Newbie
2020/08/27
1. 新人 2. 初心者
インターネット記事で見かける機会が多く、
ネット時代の新語かと思いきや、そうでない。
1969年には「新人」の意味での使用が記録されている。
米軍が発祥の地で「新入りの軍人」を表す俗語。
語原の有力説はこちら。
—・ https://www.etymonline.com/word/newbie
—・ https://en.wikipedia.org/wiki/Newbie
「英辞郎 on the WEB」には、 “new boy” とある。
—・ https://eow.alc.co.jp/search?q=newbie&ref=sa
可算名詞で、複数形は “newbies”。
“Hi. I am a newbie.” ー
【発音】 ˈnjuːbi
「ニュービー」だなんて、なんだかふざけたような語感。
軍隊の厳かな雰囲気に不似合いな甘ったるさを感じる。
【音節】 new ・ bie(2音節)
ーーーーーーー ニュー ービー
長音の2音節で、カタカナ表記もしやすい。
アクセントは “new” に置く。
「音節」(syllable)とは、発音の最小単位。
日本語の場合、原則として「仮名一字が1音節」。
そのため、音節を意識する機会は乏しい。
ー
◆ 新米がちょっかいや揶揄嘲弄の対象になる
傾向は、集団や組織に普遍的に見られる。
それが行き過ぎた際、米軍では “hazing“(しごき)
と称し、全面的に戒めている。
学校では、”bully” や “bullying“(いじめ)に結びつく。
もとより面白半分な動機から生じ、悪意はなかったり
するので、対処に窮する問題ではある。
興味本位にいじられるのは、新人が本能的に好奇心を
あおり立てる、気になる存在だからかもしれない。
ー
◆ “newbie” の語義は、次の2つを押さえておけばよい。
- 新人 (新米・新参者・新入り・新顔)
- 初心者
日常的にはこれで充分。 1 の各語は、ほぼ同義。
いずれも “new” から連想できる意味合いなので、
難しくない。
ー
◆ “new” には、形容詞・副詞・名詞がある。
語源は、古英語「新しい」(nīwe)。
【参照】”new to – “(~の新入りである)
“bie” は、上掲の語原サイト “etymonline.com”
によれば、
diminutive or derogatory suffix
【参考和訳】
「指小辞または軽蔑的な接尾辞」
https://www.etymonline.com/word/newbie
【発音】
・ diminutive( dimínjətiv )
・ derogatory ( dirɑ́gətɔ̀ːri )
・ suffix( sʌ́fiks )
指小辞(ししょうじ)とは、主に名詞や形容詞につき、
「小さい」「かわいい」のニュアンスを加える接辞(affix)。
以下、黄ハイライト部が指小辞。
- booklet(冊子)→ 小さな書物
- duckling(アヒルの子)→ かわいいアヒルちゃん
- applet(小規模アプリケーション)→ ちっこいアプリ
- freebie(無料の景品など)→ ささやかな品物、粗品
このように、英語の指小辞には接尾辞が多い。
片や日本語では、接頭辞が目立つ。
- 小銭
- 小鼻
- 小娘
- 小ぎれい
“newbie” は、さしずめ「新人ちゃん」か。
もし後者の「軽蔑的な接頭辞(derogatory suffiix)」
の説を採用するならば、「新入りども」くらいになる。
ー
◆ どちらの解釈であっても、周囲の興味を巻き起こし、
思わず手出しをしたくなる流れについては既述の通り。
下品なスラング扱いする辞書も散見するものの、
実際にはニュース記事の見出しに使われている。
今年2019年に発表された10件をご覧に入れたい。
- “Day in Life of a Newbie SEO”
(SEO初心者の一日)
ー※ SEO = search engine optimization
ーー——–= 検索エンジン最適化
ー - “From Grammy Newbie to Global Superstar”
(グラミー賞新人から国際的スーパースターへ)
ー - “Tips For Winning Real Estate Listings As
A Newbie Agent”
(新人不動産業者が物件販売リストで
成功するコツ)
ー - “5 BIGGEST mistakes made by newbie XX riders”
(XX乗りの初心者が犯す5大ミス)
ー - “Newbie Investing Mistakes and How to Avoid Them”
(新人投資家が犯す間違いと対策)
ー - “The Newbie Guide to Blogging”
(ブログ初心者のための入門書)
ー - “When You’re The Newbie At Work”
(職場で新人の場合)
ー - “2019 Travel Goals for the Newbie Traveler”
(2019年版 旅行初心者のための目的地)
ー - “Are You a New Year’s Resolution Newbie,
Master or Flunkee? ”
(あなたは「新年の抱負」の新人・達人・落ちこぼれか)
ー - “Here’s what you should know if you’re a public
transit newbie in X ”
(X の公共交通機関の入門者が知るべきこと)
—※ 「見出し」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
——-英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語
ー
◆ 以上10件。すべて真面目なニュースである。
出自が俗語とはいえ、実用における “newbie” の
立ち位置は悪くないことが推察される。
ただ、インターネット上のフォーラムなどでは、時に
「無知の新人くん」のごとく、小馬鹿にする含意を
読み取ることもできる。
例えば、
- a newbie question
(新人めいた質問)
とりわけマニア向けサイトでは、初心者くさい質問が
お呼びでない様相を呈すのはよくある話。
低レベルで場違いな門外漢であれば、小生意気な厄介者
として雑言を浴びせられ、排斥されても不思議でない。
こんな見方。
ー
◆ 新人や初心者の処遇は、居場所によって大きく異なる。
これまで見てきたように、”newbie” の放つニュアンス
に差が出る理由は、主に場の違いにある。
「一見さんお断り」にやたらと近づくと大変。
無知で間抜けな言動により、たちまち炎上し、
焼き出された上、締め出されることも。
一方、初心者向けであれば「ようこそ」と歓迎される。
ここでの “newbie” が、意地悪で小難しい理屈を
伴わないのは、言うまでもない。
–
◆ 名詞 “newbie” の基本的語義が<中立的>なのは、
4大学習英英辞典(EFL辞典)からも明らか。
“newbie”
■ informal
someone who has just started doing something,
especially using the Internet or computers.
(LDOCE6、ロングマン)
■ informal
a person who is new and has little experience
in doing something, especially in using computers.
(OALD9、オックスフォード)
■ informal
someone who has just started doing an activity,
a job, etc.
(CALD4、ケンブリッジ)
■ A newbie is someone who is new to an activity,
especially in computing or on the internet.
(COBUILD9、コウビルド)
【発音】 ˈnjuːbi
COBUILD 以外には、”informal” 表記がある。
すなわち「非正式またはくだけた表現」の意。
要点にハイライトを施した。
どの語釈を見ても、「新人」または「初心者」を示すのみ。
英語学習者の注意を促す記載は一切ない。
つまり、先述の和訳 1 と 2 に沿った語義である。
1.
-
新人
新たに加入した人。新顔。
(広辞苑 第七版) -
新米
[「しんまえ(新前)」の転 ]
まだ始めたばかりで、その事柄に慣れていない人。
新参。未熟な人。
(大辞林 第三版) -
新参者(しんざんもの)
あらたに使えた人。また、新しく仲間に加わった人。
新参。新入り。新座衆。新座者。
(精選版 日本国語大辞典)
2.
-
初心者
習い始めたばかりでまだ未熟な人。
(明鏡国語辞典 第二版)
※ 各辞典の該当する語釈のみ転載
ー
「日常的にはこれで充分」と書いたのは、あながち
間違っていないだろう。
その場にそぐわぬ挙措の新顔に限り、”newbie” が
とげとげしい言葉になりがちといった案配である。