長い時間がかかった
「 4語ワンセット 」 の形容詞イディオム。
” a long time in coming ” の省略形であるが、
前置詞 ” in ” 抜きで普及している。
” long in coming ” と ” long coming ” も同義。
” in ” 入りは、 時に < 文語扱い > されるほど後退している。
この由来を知らない英語ネイティブが普通にいる。
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◆ 頻出には至らないものの、 見聞きする機会は
珍しくない 形容詞句。
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口頭でも文面でも、 日常的に出てくる。
にもかかわらず、 このイディオムを説明する
一般辞書は非常に少ない印象。
主要な英和・英英辞典もろとも見つからなかった。
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1語ごと( word by word ) と異なり、
「 4語ワンセット 」 では、 なかなか載っていない。
だから、 ここで取り上げたい。
有名どころのオンライン英英辞典で、 唯一記載
されていたのが 『 メリアム ウェブスター 』。
『 ウェブスター 』がついているので、 アメリカ系の辞書。
【参照】 ” LDOCE ( ロングマン現代英英辞典 )”
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” a long time coming ”
arriving or happening after a lot of time has passed.
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メリアム ウェブスター
https://www.merriam-webster.com/dictionary/a%20long%20time%20coming※ 2023年5月10日 アクセス
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以上が全文である。
“ idiom ” ( イディオム )と明記する。
すなわち、「 慣用句 」「 成句 」「 熟語 」 。
【発音】 ídiəm
【音節】 id-i-om (3音節)
直訳は 「 長い時間をかけて達した、 または生じた」。
時間的に 「 長い道のり 」 だったことを示している。
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苦労したけど、 今、 ようやくたどり着いたよ…
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こんな安堵の気持ちが含まれることの多い表現である。
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” finally it is coming ” という感じ。
主格となる内容は、 必ずしも有益なものとは限らない。
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しかし、 この4語を用いた当事者にとっては、 その価値を認める
からこそ、「 長い時間をかけて 」 追求し続けている。
その気持ちは、 上記直訳には明確に表出されていない。
だが、 使用例を確認すると、その大半に喜びと安堵が
含まれている様子。
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とすれば、 そうした場面に使われるのが一般的と推測できる。
和訳時は、その心情を考慮して訳出する。
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◆ 英文和訳は、
直訳で間に合うものと、
行間に潜む実意( 含意 )を汲み、
ニュアンスに練り込んで訳出するもの
とに大きく分けることができる。
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” a long time coming ” は後者であり、
暗に意味する要素も表現する方が的確になったりする。
これは「 解釈 」というよりも、実質的な意味合いとなる。
恣意的に推量し、付け加えているのではなく、この形で
常用されているのであれば、その方が自然という流れ。
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辞書には、カッコ入りで記載される箇所である。
この辺りが言語の難しさで、学習者を悩ませる。
日本語でも同様だろう。
「 長い時間をかけて到達し、 実現した 」 と見聞きすれば、
これに伴う喜怒哀楽がいろいろ浮かび上がる。
- やっとこさ
- 辛うじて
- つらかった
- よくやった
- 遅すぎ
- ぐず
- 怠慢
- 弱虫
- 遅刻
- 負け犬
文脈次第で、 適宜盛り込んでいく。
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この点、 ” long overdue ” ( 延び延びになっている )
と意味も用法もよく似ている。
” a long time coming ” の場合、使い手にとっての含意は、
概ね 「 喜び 」「 安堵感 」 というポジティブさが目立つ。
「 やっとこさ 」「 よくやった 」 という感情。
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◆ 冒頭に記したように、 ” a long time coming ” は、
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“a long time in coming” の省略形
- 不定冠詞 ” a “
- 形容詞 ” long “( 長い )
- 可算名詞 ” time “( 時間 )
- 前置詞 ” in “( ~ の状態 ) ※ 多くは省略される
- 名詞 ” coming “( 到達、 到来 )
a long time + in + coming → 形容詞句
— 名詞句 前置詞 – 名詞
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この中で、 焦点となるのは、 名詞 ” coming “。
“ coming ” には、 形容詞と名詞がある。
自動詞・他動詞の “ come ” から派生した。
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オンライン語源辞典 ” Online Etymology Dictionary ”
https://www.etymonline.com/search?q=coming
2022年12月13日 アクセス
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ここでは、 動詞を名詞の働きに変える 「 動名詞 」
( verbal noun または gerund ) の ” coming “。
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『 英文法解説 改訂三版 』 p. 361.江川 泰一郎 ( 著 )
金子書房、 1991年刊※ 下線は引用者
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直訳は 「 長い時間をかけて到達した状態 」。
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先述の 「 長い時間をかけて達したまたは生じた 」
( Merriam-Webster ) と重なる。
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◆ 形容詞句なので、 be動詞 の直後が基本となる。
すなわち、
be、 am、 was、 been、 will be、 is、 were、are
に続くことが多い。
- “True success is a long time coming.”
(真の成功には時間がかかる。)
– - “The answers to all your questions
will be a long time coming.
I’ll get back to you later.”
(あなたの質問すべてに回答するには
長い時間がかかります。
後ほど、ご連絡いたします。)
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- “My father’s promotion was a long time coming.”
(父の昇進には長い時間がかかりました。) ※ 過去形
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- “We hired a new employee.
It’s been a long time coming.”
(新たに従業員を雇用した。
長い時間がかかりました。) ※ 現在完了形
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- “I passed the exam at last.
It was a long time coming.”
(ついに試験に合格しました。
ここまで長い道のりでした。) ※ 過去形
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- “Finally I got a new car.
It’s been a long time coming.”
(やっと新車を手に入れた。
ものすごく時間がかかった。) ※ 現在完了形
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ニュアンスの問題も、 既に述べた。
引っかかるとすれば、< 時制 >だろう。
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特に、 例文にもある「 過去形 」 と 「 完了形 」。
私たち日本人学習者には、この区別が難しい。
特に勘案しないで訳すと、 同じ和訳になってしまうが、
どちらも間違ってはいない。
- ” it was a long time coming”
「 過去形 」 past tense
長い時間がかかった
– - ” it’s been a long time coming ”
「 現在完了形 」 present perfect
長い時間がかかった
※ it’s = it has
「完了形」は、日本語に存在しない概念 に近い。
英語ネイティブであっても、 本来の「 完了形 」の代わりに、
シンプルな 「 過去形 」 で口頭表現することは少なくない。
具体例は、 ” He is in a better place now. ” に挙げた。
過去形と完了形の区別についても、 事細かにご案内している。
” I’ve had it ” でも触れたように、 日本語にそぐわない
時制の文法は、 原文で慣れるのがベスト。
以下、 再掲。
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基本をしっかり 学んだ後は、
文法の教科書から早めに離れ、 ひたすら
英文を多読し、慣れてしまう方が早い。母語に存在しない文法を、 母語中心で学ぶ
方法には必ず限界がある。 この点に気づくべき。基礎固めが終わったら、さっさと原文に移ろう。
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さもないと、 まともに英語を使うこともなく、 教材やるだけで人生が終わる。
教材大国ゆえか、 教本に依存したまま寿命が尽きる、 背筋の凍る未来像。
英語教育産業の思う壺。
英語資格と教材学習がもたらすリスクは、 ” no need ” で暴き出した。
知らぬ間に逸脱し、 あらぬ方向に突き進みがちな日本人学習者の
痛ましき姿を描写し、 予防策も詳らかにした。
→ 主として、 中級学習者 対象の長文 ( 動画入り )
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【参考】 ※ 外部サイト