Grope
2022/08/08
( 他者の ) 身体をまさぐる、 いじる
セクハラ事件でよく出てくる単語。
■ 男女間に限らず、 同性間のトラブルにも使う。
■ 加害者が女性、 被害者が男性のケースもOK。
- ” She was fired for groping his groin. ”
( 彼女は彼の股間を触って解雇された。)
–
※ ニュース記事より
–
◆ 発音注意で、「 グ ロ ウプ 」。
【発音】 gróup (1音節)
「 グ ル ープ 」ではない。 ※ 後述
–
ニュースに多用される ” grope ” も、やはりセクハラ事件が目立つ。
後掲の通り、ごく 普通の使い道もある。
–
しかし、
◇ “ grope ” と聞くと、悪事を想起する
–
これが、今時の反応だろう。
「 性癖 」同様、 うかつに口にできない気配。
◆ ” grope ” には、自動詞・他動詞・名詞がある。
語源は、 古英語「 つかみ取る 」( grāpian )。
全品詞を貫く意味合いである。
–
” grope “
- 自動詞 「 暗中模索する 」「 身体をまさぐる 」
- 他動詞 「 手探りする 」「 身体をまさぐる 」 ← 性的用法の中心
- 名詞 「 手探りすること 」「 身体をまさぐること 」
–
【発音】 gróup (1音節)
【活用形】 gropes – groped – groped – groping
–
◇ ” groping ” は、 上記活用形の「 動詞の現在分詞 」に加えて、
名詞 「 痴漢行為 」
を表す。
※ 現在分詞 ( present participle )
動詞 ” grope ” に、 接尾辞 ” ing ” を添えて名詞に。
【発音】 gropɪŋ
【音節】 grop-ing (2音節)
名詞 ” grope ” も「 痴漢行為 」を意味するが、名詞
” groping ” の方が、ニュースで起用されがちの模様。
痴漢報道で、頻繁に見聞きする。 ※ 例文参照
後述の ” inappropriate touching ” と重なる内容。
【発音】 ìnəpróupriət
【音節】 in-ap-pro-pri-ate (5音節)
すなわち、「 不適切に触ること 」 「 スケベなお触り 」 → 痴漢行為
要は、みだらに 「 タッチ すること 」。
日本の英字新聞でも見かける。
–
名詞 「 痴漢する人 」
groper
––
【発音】 gróupər
【音節】 grop-er (2音節)
–
男女不問 だが、 どうしても男性に結び付きやすい。
–
–
グ ロ ー パ ー
–
◆ ” er ” は、 ここでは 「 ~ する人 」 「 ~ の行為者」
を意味する接尾辞。
動詞 ” grope ” に付けると、「 grope する人 」 なので、
「 痴漢する人 」。
同一用法の ” er ” ( ~ する人 ) の代表例を10語。
- キーパー ( keeper )
- コミッショナー ( commissioner )
- サーファー ( surfer )
- チャレンジャー ( challenger )
- トレーダー ( trader )
- ボクサー ( boxer )
- ホルダー ( holder )
- メーカー ( maker )
- ランナー ( runner )
- リーダー ( leader ) ( reader )
日本語母語話者が難なく把握できる語を選んでみた。
無論、 ユーチューバー ( YouTuber ) も該当する。
◆ 以下、 ” perceive ” ( 知覚する ) より再掲。
超能力者のエスパー ( esper ) である。
▲ 1977年から 『 マンガくん 』 で連載開始 ( 全9巻 )
Esper = エスパー = 超能力者 ↓
頭文字 ” ESP ” + 「 ~ する人 」の接尾辞 ” er ”
↓
extrasensory perception ( ESP )
– 超感覚的 知覚 → 超能力
- extra ( 超 ) ※ 接頭辞 「 範囲外の 」
- sensory ( 感覚的 ) ※ 形容詞
- perception ( 知覚) ※ 名詞
” esper ” は SF用語 で、 中型辞書にも載っていなかったりする。
はるかに普及している呼び名は、 超能力者 = ” psychic “。
【発音】 sáikik
【音節】 psy-chic (2音節)
–
–
◆ 近頃、 インターネット上のコメント欄などで、
カタカナ 「 レイパー 」 を見かける。
英語では ” raper ” よりは、 ” rapist ” の方が一般的。
【発音】 réipist
【音節】 rap-ist (2音節)
–
” ist ” も、 同じく 「 ~ する人 」 を意味する接尾辞。
「 ~ 主義者 」 「 ~ 専門家 」 としても用いる。
動詞 ” rape ” に付けると、「 rape する人 」 なので、
「 性的暴行する人 」。
【発音】 réip (1音節)
語源は、 ラテン語 「 強奪する 」( rapere )。
【参照】 ” Spike ”
–
” ist ” ( ~ する人 )( ~ 主義者 ) の代表例を10語。
- アーティスト ( artist )
- エゴイスト ( egoist )
- エコノミスト ( economist )
- ジャーナリスト ( journalist )
- スタイリスト ( stylist )
- スペシャリスト ( specialist )
- バイオリニスト ( violinist )
- ピアニスト ( pianist )
- メダリスト ( medalist )
- フェミニスト ( feminist )
◆ 以上、 日本社会に根付いた名詞ばかり挙げた。
もともと英単語なのに、 どれも常日頃より飛び交うカタカナ語。
別の言い方がすぐ思いつかないくらい、 日々の暮らしに
溶け込んでおり、 外来語の中では軒並み大出世した。
主要因として、これらの接尾辞 ” er ” や ” ist ” に随伴する
動詞または名詞が、 日本人に馴染んでいることが考えられる。
この点、 ” grope ” と ” groper ” は、 ハードルが高く、
今後も我が国の世間一般には浸透しないと私は推断する。
もっとも、「 グローパー 」 の語調は、 そこそこよい感じ。
なんだか、 かわいらしい。
「 ウーパー ルーパー グローパー 」
思わず 口ずさんでみたくなる、 たまらなく懐かしい心地。
健全な活気に満ちた響きを放ち、 和気あいあいとした
雰囲気が味わえそうな気がして、 弾んだ調子が楽しい。
日本語との相性も良好かも。
けれども、 意味を知ると、 一転して気分がしぼむ。
–
◆ ” grope ” は多義ではない。
このことが、 かえって ” grope ” をセクハラに
結びつけている様相。
もし、 語義が多ければ、 印象が分散されたはず。
ところが、 語源の 「 つかみ取る 」 のイメージ
で一貫しているせいか、 この用法がニュースで定着
してからは、 あまねく一般化した感がある。
–
その結果、 むやみやたらに、
卑猥な語感
–
を帯びるようになってしまった。
” screw ” の一般認識に似通う流れである。
–
◆ とはいえ、
◇ 本来は 際どい用途だけで ない
–
再度強調しておきたい。
- “I groped for the doorknob.”
(ドアノブを手探りした。)
– - “I groped in the darkness.”
(暗闇の中を手探りした。)
– - “I groped for an answer.”
(答えを模索した。)
– - “I groped my way to the kitchen.”
(手探りで台所まで進んだ。)
– - “I’m groping for my own writing style.”
(自分なりの書き方を模索中です。)
– - “I groped for a simple English word.”
(シンプルな英単語を見つけようとした。)
–
–
I am groping, groping, groping for my own particular style.
(私は今、自分独自のスタイルを、懸命に探っているのです。)
–
–
–
Jack London ( 1876-1916 )
ジャック・ロンドン 米作家
1899年6月12日付 私信
” The Letter of Jack London Volume One: 1896-1905 “, p.83.
Stanford University Press (1st ed. 1988).
–
※ 下線は引用者
◆ 上文には、 みだらな要素は一切ない。
–
◇ はっきり見えない中、手先の感触で探る様子
–
これぞ 「 手探り 」。
” grope “ は、それをズバリと示す。
–
「 身体をまさぐる 」 「 身体をいじる 」
を表すのに、 おあつらえ向き。
ただし、 自分の身体をいじくる際は、 通常使わない。 ※ 後述
–
まさぐる【 弄る 】
1. もてあそぶ。 いじる。
2. 指先などでさがし求める。
( 広辞苑 第七版 )
–
まさにこちら。
–
◇ 情欲に駆られた魔の手の動き
–
その描写に用いられるのも不思議でない。
–
–
3大学習英英辞典( EFL辞典 )から、この意味の語釈を
引用すると、性的表現が明記されている ( 下線 )。
–
–
” grope ”
4. transitive
to move your hands over someone’s body
to get sexual pleasure, especially when they
do not want you to do this.
( LDOCE6、ロングマン )
–
3. transitive
to touch somebody sexually, especially when
they do not want you to.
( OALD9、オックスフォード )
–
transitive
to touch someone‘s body in order to get sexual pleasure,
usually when the person does not like it.
( CALD4、ケンブリッジ )
–【発音】 gróup (1音節)
※ 下線、太字、ハイライトは引用者
–
” transitive ” verb とは、「 他動詞 」のこと。
【発音】 trǽnsətiv
【音節】 tran-si-tive (3音節)
性的な用途では、 他動詞が一般的であることを示す。
3つの語釈すべてが、不定代名詞 ( an indefinite pronoun )
の複合語である、” someone ” または ” somebody ” を含む。
「 ある人 」「 誰か 」の意。
- especially when they do not want you to do this. ( LDOCE6 )
- especially when they do not want you to. ( OALD9 )
- usually when the person does not like it. ( CALD4 )
上記の通り、 それぞれの後半の記述と併せて、 先述した
「 自分の身体をいじくる際は、 通常使わない 」 を裏付ける。
–
[ somebody と someone ]
(1) somebody は someone より口語的 で、
呼びかけなどの場合に好まれる。
(2) 話し手と親密な関係にある特定の人を
念頭に置いている場合は someone が好まれる。
somebody はだれでもいい、とにかくだれか、
という気持を含む。
(3) 堅い書き言葉には通例 somebody は
用いない。
–
–
–
『 ジーニアス英和大辞典 』
大修館書店、2001年刊 ( アプリ版 )
… “ somebody ” の語釈より
<大修館書店HP>
–
英英辞典の見出しは、” somebody ” だらけ。
略して、 ” sb “。
” someone ” は、語釈本文では使われるものの、
辞書見出しは慣習的に ” somebody = sb ” 中心
となっている。
◆ 実際のニュース報道では、 詳述を避け、
” grope ” の一言で終わらせる場合が多い。
あいまいにすることで、 当事者 ( 特に被害者 )の
名誉及び 「 プライバシー保護 」 を図っている。
日本も似た状況だろう。
この意味でも、 便利な言い回しである。
ー
◆ さらに、 留意すべきは、 ” grope ” は、
純粋な愛情表現 「 愛撫する 」 をも意味する。
非常にプライベートな愛情表現なので、
ニュースに出てこない。
事件性がなければ、 報道価値 は伴わない。
–
ニュース記事や他者との会話にも、 なかなかお目見えしない。
したがって、 一般用法として出回りにくい。
片や、官能小説においては、 お馴染みの他動詞。
- feel up ( 相手の体をまさぐる、 愛撫する )
も日常的に出てくる句他動詞 ( transitive phrasal verb )。
- ” He tried to feel her up.”
(彼は彼女の体をまさぐろうとした。)
(彼は愛撫を試みた。)
–
◆ ” grope ” 本領の用法を、< ニュース記事 > よりご紹介する。
新聞沙汰となった事件から、 せっせと集めたもの。
どこか あいまいさ が残る点に注目。
理由は既述した。
- “He groped me as I was going to the restroom.”
(トイレに行こうとしたら、彼につかまれたの。)
– - “No, I did not grope anyone.”
(いいえ、私は誰にも触ってません。)
– - “She was groped by him.”
(彼女は彼に触られた。)
– - “X had claimed Y groped her breast.”
(Yに片方の胸をつかまれたと、Xは主張した。)
–
↑ 単数 ” breast ” ゆえ、 両手の「 鷲づかみ 」ではないはず
↓ 両手で「 鷲づかみ 」( ” squeezing my breasts ” ) の ニュース
– - “Woman claims doctor groped her breasts when
she went to see him about a toothache”
(歯痛で受診の女性、 医者に両胸をつかまれたと主張)
–
【発音】 brést (1音節)
–
語源は、 古英語 「 胸 」( brēost )。
ドイツ語 ” Brust ” ( 胸 )と同根。
原義は 「 ふくらみ 」。
–
” chest ” ( 胸部 ) と比べれば、 「 乳房 」 を強調しがちで、
女性の胸の印象が強め。
–
「 おっぱい 」 を知的で上品に仕上げたイメージ。
–
” breasts ” ときたら、 「 おっぱい 」 を思い浮かべて当然。
–
–
◆ 女性の胸に関する報道では、
” breast ” または ” breasts ” が大半。
- 授乳 breastfeeding
- 乳がん breast cancer
- 豊胸手術 breast implant / breast augmentation
→ 口語で、 boob job - 縮小手術 breast reduction
- 平泳ぎ breaststroke ( 男女共通 )
→ 背泳ぎは、 backstroke
–
★ 男性が女性一般に対して用いるには、 ややエッチかもしれない。
性的な誤解を防ぐため、 単数形 ” a chest ” が無難。
–
◆ ” a chest ” は、 両胸でも単数扱い。
” chests ” では、 複数人( 男女不問 ) の胸となる。
片胸 ” a breast “、 両胸–” breasts ” とは異なる点。
もとより、 男女共通 の「 胸 」である ” breasts ” と ” chest ”
とはいえ、 使用場面が差が出るためか、 与える感覚が違ってくる。
” breasts ” と異なり、 ” chest ” は 「 おっぱい 」 に直結しない。
少なくとも、 常識的な感覚ではそうだと思う。
–
–
◆ 俗称( 卑語ではない ) は、 ” boobs “、 ” tits ” など。
–
これらは 「 ぱいぱい 」 程度だが、 男性が気軽に使うには際どい。
- カジュアルな場面 : ” my boobs ” と女性が使う分にはOK
- 堅めの場面 : ” my breasts ” または ” my chest “
「 ぱいぱい 」 は概ね2つの乳房を指すから、
名詞の複数語尾 “ s ” を伴い、 ” boobs “、 ” tits “。
” tits ” は、 2つの「 乳首 」 を指すこともある。
–
小ぶりの胸は、 なぜだか ” flat breasts ” よりは、
” a flat chest ” がよく使われる。
- ” I have a flat chest.” ← 単数形
- ” I have flat breasts.” ← 複数形
( ぺちゃぱいなの ♪ )
◇ 形容詞「 平たい 」 ” flat ” / flǽt / (1音節)
パンクしたタイヤは、 ” a flat tire “。
–
–
◆ 日本で使われる 「 バスト 」 は、 ” bust “。
おっぱい用途では、 普段あまり見聞きしない感じ。
主に衣服との関連で使われる 「 胸部 」 。
” a chest ” 同様、 両胸でも単数扱い ” a bust “。
- ” I have a huge bust.” ← 単数形
- ” I have a huge chest.” ← 単数形
- ” I have huge breasts.” ← 複数形
- ” I have huge boobs.” ← 複数形
- ” I have huge tits.” ← 複数形
( でかぱいなの ♪ )
◇ 形容詞 「 大きい 」 ” huge ” / hjúːdʒ / (1音節)
–
–
【参照】 「 お尻 」 の英語表現
–
- “He is the kind of guy that boasts about groping women.”
(彼は、女性たちにちょっかいを出すことを自慢するタイプの男性。)
– - “He groped her behind on the bus.”
(彼はバス内で彼女のお尻を触った。)
– - “Man arrested for groping woman in station”
(男が駅で女性に触り逮捕)
(男が駅で痴漢行為して逮捕) ※ 見出し
– - “He was accused of groping on a train.”
(彼は電車内での痴漢行為の罪に問われた。)
– - “He was accused of groping a woman on the street.”
(彼は路上で女性に触り、罪に問われた。)
– - “Groping is a big no-no in our workplace.”
(身体をまさぐるのは、私たちの職場ではご法度です。)
– - “She allegedly groped her student.”
(申立てによると、彼女は教え子にいたずらした。)
– - “He woke suddenly to a hand groping his genitals.”
(性器に触れる手にはっとして、彼は目覚めた。)
– - “The lawyer was accused of groping his junior colleague.”
(その弁護士は後輩を触ったとして告発された。)
– - “He groped and kissed a woman.”
(彼は女性に触り、キスした。)
– - “He denies groping the boy.”
(彼は少年へのいたずらを否定している。)
– - “The nurse groped the patient in a coma.”
(その看護師は、昏睡状態の患者にいたずらした。)
– - “He was being overly friendly and I guess kind of groping me.”
(彼はなれなれしくなり、私を触っていたような気がします。)
–
※ ” guess ” → 他動詞・自動詞・名詞 「 推測( する )」
–
↑ 会議中に耳にしたので、 作図してみた ( ” overly ” 参照 ) ↓
You’re a groper
◆ ” grope ” のスペルは、 集まりのグループ ” group ” に似ている。
発音の区別は、私たち日本人学習者には容易ではない。
–
■ まさぐる ” grope “ gróup (1音節) グ ロ ウプ
■ 集まり ” group “ grúːp (1音節) グ ル ープ
–
2語とも 「 1音節( one syllable )」 だから、
腹の底から ゲロする 勢いで、 一気に吐き出す。
グ ロ ウ プ
「 音節 」( syllable、シラブル )とは、 発音の最小単位。
1音節には、 「 発音の最小単位 」 に切れ目がないため、
ゲロ の迫力が出る。
一方、 原則として 「 仮名一字が1音節 」 なのが日本語。
そのため、 音節を意識する機会は乏しい。
日英の 「 音節 」 については、 ” integrity ” で深掘りしている。
ー
【関連表現】
- ” inappropriate touching ”
(不適切に触ること) (スケベなお触り) → 痴漢行為
–
【発音】 ìnəpróupriət
【音節】 in-ap-pro-pri-ate (5音節)
– - ” talk dirty ”
https://mickeyweb.info/archives/14542
(猥談を話す)
– - “ private parts ”
https://mickeyweb.info/archives/18907
(陰部)