プロ翻訳者の単語帳

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A long time coming

      2019/07/23

長い時間がかかった  

<4語ワンセット>の形容詞イディオム。

“a long time in coming” の省略形であるが、
前置詞 “in” 抜きで普及している。

“long in coming” と “long coming” も同義。

“in” 入りは、時に<文語扱い>されるほど後退している。
この由来を知らない英語ネイティブが普通にいる印象。

◆ 頻出には至らないものの、見聞きする機会は
珍しくない形容詞句

口頭でも文面でも、日常的に出てくる。

にもかかわらず、このイディオムを説明する
一般辞書は非常に少ない。

主要な英和・英英辞典もろとも見つからなかった。

1語ごと(word by word)と異なり、
<4語ワンセット>では、なかなか載っていない。

だから、ここで取り上げたい。

有名どころのオンライン英英辞典で、唯一記載
されていたのが『メリアム ウェブスター』。

『ウェブスター』がついているので、アメリカ系の辞書。
→【参照】”LDOCE(ロングマン現代英英辞典)

a long time coming

arriving or happening after a lot of time has passed.
Merriam-Webster

この直訳は「長い時間をかけて達した、または生じた」。
時間的に「長い道のり」だったことを示している。

  苦労したけど、今、ようやくたどり着いたよ…  

こんな安堵の気持ちが含まれることの多い表現である。

finally it is coming” という感じ。

主格となる内容は、必ずしも有益なものとは限らない。

しかし、この4語を用いた当事者にとっては、その価値を認める
からこそ、「長い時間をかけて」追求し続けている。

その気持ちは、上記直訳には明確に表出されていない。
だが、使用例を多数確認すると、その大半に喜びと安堵が
含まれている様子。

とすれば、そうした場面に使われるのが一般的と推測できる。
よって、和訳時は、その心情を適宜考慮して訳出する。

◆ 英文和訳は、
直訳で間に合うものと、含意を読みとるべきもの
とに大きく分けることができる。

“a long time coming” は後者であり、
暗に意味する要素も表現する方が的確になったりする。

これは「解釈」というよりも、実質的な意味合いとなる。
恣意的に推量し、付け加えているのではなく、この形で
常用されているのであれば、その方が自然という流れ。

辞書には、カッコ入りで記載される箇所である。
この辺りが言語の難しさで、学習者を悩ませる。

日本語でも同様だろう。

「長い時間をかけて到達した」と見聞きすれば、
これに伴う喜怒哀楽がいろいろ浮かび上がる。

  • やっとこさ
  • 辛うじて
  • つらかった
  • よくやった
  • 遅すぎ
  • ぐず
  • 怠慢
  • 弱虫
  • 遅刻
  • 負け犬

最適解は文脈次第。

この点、”long overdue“(延び延びになっている)
と意味も用法もよく似ている。

“a long time coming” の場合、使い手にとっての含意は、
概ね「喜び」「安堵感」。

「やっとこさ」「よくやった」という感情。

和訳は、必要に応じてニュアンスを反映させる。

<分かりやすい>翻訳には大切な考え方である。
「直訳」が分かりづらい一因は、この部分が足りないため

【参照】日英は言語が大きく異なるので工夫が必須  

その度合いは状況によるが、主観的すぎるのはご法度

原文が主、翻訳は従>の主従の原則は重要。

いわゆる「超訳」は、この原則を崩していたりする。
読みやすくなるはずである。

◆ 冒頭に記したように、”a long time coming” は、

“a long time in coming” の省略形

  • 不定冠詞  a
  • 形容詞  “long(長い)
  • 可算名詞  “time(時間)
  • 前置詞 in(~の状態)  ※ 省略が多め
  • 形容詞  “coming(来るべき)

a long time + in + coming  →  形容詞句
 名詞句     前置詞  – 形容詞

この中で、焦点となるのは、形容詞 “coming”。

“coming” には、形容詞と名詞がある。
自動詞・他動詞・名詞の “come” から派生した。

◆ 形容詞 “coming” の主な意味は2つ

(1)「来るべき」「今度の
※ “upcoming” とほぼ同義

(2)「新進の」「有望な 
※ “up and coming” 参照

ここでは、(1)「来るべき」。

したがって、直訳は「長い時間をかけて来るべき状態」。

先述の「長い時間をかけて達したまたは生じた」
Merriam-Webster)と重なる。

◆ 形容詞句なので、be動詞の直後が基本となる。

すなわち、
be、am、was、been、will be、is、were、are
に続く。

  • “True success is a long time coming.”
    (真の成功には時間がかかる。)
  • The answers to all your questions
    will be a long time coming.
    I’ll get back to you
    later.”
    (あなたの質問すべてに回答するには
    長い時間がかかります。
    後ほど、ご連絡いたします。)

  • “My father’s promotion was a long time coming.”
    (父の昇進には長い時間がかかりました。)※ 過去形

  • “We hired a new employee.
    It’s been a long time coming.”
    (新たに従業員を雇用した。
    長い時間がかかりました。) 現在完了形

  • “I passed the exam at last.
    It was a long time coming.”
    (ついに試験に合格しました。
    ここまで長い道のりでした。)※ 過去形

  • “Finally I got a new car.
    It’s been a long time coming.”
    (やっと新車を手に入れた。
    ものすごく時間がかかった。) 現在完了形

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なぜ「be動詞」に続くのかは、”aware” にて詳述している。
ぴんとくることがなければ、おさらいしていただければ幸い。


◆ be動詞の直後が基本なので、文法上は比較的単純。

ニュアンスの問題も、既に述べた。
引っかかるとすれば、<時制>だろう。

特に、例文にもある「過去形」と「完了形」。
→「」のある最後の4文

私たち日本人学習者には、この区別が難しい。
特に勘案しないで訳すと、同じ和訳になってしまうが、
どちらも間違っていない。

  • “it was a long time coming”
    過去形(長い時間がかかった)
  • “it’s been a long time coming”
    現在完了形(長い時間がかかった)
    ※ it’s = it has

「完了形」は、日本語に存在しない概念 に近い。

英語ネイティブであっても、本来の「完了形」の代わりに、
シンプルな「過去形」で口頭表現することは少なくない。
日本人が<時制>が苦手でも、何ら不思議はないのだ。

I’ve had it” で詳述したように、日本語にそぐわない
時制の文法は、原文で慣れるのがベスト

以下、再掲。

 本をしっかり 学んだ後は、
 文法の教科書から早めに離れ
ひたすら
 英文を多読し、慣れてしまう方が早い。

母語に存在しない文法を、母語中心で学ぶ
方法
には必ず限界がある。この点に気づくべき。

  基礎固めが終わったら、さっさと原文に移ろう


<時制の復習のためのお勧めサイト>
【永久保存版】12種類の英語の時制を徹底解説
・  現在完了形と過去形の違い

 

 

 

 

 

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