プロ翻訳者の単語帳

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Struggle

      2021/11/19

努力(する)、   苦戦(する) 

自他の頑張る姿 を表現する際に出てくる動詞・名詞。

【発音】  strʌ́gl
【音節】  strug-gle  (2音節)

  •  【相手】  老若男女  →  不問
  •  【用途】  公私  →  不問
  •  【場面】  硬軟  →  不問
  •  【手段】  筆舌  →  不問

死に物狂いの真剣勝負はもちろんのこと、
じたばたもがく様子を面白おかしく描写するのに
用いてもOK。

◆  ” struggle ” には、動詞と名詞がある。

名詞は、可算名詞。

  • ” Writing is not just a struggle.”
    (書くこととは、単なる苦労ではない。)

動詞は、自動詞中心。

他動詞を省略している辞書が目立つ。

3大学習英英辞典(EFL辞典)には、他動詞の記載がない。

断トツ で簡潔な語釈を示すのが次の辞書。

” struggle “

verb  [I]
–  ( TRY HARD )  to work hard to do something.
–  ( FIGHT to fight, esp. physically.
–  ( MOVE to move with difficulty.

noun  [C]
–  ( FIGHT a fight.
–  ( TRYING HARD a very great effort to do something.

Cambridge Academic Content Dictionary

【発音】  strʌ́gl
【音節】   strug-gle  (2音節)


[I]  =  intransitive  =  自動詞
[C]  =  countable  =  可算名詞


” struggle ” については、この上ない分かりやすさ。

よって、3大EFL辞典 を差し置いてご紹介する。

まず、青字に着目。

< 自動詞 >    intransitive

  •  try hard ( 努力する )
  •  fight ( 苦戦する、苦労する )
  •  move ( もがく )

< 可算名詞 >    countable

  •  fight ( 争い、闘争、戦い )
  •  trying hard ( 奮闘、苦闘、苦労 )


” struggle ” の骨子は、これがすべて。

カッコ内の和訳は後述の
オックスフォード 英語コロケーション辞典 』(アプリ版)
を適用した。

” struggle ” は頻出の感があるが、英単語全体からはそうでもない。

LDOCE6(ロングマン)の指標では、動詞・名詞とも、

  • 重要:<3001~6000語以内>
  • 書き言葉頻出:<2001~3000語以内>
  • 話し言葉頻出:3000語圏外

◆  語源は、中期英語「 もがく 」(struglen)。

もがく【踠く】

1.  苦しがって手足を動かす。
2.  あせり苦しむ
( 三省堂国語辞典 第七版 )

もがく【踠・藻掻】(「藻掻」はあて字)

1.  もだえ苦しんで手足を動かす。あがく。
2.  いらだつ。あせる。じりじりする。
( 精選版 日本国語大辞典 )

先の青字  ” MOVE ” は、手足のばたばたが該当する。

もぞもぞ緩慢に動くのではなく、派手にバタつく行為。
例えば「 水中でもがく 」「 羽交い締めにされてもがく 」。

しかし、溺れかけたり、羽交い締めにされる機会はそうそう生じない。
ゆえに、実際の「 もがく 」 は 「 もだえ苦しむ 」意味で多用される。

したがって、「 もがく 」 と  ” struggle ” の日常用法としては、
「2」の用途が一般的。

すなわち
” try hard “( 努力する )  及び  ” fight “( 苦戦する、苦労する )

同様に、名詞 “fight”( 争い、闘争、戦い )も、非日常的に近い。
” trying hard “( 奮闘、苦闘、苦労 ) の方が普通。

こう見てくると、” struggle ” は「 もがく 」と重なることが分かる。
日英もろとも、意味合いと使われ方が似通っている。

◆  戦争や事故・災害時などの非常時の情報であれば、
「 闘争 」「 戦い 」「 苦しがって手足を動かす 」 を指す確率
が上がるのは言うまでもない。

日頃、一般人が用いる機会が比較的少ないため、本稿では
後回し にしたものの、ニュースや論文などには出てくる。

意味が明確で混乱しにくい点も、優先順位 を繰り下げる要因となった。

これ以外の  ” struggle ” は、上掲の青ハイライトの意味中心となる。

私たち日本人が普段使う時や見聞きする際も同様である。

したがって、本稿ではこれらの語義に焦点を当てる。

” struggle ” 

  •  try hard ( 努力する )
  •  fight ( 苦戦する、苦労する )
  •  trying hard ( 奮闘、苦闘、苦労 )


動詞と名詞の意味合いは重なるので、以下まとめて論じる。

この表を二分すると、

  1. 努力する  →  奮闘
  2. 苦戦する  →  苦闘

◇  「 苦労する  →  苦労  」は概ね双方に該当するため、ここでは除外

日本語の1と2では、受け手の印象に差が生じるだろう。

一見大差ないように思えるが、「 苦闘 」と「 奮闘 」は
やはり違う。

「 奮闘 」は「 がんばっているな 」で済まされても、
「 苦闘 」は 軽々しく口にできない雰囲気。

どっちも必死だが、「 苦闘 」はかなり苦しい努力を指す。

例えば、

  • 「 1.  受験勉強に奮闘する 」 vs 「 2.  受験勉強に苦闘する 」
  • 「 1.  婚活に奮闘する 」 vs 「 2.  婚活に苦闘する 」

2は、ご当人のしんどさがビシビシ伝わってくる。
つらくて、笑顔が一気に消える感じ。

悲壮感が漂い、とても ジョークにできない

” struggle ” は、1と2の両方とも意味するため、
和訳時は内容を読み取って区別する。

前置詞で区分できる場合もあるが、多用される前置詞
のほとんどが共通する。

すなわち、

  •  for
  •  with
  •  against
  •  on
  •  to

    ※  後掲「 コロケーション辞典 」参照

そのため文脈から見分けるのが基本となる。

ところが、1、2のどちらなのか、明確でない場面も多い。

つまり、いずれの解釈もありうる内容が普通に存在する。

翻訳者の立場からも、あいまいすぎて迷う案件が少なくない。

◆  日本人にとって、” struggle ” が厄介なのは、このように
和訳時に迷いが生じやすい点にある。

努力している有様は容易に看取できるが、何だかはっきりしないのだ。

この人にとって、どの程度 きついのだろう

本人でないのだから、推し量りがたいのは当然である。

「 受験勉強 」と「 婚活 」の例からも感じ取れるように、
和訳によって、受け手の認識は左右される。

どの程度なのか判明しない限り、判断は難しい。

結局、「 苦闘 」に至る苦労か否かは、総合的に決めることとなる。

◆  一方、” struggle ” の使い手側はどうか。

日常用法については、厳密に判別することなく使っている
可能性が高いと考えられる。

「 奮闘 」であろうと「 苦闘 」であろうと、無我夢中の
真っ最中に細かい差異を意識する余裕はないもの。

思い出す時ですら、区別はそれほど意味をもたない。

とにかく「 苦労 」が伴う姿を伝えたい  …

これぞ使い手の意図であり、” struggle ” の真骨頂。

offensive ” でも取り上げたように、使い手自身も今ひとつ
自覚していない場合が珍しくなかったりする。

” struggle ” がこれらの語義を包括する 以上、
きっちり区別すること自体が不自然な話なのかもしれない。

少なくとも、普段遣いでは深く考えたりしないのが大勢。

英語学習者は、的確な「 和訳 」をあれこれ考える習慣がある。

だからこそ、上記のような迷いが生じる。

日本語で理解する上では、欠かせないプロセスである。

それでも、” struggle ” を駆使するレベルの英語力が身につけば、
区別を執拗に考える意義を見出せなくなっていく。

「 努力する 」意をひっくるめた “struggle” を使うのに、
日本語でああだこうだは、ちょっと変。

いちいち和訳なんてするかよ  …

自ずとこんな感覚になっていたりする。

母語を介さず、英語のまま理解できるようになってくると、
このような思いをすることもしばしば。

日本人の英語学習者としては、良し悪しの現象である。

【参照】

・ 対となる日本語がなければ、イメージで理解
・ 日本語にない文法は、原文で慣れる

◆  ニュースなどメディア報道の用途ではなく、
ずっと身近な使い方を挙げてみる。

これまで述べてきた意味の区別に気を使うべきかどうか、
それぞれ考えていただきたい。

和訳は一例である。

  • “I struggled with my research on this article.”      上図
    (この記事の下調べに苦労しました。)
  • “I struggle to do knuckle push-ups.”      上図
    (拳腕立て伏せに苦戦しています。)
  • “He struggles financially.”
    (彼は経済的に苦労している。)
  • “I knew John struggled with his demons for years.”
    (ジョンが個人的な悩みに長年苦しんでいたことは知っていました。)
  • “She struggled all the time during her school years.”
    (彼女は学生時代に絶えず苦しんでいました。)
  • “Each day is a struggle against pain.”
    (毎日が痛みとの戦いです。)
  • “I’m struggling to balance my work and family life.”
    (仕事と家族とのバランスを取るため、格闘しています。)
  • “They struggled with all the fame.”
    (名声を得て、彼らは苦しんだ。)
  • “He is struggling to reinvent himself.”
    (彼は自己改革しようと躍起になっている。)
  • “She struggles with alcoholism and depression.”
    (彼女は、アルコール依存症と抑うつに苦しんでいる。)
  • “The military is struggling to stem infections.”
    (軍は感染の阻止に苦労している。)
  • “I’m struggling to keep things positive these days.”
    (この頃は、物事をポジティブに保つべく苦労している。)

  • “Surviving on a single salary can be a struggle.”
    (共働きでない場合、苦労もありえます。)
  • “She struggled to find a place in Hollywood as she got older.”
    (年を取るにつれ、彼女はハリウッドで居場所を見つける
    のに苦労した。)
  • “I struggled for words.”
    (必死に言葉を探しました。)
  • “They struggle with self-respect.”
    (彼らは自尊心の面で苦しんだ。)
  • “Mary opened up about her struggles in Japan.”
    (メリーは日本における苦労について打ち明けた。)
  • “We struggled hard for workplace improvement.”
    (職場改善に向けて、我々は奮闘しました。)
  • “She struggles with exam stress.”
    (彼女は試験のストレスに苦しんでいる。)
  • “He struggled on despite his mental health problems.”
    (心の問題があるにもかかわらず、彼は頑張り続けた。)
  • “I struggled with feelings of shame for most of my life.”
    (恥の意識に苦悩し続ける人生を送ってきた。)
  • The world struggles against a deadly coronavirus pandemic.”
    (世界中が致命的なコロナウイルス感染症の大流行と闘っている。)
  • “I struggled to gain freedom from my toxic parents.”
    (毒親から自由になるため、私は戦った。)
  • “Japan struggles to contain further spread of the virus.”
    (ウイルスをこれ以上拡散しないよう、日本は奮闘している。)
  • “Japan is struggling to slow the spread of the disease.”
    (この病気の蔓延を遅らせるのに、日本は苦慮している。)
  • “X gave up altogether after years of struggling to ramp up output.”
    (X社は、生産高を上げようと何年も奮闘した後、完全に手を引いた。)
  • “Local governments struggling with applications for virus cash”
    (地方自治体、コロナ給付金の申請で大混乱)
    ※  ニュース見出し

◆  形容詞  ” struggling ” の意味合いも変わらない。

【発音】   ˈstrʌɡ.lɪŋ
【音節】   strug-gling  (2音節)

  • “She used to be a struggling author.”
    (かつて彼女は奮闘する作家であった。)
    (かつて彼女は売れない作家であった。)
  • “She used to be a single mom struggling to
    make ends meet.”
    (彼女は家計のやりくりにもがくシンママであった。)
  • “Their struggling economy needs government help.”
    (かの国の苦しい経済は政府支援を必要としている。)
  • “Japan’s government approves cash handout for
    struggling students amid pandemic”
    (日本政府、パンデミックで苦しむ学生のための給付金を決定)
    ※  ニュース見出し

◆  前置詞の話で、コロケーション辞典に触れた。

『オックスフォード コロケーション辞典』 がこちら。

コロケーション辞典の代表格である。

■ 動詞 “struggle”

画像の拡大

Oxford Collocations Dictionary for
Students of English
“(アプリ版)より転載

※  漢字は追加


” struggle ” については、底本の英語版に比べ、
日本語版の方が充実した内容。

英語版にない名詞 ” struggle ” も、日本語版は詳説する。

■ 名詞 “struggle”

画像の拡大


■ 動詞 “struggle”

画像の拡大

小学館 オックスフォード 英語コロケーション辞典
(アプリ版)より転載


◆  コロケーション辞典は、当該単語の前後で用いられる
言葉を品詞ごとに具体的に列挙する。

英語学習者は、とりわけ前置詞に迷うケースが多い。

” struggle for ”  なのか、” struggle with ” なのか。

意味に違いがあるのか。

あやふやな基礎知識を手っ取り早く確認できる上、
作文に行き詰まった時は慈雨となる。

表現が思いつかず ” struggle ” する時は、適宜まねるとよい。

そっくりそのまま、もらい受けてしまおう。

同時に、自分の語彙に追加しておく( 語彙採集 )。

このプロセスを繰り返すと、きっと実力がつく。

もっとも、主要単語の場合、学習英英辞典( EFL辞典 )
にも、コロケーションは併記されていることが多い。

特に、LDOCE ” と “ OALD ” は、コロケーション満載。

【実例】    ※  辞書アプリの転載あり

threshold“、”damage“、 “scrutiny“、
backdrop“、”paperwork“、”downfall“、
bombshell“、”alternative”、”feasible“、
disparity“、”presence


◆  日本語のコロケーション辞典は、『 てにをは辞典 』( 三省堂 )
をお勧めしたい。

書籍版と「 自炊 」した電子版を併用しているが、大変便利。

◇  使用 ipad mini  →  写真辞書自炊辞書アプリ )

日英のコロケーション辞典がないと、弊ブログは立ち行かない。

 

 

 

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