態度に出す
子ども ( 幼稚園児 ~ 10歳代くらい ) の反抗的な
言動や、 社会人の問題行動を表す時によく出てくる。
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■ 句動詞 ” act out ” の大意は2つ
(1) 役を演じる、 実演する
(2) 態度に出す
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(1) は、 見せ場で演じること。
すなわち、 演劇や実物宣伝などで、
期待された役 をこなすこと。
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または、 普通に 「 行動を起こす 」 ことも、 ” act out “。
いずれも文字通りで、 特にひねりはない。
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(2)は、 感情的に態度で示す こと。
この場合、 怒りを伴う ネガティブ感情 が中心。
自制できず、 かんしゃくを起こす 感じ。
周囲に 期待された行為でない 点で、(1)と大きく異なる。
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” act out “
2. to express your feelings about
something through your behavior or
actions, especially when you have been
feeling angry or nervous.
(ロングマン、LDOCE6)
【発音】 ˌækt ˈaʊ̯t
※ 下線は引用者
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(1) は字面通りなので、 本稿では(2)を取り上げる。
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◆ ” act ” には、 名詞・自動詞・他動詞がある。–
【発音】 ǽkt (1音節)
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基本的かつ頻出で、 多義である。
語源は、 ラテン語「 行う 」( agere )。
基本的意味は、
– 名詞 「 行為 」 「 法令 」 「 演技 」
– 自動詞 「 行動する 」 「 務める 」 「 演じる 」
– 他動詞 「 演じる 」 「 装う 」
ここでは、 自動詞 「 行動する 」。
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◆ “ out ” は、 副詞・形容詞・前置詞・名詞
・他動詞・自動詞と非常に多義。
【発音】 áut (1音節)–
語源は、 古英語 「 外へ 」( ūt )。
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ここでも、 副詞 「 外へ 」。
と同じ用法である。
【参照】 句動詞の副詞 “ out ” 30例
よって、 ” act out ” の直訳は 「 外へ行動する 」。
転じて、「 外に向かって、 感情を出す 」。
だから、「 態度を出す 」。
◆ 出す感情を明記する時としない時の両方ともありうる。
- “She often acts out her distress.”
(彼女は悩みをしょっちゅう態度で示す。)
– - “His wild instinct is ready to act out.”
(彼の野生本能がいつ目覚めてもおかしくない。)
– - “He is talented but he often acts out.”
(彼は才能はあるが、かんしゃくを起こしがち。)
– - “She began to act out with the onset of puberty.”
(思春期が始めると、彼女は態度に出し始めた。)
– - “Lisa started to act out to numb the pain of losing her father.”
(リサは父親を失った痛みを麻痺させるため、態度に出し始めた。)
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またか …
◆ ” act out ” は、 心理学用語 でもある。
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< 抑圧された感情 > を外に出すことで、
< 心の傷 > などに対処する。
例えば、 毒親 への抑圧 ( repressed ) された憎しみを、
主治医に 投影( project )し、 その 医者に対して
怒ることを、 ” act out ” と表現する。
- “She acted out her traumas by talking with her doctor.”
(彼女は主治医に話すことで、トラウマを表出した。)
◆ 教育分野では、 学習者の理解度を確認する 「 動作法 」。
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『 英語教育用語辞典 第3版 』 pp. 10-11.白畑知彦 (著)、冨田祐一 (著)、村野井仁 (著)、若林茂則 (著)
大修館書店
2019年刊、 四六判、 386頁
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上記の第3版に加えて、 初版( 1999年刊 )、改訂版( 2009年刊)
の全冊自炊・OCR済み → 『 辞書の「自炊」と辞書アプリ 』
( 写真入り )
◆ ” act out ” は、 日常でも用いる。
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冒頭に記したとおり、 子どもや社会人
の問題行動を表す際の典型表現。
心理学用語でもあることから分かるように、
知的ですっきりした言い回し である。
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◇ 手に余る者の言動を他者に説明する上で、
下品にならずに済む。
そのため、
◇ 監督責任が問われる、 親・先生・上司
に好んで使われる印象がある。
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「 部下の態度がひどくて 」 と言いたければ、
- “My subordinate acts out so often.”
- “My subordinates act out so often.”
(かんしゃく起こしてばかり。)
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【発音】 səbɔ́ːdinit (1音節)
【音節】 sub-or-di-nate (4音節)
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まず、 あらましをシンプルに伝える。
さらに聞かれれば、 具体例を出す。
最初から悪事をぶちまけると、
監督者の素質を疑われかねない。
子ども・生徒・部下の問題行動には、
それなりの理由があることが多いからである。
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背景 を考察せずに、 ” act out ” を責めても、
問題は改善しないだろう。
◇ 勇気を出して、徹底的に話し合う ことは、
双方にとって無駄にならない はず。
たとえ、 話が平行線のまま終わったとしても、
時間をかけて向き合ったその事実と心意気が、
その後の風向きを変えることは珍しくない。
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【類似表現】
- ” get worked up ”
https://mickeyweb.info/archives/555
( かっかと興奮する )
ー - ” have an attitude ”
( 反抗的な態度をとる )
ー - ” act up ”
( 身勝手に振る舞う )
ー - ” disgruntled ”
https://mickeyweb.info/archives/18231
( 不満を抱いた )
ー
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【注意】
- ” He is acting out of character.”
( 彼は 柄にもない 振る舞いをしている。)
ー
副詞 ” out ” が結合してできる表現は、” act out ”
ではなく、” out of character “( 柄にもない )。
ー
まとまりに線を引くとこうなる。
正) ” He is acting out of character. ”
誤) ” He is acting out of character. “