プロ翻訳者の単語帳

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Struggle

      2019/08/14

努力(する)、苦戦(する) 

自他の頑張る姿を表現する際に出てくる動詞・名詞。

【発音】 strʌ́gl  

【相手】老若男女 → 不問
【用途】公私 → 不問
【場面】硬軟 → 不問
【手段】筆舌 → 不問

死に物狂いの真剣勝負はもちろんのこと、
じたばたもがく様子を面白おかしく描写するのに
用いてもOK。どこでも使える。

◆ “struggle” には、動詞と名詞がある。

動詞は自動詞中心。他動詞を省略している辞書が多い。
3大学習英英辞典(EFL辞典)には、他動詞の記載がない。

断トツで簡潔な語釈を示すのが次の辞書。

“struggle”

verb [I]
– (TRY HARD) to work hard to do something.
– (FIGHT) to fight, esp. physically.
– (MOVE) to move with difficulty.

noun [C]
– (FIGHT) a fight.
– (TRYING HARD) a very great effort to do something.

Cambridge Academic Content Dictionary

【発音】 strʌ́gl  

[I] = intransitive = 自動詞
[C] = countable = 可算名詞

“struggle” については、この上ない分かりやすさ。
よって、3大EFL辞典を差し置いてご紹介する。

まず、青字に着目。

<自動詞>

  • try hard(努力する)
  • fight(苦戦する、苦労する)
  • move(もがく)

<可算名詞>

  • fight(争い、闘争、戦い)
  • trying hard(奮闘、苦闘、苦労)

“struggle” の骨子は、これがすべて。

カッコ内の和訳は後述の
オックスフォード 英語コロケーション辞典』(アプリ版)
を適用した。

“struggle” は頻出の感があるが、英単語全体からはそうでもない。
LDOCE6(ロングマン)の指標では、動詞・名詞とも、

  • 重要:<3001~6000語以内>
  • 書き言葉頻出:<2001~3000語以内>
  • 話し言葉頻出:3000語圏外

◆ 語源は、中期英語「もがく」(struglen)。

もがく【踠く】

1. 苦しがって手足を動かす。
2. あせり苦しむ
(三省堂国語辞典 第七版)

もがく【踠・藻掻】(「藻掻」はあて字)

1. もだえ苦しんで手足を動かす。あがく。
2. いらだつ。あせる。じりじりする。
(精選版 日本国語大辞典)

先の青字 “MOVE” は、手足のばたばたが該当する。
もぞもぞ緩慢に動くのではなく、派手にバタつく行為。
例えば「水中でもがく」「羽交い締めにされてもがく」。

溺れかけたり、羽交い締めにされる機会はそうそう生じない。
ゆえに、実際の「もがく」は「もだえ苦しむ」意味で多用される。

したがって、「もがく」と “struggle” の日常用法としては、
「2」の用途が一般的。

すなわち
“try hard”(努力する)及び “fight”(苦戦する、苦労する)

同様に、名詞 “fight”(争い、闘争、戦い)も、非日常的に近い。
“trying hard”(奮闘、苦闘、苦労)の方が普通。

こう見てくると、”struggle” は「もがく」と重なることが分かる。
日英もろとも、意味合いと使われ方が似通っている。

◆ 戦争や事故・災害時などの非常時の情報であれば、
「闘争」「戦い」「苦しがって手足を動かす」を指す確率
が上がるのは言うまでもない。

日頃、一般人が用いる機会が比較的少ないため、本稿では
後回しにしたものの、ニュースや論文などには出てくる。

意味が明確で混乱しにくい点も、優先順位を繰り下げる要因となった。

これ以外の “struggle” は、上掲の青ハイライトの意味中心となる。
私たち日本人が普段使う時や見聞きする際も同様である。

したがって、本稿ではこれらの語義に焦点を当てる。

“struggle” 

  • try hard(努力する)
  • fight(苦戦する、苦労する)
  • trying hard(奮闘、苦闘、苦労)

動詞と名詞の意味合いは重なるので、以下まとめて論じる。

この表を二分すると、

  1. 努力する → 奮闘
  2. 苦戦する → 苦闘

※「苦労する → 苦労」は概ね双方に該当ため、ここでは除外

日本語の1と2では、受け手の印象に差が生じるだろう。
一見大差ないように思えるが、「苦闘」と「奮闘」は
やはり違う。

「奮闘」は「がんばっているな」で済まされても、
「苦闘」は軽々しく口にできない雰囲気。

どちらも必死だが、「苦闘」はかなり苦しい努力を指す。

例えば、

  • 「1. 受験勉強に奮闘する」 vs 「2. 受験勉強に苦闘する」
  • 「1. 婚活に奮闘する」 vs 「2. 婚活に苦闘する」

2は、当人のしんどさがビシビシ伝わってくる。
つらくて、笑顔が一気に消える感じ。
悲壮感が漂い、とてもジョークにできない

“struggle” は、1と2の両方とも意味するため、
和訳時は内容を読み取って区別する。

前置詞で区分できる場合もあるが、多用される前置詞
のほとんどが共通する。

すなわち、forwithagainstonto
※ 後掲「コロケーション辞典」参照

そのため文脈から見分けるのが基本となる。

ところが、1、2のどちらなのか、明確でない場面も多い。
つまり、いずれの解釈もありうる内容が普通に存在する。
翻訳者の立場からも、あいまいすぎて迷う案件が少なくない。

◆ 日本人にとって、”struggle” が厄介なのは、このように
和訳時に迷いが生じやすい点にある。

努力している有様は容易に看取できるが、何だかはっきり
しないのだ。

「この人にとって、どの程度きついのだろう」

本人でないのだから、推し量りがたいのは当然である。

しかし、「受験勉強」と「婚活」の例からも感じ取れるように、
和訳によって、受け手の認識は左右される。

どの程度なのか判明しない限り、判断は難しい。
結局、「苦闘」に至る苦労か否かは、総合的に決めることとなる。

◆ 一方、”struggle” の使い手側はどうか。

日常用法については、厳密に判別することなく使っている
可能性が高いと考えられる。

「奮闘」であろうと「苦闘」であろうと、無我夢中の
真っ最中に細かい差異を意識する余裕はないもの。
思い出す時ですら、区別はそれほど意味をもたない。

とにかく「苦労」が伴う姿を伝えたい …
これぞ使い手の意図であり、”struggle” の真骨頂。

offensive” でも取り上げたように、使い手自身も今ひとつ
自覚していない場合が珍しくなかったりする。

“struggle” がこれらの語義を包括する以上、
きっちり区別すること自体が不自然な話なのかもしれない。

少なくとも、普段遣いでは深く考えたりしないのが大勢。

英語学習者は、的確な「和訳」をあれこれ考える習慣がある。
だからこそ、上記のような迷いが生じる。
日本語で理解する上では、欠かせないプロセスである。

それでも、”struggle” を駆使するレベルの英語力が身につけば、
区別を執拗に考える意義を見出せなくなっていく。

「努力する」意をひっくるめた “struggle” を使うのに、
日本語でああだこうだは変。いちいち和訳なんてするかよ。
自ずとこんな感覚になっていたりする。

母語を介さず、英語のまま理解できるようになってくると、
このような思いをすることもしばしば。

日本人の英語学習者としては、良し悪しの現象である。

【参照】
・ 対となる日本語がなければ、イメージで理解
・ 日本語にない文法は、原文で慣れる

◆ ニュースなどメディア報道の用途ではなく、
ずっと身近な使い方を10点挙げてみる。

これまで述べてきた意味の区別に気を使うべきかどうか、
それぞれ考えていただきたい。和訳は一例である。

image.png
“I struggled with my research on this article.”
(この記事のための下調べに苦労しました。)

“I struggle to do knuckle push-ups.”
(拳腕立て伏せに苦戦しています。)

“He struggles financially.”
(彼は経済的に苦労している。)

“She struggled all the time during her school years.”
(彼女は学生時代に絶えず苦しんでいました。)

“Each day is a struggle against pain.”
(毎日が痛みとの戦いです。)

“I struggled for words.”
(必死に言葉を探しました。)

“We struggled hard for workplace improvement.”
(職場改善に向けて、我々は奮闘しました。)

“She struggles with exam stress.”
(彼女は試験のストレスに苦しんでいる。)

“He struggled on despite his health problems.”
(健康上の問題にもかかわらず、彼は頑張り続けた。)

“She struggles to gain freedom from her parents.”
(両親から自由を獲得するため、彼女は戦っている。)

◆ 前置詞の話で、コロケーション辞典に触れた。

以下、『オックスフォード コロケーション辞典』
から転載。コロケーション辞典の代表格である。

■ 動詞 “struggle”image.png

画像の拡大

Oxford Collocations Dictionary for
Students of English
“(アプリ版)より転載
※ 漢字は追加

“struggle” については、底本の英語版よりも、
日本語版の方がはるかに充実した内容。

英語版にない名詞 “struggle” も、日本語版は詳説する。

■ 名詞 “struggle”image.png

画像の拡大


■ 動詞 “struggle”image.png

画像の拡大

小学館 オックスフォード 英語コロケーション辞典
(アプリ版)より転載

コロケーション辞典は、当該単語の前後で用いられる
言葉を品詞ごとに具体的に列挙する。

英語学習者は、とりわけ前置詞に迷うケースが多い。
“struggle for”  なのか、”struggle with” なのか。
意味に違いがあるのか。

あやふやな基礎知識を手っ取り早く確認できる上、
作文に行き詰まった時は慈雨となる。

表現が思いつかず “struggle” する時は、適宜まねるとよい。
つまり、そっくりそのままもらい受けてしまおう。
同時に、自分の語彙に追加しておく(語彙採集)。
このプロセスを繰り返すと、きっと実力がつく。

もっとも、主要単語の場合、学習英英辞典(EFL辞典)
にも、コロケーションは併記されていることが多い。
特に、LDOCE” と “OALD” は、コロケーション満載。

【実例】 ※ 辞書アプリの転載あり
threshold“、”damage“、 “scrutiny“、
backdrop“、”paperwork“、”downfall“、
bombshell“、”alternative”、”feasible“、
disparity

日本語のコロケーション辞典は、『てにをは辞典』(三省堂)
をお勧めしたい。

書籍版と「自炊」した電子版を日々使っているが、大変便利。
※ 詳細は、 辞書の「自炊」と辞書アプリ

日英のコロケーション辞典がないと、弊ブログは立ち行かない。

 

 

 

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