Presence
2020/11/04
存在感
「存在感」といったら、名詞 “presence”。
定訳である。
【発音】 prézns
【音節】 pres-ence (2音節)
逆に、”presence” ときたら「 存在感 」に加えて、
次を意味する。
- 存在
- 風采
- 出席
- 面前
- 舞台度胸
- 臨場感
- 駐留
“presence” は、少々堅めの言い回し。
英語ネイティブなら、中学生くらいから自ら使い始めるレベル。
平均的な事務系社会人であれば、日常卑近の名詞である。
さらに、勢力争いに明け暮れる、政治・経済・軍事の
ニュース報道には欠かせない。
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◆ 「存在感」を冒頭に掲げた理由は、メディアに出てくる
用法で最も目立つ感があるからである。
「存在感」さえ覚えておけば、別の意味の “presence” も、
どうにか推測できるはず。
青字で並べたように、細かく見ると多義。
それでも、複雑多岐ではなく、つながりは見出しやすい。
芋づる式に連想可能な語義中心である。
特定の「存在感」が報道価値を高めるためか、”presence” の語意
のうち、最も存在感を示すのが「存在感」との印象を抱いている。
(No pun intended.)
そこにいたり、あったりするだけで、人々の注意を引き寄せ、
話題を提供するため、メディアに重宝されるのが「存在感」。
良くも悪くも強烈な個性が匂い立つ存在には、目も心も、
つい吸い付けられてしまう。
「存在感」に視線が釘付け
–
そんざいかん【存在感】
- 独特の持ち味によって、その人が紛れもなく
そこにいると思わせる感じ。 - 自分がそこに確かに存在しているという実感。
(広辞苑 第七版)
- その独特の持ち味によって、その人が紛れもなく
そこにいると思わせる感じ。 - そこに確かに存在しているという実感。
(大辞林 第三版)
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そのため、”presence” = 「存在感」 が記事中のキーワード扱い
されることもしばしば。
最新の実例をご覧いただくと、きっと手早く理解が深まる。
今年2019年8月~9月に受信したニュースメルマガから選んでご案内。
- “X, provocative presence in civil rights, dies at 91″
(公民権運動の挑発的存在のXが死去、91歳)
– - “Build an Online Presence Without Giving Up Privacy”
(プライバシーを保ちつつ、オンライン上の存在感を築く)
– - “Japanese firms seek to boost presence in Africa”
(アフリカにおける存在感を高めようと努める日本企業)
– - “We live in a world where there is the presence of violence.”
(我々は暴力が存在する世界に住んでいるのです。)
– - “E-commerce has became universal as major retailers
ramp up their online presence.”
(大手小売店がオンライン上の存在感を強化するにつれ、
eコマースは普遍的なものになった。)
– - “President says U.S. will keep a presence in Afghanistan.”
(米国はアフガニスタンに駐留し続けると大統領が述べる)
– - “She has been a constant presence at anti-government
demonstrations.”
(彼女は、反政府デモの常連であった。)
– - “Researchers point to women’s increased presence
in the workforce.”
(研究者は、労働人口における女性の増加を挙げる。)
(研究者は、女性の社会進出を指摘する。)
– - “His presence was a serious threat to public safety.”
(彼の存在は公安に対する深刻な脅威であった。)
– - “I was always awestruck by her presence.”
(彼女の存在感には、常に畏敬の念に打たれていました。)
– - “The military presence has been cut to somewhere around
1,000 troops now.”
(駐留する兵員数は、今や1,000名程度まで削減されている。)
–
- “Colombia declared a national emergency after confirming the
presence of the fungus.”
(その菌の存在を確認後、コロンビアは国家非常事態宣言を出した。)
– - “The first-year assistant coach is making his presence felt.”
(アシスタントコーチ1年目の彼は、自分の存在感を発揮している。)
– - “Our business doesn’t have an online presence.”
(我が社にはインターネット上の存在感がない。)
– - “Residents did not know of her presence until the reporters
showed up.”
(記者らが現れるまで、入居者たちは彼女の存在を知らなかった。)
– - “He said he had 10 weeks left to serve, in the presence of
prison guards.”
(彼は看守立ち会いのもと、刑期は10週間残っていると述べた。)
出るわ出るわ。–絞り込むのが大変なほど。
上記は、47件から精選した粒ぞろいで、基本的なニュース用法。–
ニュース報道では、概ねこの2つが中心となる。
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だったりするが、意味合いに矛盾はない。
ちゅうりゅう【駐留】
- 軍隊が一定期間、ある土地に滞在すること。
(明鏡国語辞典 第二版)
– - 軍隊が、外国の土地などにいちじとどまっていること。
(三省堂国語辞典 第七版)
カタカナ表記も一部で定着している。
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- military presence
(軍事プレゼンス)
- peacetime presence
(平時プレゼンス)
『新訂・最新軍事用語集 英和対訳』
(日外アソシエーツ、2019年刊)
一般人が用いる用語ではないため、問題なく通用している模様。
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「プレゼンス」は、国語辞典でも項目立てされている。–
プレゼンス【presence】
- 存在。存在感。特に、軍事・国家などがある地域へ駐留・進出
して軍事的、経済的に影響力をもつ存在であること。
(精選版 日本国語大辞典)
– - 存在すること。特に、国外での軍事的・経済的影響力の存在。
(広辞苑 第七版)
- 存在。
- 威力を誇示すること。示威行為。
(三省堂国語辞典 第七版)
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※ 下線・ハイライトは引用者
確かにデリケートな内容に違いない。
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- “Rally against presence of U.S. nuclear aircraft carrier”
(米原子力空母のプレゼンスへの反対集会)
– - “Tensions continue to rise over U.S. military presence”
(米軍のプレゼンスに対する高まり続ける緊張感)
–
- “Resentment over the disproportionately large military presence”
(軍の大きすぎる存在感に反発)
– - “
The U.S. military presence has provided security benefits.”
(米軍の存在は、安全保障面で利益をもたらしてきた。)
–
- “The military presence, however, is widely unpopular.”
(しかし、軍の存在は大いに嫌われている。)
「存在」や「存在感」では、表現しきれない重厚な中身。
カタカナで表記せざるを得ない苦渋を、汲み取れる気がする。
無論、もっと身近な「存在」でも使える。
- “Local residents expect to see an increased police presence
in the area.”
(地元住民は、そこに配備される警官が増えると予想している。)
– - “The place seemed to reject human presence.”
(その場所は人間の存在を拒絶するかのように思えた。)
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◆ 報道価値を考慮すれば、「存在感」と「存在」が主となる。
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軍事関連では「駐留」も大事。
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その他の語義は日頃使われるものの、ニュース沙汰にはなりにくい。
- 風采
- 出席
- 面前
- 舞台度胸
- 臨場感
◆ “presence” の語源は、ラテン語「出席」(praesentia)。
意味が広がっていった。
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可算名詞である。
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であるが、「存在するところで」として、これまた「存在」から想起できる。
上掲の主な語義(青字)を網羅することが想定できる。
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残りは、追々肉付けしていけばよい。–
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こうした流れを取り入れると、単語学習が楽になる。
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語源は、発生順の語義の配列をする辞書には必ず載っている。
しかし、頻度順に配列する辞書の方が、<核>は分かりやすい。
ゆえに、一般的な英語学習者には、頻度順の方が実用的と考える。
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学習者対象の学習英英辞典(EFL辞典)は、大方「頻度順」。
英語ネイティブ向けの英英辞典は「発生順」が目立つ印象。
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【参照】
・ 語源に遡ることで、理解への足掛かりを作る
・ 語義の配列 → 発生順(歴史主義)か頻度順か
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◆ “presence” は、名詞のみ。
可算と不可算を兼ねるが、基本は不可算名詞。
なぜなら、<核>たる「出席」「存在感」「存在」が
不可算名詞であるから。
どちらも抽象的でつかみどころがない概念。
つまり、不可算名詞の「抽象名詞」(abstract nouns)。
【参考】 ※ 外部サイト
・ 不可算名詞は「物質」「抽象」「固有」の3つ
・ 可算と不可算を見分ける簡単なコツ
・ 可算と不可算を兼ねる名詞について
・ 可算と不可算についてよくある質問–
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◆ 4大学習英英辞典(EFL辞典)に基づき、”presence” の
可算・不可算を仕分けると、原則は次の通り。
- 存在感 不可算
- 存在 不可算(または単数名詞)
- 風采 不可算
- 出席 不可算
- 面前 不可算
- 舞台度胸 不可算
- 臨場感 不可算
- 駐留 不可算
- プレゼンス 単数名詞
- 霊 可算
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※ 「単数名詞」 = “singular noun”
単数形で使われるのが一般的な名詞
このように不可算が圧倒的に優位である。
だから、「基本は不可算名詞」。
◆ こうして、例文やら語義やら数多く見てくると、”presence” は
大した存在に思えてくる。
ところが、英単語全体における立ち位置はそうでもない。
- 重要度:<3001~6000語以内>
- 書き言葉の頻出度:<2001~3000語以内>
- 話し言葉の頻出度:3000語圏外
(ロングマン、LDOCE6 の表記より)
【発音】 prézns
【音節】 pres-ence (2音節)
話し言葉がランク外であることは、先ほど記した
「少々堅めの言い回し」の裏付けのひとつになる。
すなわち、政治・経済・軍事の方面。
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有力な『新編 英和活用大辞典』及び『オックスフォードコロケーション辞典』
はたっぷり紙幅を割いている。
ちょいと見掛け倒しな重要度・頻出度であったはずなのに。
いくらなんでも、分不相応ではないか。
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以下に似通う特色である。
どれほど重きを置かれているか。
ご紹介した例文から垣間見えるように、いつの時代も
勢力・権力にまつわる報道は重要視されるものである。
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【関連表現】
- “presence of mind”
(心の平静)
→ 「心ここにあらず」 (absence of mind) の逆。
心が 存在 (presence) することより。
Presence of mind (1660s) is a loan-translation of
French présence d’esprit, Latin praesentia animi.
フランス語 “présence d’esprit“、
ラテン語 “praesentia animi” からの
借用翻訳(a loan-translation)とある。
“peace of mind” に似た意味合い。
◇ 「見出し」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語