プロ翻訳者の単語帳

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Vulnerable to –

      2022/11/17

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 8 minutes

〜 にやられやすい、   〜 に傷つきやすい

” vulnerable ” は、 形容詞 adjective のみの単語。

ビジネス・プライベート、 口頭・文面を問わず、

日常的に多用される。

ぴたりと 該当する 日本語は 見当たらない


実に和訳しにくい。

おまけに、 私たち日本人の苦手な 「 L 」 と 「 R 」 込み。

【発音】  vʌ́lnərəbl
【音節】  vul-ner-a-ble  (4音節)

発音しずらいこともあり、 相当とっつきにくい。

◆  定訳のひとつが 「  脆弱な( ぜいじゃくな ) 」。

日本工業規格( JIS ) の一規格から引用すると、
赤字部分が  ” vulnerable ”  の要点。


3.16  危害を受けやすい状態にある 消費者( vulnerable consumer )

年齢, 理解力, 身体的・精神的な状況又は限界, 製品の安全(3.14)
情報にアクセスできないなどの理由によって, 製品又はシステムから
の危害(3.1)のより大きな リスク(3.9)にさらされている 消費者。

JIS Z 8051:2015
安全側面―規格への導入指針
https://kikakurui.com/z8/Z8051-2015-01.html

※  赤字は引用者


JIS・ISOの工業規格やIT ( 情報技術 ) の分野では当たり前
でも、 世間一般では今ひとつ馴染みのない日本語であろう。

次いで、 『 広辞苑 』 のお出まし。

  ぜいじゃく脆弱

身体・器物・組織などが、 もろよわい   こと。


  ぜいじゃくせい脆弱性

もろくてよわい性質。コンピューターやネットワーク
などの情報システムでは、障害・事故・災害・不正使用・
攻撃・ 情報漏洩 などに対する  もろさ
ヴァルネラビリティー


『 広辞苑 第七版 』
新村 出(編) 岩波書店、  2018年刊
( ロゴヴィスタ  アプリ版 )


※  ヴァルネラビリティー  =  vulnerability ( 後述 )


いずれも全文なのだが、 やや物足りない。

日本最大の国語辞典  と名高い 『 日国 』 を援用してみる。

全14巻( 全13巻+別巻 )。


日本国語大辞典 第二版 』 第7巻
小学館( 2001年刊 )


ともに全文である。

詳細な 「 用例 」 「 語源 」 「 発音 」 は、

さすがに立派なものの、

もろくて弱い


こちらの 「 語釈 」 自体は簡素すぎ。

先の 『 広辞苑  第七版 』( 2018年刊 )に軍配が上がる。


◆  とにかく、

たやすく壊れがちで、
ダメージを受けやすい


こんな 「 状態 」 が、 形容詞  ” vulnerable “。

形容詞ゆえ、「 be動詞 」(※)に続くのが基本パターンになる。

(※)  be、am、was、been、will be、is、were、are

なぜ「 be動詞 」に続くのかは、 ” aware ”  と  ” vocal about
で詳述した。

英文法の基本であるので、ぴんとくる ことがなければ、
この機会におさらいしていただくとよいかもしれない。


◆  英語の  ” vulnerable ” は、実は難しくない。

多義でなく、意味合いは一貫しているからである。

  vulnerable

1. someone who is vulnerable
can be easily harmed or hurt.

2. a place, thing, or idea that is vulnerable 
is easy to attack or criticize.
( LDOCE6、ロングマン )

  vulnerable (to somebody / something) 

weak and easily hurt physically or emotionally.
( OALD9、オックスフォード )

  vulnerable

able to be easily physically, emotionally, or mentally 
hurt, influenced, or attacked.
( CALD4、ケンブリッジ )

※  下線は引用者

【発音】  vʌ́lnərəbl
【音節】  vul-ner-a-ble  (4音節)


このように、 3大学習英英辞典 ( EFL辞典 ) の語釈は比較的シンプル。

にもかかわらず、

日本語の語彙にないタイプなので、
すんなり 理解しにくく、難しいと感じてしまう


形容詞  ” unsolicited “、 名詞  ” threshold ” に共通する思い違い。

もったいない。

  ” vulnerable ” は、多岐に渡る分野に出てくる。

日本語に馴染みのない言葉のため、


和訳がまちまち
で、 混乱を引き起こす。

※  例文参照


実際のところ、 単語そのものの難しさではない

 


「 脆弱 」 なデバイスをチェック



◆  語源は、 ラテン語 「 傷つける 」 ( vulnerabilis )。

この意味は一貫している。

先述の通り、 和訳は一筋縄にはいかない。

押さえるべきは、  次の 弱点

  精神・肉体不問 で、

 

傷つきやすい

やられやすい


→  vulnerable

 

※  状態だから、 形容詞 adjective


  反意語は、 否定の接頭辞  ” in “( 無、不、非 ) を加えた、

invulnerable “( 傷つくことのない )。

【発音】  invʌ́lnərəbl
【音節】  in-vul-ner-a-ble  (5音節)


  名詞は、不可算名詞の ” vulnerability “( 脆弱性 )( 脆弱さ )。

  • financial vulnerability  ( 金銭的脆弱性 )
  • cybersecurity vulnerability  ( サイバーセキュリティの脆弱性 )

【発音】  vʌ̀lnərəbíliti
【音節】  vul-ner-a-bil-i-ty  (6音節)

可算名詞扱いされる場合もあり、複数形は、” vulnerabilities “。

  •  “Apple has released iOS XX to address vulnerabilities with
    older iOS versions. ”
    (アップル社は、iOS の旧バージョンの脆弱性に対処するため、
    iOS XX をリリースした。)

 

Wi-Fi の 「 脆弱性 」 をチェック

 

更新 しないと

  • “The most dangerous vulnerabilities are hidden in outdated drivers.”
    (最も危険な脆弱性は、 更新 していないドライバーに隠れている。)

    【発音】  àutdéitəd
    【音節】  out-dat-ed  (3音節)

◆  再び、 日本工業規格( JIS ) から引用。


3.77  ぜい弱性( vulnerability )
一つ以上の脅威(3.74)によって
付け込まれる
可能性のある,資産又は管理策(3.14)の 弱点

JIS Q 27000:2019
情報技術−セキュリティ技術−情報セキュリティ マネジメントシステム−用語
https://www.kikakurui.com/q/Q27000-2019-01.html

※  赤字は引用者

【発音】  vʌ̀lnərəbíliti
【音節】  vul-ner-a-bil-i-ty  (6音節)

◆  一般向けの「 カタカナ語辞典 」では、



『 コンサイス  カタカナ語辞典  第5版 』
三省堂編修所(編集)三省堂、  2020年刊
<三省堂HP>


語釈全文である。

この「 第5版 」は、 2020年9月10日に発行された。

それから、 ちょうど26年前の1994年9月10日に発行
された「 初版 」の全文はこちら。



『 コンサイス  カタカナ語辞典  初版 』
三省堂編修所(編集)三省堂、  1994年刊


「 ヴァ 」でなく、「 バ 」を引き継いでいるのは、割かし新鮮。

前出『 広辞苑  第七版 』( 2018年刊 )では、「 ヴァ 」。

「 急務 」( ★ )は、1994年当時から現在に至るまで、
世界各国の課題であり続けている。


  主な同義語は、 ” fragile ” ( 壊れやすい )。

【発音】  frǽdʒəl
【音節】  frag-ile  (2音節)

  主な反義語は、 ” resilient “( 立ち直りが早い )。

【発音】  rizíliənt
【音節】  re-sil-ient  (3音節).

これまた和訳しにくいためか、 両方ともカタカナで
日本のメディアに登場する機会が増えている。

すなわち、 「 フラジャイル 」 と 「 ジリエント 」。

  さらに、その名詞形の  ” resilience ” 「 レジリエンス 」。

立ち直る力 」 または 「 回復力 」と訳されることが多い。

不可算名詞である。

【発音】  rizíliəns
【音節】  re-sil-ience  (3音節)

 

◆  字面を見ても、 まったく手掛かりがなく、 困ったカタカナ語。

” vulnerable ” と同様の理由で、 どうにも和訳しがたいのである。

翻訳者として、 もう情けなく、 心苦しい。

けれども、

「  言語が違うから、やむを得ないケース  

と考えるより致し方ない。

integrity ” に等しく、 翻訳者泣かせの厄介な英単語たち。

【参照】  日本語と英語の違い


繰り返すと、

ぴたりと 該当する 日本語は 見当たらない


実に和訳しにくいわ。

 

◆  的確な和訳が困難すぎて、 「 誤解を招くより、まだまし

という流れから、 カタカナで取り入れられる語も数多いのが現実。

日本語にはない表現なので、 どうやって訳しても、 無理が生じる。

強引に和訳しても、 英語本来の一部しか表せないため、 高リスク

せっかくの和訳が、 様々な勘違いと不幸の火種を落としてしまう

語彙運用の間違いは  危険 で、 そんな語は普及しない方がよい

決して、 この世に出してはいけない。

だから、 表音文字の 「 カタカナ 」 で日本語の仲間入りする。

この理屈を知らずに、 カタカナ語の氾濫を一方的に批判するのは、
筋違いに感じる。

外語に親しみ、 中級 以上の実力者になれば、 自然に納得できる
論理に違いない。

専門家でなくても、 なぜカタカナなのか、 背景が推察可能になる。

全体像をつかめば、 「 これの1語和訳は無理だろう … 」 と感づく。

上述の形容詞  ” unsolicited ”  が好例で、 ぴったりの日本語はない。

外国語学習のおかげで、 これまで意識したことなかった母語の
持ち味と偉大さに気づき、 母語を見直し、 母語の知識が深まる。

英語を学ばなければ、 類まれな日本語の美点は感じ取れなかった。


日々使う言い回しに、 英語由来の多い事実に気づけば、 母語を意識する。

    •  異常に多い擬音語 ( オノマトペ、 onomatopoeia
    •  極端に少ない音が生む、 数多の 「 同音異義語 」
      ( 一説によると、 日本語の母音は 5 個、英語の母音は 26 個、
      半濁音・短音など込みで、日本語音 114 個、英語音 2,100 個 )
    •  多彩多様な助詞により、 自由自在に近い語順
    •  3割超は外来語
    •  複雑な敬語
    •  表音文字・表意文字の併用 ( 英語は表音文字のみ )
    •  世界に誇れる3重表記 ( ひらがな、かたかな、漢字 )
    •  芸術的に繊細を極める我が言語

これほどユニークで、 高難度の言葉を操れるのは、 なかなかすごくない

どこか邪険に取り扱っていた母語の偉大さに感づき、 見直す瞬間が訪れる。

見えていなかった日本語の裏面の姿が、 急に浮かび上がってくる不思議。


英文法の参考書  より


本能で学んだ母語こそ、 思考の根幹の「 土台 」 に他ならない。

conclusive ”  では、 伝統を保持しつつ近代化を達成した日本が、
なんとも奇跡的な国家であるとの歴史話を取り上げた ( 地図入り )。

【参照】

・  誤解回避のため、 カタカナ職にする外資系
・  日本語は、英語習得の 「 踏み台 」 になりにくい言語

 

◆  ” vulnerable ” と同じく、 ” fragile ”  も  ” resilient ” も、
ラテン語由来。

  •  「 壊れやすい 」 ( frangilis )
  •  「 跳ね返る 」 ( resiliēns )

語源に忠実であり、 この点も  ” vulnerable ” と一緒。

イメージは分かりやすい
イメージから会得するとよい


” vulnerable ”  に重なるイメージ

  • “Protect the  vulnerable parts  of your body.”
    ( 自分の身体の急所を守りなさい。)

vulnerable ( 傷つきやすい ) +  parts ( 部位 )

急所

private parts ” ( 陰部 ) に限らず、 頭部や顔も含む。

 

◆  表題の  ” vulnerable to ” は、 対象の前置詞 ” to “( ~ に )を伴い、

  • ~ に 傷つきやすい
  • ~ に やられやすい
  • ~ に 弱い


◆  繰り返すと、” vulnerable ” は、

日本語にずばり該当する言葉がないゆえに、
混乱を招く単語の典型。

このような場合、

和訳をざっと学び、

その後は多くの英文に触れて、
イメージを強化する方が早かったりする。

なにせ日本語に存在しないのだから、 その方が現実的

【参照】

 

◆  日常的によく使われる印象があるが、
こちらが形容詞  ” vulnerable ”  の立ち位置。

  •  重要度 : <3001~6000語以内>
  •  書き言葉の頻出度 : <2001~3000語以内>
  •  話し言葉の頻出度 : 3000語圏外
    ( LDOCE6 の指標より )

英単語全体における位置づけなので、
そこそこ重要であると言える。

現に、ウェブサイトを 英文検索 すれば、
多彩な用法に出会える。

対となる日本語がないなら、まずは
イメージで把握してしまおう。

受験勉強や通訳翻訳者でないならば、
必ずしも和訳する必要はない。

これが 「 英語のまま理解する 」 ということかもしれない。

 

【参照】

  • perceive
    (知覚する、気づく)
  • once and for all
    (これを最後に、今度限り、きっぱりと)

◆  ” vulnerable ” は、 文脈次第で和訳がかなり違ってくる。

以下の例文が理解できれば、 基本はOK


どれも頻出かつ代表的な使われ方。

和訳は一例。

 

  • “Erika was vulnerable to drug addiction.”
    (エリカは薬物依存症に弱かった。)
    (エリカは薬物依存症に負けやすかった。)
    (エリカは薬物依存症に屈しやすかった。)
    (エリカは薬物依存症に陥りやすかった。)
    (エリカは薬物依存症になりやすかった。)
    (エリカは薬物依存症にかかりやすかった。)
    (エリカは薬物依存症に冒されやすかった。)
    (エリカは薬物依存症にやられやすかった。)
    (エリカは薬物依存症にむしばまれやすかった。)
    (エリカは薬物依存症にとりつかれやすかった。)
  • “vulnerable people”
    (弱い立場の人々)
    (傷つきやすい人々)
  • “a vulnerable city”
    (攻撃を受けやすい都市)
  • “a vulnerable position”
    (弱い立場)
  • “Protecting the vulnerable”
    (弱い立場の人々を守る)    ※  ニュース見出し

       形容詞を集団の複数扱いする 「 ~ な人たち 」。
    ——” the old “、 ” the poor “、 ” the weak “、 ” the sick
    ——と同じ用法の  ” the vulnerable “。

    ~ な人たち 」 の  ” the ” の基本は、 次の通り。



    『 ジーニアス英和大辞典 』
    大修館書店、 2001年刊 ( ロゴヴィスタ アプリ版 )
    …  “ the ”  の語法より
    <大修館書店HP>


    『 研究社 新英和大辞典 第6版 』
    研究社、 2002年刊 ( ロゴヴィスタ  アプリ版 )
    …  ” the ”  の語釈より

  • Unattended children are vulnerable.”
    (付き添われていない子たちは狙われやすい。)
  • “Every organization is vulnerable to hacking.”
    (どんな組織もハッキングに狙われやすい。)
  • “They are vulnerable to Alzheimer’s disease.”
    (彼らはアルツハイマー病にかかりやすい。)
  • “The human brain is vulnerable to physical injury.”
    (人間の脳は肉体的損傷を受けやすい。)
  • “Mary’s age made her vulnerable to COVID.”
    (年齢ゆえに、メアリーはコロナウイルス感染症
    にやられやすくなっていた。)
  • “Smokers are vulnerable to lung cancer.”
    (喫煙者は肺がんになりやすい。)
  • “She is vulnerable to criticism.”
    (彼女は批判に弱い。)


  • “Your device may be vulnerable.”   
    (あなたのデバイスは脆弱である可能性があります。)
  • “His story was crappy and vulnerable to ridicule.”
    (彼の話はくだらなくて、馬鹿にされやすかった。)
    (彼の話はくそすぎて、笑われてもしかたなかった。)
  • We are vulnerable to a takeover.”
    (我が社は買収されやすい状態にある。)
    (我が社は乗っ取りされやすい状態にある。)
  • “Your webcam is vulnerable to spying.”
    (あなたのウェブカメラはスパイの被害を受けやすい。)
    (あなたのウェブカメラはスパイに狙われやすい。)


  • “Your device is vulnerable to fake websites.”   
    (あなたのデバイスは偽ウェブサイトの被害を受けやすい。)
    (あなたのデバイスは偽ウェブサイトに狙われやすい。)
  • “A person’s blood type could affect how vulnerable
    they are to developing the disease.”
    (この病気にどれくらいかかりやすいかは、血液型が影響を与えうる。)
  • I was vulnerable to racial slurs.”
    (私は人種的中傷に弱かった。)
    (私は人種的中傷を受けやすかった。)
  • “I felt vulnerable.”
    (自分が無防備に感じた。)
  • “She is vulnerable to stress.”
    (彼女はストレスに弱い。)
    (ストレスにやられやすい。)

やられやすい

 

◆  最もしっくり合うのは 「 やられやすい 」 だと私は考えている。

本稿のすべての例文で 「 やられやすい 」 と訳しても、 ほぼほぼ通じる。

言い回しとして、 時に微妙だとしても、 理解には十分役立つ。

とりあえず、「 やられやすい 」 とだけ覚えておけば、気が楽。

 

 

 

 

 

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