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Backdrop

      2019/03/27

背景、状況 

「バックドロップ」と聞けば、
人によっては、即座に浮かぶのがこれ。

プロレスの投げ技である。

  バックドロップ【backdrop】

プロレスの技の一。相手の背後から腰に抱きつき、
自分の体を後ろに反らせながら相手を頭越しに
背後に投げつけるもの。後ろ脳天逆落とし。
岩石落とし。
(大辞林 第三版)

※ 下線は引用者

背後に(back)投げ落とす(drop)から、
“backdrop”。

この 岩石落とし(がんせきおとし)を含め、
相手を自分の背後に倒し込む技の総称は、
「スープレックス」。

“super excellent” な大技だから “suplex”。

プロレスの投げ技は、柔道の裏投げの影響を
受けて発展したとの説がある。

◆ 本稿の “backdrop” は、レスリングとは無関係。
ここでは「背景」の語義を取り上げたい。

語源は、演劇用の「背景幕」(はいけいまく)。
イメージとしてはこんな感じ。

“back” は、プロレスと同じく形容詞「背後の」。
“drop” は動詞「落とす」ではなく、
drop curtain“(垂れ幕)由来なので名詞

  ドロップ【drop】

■ 舞台の間口全体に渡って背景の描かれた幕。
知っておくと便利な舞台用語集

■ 演劇、舞踊などのそれぞれの場面に必要な背景
が描かれた背景幕の事。
セット図の読み方

※ 下線は引用者

背後の垂れ幕だから「背景幕」。

撮影の「グリーン スクリーン」を想像するとよい。
実際には「場面に必要な背景」(下線部)が描かれる。
“back cloth” とも言う。

正式名称はともかく、”backdrop” でも市販されている。
アメリカのアマゾンイーベイで売っている。

◆ 「背景」の成り立ちは「背景幕」から。

視覚的に把握しやすいので、学習者には助かる。
あとは用法を学べば、”backdrop” の基本はOK。
日本語の「背景」と用法も重なるため、なおさら
理解しやすい。

“backdrop” は、重要でも頻出でもない単語。
今回調べた9点の英英辞典の各指標では、
完全にノーマークであった。

にもかかわらず、ここで取り上げる理由は、

  • 時事ニュースに時々出てくる
  • 初めて見聞きすると、意味が推測困難
  • 日本語「背景」との突合が勉強になる

頻出でないものの、ニュースではキーワードに近い。
しかし、”backdrop” が「背景」を意味することは、
きちんと学ばない限り、分からないだろう。

目に見える語源なので、一度覚えると忘れにくい。
上掲の絵柄は、あえてどでかく作図した。
“backdrop” を想起する糸口となれば幸いである。

◆ “backdrop” の品詞は名詞のみ。
可算名詞であり、不定冠詞 “a” がつく。

“against” に続く場合、定冠詞 “the” も同程度に
使う(後述)。

意味は3つ。

  1. 状況
  2. 背景(=背後の景色)
  3. 背景幕(語源そのもの)

    ※ レスリング用「4. 岩石落とし
    (上図参照)

派生の流れは、3 → 2 → 1。
学習すべきは、1 → 2 → 3。

1に比べれば、2と3は単純。
先の図でけりがつくほど。

よって優先すべきは、1「背景、状況」。
これがニュース用法に該当することは、
容易に分かるはず。

今回の英英辞典9点すべてが、1~3を網羅する。
2項または3項に分かれるが、内容は黄枠そのもの。

以下、1「背景、状況」の語釈を一挙ご紹介。

backdrop

the conditions or situation in which
something happens.
(LDOCE6、ロングマン)

the general conditions in which an
event takes place, which sometimes help
to explain that event.
(OALD9、オックスフォード)

the general situation in which
particular events happen.
(CALD4、ケンブリッジ)

The backdrop to an event is the
general situation in which it happens.
(COBUILD9、コウビルド)

the background to any scene or
situation.
(Collins English Dictionary, 12th Edition)

the situation or place in which
something happens.
(Macmillan Dictionary)

the setting or conditions within which
something happens.
(Merriam-Webster’s Learner’s Dictionary)

background
(Merriam-Webster)

background or setting, as of an event.
(Webster’s New World College Dictionary,
5th Edition)

※ 下線は引用者

【発音】bǽkdrɑ̀p

どれも「背景、状況」を指す。
個性豊かな記述と言いたいところだが、
実質3語に集約される。

  • conditions
  • situation
  • background

英英9点とも、少なくとも1語を含む。

◆ これに対し、主な国語辞典では、

「背景」

■ 人や事件などの背後にあるもの。
また、背後から支えるもの。
(広辞苑 第七版)

■ 物事の背後にひそんでいる事情。
背後にあって物事を支えている事柄。
(大辞林 第三版)

背後の事情。
背後から支えていることがら。
(三省堂国語辞典 第七版)

■ 物事の背後にあってそれを成立される
事情や存在。
(明鏡国語辞典 第二版)

■(比喩的に用いて)ある物事に関する
隠れた事情や背後の勢力。また、思想・
行動の根拠となるもの。よりどころ。バック。
(精選版 日本国語大辞典)

※ 下線は引用者

国語5点をまとめると「背後の事情」

したがって、英英9点と国語5点を結ぶと、

「背後の事情」
= background conditions / situation 

backdrop

それほど難しくないだろう。
英英9点の語釈も、中級学習者なら難なく読めるレベル。

◆ さらに、”backdrop” には明確な使用パターンがある。
決まりきった言い回し、すなわち確立したコロケーション
(連語)が存在する。

以下、『オックスフォード コロケーション辞典』
から転載。コロケーション辞典の代表格である。


Oxford Collocations Dictionary for
Students of English
“(アプリ版) から転載。

※ 漢字は追加

私たち日本人学習者にとって、着目すべきコロケーション
は、<動詞>と<前置詞>。

名詞 “backdrop” の場合、最重要なのは、
against a / the backdrop of(下線部)。

“the” 抜きの “against a backdrop of” として
案内する辞書も数多い(LDOCE6など)。

ここでの “against” は、対抗「~に反対して」でなく
  対象・関連の前置詞「~に関して」「~における」

絶対に欠かせないコロケーションはこれくらい。
ほぼ唯一である。

残りの文言は、英文法・英単語の基礎知識から
類推可能。

  • Against this backdrop, they were trying
    to move forward.”
    (こうした背景の中、彼らは前進しようとしていた。)
  • Against a backdrop of war and despair,
    the two got married.”

    (戦争と絶望の中、2人は結婚した。)

  • “Their friendship began against a
    backdrop of bullying.”
    (いじめを背景に、彼らの友情は始まった。)

  • “As a backdrop to the plan, there seem to be
    many disgruntled employees around.”
    (この計画の背景には、不満を抱いた従業員

    が大勢いることが挙げられる。)

  • “That is the backdrop to its rapid growth.”
    (急成長の背景はそれである。)

 

 

 

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