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Spike

      2020/06/28

自動詞 : 急上昇する
他動詞 : アルコール・薬物を こっそり混ぜる 

「スパイク」と言えば、「靴」か「タイヤ」。
これが日本の世間一般の認識だろう。

【発音】   spáik  (1音節)

 

普段使いの英語は、それぞれ

靴のスパイクは、米国では “cleats” が多用される。
“cleat” の語源は、中期英語の「くさび」 (clete)。
電気器具・船具の「クリート」もこれ。

【発音】   klíːt  (1音節)

複数形 “spikes” 1語、または形容詞 “spiked” を
複数形 “shoes” に冠した “spiked shoes” も使う。

通常、左右一組(=2つの靴)を指すため、複数形が原則。

片や「スパイクタイヤ」は和製語

スパイクなしの「スタッドレスタイヤ」は、
英語でも “studless tire”。

“stud” は「スタッドボルト」「スタッドベルト」
のそれで、「鋲(びょう)」を表す。

語源は、古英語「柱」(studu)。

【発音】   stʌ́d  (1音節)

動詞 “stud” は、他動詞「鋲を打つ」「ちりばめる」。
ここでの “studded” は、形容詞「ちりばめられた」。


先端の尖ったものが苦手な方なら、身の毛がよだつ絵かも。

一瞥した途端、皮膚がぞわぞわし、鳥肌が立ったりする。

あるいは、ぼつぼつした突起物の集合体に吐きそうになったり。

どちらも恐怖症phobia) として知られる。

【発音】   fóubiə
【音節】   pho-bi-a  (3音節)

“spike” の理解には欠かせないため、あえて図示した次第。

◆ “spike” には、名詞・他動詞・自動詞がある。

語源は、古ノルド語「大くぎ」(spīkr)。

英語の “spike” は多義だが、この語源につながる
意味合いが多い。とりわけ名詞はその傾向が顕著。

“spike” は可算名詞である。

  • 先端の尖ったもの
  • 靴底の金具
  • スパイクシューズスパイクヒール(複数形)
  • 伝票差し
  • (防犯用の)忍び返し
  • グラフ図の波型の尖頭(ピーク)
  • 急騰
  • 血糖値スパイク(血糖値の急上昇)
  • 棘波(きょくは=とがった脳波)
  • 鋭く振幅の大きい山形のパルス
  • 瞬時性電圧上昇
  • 飲み物に加えるアルコール

名詞・他動詞・自動詞から、最も基本となる
“spike” の語義を1つずつ挙げると、

  • 名詞「先端の尖ったもの
  • 他動詞「くぎを打ち付ける
  • 自動詞「急上昇する

英和辞書で “spike” を引くと、名詞「犬くぎ」も目立つ。

鉄道レールを枕木に固定する太いくぎのこと。
頭部が犬の頭に似ているから「犬くぎ(いぬくぎ)」。
“dog spike” の訳語で「スパイキ」とも言う。

バレーボールの「スパイク」とは、味方がトスした
ネット際の球を、相手側コートに鋭く打ち込む攻撃法。
別称「アタック」。

ジャンプして強打する激烈さが、
鋭利なスパイクのイメージそのものである。

また、アメフトの「スパイク」は、タッチダウン後に
ボールを地面に叩きつける勝利のアクション。

さらに、競技中「スパイクされた」と言えば、
靴底の金具で相手に傷つけられたことを示す。
野球、サッカーなどに出てくる。

すべて強く激しくシャープな様子。
語源「大くぎ」の尖りを連想できるものばかり。

とげとげしい、先ほどの図を見返していただきたい。


◆ 数ある語義から、本稿で取り上げる語意の選択基準は、

ニュース全般に比較的頻出だが、
意味を
推測しにくい
自動詞他動詞をひとつずつ

すなわち、

  • 自動詞「急上昇する」
  • 他動詞「アルコール・薬物をこっそり混ぜる」

【活用形】   spike – spikes – spiked – spiked – spiking

【参考】    ※  外部サイト
・ 自動詞と他動詞の違いをイラストで説明
・ 動詞の直後に前置詞や副詞が続くのは自動詞

メディア報道に多用される “spike”。これで選んだ。


◆ 実際のところ、英単語全体から見た “spike” の
重要度・頻出度は目立たない。

LDOCE6(ロングマン)の表記によれば、

  • 名詞 “spike”
    重要度:<6001~9000語以内>
    – 書き言葉の頻出度:3000語圏外
    – 話し言葉の頻出度:3000語圏外
  • 自動詞・他動詞 “spike”
    重要 :9000語圏外  
    書き言葉頻出3000語圏外
    話し言葉頻出3000語圏外

いずれも特筆すべきものはない。
名詞用法の方が、少しばかり格上。
現に「スパイク靴」や「忍び返し」は身近に存在する。

しかし、ニュースに登場する場面はまれ。
単体として事件沙汰になり、報道価値が生じる可能性も低い。

おまけに、語源に沿っており、一度学べば把握可能なレベル。

一方、上掲の自他動詞の用途は、年がら年中ニュースを賑わせる。
当然、紙面を飾る機会も多い。
使い道が確立しているからに他ならない。

その割に、「スパイク」からは思いつきにくい。
先述の名詞一覧に比べれば、ずっと疎遠な印象。
だからこそ、自他動詞に焦点を定めて考察していく。


◆ 順繰りに見ていこう。

自動詞「急上昇する」

語源から、何の脈絡を見出すことができない感があるが、
そんなことはない。

「大くぎ」みたいに、鋭く飛び出ると「急上昇」する。

こんな感じ。

先端の尖った矢印から、語源の「大くぎ」を思い浮かべる
ことは難しくない。

なだらかな流れが、ピュッと一気にとんがり、上向いていく。
そんな急テンポな右上がりの推移が “spike”。

大くぎ状に跳ね上がる勢いから、「急騰」「急伸」「急増」
と訳される。

自動詞 “spike” 1語でも通じるが、副詞 “up” を加えて 、
spike up” と表現することも多い。

自動詞の句動詞なので、”spike up” は「句自動詞」 。

逆に “spike down” なら「急降下」。同じく「句自動詞」。-、、”spike up” は句自動詞 。”spike up” は句自動詞 。
後者の出番は少ない。 参考程度に押さえておけばよい。


◆  自動詞 “spike”、”spike up” は、「急上昇」「急騰」「急伸」。

数値を扱う報道に馴染むことが分かる。
特に、情勢の急転を告げる経済記事で重宝する。

物価・株価・価格・金利・原材料・相場・地価

これらの変動をカバーする。
急騰すれば、速報が流れることもある。

歓迎すべき急上昇かどうかは、立場によりけり。
がらりと急変後、関係者に緊張が走る現象はきっと共通する。

3大学習英英辞典(EFL辞典)は次の通り。

“spike”

  • if the number or rate of something spikes,
    it increases quickly and by a large amount.

    (LDOCE6、ロングマン)
  • (especially North American English)
    to rise quickly and reach a high value.

    (OALD9、オックスフォード)
  • to rise to a higher amount, price, or level,
    usually before going down again.

    (CALD4、ケンブリッジ)

    ※ 下線は引用者

【発音】   spáik  (1音節)

そろって容易と言える語釈だろう。

CALD4の下線部「通常は再び下降する前」は
言い得て妙。

What goes up must come down.
(上がったものは、必ず下がる。)

ニュートン
Sir Isaac Newton (1642-1727)

こうした格言を彷彿する。

浮き沈みは世の常。
先に触れた物価や株価などに限らない。

「山あり谷あり」ゆえに、名詞 “spike”  でご紹介した
以下の語意が成立する。

  • グラフ図の波型の尖頭(ピーク)
  • 棘波(きょくは=とがった脳波)
  • 鋭く振幅の大きい山形のパルス

「山あり」が “spike”。

  • “Oil prices spiked this morning.”
    (今朝、石油価格が急騰した。)
  • “Pageviews for my website spiked yesterday.”
    (昨日、私のサイトの閲覧数が急上昇した。)
  • “Gas prices spiked another 7 cents per gallon.”
    (ガソリン価格はガロンあたり、さらに7%も急上昇した。)
  • “Youth suicides spiked after release of the movie.”
    (その映画の公開後、若者の自殺が急増した。)
  • “Defense spending has spiked by 90% in a decade.”
    (10年間で、防衛費は90%も急増した。)
  • “Sales of face masks are spiking.”
    (マスクの売上げが急激に伸びている。)
  • Lifting shelter-in-place orders would lead to a
    spike in infections this summer.”
    (外出禁止令の解除は、今夏の感染者急増をもたらす)
    ※  ニュース見出し
  • “Huge Spike in Coronavirus Cases”
    (コロナウイルス感染者急増)
    ※  ニュース見出し

  • “X says number of coronavirus cases spiked
    from three to 132”
    (X国:コロナウイルス感染者が3名から132名に急増)
    ※  ニュース見出し
  • “In Y, coronavirus cases are spiking”
    (Y地区でコロナウイルス感染者が急増中)
    ※  ニュース見出し
  • “White House in denial over coronavirus spikes”
    (コロナウイルス急増に否定的なホワイトハウス)
    ※  ニュース見出し



【類似表現】

“skyrocket”
https://mickeyweb.info/archives/44447
(急上昇する)

◆ お次は、新聞沙汰の他動詞。

他動詞「アルコール・薬物をこっそり混ぜる」

手始めに強調したいことは、必ずしも「こっそり」でない点。
風味を増すため、調味料などを加える “spike” もありうる。

  • “He loves hotdogs spiked with mustard.”
    (彼はマスタードをかけたホットドッグが大好き。)

CALD4 の記載する例文のひとつは、

  • “The pasta was served in a cream sauce spiked
    with black pepper.”
    (そのパスタは黒コショウで味付けしたクリームソース
    で和えられていた。)

該当する語釈はこちら。

“spike”

  • to make a drink stronger by adding alcohol, or 
    to add flavor or interest to something.
    (CALD4、ケンブリッジ)

    ※  下線は引用者

【発音】   spáik  (1音節)

“alcohol” も含むが、「知らぬ間に」のニュアンスが見当たらない。

だが、LDOCE6 と OALD4 は明記する。
ハイライト部分がそれ。

“spike”

  • to secretly add strong alcohol or a drug to
    someone’s drink or food.

    (LDOCE6、ロングマン)
  • to add alcohol, poison or a drug to somebody’s
    drink or food without them knowing.

    (OALD9、オックスフォード)

    ※  下線・ハイライトは引用者

【発音】   spáik  (1音節)

無論、事件沙汰になるのは「こっそり」系。

LDOCE6 と OALD4 が示すように「他者」(下線部)
の飲み物や食べ物に無断で混ぜる行為である。

その後の出来事は言わずもがな。周知の話であろう。

ーー
◆ 意識もうろうに追い込む物質は、上記の3大EFL辞典によると、

  • alcohol (アルコール)
  • drug (薬物)
  • poison (毒物)

飲み物なら、こういう具合か。


薬物としては、睡眠薬(「サイレース」など)が代表格。

俗に “date rape drugs” と総称される

主に、顔見知りとのデート中に起こるため “date rape“。
ーー
日本では、「スピリタス」に「梅酒」を混ぜる方法が
横行しているとも聞く。

スピリタスは、アルコール度数96%の「世界最強ウォッカ」。
口当たりのよい梅酒と合わせれば、酔いを自覚しにくくなる。

この種の情報は、インターネットで調べると無限に出てくる。
各国で問題になっている犯罪であり、防犯意識を高めるため
の情報も大量に出回っている。


◆ 表現の基本パターンは、

 spike ●● with ■■ 

●● → 飲み物、食べ物(目的語)
■■ → アルコール、薬物、毒物

ここでの “with” は、手段・材料の前置詞。

“with ■■” の部分は概ね固定されている反面、
●●は所有格に伴う言い回しもある。

この場合、英文法に従って、単語の移動がある。

  • “Her orange juice had been spiked with vodka.”
    (彼女のオレンジジュースにはウォッカが混入されていた。)
  • “She spiked his food with drugs.”
    (彼女は彼の食べ物に薬物を混入した。)
  • “I was given milk spiked with alcohol.”
    (頂いた牛乳にアルコールが混入されていた。)
  • “They served desserts spiked with booze.”
    (彼らはアルコール入りのデザートを出したの。)
  • “My drink must have been spiked with steroids.”
    (私の飲み物にステロイドが入れられたに違いない。)

 

【参考記事】    ※  外部サイト

レイプドラッグから身を守る3箇条(NHK クローズアップ現代+) ↑
https://www.nhk.or.jp/gendai/kiji/144/index.html
2019年7月3日付

 

 

 

 

 

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