効果てきめんである
一見すると、宣伝のキャッチコピーのようだ。
実際は普通の熟語なのだが、 宣伝文にも使う。
確かに、人目を引くインパクト がある。
目立つ一因は、2語の頭が一致していること。
どちらも ” wo ” から始まる。
おまけに、” w ” と ” o ” は 左右対称 の文字。
シンプルだが、どこか華があり、遠目にも認識可能。
個性を咲かせるアルファベットに見える。
文法的には、 頭韻法 ( とういんほう、head rhyme、
alliteration )の一種。
【発音】 əlìtəréiʃən
【音節】 al-lit-er-a-tion (5音節)
–
◆ ” first and foremost ” にてご説明したが、
頭で韻( いん )を踏んでいる … 押韻。
一部再掲すると、
◇ 英語の頭韻 ( head rhyme、alliteration )は、
有名な商標名・固有名詞 にも多く採用されている。
- Big Ben
( ビッグベン )
– - Coca-Cola
( コカコーラ )
– - Intel Inside
( インテル社のキャッチコピー )
– - World Wide Web
( ウェブサイト )
– - Donald Duck
( ドナルド・ダック )
– - King Kong
( キング・コング )
– - Mickey Mouse
( ミッキー・マウス )
– - Minnie Mouse
( ミニー・マウス )
– - Peter Parker
( スパイダーマン )
–
幅広い層に好まれるため、商品名にも起用される。
我が子を頭韻で 命名 した知人は少なくない。
英語ネイティブにとって、頭韻は言いやすく耳触りがよいらしい。
加えて、 見かけの 華やかな ” w ” ともなれば、 結構尽くめ。
むしろ、 好かれない方がおかしい ” work wonders “。
この強みが、なんとなく把握できれば、 英語に馴染んできている。
自信をもってよい。
初学者の場合、 理解は上辺にとどまる。
–
◆ 今回調べた7点すべての英英辞典で、”work wonders” は
項目立てされていた。
総なめは珍しい。
そろって簡潔なので、全部ご紹介する。
■ do/work wonders
to be effective in solving a problem.
( LDOCE6、ロングマン )
■ do wonders (for somebody / something)
to have a very good effect on somebody / something.
( OALD9、オックスフォード )
■ work wonders
to achieve very good results.
( 同上 )
■ do / work wonders
INFORMAL
to have a very good effect.
( CALD4、ケンブリッジ )
■ works / does wonders
have a very good effect on something.
( COBUILD9、コウビルド )
■ do / work wonders
to achieve spectacularly fine results.
( Collins English Dictionary )
■ do / work wonders
to have a very good effect on someone or something.
( Macmillan Dictionary )
■ do / work wonders
to help or improve something greatly.
( Merriam-Webster )
–
【発音】 wʌ́ndər
【音節】 won-der (2音節)
–
◇ 【 英英辞典の基本表記 】 スラッシュ ( / ) = 「または (or) 」
→ ” do wonders ” または ” work wonders ”
–
どれも簡素で美しい語釈と感じる。
いかがだろう。
” do wonders ” が同義扱いされていることが分かる。
–
◆ ここでの ” work ” と ” do ” は他動詞。
効果を「 もたらす 」「 生む 」の意。
目的語となる ” wonders ” は名詞の複数形。
名詞のほか、自動詞、他動詞、形容詞がある。
語源は、古英語「 奇跡的な出来事 」( wundor )。
– 名詞 「 不思議 」 「 驚き 」 「 不思議なもの 」 「 奇跡 」
– 自動詞 「 不思議に思う 」 「 自問する 」「 疑う 」
– 他動詞 「 不思議に思う 」 「 ~ でしょうか 」
– 形容詞 「 不思議な 」 「 驚くべき 」
良くも悪くも 「 不思議 」 または 「 驚き 」 が
伴う点で共通する。
名詞 ” wonder ” は、 可算と不可算を兼ねる。
抽象的な 「 不思議 」 「 驚き 」は不可算名詞。
特定の 「 不思議なもの 」 「 驚くべきもの 」は、
数えられるから、 可算名詞。
これは、 可算と不可算を区別する頻出パターン である。
【参照】 ” concern “、 ” worry “、 ” pain ”
表題では 「 不思議なこと 」 または 「 奇跡的なこと 」
として、 対象をほぼ特定しているため、 可算名詞。
さらに、決まり表現として 複数形 になるのが通例である。
–
◇ 同じく複数形 ” wonders ” が通例の決まり表現は、
- Wonders will never cease.
– - Wonders never cease.
–
両方とも 「 驚きの念を禁じえない 」 が定訳に近い。
直訳は 「 驚きは後を絶たない 」。
時に皮肉を帯びるのは、 日英共通。
◇ ” cease ” = 途絶える ( 自動詞 )
–
–
He passed the test.
Wonders never cease !( 彼が試験に合格したってさ。
驚き、 桃の木、 山椒の木 ! )
–
嫌味っぽく、 意訳してみたが、
かえって通じないかも。
–
【参考】 ※ 外部サイト
「 驚き桃の木山椒の木 」の解説
–
以上より、 ” work wonders ” と ” do wonders ” の直訳は、
「 不思議なことをもたらす 」 「 奇跡的なことをもたらす 」。
転じて、「 効果てきめん 」。
語調も似ており、 和訳として好んで使われる。
–
こうかてきめん 【 効果覿面 】
■ 期待していた通りの効き目や結果が、
その場で すぐに 現れること。
( 広辞苑 第七版 )
■ 効果が すぐに はっきり現れる・こと(さま)。
( 大辞林 第四版 )
–
※ 下線は引用者
–
先の英英辞典7点と国語辞典2点の語釈を比較すると、
下線 「 すぐに 」 の要素は英英にはない。
したがって、 どんぴしゃりの和訳ではない。
しかし、 用途・語感・趣旨を総合的に考慮すれば、
定訳にかなり近いと結論してもよいと考える。
言語が異なる以上、 完全一致は難しい。
–
筋トレは いいよ
- “Regular exercise works wonders for your health.”
(定期的な運動は健康に効果てきめん。)
– - “This book has worked wonders for me.”
(この本が私に奇跡をもたらした。)
(この本は私にとって、効果てきめんだった。)
– - “This smell seemed to work wonders for the dog.”
(この匂いは犬にすごく効いたようだ。)
– - “Cold water works wonders for my skin.”
(私の肌にとって、冷水は効果てきめん。)
– - “Smiles can work wonders.”
(笑顔は奇跡をもたらすことができる。)
(笑顔は効果てきめん。)
– - “This medicine works wonders for headaches.”
(この薬は頭痛に効果てきめん。)
(この薬は頭痛に驚くほどよく効く。)
– - “It worked wonders for us.”
(それが我々に奇跡をもたらしたのです。)
–
–
Time works wonders.–
( 時のもたらす奇跡 )
( 時がすべてを癒す )
( 時間がすべてを解決する )
( 時間が薬 )
↓
時は偉大なり
–「 時の力 」
–
→ just a phase
→ toxic relationship
→ comfortable in one’s own skin
→ test of time
→ estranged
–
【同義表現】
- ” works like a charm ”
( 効果てきめんである )
–
【発音】 tʃɑ́rm
【音節】 charm (1音節)