難問、 謎
初見では、どう読むのか見当がつかない。
なんだか芋虫が這いずるような見た目の単語。
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【発音】 kənʌ́ndrəm 【音節】 co-nun-drum (3音節)
字面のインパクトが見出しに映える。
重要度・頻出度とも、辞書ではノーマークなのに、
強烈な存在感を放ち、やたらと印象深い。
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◆ さっそく、今月2018年11月発表のニュース見出しから抽出。
- “Global Cybersecurity and the Internet Conundrum”
(世界のサイバーセキュリティとインターネットの難問)
– - “The conundrum of X’s continued growth”
(X国の持続的成長の難問)
– - “Can A.I. Solve the Diversity Conundrum ? ”
(多様性の難問を人工知能が解消できるか?)
– - “The country’s great tax conundrum”
(この国の税金の大難問)
– - “The conundrum of X’s female suicides”
(X国における女性の自殺の難問)
– - “X’s Political Conundrum: Can There be a Solution ? ”
(X国の政治的難問:解決策はあるか?)
– - “Solving work-life balance conundrum for
drivers necessary for recruitment”
(運転手採用に仕事と生活の調和の難問解決が必要)
– - “The affordable housing conundrum”
(手頃な住宅の難問)
– - “Cold-Brewed Or Hot: The Coffee Conundrum”
(水出しかホットか:コーヒーの難問)
– - “X Cities and the Development Conundrum”
(X国の都市と発展の難問)
以上10件。
5分程度でちゃちゃっと採集した。
たやすい作業。 それなりに使われている証左だろう。
◇ 「見出し」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語
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◆ 定訳は「難問」。
ビジネスとニュース用法が中心。
上記例文からも分かるように名詞。可算名詞のみ。
複数形は “conundrums“。
また、「なぞなぞ」のような言葉遊び(riddle)も指す。
こちらの用途は実務に縁遠いので、本稿では取り上げない。
後述のEFL辞典3点では、すべて語釈(2)が該当する。
■ “conundrum” = 難問
可算名詞のみ
普段使いには、これだけ覚えておけばよい。
なんもん【難問】
1. 解答するのがむずかしい問い。
2. 解決を要するが、処理しにくい事柄。
3. 難詰して返答を迫ること。
(広辞苑 第七版)
語義が単純なのは、3大学習英英辞典(EFL辞典)
からも読み取れる。
“conundrum”
■ “LDOCE6” ロングマン
(1) a confusing and difficult problem.
(2) a trick question asked for fun. SYN: riddle
■ “OALD9” オックスフォード
(1) a confusing problem or question that is
very difficult to solve.
(2) a question, usually involving a trick with words,
that you ask for fun. SYNONYM: RIDDLE
■ “CALD4” ケンブリッジ
– a problem that is difficult to deal with.
– a question that is a trick, often involving a
humorous use of words that have two meanings.
【発音】 kənʌ́ndrəm
【音節】 co-nun-drum (3音節)
※ SYN = synonym = 同義語
共通語は、下線部の “a difficult problem”。
直訳は「難しい問題」で「難問」そのもの。
日英の見事な合致が、単純明快な意味合いを裏付ける。
◆ 少々物足りないため、ビジネス辞典の語釈もご紹介。
英語ネイティブ向けゆえに、使用単語の難易度が
上がるものの、中級学習者なら難なく理解可能。
“For example” 以下の事例は、「落ち目の会社が、
再び利益を生み出す策を模索するのは難問」とある。
A complex or perplexing problem that
generally has no clear solution.
For example, a failing company can find
itself in a conundrum as it tries to figure out
a solution to generate profits again.
発音の注意点は、”con” で分けないこと。
“co” で区切る。
これは、接頭辞 “con” と無関係 な成り立ちを示唆する。
【発音】 kənʌ́ndrəm
【音節】 co-nun-drum (3音節)
3音節 ” co-nun-drum ” の音の強弱で明らか。
真ん中の第2音節に強いアクセントを置く。
「音節」(syllable)とは、発音の最小単位。
→ 音節の差異が顕著な日英比較は、”integrity” 参照
“conundrum” の語源は不詳とされるが、一説によると、
擬ラテン語(mock-Latin word)。
初出は16世紀。
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◆ 意味は単調なので、造作なく把握できる。
定訳「難問」及び「なぞなぞ」から発展して、
「説明できない事象」を表す場合もある。
すなわち、「謎」と「不可解」。
なぞ【謎】
1. なぞなぞ。
2. 相手の反応を見るため、そのことを直接に言わずに、
遠まわしに言う〈こと/ことば〉。
3. 意味や招待がわかりにくい〈こと/もの〉。
(三省堂国語辞典 第七版)
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ふかかい【不可解】
理解に苦しむこと。理解しようとしてもわけの
わからないこと。また、そのさま。
(大辞林 第三版)
これらの意味の同義語の筆頭には “mystery” が挙げられる。
これまた名詞で、ここではカタカナ「ミステリー」と重なる意。
ミステリー【mystery】
1. 神秘。不思議。怪奇。
2. 推理小説。怪奇小説。
(明鏡国語辞典 第二版)
まとめると、
語義の方向性は一貫しており、簡単明瞭。
「難問」を押さえておけば、いずれも推量可能。
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◆ 発音と音節については既に触れた。
音の強弱が顕著なせいか、英語ネイティブにとっても、
発音は容易でない模様。
なかなかユニークな語。
子音「C」から始まり、発音は /k/ で破裂音(はれつおん)。
具体的には「無声軟口蓋破裂音」。
国際音声記号(IPA) は [k] 。
ここにアクセント(強勢)は置かず、次の第2音節に来る。
初めて接すると、まるで聞き取れないはず。
カ ナン ドュラムーーー
などと私には聞こえるが、いかがだろう。
【発音】 kənʌ́ndrəm
【音節】 co-nun-drum (3音節)
◆ 発音しにくい反面、見映えがする強みは冒頭で述べた。
上掲の見出し10件を、改めてご確認いただきたい。
芋虫ころころよろしく、でんと構えた見てくれが目を引く。
「難問」を意味するのだから、問題提起には都合よい。
異様に際立つ “conundrum”。 – 華のある芋虫なのか。
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◆ 現代日本を取り巻く “conundrums” で掉尾を飾る。
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思いつくまま10件。–— ※ 2018年11月 初稿時点
- the immigration conundrum
- the marriage conundrum
- the pension conundrum
- the overwork conundrum
- the motherhood conundrum
- the equality conundrum
- the education conundrum
- the bullying conundrum
- the income conundrum
- the retirement conundrum
和訳は不要だろう。
どれも私たちの身近に迫っていたりする。
解決の困難な問題ばかりで、まさしく “conundrums”。
【参考】 ※ 外部サイト
「平成」が放置した14個の社会問題
https://www.mag2.com/p/money/660647/2
2019年4月4日付