プロ翻訳者の単語帳

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Presence

      2021/10/22

存在感  

「 存在感 」といったら、名詞  ” presence “。

定訳である。

【発音】   prézns
【音節】   pres-ence  (2音節)

逆に、” presence ” ときたら「 存在感 」に加えて、
次を意味する。

  •  存在
  •  風采
  •  出席
  •  面前
  •  舞台度胸
  •  臨場感
  •  駐留

” presence ” は、やや堅めの言い回し。

英語ネイティブなら、中学生くらいから自ら使い始めるレベル。

平均的な事務系社会人であれば、日常卑近の名詞である。

さらに、勢力争い に明け暮れる、政治経済軍事
ニュース報道には欠かせない。

◆  「存在感」を冒頭に掲げた理由は、メディアに出てくる
用法で最も目立つ感があるからである。

「存在感」さえ覚えておけば、別の意味の “presence” も、
どうにか推測できるはず。

青字で並べたように、細かく見ると多義。

それでも、複雑多岐ではなく、つながりは見出しやすい。

芋づる式に連想可能な語義中心である。

特定の「 存在感 」が 報道価値 を高めるためか、
” presence ” の語意のうち、
最も存在感を示すのが「 存在感 」との印象を抱いている。
No pun intended. )

そこにいたり、あったりするだけで、人々の注意を引き寄せ、
話題を提供するため、メディアに重宝されるのが「存在感」。

良くも悪くも強烈な個性が匂い立つ存在には、目も心も、
吸い付けられてしまう。

 



     「 存在感 」に視線が釘付け      


逆に、個性のかけらもなく、似たり寄ったりの様子には目をそらしたくもなる。
そんな「 コピペ 」ばりの語釈がこちら。

  そんざいかん【存在感】

  1.  独特の持ち味によって、その人が紛れもなく
    そこにいると思わせる感じ。
  2.  自分がそこに確かに存在しているという実感。

『 広辞苑 第七版  』  ( アプリ版 )
新村 出(編) 岩波書店、  2018年刊

 

  1.  その独特の持ち味によって、その人が紛れもなく
    そこにいると
    思わせる感じ。
  2.  そこに確かに存在しているという実感。

『 大辞林 第四版 』  ( アプリ版 )
松村 明(編集)三省堂、  2019年刊
<三省堂HP>


よくあることとはいえど、ここまでの酷似ぶりは珍しい。

著名な辞書がこうだと、がっかりしてしまう。

さて、どちらが「 底本 」だろうか。

◆  先述のように、 政治経済軍事 分野は、勢力・権力の
争奪戦が常態化しており、その動向が国際ニュースとなる。

そのため、” presence ”  =  「 存在感 」 が記事中のキーワード扱い
されることもしばしば。

最新の実例をご覧いただくと、きっと手早く理解が深まる。

今年2019年8月~9月に受信した ニュースメルマガ から選んでご案内。

  • “X,  provocative presence in civil rights, dies at 91″
    (公民権運動の挑発的存在のXが死去、91歳)
  • “Build an Online Presence Without Giving Up Privacy”
    (プライバシーを保ちつつ、オンライン上の存在感を築く)
  • “Japanese firms seek to boost presence in Africa”
    (アフリカにおける存在感を高めようと努める日本企業)
  • “We live in a world where there is the presence of violence.”
    (我々は暴力が存在する世界に住んでいるのです。)
  • “E-commerce has become universal as major retailers
    ramp up their online presence.”
    (大手小売店がオンライン上の存在感を強化するにつれ、
    eコマースは普遍的なものになった。)
  • “President says U.S. will keep a presence in Afghanistan.”
    (米国はアフガニスタンに駐留し続けると大統領が述べる)
  • “She has been a constant presence at anti-government
    demonstrations.”
    (彼女は、反政府デモの常連であった。)
  • “Researchers point to women’s increased presence
    in the workforce.”
    (研究者は、労働人口における女性の増加を挙げる。)
    (研究者は、女性の社会進出を指摘する。)
  • “His presence was a serious threat to public safety.”
    (彼の存在は公安に対する深刻な脅威であった。)
  • “I was always awestruck by her presence.”
    (彼女の存在感には、常に畏敬の念に打たれていました。)
  • “The military presence has been cut to somewhere around
    1,000 troops now.”
    (駐留する兵員数は、今や1,000名程度まで削減されている。)

  • “Colombia declared a national emergency after confirming the
    presence of the fungus.”
    (その菌の存在を確認後、コロンビアは国家非常事態宣言を出した。)
  • “The first-year assistant coach is making his presence felt.”
    (アシスタントコーチ1年目の彼は、自分の存在感を発揮している。)
  • “Our business doesn’t have an online presence.”
    (我が社にはインターネット上の存在感がない。)
  • “Residents did not know of her presence until the reporters
    showed up.”
    (記者らが現れるまで、入居者たちは彼女の存在を知らなかった。)
  • “He said he had 10 weeks left to serve, in the presence of
    prison guards.”
    (彼は看守立ち会いのもと、刑期は10週間残っていると述べた。)


出るわ出るわ。–  絞り込むのが大変なほど。

上記は、47件から精選した粒ぞろいで、基本的なニュース用法。

存在感 」か「 存在 」か、悩ましいものもあるが、
ニュース報道では、 概ねこの2つが
中心となる。

◆  一般向けの「 カタカナ語辞典 」では、

『 コンサイス  カタカナ語辞典  第5版 』
三省堂編修所(編集)三省堂、  2020年刊
<三省堂HP>

語釈全文である。

この「第5版」は、2020年9月10日に発行された。

それから、ちょうど26年前の1994年9月10日に発行
された「初版」の全文はこちら。

『 コンサイス カタカナ語辞典  初版 』
三省堂編修所(編集)三省堂、  1994年刊


存在感  がない。

◆  軍事関連の場合、「 存在 」よりは「 駐留 」の方が的確
だったりするが、意味合いに矛盾はない。

  ちゅうりゅう【駐留】

  • 軍隊が一定期間、ある土地に滞在すること。
    ( 明鏡国語辞典 第三版 )
  • 軍隊が、外国の土地などにいちじとどまっていること。
    ( 三省堂国語辞典 第七版 )
国防関連は、特に慎重を要するため、次のような
カタカナ表記も一部で定着している。
  • military presence
    軍事プレゼンス

  • peacetime presence
    平時プレゼンス

『 新訂・最新軍事用語集 英和対訳 』
金森 國臣 (編集) 、日外アソシエーツ、2019年刊

無用な誤解を防ぐため、カタカナで書き出しているのであろう。

一般人が用いる用語ではないため、問題なく通用している模様。

「プレゼンス」は、国語辞典でも項目立てされている。

  プレゼンス【presence】

  • 存在。存在感。特に、軍事・国家などがある地域へ駐留・進出
    して軍事的、経済的に影響力をもつ存在であること。
    ( 精選版 日本国語大辞典 )
  • 存在すること。特に、国外での軍事的・経済的影響力の存在。
    ( 広辞苑 第七版 )
  • [ 存在の意 ]
    国外における軍事的・経済的影響力
    ( 大辞林  第四版 )
  1. 存在。
  2. 威力を誇示すること。示威行為。
    ( 三省堂国語辞典 第七版 )

    ※  下線・ハイライトは引用者
特に、他国における「 軍事的・経済的影響力 」とある。
確かにデリケートな内容に違いない


◆  「 存在 」や「 存在感 」では、表現しきれない重厚な中身。
カタカナで表記せざるを得ない苦渋を、汲み取れる気がする。

無論、もっと身近な「存在」でも使える。

  • “Local residents expect to see an increased police presence
    in the area.”
    (地元住民は、そこに配備される警官が増えると予想している。)
  • “The place seemed to reject human presence.”
    (その場所は人間の存在を拒絶するかのように思えた。)
  • “The driver seems aware of her presence.”
    (運転手は彼女の存在に気づいているようだ。)



◆  報道価値を考慮すれば、「 存在感 」と「 存在 」が主となる。

軍事関連では「 駐留 」も大事。

その他の語義は日頃使われるものの、ニュース沙汰にはなりにくい。

  •  風采
  •  出席
  •  面前
  •  舞台度胸
  •  臨場感
したがって、ニュース頻出の「 存在感 」「 存在 」をまず押さえておくとよい。
どのみち、似通った語義ばかりで、語源「 出席 」から当たりをつけることも可能。

◆  ” presence ” の語源は、ラテン語「 出席 」(praesentia)。
初出は14世紀で、16世紀に「 舞台度胸 」、17世紀に「 霊 」と
意味が広がっていった。
「 霊 」とは、「 存在 を感じられる 」ものとしての「 精霊 」や「 神霊 」。
可算名詞である。

マイナー用法なので触れなかったが、「 存在 」が関わる点は同じ。
先の例文に出てきた ” in the presence ” の定訳は、
~  の面前で 」であるが、
~  の存在 する場所で 」
と言い換えれば、これまた「 存在 」から想起できる。
  • “Her children were forced to celebrate Christmas
    in the presence of their dead mother.”
    (子どもたちは、母親の亡骸の前でクリスマスを祝う
    ことを強いられた。)
語源「 出席 」を皮切りに、「 存在感 」「 存在 」と思考を巡らすと、
上掲の主な語義(青字)を網羅することが想定できよう。

<核>となる「 出席 」「 存在感 」「 存在 」で、まず柱を立てる。

残りは、追々肉付けしていけばよい

こうした流れを取り入れると、単語学習が楽になる。

語源は、発生順  の語義の配列をする辞書には、大抵載っている。

しかし、頻度順  に配列する辞書の方が、<核>は分かりやすい。

ゆえに、一般的な英語学習者には、頻度順の方が実用的と考える。

学習者対象の 学習英英辞典(EFL辞典)は、大方「 頻度順 」。
英語ネイティブ向けの英英辞典は「 発生順 」が目立つ印象。

語義の配列については、” initial ”  及び  ” just checking in
で詳述している。



◆  ” presence ” は、名詞のみ。

可算と不可算を兼ねるが、基本は不可算名詞。

なぜなら、<核>たる「出席」「存在感」「存在」が
不可算名詞であるから。

どちらも抽象的でつかみどころがない概念。

つまり、不可算名詞の「抽象名詞」( abstract noun )。

【参考】      ※  外部サイト

不可名詞は「物質」「抽象」「固有」の3つ
・ 不可を見分ける簡単なコツ
・ 不可を兼ねる名詞について
・ 不可についてよくある質問


◆  4大学習英英辞典(EFL辞典)に基づき、”presence” の
可算・不可算を仕分けると、原則は次の通り。

  •  存在感  不可算
  •  存在  不可算(または単数名詞)
  •  風采  不可算
  •  出席  不可算
  •  面前  不可算
  •  舞台度胸  不可算
  •  臨場感  不可算
  •  駐留  不可算
  •  プレゼンス  単数名詞
  •  霊  可算

    ※  「 単数名詞 」  =  singular noun “
    単数形で使われるのが一般的な名詞

このように不可算が圧倒的に優位である。

から、「 基本は 不可算名詞 」。

 

◆  こうして、例文やら語義やら、数多く見てくると、
” presence ” は大した存在に思えてくる。

ところが、英単語全体における立ち位置はそうでもない。

  •  重要:<3001~6000語以内>
  •  書き言葉の頻出:<2001~3000語以内>
  •  話し言葉の頻出:3000語圏外
    (ロングマン、LDOCE6 の表記より)

【発音】   prézns
【音節】   pres-ence  (2音節)

話し言葉がランク外であることは、先ほど記した
「 少々堅めの言い回し 」の裏付けのひとつになる。

にもかかわらず、特定分野で多用される傾向は既述した。

すなわち、 政治経済軍事  の方面。

国際社会の潮目の変化に伴う勢力の趨勢を論じる都合から、
存在感 」「 存在 」「 駐留 」  =   ” presence ”
への言及は 必須となる

有力な『 新編 英和活用大辞典 』及び
オックスフォードコロケーション辞典
は、下記の通り、たっぷり紙幅を割いている。

■  名詞 “presence”

画像の拡大

新編 英和活用大辞典 』(アプリ版)より転載



“presence” たった1語のために、このボリューム。

ちょいと見掛け倒しな重要度・頻出度であったはずなのに。

いくらなんでも、分不相応ではないか。
これは < 実務上の需要 > があることを示唆する。

以下に似通う特色である。

  •  threshold  ( 敷居、境界、しきい値、基準値 )
  •  downfall  ( 転落、失脚、没落 )
  •  bombshell  ( 爆弾、突発事件 、衝撃 )
  •  disparity  ( 相違、格差 )
何度も触れてきた 政治経済軍事 が、グローバルな課題として、
どれほど重きを置かれているか。

ご紹介した例文から垣間見えるように、いつの時代も
勢力・権力にまつわる報道は重要視されるものである。


【関連表現】

  • presence of mind
    ( 心の平静 )

心ここにあらず 」 ( absence of mind )  の逆。

「 心ここに 存在 ( presence ) する 」より。

Presence of mind (1660s) is a loan-translation of
French présence d’esprit,  Latin praesentia animi.

https://www.etymonline.com/search?q=PRESENCE+OF+MIND


フランス語  ” présence d’esprit ”  及び
ラテン語  ” praesentia animi ”  からの
借用翻訳 ( a loan-translation ) と書いてある。

peace of mind ” に似た意味合い。

 

◇  「 見出し 」英語の解説は、ここが秀逸  ↓
英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語

 

 

 

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