過度に
< 行き過ぎ > を表す副詞。
主たる定訳は 「 過度に 」。
【発音】 óuvərli
【音節】 o-ver-ly (3音節)
行為や状態そのものでなく、過剰な要素を問題視
するため用いるのが主用途。
「 過度に 」と同様に、
好意的な流れで使われる機会は少なめ。
–
これぞ、同義の 副詞 ” too “ や ” very “ との大きな違いである。
たった1語で、さらりと 指摘・非難 できるから便利。
使い方は比較的簡単なので、ご自分で使えるようにしておくとよい。
◆ 手始めに、辞書チェック。
–
定訳があるので、最初は国語辞典から。
どれも全文。
かど【過度】
■ 適切な程度を超えていること。 度を過ごすこと。
また、そのさま。
( 大辞林 第四版 )
■ 普通の程度を超えていること。 また、そのさま。
いきすぎるさま。 なみはずれ。
( 精選版 日本国語大辞典 )
■ 適当な程度を超えていること。
( 明鏡国語辞典 第三版 )
度が過ぎる
■ 限度を ひどく 超えている
( 広辞苑 第七版 )
■ 普通の程度 を はなはだしく 超える。
( 大辞林 第四版 )
※ 下線は引用者
–
俗語なら「 ぶっとぶ 」のイメージが近いかもしれない。
–
ぶっとぶ【(打っ)飛ぶ】
〔俗〕
3. 常識では考えられない ほど、めちゃくちゃになる。
( 三省堂国語辞典 第七版 )
※ 下線は引用者
※ 語釈の該当項のみ引用
どの語釈も苛烈な点に着目。
独自性や努力を認める温かい眼差しはなく、
「 なにやってんのよ 」 と呆れ果てている感じ。
本来ならば、賞賛に値する行為であっても、
「 過度 」 がつくと逆効果になってしまう模様。
その際、 本人の健康のためなど、 もっともらしい理由
がついて回るのは言うまでもない。
辞書の例文を示すと、
- 「 過度の勉強 」( 三省堂国語辞典 第七版 )
- 「 過度の運動 」( 明鏡国語辞典 第三版 )
「 勉強せよ 」「 運動せよ 」との掛け声を形なし
にしてしまう内容である。
「 普通 」「 常識 」から外れると、「 適切な程度 」を越える。
そうなると、 爪弾きを受けやすくなるのが、 衆生界の掟。
頑張る人なら、 不満が生じても不思議でない。
- 人並み外れた努力がいけないの ?
- 「 過度 」って、誰の基準よ ?
外れ値( outliers )的な存在が警戒されるのは、
世界の歴史が証明している。
いつの世も、 改革者は誤解と不信に見舞われがち。
心ない評を 物ともせず、 次元を突き抜ける覚悟と才能
がなければ、 開花結実は難しい。
「 過ぎたるはなお及ばざるが如し 」などと御託を並べる
凡百の 外野に負けて しまうケースが大半。
「 過度 」扱いで、 あえなく終了。
かくして異材はつぶされる。
–
無残なものである。
◆ では「 過度 」を前提に、 8点の英英辞典を見ていこう。
” overly ”
■ too or very.
( LDOCE6、ロングマン )
■ (before an adjective) too; very
( OALD9、オックスフォード )
■ too; very
( CALD4、ケンブリッジ )
■ Overly means more than is normal,
necessary, or reasonable.
( COB9、コウビルド )
■ very much, or too much
( Macmillan、マクミラン )
■ to an excessive degree : TOO
( Merriam-Webster、メリアム ウェブスター)
■ too; excessively
( Collins English Dictionary, 12th Edition )
■ too or too much; excessively
( Webster’s New World College Dictionary, 5th Ed. )
【発音】 óuvərli
【音節】 o-ver-ly (3音節)
–
非常にすっきりとした語釈ばかりである。
” overly ” の初出は、 1050年以前。
( ランダムハウス英和大辞典 第2版 )
見かけによらず、古い単語である。
–
◇ ” too “、” very “、” excessively ” が共通語
–
英英8点中、7点がいずれかの 副詞( adverb )を含む。
ここでは、 ” COBUILD ” のユニークな解説が際立つ。
※ → 短所 もある
それでも、 ” more than is normal ” とあるので、
先述の 「 普通の程度を超えている 」 の通り。
3つの共通語は、 中級学習者 にとっては、 常用語レベル。
既に触れたように、 ” too ” と ” very ” はネガポジ不問。
◆ 一方、” excessively ” は、” overly ” に近似している。
–
すなわち、 中立的でなく、 ネガティブに偏る用途。
” excessive ” と ” over ” の語源が似通うからこうなる。
- ” excessive “( 過度の、 過大な ) ※ 形容詞
–
【語源】
名詞 ” excess “( 超過 )+ 接尾語 ” ive “( ~ の性質をもつ )
→ ” excess ” の語源は、ラテン語 ” excessus “( 逸脱 )
–
【発音】 iksésiv
【音節】 ex-ces-sive (3音節)
–
【発音】 iksésivli
【音節】 ex-ces-sive-ly (4音節)–
–
– - ” over “( ~ を越えて、 ~ より上で ) ※ 前置詞・副詞
–
【語源】
古英語 ” ofer “( ~ を越えて上に )
–
【発音】 óuvər
【音節】 o-ver (2音節)
「 越える 」 → 「 行き過ぎ 」の成り立ちが、もろに重なる。
様態を表す接尾語 ” ly ” を加えても、語源はそのまま。
したがって、 ネガ寄り用法は変わらない。
2語そろって、悪口 に最適。
ー
◆ さっそく、 悪態チェック。
会議中、せっせと 集めた表現 である。
当事者が、 事の 背景 を説明していた。
社内だが、 公式の場。
槍玉に挙げられた側は、 それなりの地位におられる方も多い。
当然、 物言いに注意するはずだ。
なんや、こいつ
- “He was being overly friendly and I guess kind of groping me.” ↑
(彼はなれなれしくなり、私を触っていたような気がします。)
–
◇ ” guess ” 及び ” kind of ” で、 言葉をにごしている
※ ” guess ” → 他動詞・自動詞・名詞 「 推測( する )」
–
– - “He was overly trying to be my friend.”
(彼はやたらと友達になりたがったのです。)
–
◇ ” trying ” は、 ここでは現在分詞 ( present participle )
→ 過去進行形 ( past continuous )
–
ー - “She is overly sensitive and I really don’t know what to do.”
(彼女は極端に神経質なので、もうお手上げなのです。)
–
◇ パワハラ告発に、上司が弁明
–
ー - “He was overly ambitious and overly confident.”
(彼は野心的すぎで、自信過剰でした。)
–
◇ 同僚の暴走で、顧客からクレーム–
–
ー
- “She is overly jealous of other people who approach her boss.”
(自分の上司に近づく人々に、彼女はやけに嫉妬するのです。)
–
◇ 周囲ともめる、同僚女性を分析
–
ー - “He is an overly judgemental boss.”
(彼は批判的すぎる上司なのです。)
(彼は決めつけすぎる上司なのです。)
(彼は細かすぎる上司なのです。)
–
◇ 必要以上に管理したがる上司は、 ” a micromanager ”
–
ーー - “I was overly naive back then.”
(あの頃の私は、あまりにも世間知らずでした。)
–
◇ 純真さの「 ナイーブ 」は、和製語に近い
–
ー - “They are overly optimistic about this project.”
(このプロジェクトに対して彼らは楽観的すぎです。)
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◇ 怠惰な相手チームを批判
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ー - “But I didn’t want to get overly involved in the project.”
(しかし、そのプロジェクトに深入りするのも嫌だった。)
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◇ 自己保身
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– - ” Highway tolls are overly expensive in Japan.”
( 日本の高速道路料金は高すぎる。)
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◇ 高速道路の料金所でトラブル
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ー - “Japanese staff was overly polite and wouldn’t
leave us alone.”
(日本人スタッフは丁重すぎて、放っておいてくれなかった。)
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◇ 「 おもてなし文化 」の弊害。 うざい らしい。
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ーー - “We got overly excited and broke the window.”
(私たちははしゃぎすぎて、窓を割りました。)
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◇ 社内イベントで器物損壊
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ー - “She seemed overly concerned about the upcoming audit.”
(彼女は今度の監査について、ひどく心配していた様子でした。)
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◇ 突然、退職した部下に対する思い
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– - “The document was full of overly technical terms.”
(この文書には専門用語が多すぎる。)
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◇ 難しすぎると、とっつきにくくなる
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◆ 自制する話し手の姿勢を看取でき、なかなか好印象。
◇ ” too ” に比べ、知的な言い回しが利点
繰り返すが、行為( 動詞 )や状態( 形容詞 )そのものでなく、
過剰な要素を取り上げるために用いるのが基本。
雑言抜きの状況説明は、雰囲気をかき乱さないので、
出席者を安心させる。
「 さらりと指摘・非難できるから便利 」
と上述したのは、 このようなメリットを指す。
品位を保ちつつ、行き過ぎ を指摘するのに役立つ ” overly “。
この点、 日本語の「 過度に 」同然といっても過言ではない。
日英とも応用が効くので、 ぜひ押さえておきたい。
【類似表現】
- ” overdo ” ※ 自動詞・他動詞
(やりすぎる)
– - ” overkill ” ※ 名詞・自動詞・他動詞
https://mickeyweb.info/archives/7206
(行き過ぎ、過剰)
– - ” go overboard ”
https://mickeyweb.info/archives/831
(やり過ぎる。行き過ぎる。)