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Spike

      2021/09/29

自動詞 : 急上昇する
他動詞 : アルコール・薬物を こっそり混ぜる 

「 スパイク 」と言えば、「 靴 」か「 タイヤ」 。

これが日本の世間一般の認識だろう。

【発音】   spáik  (1音節)

平板で、均一なリズムの日本語では、

4音節の 「 」。

ところが、英語では 「1音節 ( one syllable )」。

腹の底から ゲロする 迫力で、一息に発声する。

パイ

破裂音[p]に力を込めて、「パイ」を強調。

音節」 ( syllable、シラブル )とは、発音の最小単位。

→  音節の差異が顕著な日英比較は、” integrity ” 参照

◆  普段使いの英語は、それぞれ、

  • 「 スパイク靴 」  cleatsspikesspiked shoes
  • スパイクタイヤ 」   studded tires

靴のスパイクは、米国では  “ cleats ” が多用される。

“ cleat ” の語源は、中期英語の「 くさび 」 (clete)。

電気器具・船具の「 クリート 」もこれ。

【発音】   klíːt  (1音節)

複数形  “spikes” 1語、 または形容詞 “spiked” を
複数形  “shoes” に冠した、  “spiked shoes” も使う。

通常、左右一組(=2つの靴)を指すため、複数形が原則。

片や、「 スパイクタイヤ 」は 和製語

スパイクなしの「 スタッドレスタイヤ 」は、
英語でも ” studless tire “。

“stud” は「 スタッドボルト」「 スタッドベルト 」
のそれで、「 鋲( びょう )」を表す。

語源は、古英語「 柱 」( studu )。

【発音】   stʌ́d  (1音節)

動詞 “stud” は、他動詞「 鋲を打つ 」「 ちりばめる 」。

ここでの “studded” は、形容詞「 ちりばめられた 」。

【発音】   stʌd.ɪd
【音節】   stud-ded  (2音節)

 


語源 「 大くぎ 」

 

先端の尖ったものが苦手な方なら、身の毛がよだつ絵かも。

一瞥した途端、皮膚が ぞわぞわし、鳥肌 が立ったりする。

あるいは、ぼつぼつした突起物の集合体に 吐きそうになったり。

どちらも、恐怖症 ( phobia ) として知られる。

【発音】   fóubiə
【音節】   pho-bi-a  (3音節)

“spike” の理解には欠かせないため、あえて図示した次第。

◆  ” spike ” には、名詞・他動詞・自動詞がある。

語源は、古ノルド語「 大くぎ 」(spīkr)。

英語の “spike” は多義だが、この語源につながる
意味合いが多い。

とりわけ、名詞はその傾向が顕著。

“spike” は、可算名詞である。

  •  先端の尖ったもの
  •  靴底の金具
  •  スパイクシューズスパイクヒール ( 複数形 )
  •  伝票差し
  •  ( 防犯用の ) 忍び返し
  •  グラフ図の波型の尖頭 ( ピーク )
  •  急騰
  •  血糖値スパイク ( 血糖値の急上昇・乱高下 )
  •  棘波 ( きょくは = とがった脳波 )
  •  鋭く振幅の大きい山形のパルス
  •  瞬時性電圧上昇
  •  飲み物に加えるアルコール

名詞・他動詞・自動詞から、最も基本となる
“spike” の語義を1つずつ挙げると、

  • 名詞「 先端の尖ったもの
  • 他動詞「 くぎを打ち付ける
  • 自動詞「 急上昇する


◆  英和辞書で “spike” を引くと、名詞「 犬くぎ(いぬくぎ) 」も目立つ。

鉄道レールを枕木に固定する太いくぎのこと。
頭部が犬の頭に似ているから「 犬くぎ 」。

“dog spike” の訳語で、「 スパイキ 」とも言う。

バレーボールの「 スパイク 」とは、味方がトスした
ネット際の球を、相手側コートに鋭く打ち込む攻撃法。

別称「 アタック 」。

ジャンプして強打する激烈さが、
鋭利なスパイクのイメージそのものである。

また、アメフトの「 スパイク 」は、タッチダウン後に
ボールを地面に叩きつける勝利のアクション。

さらに、競技中「 スパイクされた 」と言えば、
靴底の金具で相手に傷つけられたことを示す。

野球、サッカーなどに出てくる。

すべて強く激しくシャープな様子。

語源 「 大くぎ 」の尖りを連想できるものばかり。

とげとげしい、先ほどの図を見返していただきたい。


◆  数ある語義から、本稿で取り上げる語意の選択基準は、

ニュース全般に比較的頻出だが、
意味を
推測しにくい
自動詞他動詞をひとつずつ

すなわち、

  •  自動詞 「 急上昇する 」
  •  他動詞 「 アルコール・薬物をこっそり混ぜる 」

【活用形】   spike – spikes – spiked – spiked – spiking

【参考】     ※  外部サイト

・ 自動詞と他動詞の違いをイラストで説明
・ 動詞の直後に前置詞や副詞が続くのは自動詞

メディア報道に多用される “spike”。これで選んだ。


◆  実際のところ、英単語全体から見た “spike” の
重要度・頻出度は目立たない。

LDOCE6(ロングマン)の表記によれば、

  • 名詞 “spike”
    –  重要度:<6001~9000語以内>
    –  書き言葉の頻出度:3000語圏外
    –  話し言葉の頻出度:3000語圏外
  • 自動詞・他動詞 “spike”
    –  重要 :9000語圏外  
    –  書き言葉頻出3000語圏外
    –  話し言葉頻出3000語圏外

いずれも特筆すべきものはない。

名詞用法の方が、少しばかり格上な感。
現に「スパイク靴」や「忍び返し」は身近に存在する。

しかし、ニュースに登場する場面はまれ。

単体として事件沙汰になり、報道価値が生じる可能性も低い。

おまけに、語源に沿っており、一度学べば把握可能なレベル。

一方、上掲の自他動詞の用途は、年がら年中ニュースを賑わせる。
当然、紙面を飾る機会も多い。

使い道が 確立して いるからに他ならない。

その割に、「スパイク」からは思いつきにくい。

先述の名詞一覧に比べれば、ずっと疎遠な印象。

だからこそ、自他動詞に焦点を定めて考察していく。


◆  順繰りに見ていこう。

自動詞  「 急上昇する 」

語源から、何の脈絡を見出すことができない感があるが、
そんなことはない。

「大くぎ」みたいに、鋭く飛び出ると「急上昇」する。

こんな感じ。

先端の尖った矢印から、語源の「 大くぎ 」を思い浮かべる
ことは難しくない。

なだらかな流れが、ピュッと一気にとんがり、上向いていく。

そんな 急テンポな右上がりの推移 が、”spike”。

大くぎ状に跳ね上がる勢いから、

  •  急騰
  •  急伸
  •  急増

などと訳される。

自動詞 “spike” 1語でも通じるが、副詞 “up” を加えた
spike up ” もよく見聞きする。

自動詞の句動詞なので、”spike up” は「句自動詞」 。

逆に ” spike down ” なら「急降下」。
同じく「句自動詞」。-s

“spike up” も、”spike down” も句自動詞 ( intransitive phrasal verb ) 。

“spike down” の出番は少なめ。
参考程度に押さえておけばよい。


◆  自動詞 “spike”、”spike up” は、「 急上昇 」「 急騰 」「 急伸 」。

数値を扱う報道に馴染むことが分かる。
特に、情勢の急転を告げる経済記事で重宝する。

物価 株価 価格 金利 原材料 相場 地価

これらの変動をカバーする。
急騰すれば、速報が流れることもある。

歓迎すべき急上昇かどうかは、立場によりけり。
がらりと急変後、関係者に緊張が走る現象はきっと共通する。

3大学習英英辞典(EFL辞典)は次の通り。

“ spike ”

  • if the number or rate of something spikes,
    it increases quickly and by a large amount.

    (LDOCE6、ロングマン)
  • (especially North American English)
    to rise quickly and reach a high value.

    (OALD9、オックスフォード)
  • to rise to a higher amount, price, or level,
    usually before going down again.

    (CALD4、ケンブリッジ)

    ※  下線は引用者

【発音】   spáik  (1音節)


そろって容易と言える語釈だろう。

CALD4の下線部「 通常は再び下降する前 」は
言い得て妙。

What goes up must come down.
( 上がったものは、必ず下がる。)

ニュートン
Sir Isaac Newton (1642-1727)


こうした格言を彷彿する。

浮き沈みは世の常。
先に触れた物価や株価などに限らない。

「 山あり谷あり 」ゆえに、名詞 ” spike ”  でご紹介した
以下の語意が成立する。

  •  グラフ図の波型の尖頭 (  ピーク  )
  •  棘波 ( きょくは = とがった脳波 )
  •  鋭く振幅の大きい山形のパルス

「 山あり 」が  ” spike “。

  • “Oil prices spiked this morning.”
    (今朝、石油価格が急騰した。)
  • “Pageviews for my website spiked yesterday.”
    (昨日、私のサイトの閲覧数が急上昇した。)
  • “Gas prices spiked another 7 cents per gallon.”
    (ガソリン価格はガロンあたり、さらに7%も急上昇した。)
  • “Youth suicides spiked after release of the movie.”
    (その映画の公開後、若者の自殺が急増した。)
  • “The teacher did not elaborate on the spike in violations.”
    (その教師は違反が急上昇したことについて、詳しく触れなかった。)
  • “Defense spending has spiked by 90% in a decade.”
    (10年間で、防衛費は90%も急増した。)
  • “Sales of face masks are spiking.”
    (マスクの売上げが急激に伸びている。)
  • “U.S. inflation just spiked”
    (米インフレ、急激に悪化)
    ※  ニュース見出し
  • “The U.S. Is Seeing a Massive Spike in Anti-Asian Hate Crimes”
    (アジア系に対するヘイトクライムが激増する米国)
    ※  ニュース見出し
  • “COVID-19 Is Spiking”
    (新型コロナウイルスが急増中)
    ※  ニュース見出し
  • “Coronavirus Cases Are Spiking at Federal Agencies”
    (コロナ感染者数が連邦政府機関で急増中)
    ※  ニュース見出し
  • Lifting shelter-in-place orders would lead to a
    spike in infections this summer.”
    (外出禁止令の解除は、今夏の感染者急増をもたらす)
    ※  ニュース見出し
  • “Huge Spike in Coronavirus Cases”
    (コロナウイルス感染者急増)
    ※  ニュース見出し

  • “X says number of coronavirus cases spiked
    from three to 132”
    (X国:コロナウイルス感染者が3名から132名に急増)
    ※  ニュース見出し
  • “In Y, coronavirus cases are spiking”
    (Y地区でコロナウイルス感染者が急増中)
    ※  ニュース見出し
  • “White House in denial over coronavirus spikes”
    (コロナウイルス急増に否定的なホワイトハウス)
    ※  ニュース見出し
  • “Are bars responsible for COVID-19 spikes ? ”
    (新型コロナウイルス急増、酒場が原因なのか)
    ※  ニュース見出し
  • “Spike in COVID Cases Prompts Japan to Extend State of Emergency”
    (日本のコロナ感染者急増が、緊急事態宣言の延長を促す)
    ※  ニュース見出し

【類似表現】

” skyrocket ”
https://mickeyweb.info/archives/44447
(急上昇する)

◆  お次は、新聞沙汰の他動詞。

他動詞  「 アルコール・薬物をこっそり混ぜる 」

手始めにご指摘したいことは、必ずしも「こっそり」でない点。

風味を増すため、調味料などを加える “spike” もありうる。

  • “He loves hotdogs spiked with mustard.”
    (彼はマスタードをかけたホットドッグが大好き。)

CALD4 の記載する例文のひとつは、

  • “The pasta was served in a cream sauce spiked
    with black pepper.”
    (そのパスタは黒コショウで味付けしたクリームソース
    で和えられていた。)

該当する語釈はこちら。

“ spike ”

  • to make a drink stronger by adding alcohol, or 
    to add flavor or interest to something.
    (CALD4、ケンブリッジ)

    ※  下線は引用者

【発音】    spáik   (1音節)


” alcohol ” も含むが、「 知らぬ間に 」のニュアンスは見当たらない。

だが、LDOCE6 と OALD4 は明記する。

ハイライト部分に着目。

“ spike ”

  • to secretly add strong alcohol or a drug to
    someone’s drink or food.

    (LDOCE6、ロングマン)
  • to add alcohol, poison or a drug to somebody’s
    drink or food  without them knowing.

    (OALD9、オックスフォード)

    ※  下線・ハイライトは引用者

【発音】    spáik   (1音節)

無論、事件沙汰になるのは「こっそり」系。

LDOCE6 と OALD4 が示すように「他者」(下線部)
の飲み物や食べ物に無断で混ぜる行為である。

その後の出来事は言わずもがな。周知の話であろう。

ーー
◆  意識もうろうに追い込む物質は、上記の 3大EFL辞典 によると、

  • alcohol ( アルコール )
  • drug ( 薬物 )
  • poison ( 毒物 )

飲み物なら、こういう具合か。



薬物としては、睡眠薬(「 サイレース 」など )が代表格。

俗に ” date rape drugs ” と総称

主に、顔見知りとのデート中に起こるため ” date rape “。

日本では、「 スピリタス 」に「 梅酒 」を混ぜる方法が
横行しているとも聞く。

スピリタスは、アルコール度数96%の「 世界最強ウォッカ 」。
口当たりのよい梅酒と合わせれば、 酔いを自覚しにくくなる。

この種の情報は、インターネットで調べると無限に出てくる。

各国で問題になっている犯罪であり、防犯意識を高めるため
の情報も 大量に 出回っている。


◆  表現の基本パターンは、

 spike ●● with ■■ 

●●  →  飲み物、食べ物( 目的語 )
■■  →  アルコール、薬物、毒物

ここでの ” with  は、「 手段・材料の前置詞 」。

” with ■■ ” の部分は概ね固定されている反面、
●● は 所有格に伴う言い回しもある。

この場合、英文法に従って、単語の移動がある。

  • “Her orange juice had been spiked with vodka.”
    (彼女のオレンジジュースにはウォッカが混入されていた。)
  • “She spiked his food with drugs.”
    (彼女は彼の食べ物に薬物を混入した。)
  • “I was given milk spiked with alcohol.”
    (頂いた牛乳にアルコールが混入されていた。)
  • “They served desserts spiked with booze.”
    (彼らはアルコール入りのデザートを出したの。)
  • “My drink must have been spiked with steroids.”
    (私の飲み物にステロイドが入れられたに違いない。)

 

【参考記事】     ※  外部サイト

レイプドラッグから身を守る3箇条( NHK クローズアップ現代+ )  ↑
https://www.nhk.or.jp/gendai/kiji/144/index.html
2019年7月3日付

 

 

 

 

 

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