞。

1. [countable]
a feeling that you get when something affects
your body.
a tingling  / burning, etc. sensation

(OALD9、オックスフォード)

先に述べた「多少のばらつき」の一例である。

実際の用例を調べると、可算・不可算両方ある模様。
先述の洋書では、”the tingling sensations” と
<定冠詞 + 複数形>で表している。

“sensation” は可算名詞が多用される。
したがって、”tingling sensation” は、あえてどちらかと言う
ならば、OALD9 に従い「可算名詞」としてとらえれば
よいだろう。

 

【類似表現】
“give – chills”
https://mickeyweb.info/archives/20589
(~をぞくぞくさせる、~をぞっとさせる)


<オノマトペ情報>

オノマトペとは何か?その意味と語源
・ 英語のオノマトペ一覧
英語マンガの擬音語
鳴き声(擬音語)の英語
動作(擬態語)の英語
・ 「ニコニコ大百科」のオノマトペ(日本語)
重ね言葉オノマトペ一覧(日本語)
英語のオノマトペの象徴メカニズム
(呂佳蓉 京都大学大学院、PDF 1.4MB、2004年)

<ASMR情報>

【英語】※ 読み応えのある最近の記事
・”Why Is My Brain Tingling?”  2017年10月25日付
・”Achieving a ‘brain orgasm‘”  2018年8月30日付

【日本語】※ 主に動画集
・「脳の快感を呼ぶ ASMR って何?」 2019年1月16日付
https://asmr-life.com
https://asmr-ears.com/
https://matome.naver.jp/odai/2142392424916104801
http://www.oniten-yomu-book.com/entry/asmr
https://matome.naver.jp/odai/2153050004677891601
http://www.underground-mogura.com/entry/2018/03/11

 

 

 

 

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