Tough luck !
2020/01/05
残念でした!
状況と言い方にもよるが、基本的に嫌味。
<2語ワンセット>の間投詞のような言い回し。
※ 「間投詞」(interjection)とは、
感動や応答を表す語で、
単独で文となりうる呼掛け言葉
【例】”Oh ! “、”Alas ! “、”Oops ! “、
“Whoa ! “、”Gross ! ” “Welcome back ! ”、
”Well done ! ”、”Barf ! ”
- 運悪すぎ!
- お気の毒!
- 残念でした!
- 困ったこった!
- ついてないね!
- おあいにくさま!
真面目に頑張ったのに、うまくいかなかった時、
こんな声を掛けられれば不愉快だろう。
「嫌な奴!」と感じたりする。
概ね “Tough luck ! ” は<余計な一言>なのである。
“Bad luck ! ” や “Hard luck ! ” とほぼ同義。
言わなくてもいいのに、なぜ人を不快にする発言
をするのだろう。
確かに、意図的に悪意を込めて言う人も少なくないが、
そうでなくても、思わず出てしまうことはある。
◆ 程度の差はあれど、他人の不幸に興奮してしまう側面が、
ほとんどの人間にあるようだ。
「他人の不幸は蜜の味」
日本語と英語には該当する<単語>はないが、
ドイツ語にはある。
「シャーデンフロイデ」(schadenfreude)がそれ。
“schaden” は「損害」、”freude” は「喜び」
【発音】ʃɑːdnˌfrɔɪdə
1語で言い表せて便利なため、インテリが使ったりする。
- 「口が滑る」
言う積りでないことを、うっかり言う。
– - 「舌がすべる」
話の勢いで、言ってはならないことを
うっかり言う。
– - 「失言」
言ってはいけないことを、不注意で
言ってしまうこと。言いあやまり。過言。
(広辞苑 第六版)
– - “schadenfreude”
a feeling of pleasure that you get when
something bad happens to someone else.
(ロングマン、LDOCE6)
–
【発音】ʃɑːdnˌfrɔɪdə
興奮の勢いに乗った<余計な一言>。
誰しも経験があるだろう。
【参照】 ”go wrong“(うまくいかない)
◆ “tough” には、形容詞・副詞・名詞・他動詞
がある。
語源は、古英語「折れにくい」(tōh)。
カタカナ「タフ」のイメージ通りである。
– 形容詞「堅い」「丈夫な」「難しい」「つらい」
– 副詞「荒っぽい」「強がる」
– 名詞「ごろつき」「無法者」※ 可算名詞
– 他動詞「耐える」「頑張り抜く」
→ “tough it out” または “tough it through”
頻出用途は形容詞で、それ以外はマイナー。
ここでも形容詞「つらい」。
形容詞 “tough” の特徴は【俗語】が多いこと。
ネガティブな印象が共通する。
形容詞 “tough” の俗語
-
tough bounce(不運)
-
tough buns(不運)
-
tough break(不運)
-
tough call(苦渋の選択)
-
tough cookie(手ごわい奴)
-
tough shit(最悪)(ざまあみろ) ※ 卑語
◆ “luck” には、名詞・自動詞・他動詞がある。
語源は、中期オランダ語「運」(luc)。
– 名詞「運」「めぐり合わせ」「幸運」「お守り」
– 自動詞「運よく手に入れる」
– 他動詞「運に任せて行う」
頻出用途は名詞で、それ以外はマイナー。
名詞は、可算名詞と不可算名詞を兼ねる。
ここでは不可算名詞「運」。
形容詞 “tough”(つらい」+
不可算名詞 “luck”(運)
で「つらい運」。
◆ “Tough luck ! ” は、実は皮肉ばかりでない。
時に、仲間に対する<思いやりの言葉>になることもある。
原則は<余計の一言>だが、
<慰め><ねぎらい>の機能も果たすのだ。
ジョークやユーモアにうまく転換し、
相手の気落ちを防ぐ効果がある
会議中に使われたりするのは、このためである。
先述のような悪意をもって発言したら大変。
大勢の前で、けんかを売ることになる。
そうではない。
「残念だった」
「運が悪かった」
「ついていなかっただけ」
「しかたないね」
「気にするな」
「心配無用」
「今回は残念だったが、ドンマイ」といった感じ。
嫌味か慰めかは、状況や言い方で判別できる。
さらに、発言者でも分かる。
(”way to go“、”Well done ! ” 参照)
皮肉屋ではなく、ユーモアのある人が
場の雰囲気を和らげるために用いる用途。
つまり、相反する意味合いをもつのが、
“tough luck”。
原則嫌味な “Too bad” にも、同様の機能がある。
このようなニュアンスを理解していなかった頃…
事あるたびに上司や同僚に、
“Tough luck ! “
“Too bad ! “
と言われ、ショックを受けたことが何度かある
<なんて冷たいんだ…>
だが実際のところ、それは思いやりだった。
たぶん。
このような言葉の多重性を知ると、
学習の楽しさを覚える。
と同時に、人生の面白みが増すことだろう。