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Go-to

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< お知らせ >  2020年7月16日(木)

本稿  ” go-to ” のアクセス数が、今月7月に入って、
急上昇 しております。

普段の弊サイトでは、動きの少ない地味な形容詞です。

そこで、念のため、最初にご了承いただきたいこと。

■  2020年7月 より実施中の 国土交通省の観光支援策、
Go To キャンペーン 」 ( ゴートゥーキャンペーン )

■  本稿で取り上げる 形容詞  ” go-to ” 

両者は、無関係


このように考えます。

せっかくお越しいただいた皆様のお役に立てず、
申し訳ございません。

◆  旅行の需要喚起を目指す経済政策の趣旨から推断して、
観光庁が意図する内容は、

  •  自動詞  ” go ” ( 行く、 出かける )
  •  前置詞  ” to ” ( ~ へ、~ まで、~ に )
    →  方向・方角を示す前置詞


折もあろうに、

旅行に出かけましょう ! 」と国民に促したい模様。

それにしても、

 「 Go To トラベル 」は、 妙な言い回し  


「 to + 動の原形 」で、 一見すると「 to不定詞 」。

英語ネイティブにも、どうにか通じると思われるものの、
「 英文法的に間違い 」 と判断できる印象です。

◆  ” travel ” は、 不可算名詞・可算名詞で「 旅行 」。

名詞なら 不可算 原則で、 名詞よりも 動詞が中( 後述 )。

自動詞・他動詞で 「 旅行する 」。

【発音】  trǽvl
【音節】  trav-el  (2音節)
【活用形】  travels – traveled – traveled – traveling

語源は、古フランス語「 苦労して働く 」( travaillier )。

travail “( 苦労、苦労する ) と同源で、 同語扱いされていました。

初出は13~14世紀で、当初から一貫するのが「 苦労 」の意味合い。

◆  ” travel ” は、主に「 動詞 」で使います。

別の動詞( ここでは ” go ” )を伴わなくても、1語でする 」。

マイナー用法としては、以下の通り、「 移動する 」。

車両ならば、「 走行する 」。

どうしても動詞  ” go ” を起用したいのであれば、
” go on travel ”  や  ” go traveling ” の方がよい。

【発音】  trǽvəliŋ
【音節】  trav-el-ling  (3音節)

◆  名詞用法の ” travel “( 旅行 )は、「 不可」が基本です。

この点、原則「 可算 」の名詞 ” trip “、” tour “、” journey
と異なります。

【発音】  trip
【音節】  trip  (1音節)

【発音】  tour
【音節】  tour  (1音節)

【発音】  dʒə́ːrni
【音節】  jour-ney  (2音節)

【参考】    ※  外部サイト

 

▼▼▼  こちらから、 本題の 形容詞go-toです  ▼▼▼  


 

頼りになる

He is my go-to guy.

(私が頼りにしているのが彼です。)

異動前の 引き継ぎ 説明をしている、我が同僚の発言。

「 彼に聞けば、確実に分かるから 」

と本人が太鼓判を押す者なので、安心感がある。

◇  自信と親しみを込めて、周囲に紹介できる相手

が ” go-to ” の人。

a go-to guy ” は、頼りになる仲間 くらい。

さらに「 大黒柱 」「 屋台骨 」とも訳される。

少々くだけた言い振りだが、ビジネス場面でも使われる。

人を紹介するということは、自分の責任も
問われるもの。

しかも、その余波は長期に渡ることが多い。

とんでもない人を紹介して、自分の信用を
損ねるわけにいかない。

だから、分相応な相手を慎重に選ぶ。

形容詞 “go-to” を用いて紹介する場合、
その人に対する  特別な信頼  を示す。

<  皆様に堂々とご紹介できるお方 
<  お人柄も能力も申し分ないです 

こんな好意に満ちた響きが伝わるのが、
” my go-to guy ” や ” my go-to person “。

” a go-to guy ” の役割面は、役所などの
ワンストップサービス 」に近い。

つまり、その人に尋ねれば、不明点はなくなる。

次にどうすればよいか分かれば、大きな不安は
雲散霧消したりするから、本当に頼りになる。

◆  ” go-to ” は、形容詞 のみ。

【発音】  ɡoʊˈtu
【音節】  go-to  (2音節)


初出は1985年なので、比較的新しい。( Merriam-Webster

プログラミング言語の  ” goto ”  と機能は似ている。

「 この行・ラベルに即刻ジャンプ 」と実行順序
の変更を指示するコマンドだが、 同様のイメージ。

「 なにかあればこの人まで直行 ! 


それもそのはず、” go-to ” の字面から推測できるように、
動詞 ” go ” と前置詞 “ to ” が、ハイフンで合体した
複合形容詞( compound adjective )である。

  •  自動詞  ” go “( 行く )
  •  方向の前置詞  ” to “( ~ へ )

形容詞 ” go-to ” は、「  〜 へ 行く 」。

” a go-to person ” ならば、 読んで字のごとく
「 ~ へ行く人 」。

視点を逆転させると、 自分が「 行くべき人 」。

すなわち、困った時に駆けつけるべき対象。

通常は人物中心 だが、次の青字にあるよに、
組織 や ウェブサイト のような無生物でもよい。

” go-to “

※  色は引用者


上記2点の辞書は、個性的な語釈である。

  • LDOCE  is the go-to website for English words for me.”
    (LDOCE こそ、英単語の頼りどころです。)
  • OALD  is my go-to resource for translation.”
    (OALD こそ、翻訳時の頼みの綱です。)

英英辞書の典型解説は次の通り。

go-to

  • the go-to person is someone who people
    always ask for help with a particular problem,
    because of their great skill or knowledge.
    ( LDOCE6、ロングマン )
  • relied on for expert knowledge or skill.
    Merriam-Webster

※  色は引用者

◆  熟練の技能( skills )または知識( knowledge
に基づく信頼。

それが、 形容詞  ” go-to

【発音】  ɡoʊˈtu
【音節】  go-to  (2音節)

今回調べた8点の英英辞書には、” American English “、
” informal ” と表記するものもあったが、それぞれ
半々くらいの割合。

” American English ” は、「 アメリカ英語、 米語 」。
” informal ” は、「 非正式またはくだけた表現 」。

語源的にも確立された説であれば、ほぼ一律に記載
される表示が  ” American English ” と ” informal “。

半数だから、そのレベルに至らないと考えてよいだろう。

 

任せなさい!

 

◆  先に述べたように、飾る名詞は人物が目立つ。

よく出るパターンは、可算名詞  ” guy ” につける、
go-to guy “。

「 タフガイ 」( a tough guy )の ” guy ” である。

【発音】  ɡaɪ
【音節】  guy  (1音節)

」「 やつ 」が定訳で、 男性を指すのが一般的。

1605年に英国の国会議事堂を爆破しようとした、
首謀者  Guy Fawkes ( 1570-1606 )にちなむ成り立ち。

そのため、男性が原則となる。

複数形 ” guys ” の性別は無関係( gender-nutural )

【発音】  ˌdʒen.dɚˈnuː.trəl

男女または女性だけのグループにも、日常的に用いられる。

君たち 」といった風。

敵対的な状況では、「 あんたら 」「 お前ら 」。

 


◆  片や、単数形の ” guy ” は、圧倒的に男性を指す。

は、男性と考える方が自然。

女性であれば、同じく可算名詞の ” person ” を用いる。

実際のところ、” a go-to person “、” the go-to person “、
” my go-to person ” は、ほとんど聞かない感じ。

” go-to ” と言えば、” guy ” がぴったりなのは、
1985年の初出以来、主にこうして使われてきたため。

現実的に頼られる側は、まだまだ男性が多い。

無論、頼りがいのある優秀な女性がいないからではない。

女性の場合、” go-to ” とあまり表現してこなかっただけ。

「 一家の大黒柱 」ときたら、大勢がまず男性を思う。

それと重なる、従来からの風潮に他ならない。

  だいこくばしら【大黒柱】

2.  ある集団の中心となり、 それを支える働きを
している人。
( 大辞林 第四版 )

  やたいぼね【屋台骨】

2.  家庭や組織を支える〈人/もの〉。財産。
( 三省堂国語辞典 第八版 )

※  語釈の該当のみ引用

【類似表現】

” You are in good hands.”
( 後任者は頼りになる方です。)
( 後任者に安心してお任せください。)

 

 

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