Grope
2021/01/15
(他者の)身体をまさぐる、 いじる
セクハラ事件でよく出てくる単語。
■ 男女間に限らず、同性間のトラブルにも使う。
■ 加害者が女性、被害者が男性のケースもOK。
- “She was fired for groping his groin.”
(彼女は彼の股間を触って解雇された。)
–
※ ニュース記事より
◆ 発音に要注意で、「グロウプ」。
【発音】 gróup (1音節)
「グループ 」ではない。 ※ 後述
ニュースに多用される “grope” も、やはりセクハラ事件が目立つ。
後掲の通り、ごく 普通の使い道もある。
しかし、
◇ “grope” と聞くと、悪事を想起する
これが、今時の反応だろう。
いやらしい …
ー
–
◆ “grope” には、自動詞・他動詞・名詞がある。
語源は、古英語「つかみ取る」(grāpien)。
全品詞を貫く意味合いである。
“grope”
- 自動詞「暗中模索する」「身体をまさぐる」
- 他動詞「手探りする」「身体をまさぐる」 ← 性的用法の中心
- 名詞「手探りすること」「身体をまさぐること」
【発音】 gróup (1音節)
【活用形】 gropes – groped – groped – groping
◇ ” groping ” は、上記活用形の「動詞の現在分詞」に加えて、
名詞 「 痴漢行為 」
を表す。
動詞 “grope” に、接尾辞 “ing” を添えて名詞に。
【発音】 gropɪŋ
【音節】 grop-ing (2音節)
名詞 “grope” も「痴漢行為」を意味するが、名詞
“groping” の方が、ニュースで起用されがちの模様。
後述の ” inappropriate touching ” と重なる内容。
すなわち、「不適切に触ること」 「スケベなお触り」 → 痴漢行為
要は、みだらに 「グロウプ すること」 「タッチ すること」。
意味はほぼ共通し、多義でない。
このことが、かえって “grope” をセクハラに
結びつけている様相。
もし、語義が多ければ、印象が分散されたはず。
ところが、語源の「つかみ取る」のイメージで
一貫した単語なので、この用法がニュースで定着
してからは、あまねく一般化した感がある。
その結果、むやみやたらに
卑猥な語感
を帯びるようになってしまった。
“screw” の一般認識に似通う流れである。
–
◆ とはいえ、
◇ 本来は 際どい用途だけで ない
ことを再度強調しておきたい。
- “I groped for the doorknob.”
(ドアノブを手探りした。)
– - “I groped in the darkness.”
(暗闇の中を手探りした。)
– - “I groped for an answer.”
(答えを模索した。)
– - “I groped my way to the kitchen.”
(手探りで台所まで進んだ。)
– - “I’m groping for my own writing style.”
(自分なりの書き方を模索中です。)
– - “I groped for a simple English word.”
(シンプルな英単語を見つけようとした。)
I am groping, groping, groping for my own particular style.
(私は今、自分独自のスタイルを、懸命に探っているのです。)Jack London (1876-1916)
ジャック・ロンドン 米作家
1899年6月12日付 私信“The Letter of Jack London Volume One: 1896-1905″, p.83
Stanford University Press (1st ed. 1988).
◆ 上文には、みだらな要素は一切ない。
◇ はっきり見えない中、
手先の感じで探る様子
これぞ 「 手探り 」。
” grope “ は、それをズバリと示す。
「 身体をまさぐる 」 「 身体をいじる 」
を表すのに、あつらえ向き。
ただし、自分の身体をいじくる際は、通常使わない。 ※ 後述
–
まさぐる【弄る】
1. もてあそぶ。 いじる。
2. 指先などでさがし求める。
(広辞苑 第七版)
まさにこちら。
◇ 情欲に駆られた魔の手の動き
その描写に用いられるのも不思議でない。
–
3大学習英英辞典(EFL辞典)から、この意味の語釈を
引用すると、性的表現が明記されている(下線)。
“grope”
4. transitive
to move your hands over someone’s body
to get sexual pleasure, especially when they
do not want you to do this.
(LDOCE6、ロングマン)
–
3. transitive
to touch somebody sexually, especially when
they do not want you to.
(OALD9、オックスフォード)
–
transitive
to touch someone’s body in order to get sexual pleasure,
usually when the person does not like it.
(CALD4、ケンブリッジ)
※ 下線は引用者
【発音】 gróup (1音節)
“transitive” verb とは「他動詞」のこと。
性的な用途では、他動詞が一般的であることを示す。
3つの語釈すべてが、不定代名詞 (a indefinite pronoun)
の複合語である、”someone” または “somebody” を含む。
「ある人」「誰か」の意。
先述した「 自分の身体をいじくる際は、通常使わない 」を裏付ける。
◆ 実際のニュース報道では、詳述を避け、
“grope” の一言で終わらせる場合が多い。
あいまいにすることで、当事者(特に被害者)の
名誉及び < プライバシー保護 >を図っている。
日本でも同様であろう。
この意味でも、便利な言い回しである。
ー
◆ さらに留意すべきは、”grope” は
純粋な愛情表現「 愛撫する 」をも意味する。
非常にプライベートな愛情表現なので、
ニュースに出てこない。
事件性がなければ、報道価値は伴わない。
–
ニュース記事や他者との会話にも、
なかなかお目見えしない。
したがって、一般用法として出回りにくい。
片や、官能小説においては、お馴染みの他動詞。
–
◆ “grope” 本領の用法を、< ニュース記事 > からご紹介する。
新聞沙汰となった事件から、せっせと集めたもの。
どこかあいまいさが残る点に注目。
理由は既述した。
- “He groped me as I was going to the restroom.”
(トイレに行こうとしたら、彼につかまれたの。)
– - “No, I did not grope anyone.”
(いいえ、私は誰にも触ってません。)
– - “She was groped by him.”
(彼女は彼に触られた。)
– - “X had claimed Y groped her breast.”
(Yに片方の胸をつかまれたとXは主張した。)
※ 単数 “breast” ゆえ、「鷲づかみ」でないはず
– - “He is the kind of guy that boasts about groping women.”
(彼は女性たちにちょっかいを出すことを自慢するタイプの男性。)
– - “He groped her behind on the bus.”
(彼はバス内で彼女のお尻を触った。)
– - “Man arrested for groping woman in station”
(男が駅で女性に触り逮捕)
(男が駅で痴漢行為して逮捕) ※ 見出し
– - “He was accused of groping on a train.”
(彼は電車内での痴漢行為の罪に問われた。)
– - “He was accused of groping a woman on the street.”
(彼は路上で女性に触り、罪に問われた。)
– - “Groping is a big no-no in our workplace.”
(身体をまさぐるのは、私たちの職場ではご法度です。)
– - “She allegedly groped her student.”
(申立てによると、彼女は教え子にいたずらした。)
– - “He woke suddenly to a hand groping his genitals.”
(性器に触れる手にはっとして、彼は目覚めた。)
– - “The lawyer was accused of groping his junior colleague.”
(その弁護士は後輩を触ったとして告発された。)
– - “He groped and kissed a woman.”
(彼は女性に触り、キスした。)
– - “He denies groping the boy.”
(彼は少年へのいたずらを否定している。)
– - “The nurse groped the patient in a coma.”
(その看護師は、昏睡状態の患者にいたずらした。)
– - “He was being overly friendly and I guess kind of groping me.”
(彼はなれなれしくなり、私を触っていたような気がします。)
–
※ “guess” → 他動詞・自動詞・名詞「推測(する)」
–
↑ 会議中に耳にしたので、作図してみた ( “overly” 参照 ) ↓
なんや、こいつ
ー
–
◆ “grope” のスペルは、集まりのグループ “group” に似ている。
発音の区別は、私たち日本人学習者には容易ではない。
■ まさぐる “grope” gróup (1音節) グロウプ
■ 集まり “group” grúːp (1音節) グループ
2語とも「1音節(one syllable)」だから、
腹の底から ゲロする 勢いで、一気に吐き出す。
「音節」(syllable、シラブル)とは、発音の最小単位。
日本語の場合、原則として「仮名一字が1音節」。
そのため、音節を意識する機会は乏しい。
→ 音節の差異が顕著な日英比較は、”integrity” 参照
ー
【関連表現】
“inappropriate touching”
(不適切に触ること) (スケベなお触り) → 痴漢行為
“talk dirty”
https://mickeyweb.info/archives/14542
(猥談を話す)
“private parts”
https://mickeyweb.info/archives/18907
(陰部)