A big no-no
2021/01/28
絶対にやってはいけないこと、 ご法度
これは赤ちゃん言葉(baby talk)ではない。
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正確には “baby talk” 由来だが、”a big no-no”
は堅い経済記事にも出てくる。
可算名詞の単数名詞 “no-no” に、形容詞 “big”
(大変な)を加え、不定冠詞 “a” をかぶせたもの。
「単数名詞」(singular noun)とは、
単数扱いされるのが一般的な名詞。
英英辞書では、“S” や “sing” と略記されたりする。
後述の例文にあるように、”no-no” の場合は、
複数形でも使われている。
“no-no“
informal
something that you must not do because
it is considered to be unacceptable behavior.
(ロングマン、LDOCE6)
【発音】 noʊˌnoʊ
※ unacceptable behavior = 許されない言動
※ informal = 非正式、くだけた表現
<語源>
No ! No !, as said in admonishing a young child.
Webster’s New World College Dictionary,4th Ed.
【和訳】 小さな子どもに言い聞かせる「 だめ!だめ! 」
※ admonish = 穏やかに諭す(他動詞)
■ 「だめ!」を単純に重複させたものなので、
二重否定( 否定 × 否定=肯定 )とは 無関係
<初出>
1942, from reduplication of no.
※ reduplication = 重複形(名詞)
【発音】 noʊˌnoʊ
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“no-no” の意味と語感に近いのが「ご法度」
「ご法度(ごはっと、御法度)」とは、
「一般に禁じられていること」(国語辞典は後述)。
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“ you must not do “(上表の黄ハイライト)と重なる。
堅すぎず、軽すぎずで、少々洒落っ気のある文章に
用いられる。日常使用の「ご法度」と同じ。
口頭でも使える点も共通。
“big” 抜きの “a no-no” でも通じる
むしろこちらが本家。
意味を強調( 強意 )する 形容詞 “big”「大変な」
を足した結果、 “a big no-no” こそ一般的
な言い回しになった。
表題に選出した理由である。
強意 の “big” なので、趣旨は変わらない
“not a big fan” と同じ。
“a no-no” に比べて迫力があり、言い振りに弾みがつく
ため、”a big no-no” の方が普及しやすかったのだろう。
強意の “big” がつくと、”no-no” の程度が増し、
ここでは「 大変な → 絶対 」の要素を含むようになる。
“definite“、 “absolute“、 “complete“ など、
その他の 強意の形容詞 で置き換えることも
できるが、”big” こそ定番。
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◇ “a big no-no” は、使用場面と文体に従い、
次のように和訳されることが多い。
- ご法度
- 絶対禁物
- 絶対だめ
- だめだめ
いずれも「やってはならない」の意。
強意の形容詞 “big” で、「絶対」の意味合いが上乗せ。
ごはっと【御法度】
■ 名詞(「ご」は接頭語)
「法度」を敬っていう語。また比喩的に、
それをするとさしさわりがあるような
ことがらについてもいう。御禁制。
(精選版 日本国語大辞典)
■ 禁令の意の「法度」の尊敬語。転じて、
一般に禁じられていること。
(広辞苑 第七版)
■ 「法度」を敬っていう語。法令により
禁止されてい事柄。また、一般に禁じら
れていること。
(大辞林 第三版)
■ 〔 = 武家時代の禁止事項 〕
禁じられていること。
(三省堂国語辞典 第七版)
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「ご法度」なら、「絶対」が略されることもある。
「ご法度」自体が、「絶対」を多分に含むから。
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このフレーズには、不定冠詞 ” a ” がつくのが通例
–
◆ 先に触れた通り、強意の “big” や「絶対」の有無
で、趣旨は変わらない。
3大学習英英辞典(EFL辞典=LDOCE6 / OALD9 / CALD4)
のすべてに “informal” の表記がある。
すなわち、非正式でくだけた言い方。
さらに、ネイティブ向けの英英辞典の中には、
“slang” 扱いしているものもある。
(Webster’s New World College Dictionary, 4th ed. など)
しかしながら、日常使用や堅めの記事に使用されている
様子からみて、下品さはないと考えてよい。
ー
先述の3大EFL辞典には、”slang” 表記はない。
◆ 「 ア・ビッグ・ノーノー 」 なんて、一見ふざけた物言い。
ー
だが、繰り返し述べているように、用途は総じて真面目 である。
プライベートとビジネスの各場面から、代表例を挙げてみる。
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<日常生活>
- “Divorce is a big no-no for us.”
(離婚は我々にとってご法度です。)
– - “Dating at night was a big no-no at that time.”
(その頃、夜のデートは絶対禁止だった。)
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- “Puking in a restaurant is a big no-no.”
(飲食店内でゲロするのは、絶対禁物よ。)
– - “Not brushing your teeth is a big no-no
for your hygiene.”
(歯磨きしないのは、衛生上、絶対禁物。)
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- “This is a big no-no for my career.”
(自分のキャリアのために、これは絶対ご法度。)
– - “Smoking is a big no-no in this house.”
(この家では喫煙厳禁。)
– - “It’s a big no-no to go out undressed.”
(裸で外に出るのは絶対禁物。)
<ビジネス>
- “The use of a pencil is a big no-no.”
(鉛筆の使用は絶対禁止です。)
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- “Wet signature is a big no-no on this document.”
(この文書に手書きで署名することは厳禁です。)
– - “Groping is a big no-no in our workplace.”
(身体をまさぐるのは、私たちの職場ではご法度です。)
– - “Making an unauthorized copy is a big no-no.”
(無許可でコピーするのは、ご法度です。)
– - “Dirty talks are big no-nos in the office.”
(オフィスでの猥談は絶対にご法度です。) –※ 複数形
– - “It is a big no-no to leave your belongings unattended.”
(所持品を放置するのは絶対に禁物です。)
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◆ なお、マイナー用法として「大失敗」「大失態」
を指すことがある。
- “His first solo interview was a big no-no.”
(彼の初めての単独会見は大失敗だった。)
– - “Her performance was a big no-no.”
(彼女の演技は最悪だった。)
時として、表題の用法と区別がつきにくい場合もある。
- “The manager punched him, which was a big no-no.”
(マネージャーは彼を殴ったが、それはご法度なことだった。)
(マネージャーが彼を殴ったことは、大失態だった。)
【参考記事】 –※ 外部サイト
以下の見出しは、”big no-nos” と複数形を採用している。
「日本滞在中にご法度な10行為」を列挙する記事である。
Always Remember These 10 Big No-Nos
When You Are in Japan !
- No Touching
- Chopsticks
2-1. Never bite/lick the chopsticks
2-2. Never stick the chopsticks in your rice
2-3. Never pass food from your chopsticks to someone else’s chopsticks - Using Phones on Trains
- Right or Left?
- Tipping
- Nose Blowing
- Eating While Outside
- Taking Off Your Shoes
- Less is More, But Not in Japan!
- Smoking
https://jpninfo.com/50047
2019年4月19日付
箸の使い方(#2)をはじめ、簡潔明快な描写が目を引く記事。
「人前で鼻をかむ」がランクイン(#6)。
食事中、平気で鼻をかんだりする外国人は少なくない。
電車内での携帯電話の使用についても同様(#3)。
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日本人にとっても、発見の多い “Japan Info” 。
最大級の訪日旅行者・在日外国人向け英語サイトである。
https://jpninfo.com/
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率直なコメントやフォーラムも読んでいて楽しい。
【類似表現】
“blunder”
https://mickeyweb.info/archives/2301
(へまをする)
“mess up”
https://mickeyweb.info/archives/164
(台無しにする、失敗する)
“botch”
(自動詞:へまをする)
“flub”
(可算名詞:へま・どじ、自他動詞:へまをする)
“screw up”
https://mickeyweb.info/archives/7701
(へまをする、台無しにする)
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