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Take somebody under one's wing

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~ をかばう、  〜 の面倒をみる

ずばり「かばう」こと。

未成年はもちろん、時に危うい状態の大人をも対象とする。

堅めのニュース記事・番組でも使われる確立した表現。

take somebody under one’s care ” とほぼ同義。

ただし、”wing” の方が積極的な勢いを放つ感がある。

弱い立場に置かれた者の世話を、自ら引き受ける姿勢を表す。
つまり、慈しみ深い凛々しさで、保護役を務める言動全般。

  かばう【庇う】

■  他から害を受けそうなもの、また、他から悪く
思われそうなものを、そうならないように守ってやる。
いたわり守る。
(精選版 日本国語大辞典)

■  他からの危険や非難などが及ばないように守る。
(大辞林 第三版)

■  その人・そのものが苦しみを受けなくてすむように、
おおい包むように守る。
(三省堂国語辞典 第七版)


  ほご【保護】

■  危険・損害・迫害などが及ばないように、弱い
ものなどをかばい守ること。
(明鏡国語辞典 第三版)

■  気を付けてまもること。かばうこと。ほうご。
(広辞苑 第七版)


※  語釈の該当項のみ引用

「かばう」「保護」同様、自分より弱い者に対して
用いるのが通常。

例外的 に、羽振りがよい人が窮した際にも使われる模様。

偉い人が不祥事を起こし、四面楚歌に追い込まれた苦境
が代表例。

高転びに転ぶ大物の転落は、無慈悲な好奇の目にさらされがち。
打って変った周囲の冷たさ。

ざまあみろ

そんな針のむしろに、いたたまれない恥辱感。

これは、きつい。

 

  非難を浴び、傷つき、参ってしまった者を、
 そっと 自分の翼の下に かくまう イメージ  

複数形  ” wings ” も使われている  


こうした構図は、表現内容から想像可能であろう。

◆  表題の直訳は、「ある人を誰々の翼の下に連れていく」。

例えば、”take him under my wing” の直訳は、
「彼を私の翼の下に連れていく」。

「彼を私の翼の下に連れてくる」の方が和訳は自然。

所有格 “one’s”(誰々の) は、我が翼を提供する本人。
翼を「所有」する主(=持ち主)を指すから「所有格」。

人称代名詞の所有格は、
my / your / his / her / their / our / its。


◆  表現の意味からして、無生物の所有格は不適切な気がする。

実のところ、普通に使われている。
よって、3人称所有格 “its”(それの)もOK。

ここで気になるのは、無生物における和訳。

結論から言えば、「傷ついた者を、翼の下にかくまう」
ような感情的な要素は少ない。

論より証拠。
2018~2019年発表のニュース見出しを挙げる。

上の例文では、X、Y双方が無生物の「組織」を表す。
表題の “somebody” は Y、”one’s” は X。

このように、所有格が「組織」の場合、「傘下」に近い
意味合いとなる。

「傘下企業」の「傘下」で、「傘下に置く」「傘下に入る」。
先述の直訳「翼の下に連れていく」「連れてくる」と重なる。

  さんか【傘下】

■  勢力のある人物や組織に属して、その支配・影響・庇護
などを受ける立場にあること。翼下
(大辞林 第三版)

■  [会社・団体・軍などの]支配下。翼下
(三省堂国語辞典 第七版)

■  大きな勢力を持つ人物・組織などの下で、
その指導や支配を受ける立場にあること。翼下
(明鏡国語辞典 第三版)

さらに、『広辞苑 第七版』『精選版 日本国語大辞典』
の「傘下」の語釈末尾も「翼下」。

  よっか【翼下】

■  支配力の及ぶ範囲内。保護下。傘下
(大辞林 第三版)

■  勢力の及ぶ範囲内。傘下
(広辞苑 第七版)

■  勢力または保護の範囲内。傘下
(精選版 日本国語大辞典)

加えて、『三省堂国語辞典 第七版』『明鏡国語辞典 第三版』
の「翼下」の語釈末尾も「傘下」。

無個性で代り映えがしない記述ばかりである。

だが、イメージは分かりやすい。

先ほどの「誰々の翼の下」=「誰々の翼下」。

“under one’s wings” で、どんぴしゃり。

◆  「組織」は、表記上の単複(単数・複数)が安定していない。

大手メディア間でも、扱いにばらつきが見られるので厄介。

単複に応じて、それぞれ “takes” と “take” となる。

また、「組織」では複数形 “wings” が多い印象だが、
単数形 “wing” も使われている。

人間の場合も、単複両方の実例を見かける。

それでも、後掲の英英辞典の項目立ては、単数形 “wing”
で統一されている。

語源は、中期デンマーク語の「翼」(wingæ)。

「羽」と和訳されることもあるが、本稿では語源に従う。

【発音】   wíŋ  (1音節)


◆  「傘下」「翼下」に入る契機は、「合併」が多い。

英語では “merger”( mə́ːdʒər が一般的。

すなわち、複数の会社を一つの法人格に統合する手法のこと。

“M&A”( merger and acquisition )は「 合併と買収 」。

「合併」には、「吸収合併」と「新設合併」の2手法がある。
消滅する法人格が必ず発生するのが「合併」の特徴。

一方、「合併」と似た表現に「 経営統合 」がある。
双方企業の法人格が存続する点で「合併」と異なる。

“integration”( ìntəgrèiʃən ) が正式な表現であるが、
一般向けに “merger” が用いられているケースもある。

消滅する会社の発生有無という大差があるといえど、
素人に区別は難しい。

ビジネスである以上、そこに至る背景はさまざま。

弱い側が消滅対象とは限らなかったりする。

報道記事を読んでも、部外者には複雑難解な事例が少なくない。

大切なことは、”take somebody under one’s wing” が、

1) 無生物 にも適用されること
2) <組織>の場合、「傘下」「翼下」「合併」の意味合い

この2つを押えておくとよい。


◆  実際には、所有格は人間の方が多用される。

上図では「我に来たれ」と両手を広げる、天使風の
ネクタイ姿が所有格の人。

直接話しかける時、所有格は “my”(私の)。

間接話法で言い換えると、男性は “his”(彼の)、
女性なら “her”(彼女の)。

当人は、物心両面で余裕のある寛大な心の持ち主。

その雅量を示すため、誉め言葉にもなる好意表現である。

読み手・聞き手にも、慈愛の安らぎをもたらす感じ。

新約聖書「マタイ11章28節」を彷彿させる。

Come to me,
all you who are weary and burdened,

and I will give you rest.

( すべて疲れた人、重荷を負っている人は
わたしのもとに来なさい。
わたしがあなたがたを休ませてあげます。)

Matthew 11:28  New International Version (NIV)
マタイの福音書 11章28節

イエス・キリストのことば。

世界中の教会が看板に掲げる聖句のひとつである。

表題を用いて、あえて換言を試みたい。

“Come to me” の目的格 “me” を所有格に代え、


◆  これまでのお話で、存外身近な表現であることが、
ご理解いただけたのではないだろうか。

“under one’s wing” が「翼下」に通じる利点は大きい。

今回、裏付けはできなかったが、そのまま和訳された「訳語」
の可能性がある。

状況が目に浮かびやすい英語表現は、とかく学びやすい。

次の4大学習英英辞典(EFL辞典)をご覧いただきたい。

ささっと目を通してみて、表題が面影に立つか。

中級学習者の実力があれば、すぐさま様子が思い浮かぶはず。

“take somebody under your wing”

■  to help and protect someone who is younger
or less experienced than you are.
(LDOCE6、ロングマン)

■  to take care of and help somebody who has
less experience of something than you.
(OALD9、オックスフォード)

■  If you take someone under your wing, you
start to protect and take care of them.
(CALD4、ケンブリッジ)

“take somebody under one’s wing”

■  If you take someone under your wing,
you look after them, help them, and protect them.
(COBUILD9、コウビルド)

※  ハイライトと下線は引用者

「保護」「世話」「面倒」がちらつく中身。
ハイライトした共通項がそれらを表す。

主に弱き者が対象となるのは明らか。

とりわけ、下線部 “younger” や “less experience(d)”
がそれを強調する。

そもそも、目上の相手に「世話」だの「面倒」だのは、
失礼な物言い。

この辺りは、”take good care of – “ でご案内した。

同じく表題も、目上には基本的に不似合いな言い回しである。

しかし、既に触れてきた通り、一時的に窮地に陥った強者に
対して、例外的に使われることがある。

現に、上掲のEFL辞典のうち、弱輩の要素(下線部)
を明記するのは、4点中2点のみ。

とすれば、社会的立場の上下関係に基づく「弱さ」よりは、
「かばう」(ハイライト部)必要性が今あるか否かが、
焦点になると考えられる。

◇  弱い立場にある者の世話役を買って出る  

こんな気風がいい行動力を表す表現である。

 

 

 

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