〜を物笑いにする、~をからかう
John is making fun of Mary.
(ジョンがメリーをからかっているの。)
Stop making fun of your boss.
(上司を笑い者にするのはやめな。)
小学生が先生に言いつける時によく使う。
大人が相手をたしなめる時にも出てくる。
老若男女を問わないということ。
日常に溶け込んだ、頻出の言い回しである。
主な使用場面は、他者の悪さの指摘。
次のように、主体(主格)が自分でも、何ら
問題ない。 だが、実際にはめったに見聞きしない。
- “I was making fun of my brother then.”
(当時、私は弟をからかっていた。)
冒頭のように、ちくったり、注意したりと、
自分以外に用いる方が一般的。
<我の悪行は棚上げするのが人間の本性>
などと心得れば、すっきり理解できる使い道である。
–
◆ 世代を問わず多用される一因は、単語の容易さにある。
“make fun of” のポイントは、名詞 “fun“。
名詞は不可算名詞のみなので、
不定冠詞 “a” はつかない。
後述の “make a joke” と異なる点である。
ほぼ同じ意味合いなのに、”joke” が
可算名詞のため、こちらは “a” がつく。
“fun” には、名詞に加えて、形容詞・他動詞・
自動詞がある。
【発音】 fʌ́n
基本的意味は、
– 不可算名詞「おかしさ」「楽しみ」
– 形容詞「楽しみの」「おもしろい」
– 他動詞「からかう」「冗談を言う」
– 自動詞「からかう」「冗談を言う」
【語源】
“fun” の語源は、中期英語「愚かである」(fonnen)。
原義は、「人をからかう」。
「愚かである」→「からかう」→「おかしさ」→「楽しみ」
“silly” と流れが逆
「幸福な(sǣlig)」→「おめでたい」→「愚かな」
英語ネイティブにとって、”fun” は発音しやすい。
摩擦音 “f” から始まる1音節単語だから。
–
ところが、日本人の大半にとって、そうはいかない。–
中級学習者であれば、”fan” と区別できるはず。
–
「ファンヒーター」も「ファンレター」も “fan”。
それぞれ「扇風機」と「支持者」を意味する。
カタカナ表記では、”fun” も「ファン」。
英語の発音の違いは比較的大きい。
初学者でも、短期間で判別できるようになる。
私の耳を用いて書き起こすと、次の通り。
2語とも、ロングマン(LDOCE6)の指標では、
英単語としての「重要度」は最上位。
すなわち、3,000語以内に入っている。
“make fun of – ” の構造は、
- 不可算名詞 “fun“(楽しみ)
- 他動詞 “make“(作る)
- 由来の前置詞 “of“(~から)
よって、直訳は「~から楽しみを作る」。
–
なんだか楽しそうだが、とんでもない。
これがイディオムに発展すると、
「〜を物笑いにする」、「~をからかう」。
上掲黄枠の成り立ちを思えば、やはり
感じのよいものではないことに気づく。
彼らは彼の苦戦を物笑いにした。
–
◆ “make fun of” に続くのは、笑いの種。
–
すなわち、”somebody”(誰か)または
“something”(何か)で、目的格。
–
人称代名詞なら、
me / you / him / her / us / them / it。
笑い種は人間に限らないが、現実には人間中心。
–
◆ 大抵の場合、本気の悪意はなく、冗談半分で口にしている。
–
それは、次の CALD4 の定義からも分かる。
“make fun of somebody / something”
to make a joke about someone or something
in a way that is not kind.
(ケンブリッジ、CALD4)
※ 下線は引用者
「冗談を言う」と下線部にある。
“make” は、”make a fun” と同じ用法の他動詞。
一方、その他の3大学習英英辞典(EFL辞典)の解説はこちら。
“make fun of somebody / something”
to make unkind insulting remarks about
someone or something.
(ロングマン、LDOCE6)
to laugh at somebody/something or make other
people laugh at them, usually in an unkind way.
(オックスフォード、OALD9)
3冊に共通する赤字の “not kind” = “unkind“。–
「不親切な」を意味する形容詞である。
【発音】 kind ( káind )、unkind ( ʌnkáind )
ここでは「不親切な」よりは、
「思いやりのない」または「冷酷な」くらいの意。
- “Life is unkind.”(人生は厳しい。)
当事者が幼児であれば、「冷酷な」は不自然だろう。
–
◆ 使用単語が基礎レベルゆえに、気軽に多用される傾向
について先述したが、きっとそれだけではない。
–
他人を物笑いにする人が多いからかもしれない。
ものわらい【物笑い】
2. 他人の言行を見聞してあざけり笑うこと。
また、その対象。笑いぐさ。
(広辞苑 第七版)
人のしたことなどを、ばかにして笑うこと。
(三省堂国語辞典 第七版)
※ 語釈の該当項のみ引用
そういう人が多いというより、そのような状況が
生じやすいのが、ストレス社会の日常なのかも。
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【参照】”schadenfreude”
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◆ 人生は多分に因果応報。
–
意地悪く他人に接すると、いずれ我が身に
降りかかってくるかも。
–
忘却していても、巡り巡って舞い戻ってきたりする。
–
若い時分は笑い飛ばせても、中年期に至れば、
いやに理解が進む人生の側面である。
私自身、本当にそうだな、と感じている。
過去の悪行の余波に、相当苦しんできたからだろう。
- “Jane made fun of Jack’s red nose.”
(ジェーンはジャックの赤い鼻を物笑いにした。)
– - “Jack made fun of Jane’s weight.”
(ジャックはジェーンの体重をからかった。)
– - “She made fun of his lack of English skills.”
(彼女は彼の英語力のなさをからかった。)
– - “They made fun of my shoes.”
(彼らは私の靴を笑いのネタにした。)
– - “Bob and Eric kept making fun of Bill.”
(ボブとエリックはビルをからかい続けた。)
– - “Don’t make fun of the way she talks.”
(彼女の話しぶりをからかうな。)
– - “No, I was not making fun of her.”
(いいえ、彼女を笑い者にしていません。)
– - “They used to make fun of me.”
(彼らは私を物笑いにしたものだった。)
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【関連表現】
–
“name-calling”
https://mickeyweb.info/archives/17532
(悪口、罵倒)