プロ翻訳者の単語帳

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Vulnerable to –

      2020/11/12

〜にやられやすい、  〜に傷つきやすい

“vulnerable” は、形容詞のみの単語。

ビジネス・プライベート、口頭・文面を問わず、
日常的に多用される。

ぴたりと該当する日本語は見当たらない

実に和訳しにくい。

おまけに、私たち日本人の苦手な「L」と「R」込み。

【発音】  vʌ́lnərəbl
【音節】  vul-ner-a-ble  (4音節)

発音しずらいこともあり、相当とっつきにくい。

◆  定訳のひとつが「 脆弱な(ぜいじゃくな)」。

日本工業規格(JIS)の一規格から引用すると、
赤字部分が “vulnerable” の要点。

3.16  危害を受けやすい状態にある消費者(vulnerable consumer)
年齢,理解力,身体的・精神的な状況又は限界,製品の安全(3.14)
情報にアクセスできないなどの理由によって,製品又はシステムから
の危害(3.1)のより大きなリスク(3.9)にさらされている消費者。

JIS Z 8051:2015
安全側面―規格への導入指針
https://kikakurui.com/z8/Z8051-2015-01.html

JIS・ISOの工業規格やIT(情報技術)の分野では当たり前
でも、世間一般では今ひとつ馴染みのない日本語であろう。

次いで『広辞苑』のお出まし。

  ぜいじゃく脆弱
身体・器物・組織などが、 もろよわい こと。


  ぜいじゃくせい脆弱性
もろくてよわい性質。コンピューターやネットワーク
などの情報システムでは、障害・事故・災害・不正使用・
攻撃・情報漏洩などに対する もろさ
ヴァルネラビリティー。

(広辞苑  第七版)

◇  ヴァルネラビリティー  =  vulnerability(後述)

いずれも全文なのだが、やや物足りない。

よって、日本最大の国語辞典と名高い『日国』を援用してみる。

日本国語大辞典 第二版』第7巻、p. 1189、
小学館(2001年刊)より転載

ともに全文である。

詳細な「用例」「語源」「発音」は、さすがに立派なものの、

もろくて弱い

こちらの「語釈」自体は簡素すぎ。

先の『広辞苑  第七版』(2018年刊)に軍配が上がる。


◆  とにかく、

たやすく壊れがちで、
ダメージを受けやすい

こんな「状態」が、形容詞 “vulnerable”。

形容詞ゆえ、「be動詞」(※)に続くのが基本パターンになる。

(※)  be、am、was、been、will be、is、were、are

なぜ「be動詞」に続くのかは、”aware”、”vocal about”、
conclusive” で詳述した。

英文法の基本であるので、ぴんとくることがなければ、
この機会におさらいしていただくとよいかもしれない。


◆  英語の “vulnerable” は、実は難しくない。

多義でなく、意味合いは一貫しているからである。

■  vulnerable

1. someone who is vulnerable
can be easily harmed or hurt.

2. a place, thing, or idea that is vulnerable 
is easy to attack or criticize.
(LDOCE6、ロングマン)

■  vulnerable (to somebody / something) 

weak and easily hurt physically or emotionally.
(OALD9、オックスフォード)

■  vulnerable

able to be easily physically, emotionally, or mentally 
hurt, influenced, or attacked.
(CALD4、ケンブリッジ)

※  下線は引用者

【発音】  vʌ́lnərəbl
【音節】  vul-ner-a-ble  (4音節)


このように、3大学習英英辞典(EFL辞典)の語釈は比較的シンプル。

にもかかわらず、

日本語の語彙にないタイプなので、
すんなり理解しにくく、難しいと感じてしまう

この点、形容詞 “unsolicited“、名詞 “threshold” に
共通する思い違い。

あぁ、もったいない。

“vulnerable” は、多岐に渡る分野に出てくる。

日本語に馴染みのない言葉のため、

和訳がまちまちで、混乱を引き起こす。

※  例文参照


実際のところ、単語そのものの難しさではない


◆  語源は、ラテン語「傷つける」(vulnerabilis)。

この意味は一貫しているのだが、先述の通り、
和訳は一筋縄にはいかない。

押さえるべきは、次の弱点

◇  精神・肉体不問で、
傷つきやすい」  「やられやすい


■  反意語は、否定の接頭辞 “in“(無、不、非)を加えた、
invulnerable“(傷つくことのない)。

【発音】  invʌ́lnərəbl
【音節】  in-vul-ner-a-ble  (5音節)


■  名詞は、不可算名詞の “vulnerability“(脆弱性)(脆弱さ)。

  • financial vulnerability (金銭的脆弱性)
  • cybersecurity vulnerability (サイバーセキュリティの脆弱性)

【発音】  vʌlnərəˈbɪləti
【音節】  vul-ner-a-bil-i-ty  (5音節)

再び、日本工業規格(JIS)から引用。

3.77  ぜい弱性(vulnerability)
一つ以上の脅威(3.74)によって
付け込まれる
可能性のある,資産又は管理策(3.14)の弱点

JIS Q 27000:2019
情報技術−セキュリティ技術−情報セキュリティ マネジメントシステム−用語
https://www.kikakurui.com/q/Q27000-2019-01.html


■  主な反義語は、”resilient“(立ち直りが早い)。

【発音】  rizíliənt
【音節】  re-sil-ient  (3音節)


■  主な同義語は、”fragile“(壊れやすい)。

【発音】  frǽdʒəl
【音節】  frag-ile  (2音節)

イメージは分かりやすい
イメージから会得するとよい

↑”vulnerable” に重なるイメージ↑

  • “Protect the vulnerable parts of your body.”
    (自分の身体の急所を守りなさい。)

vulnerable (傷つきやすい) + parts (部位)

  「急所

private parts“(陰部)に限らず、頭部や顔も含む。

 

◆  表題の “vulnerable to” は、対象の前置詞 “to”(~に)を伴い、

  • ~に傷つきやすい
  • ~にやられやすい
  • ~に弱い

繰り返すと、”vulnerable” は、

日本語にずばり該当する言葉がないゆえに、
混乱を招く単語の典型。

このような場合、

和訳をざっと学び、

その後は多くの英文に触れて、
イメージを強化する方が早かったりする。

なにせ日本語に存在しないのだから、その方が現実的

【参照】  日本語にない文法は、原文で慣れる

◆  日常的によく使われる印象があるが、
こちらが形容詞 “vulnerable” の立ち位置。

  • 重要度:<3001~6000語以内>
  • 書き言葉の頻出度:<2001~3000語以内>
  • 話し言葉の頻出度:3000語圏外
    (LDOCE6 の指標より)

英単語全体における位置づけなので、
そこそこ重要であると言える。

現に、ウェブサイトを英文検索すれば、
多彩な用法に出会える。

対となる日本語がないなら、まずは
イメージで把握してしまおう。

受験勉強や通訳翻訳者でないならば、
必ずしも和訳する必要はない。

これが「英語のまま理解する」ということかもしれない。

 

【参照】

  • perceive
    (知覚する、気づく)
  • once and for all
    (これを最後に、今度限り、きっぱりと)

◆  “vulnerable” は、文脈次第で和訳がかなり違ってくる。

以下の例文が理解できれば、基本はOK

どれも頻出かつ代表的な使われ方。

和訳は一例。

  • “Erika was vulnerable to drug addiction.”
    (エリカは薬物依存症に弱かった。)
    (エリカは薬物依存症に負けやすかった。)
    (エリカは薬物依存症に屈しやすかった。)
    (エリカは薬物依存症に陥りやすかった。)
    (エリカは薬物依存症になりやすかった。)
    (エリカは薬物依存症にかかりやすかった。)
    (エリカは薬物依存症に冒されやすかった。)
    (エリカは薬物依存症にやられやすかった。)
    (エリカは薬物依存症にむしばまれやすかった。)
    (エリカは薬物依存症にとりつかれやすかった。)
  • “vulnerable people”
    (弱い立場の人々)
    (傷つきやすい人々)
  • “a vulnerable city”
    (攻撃を受けやすい都市)
  • “a vulnerable position”
    (弱い立場)
  • Unattended children are vulnerable.”
    (付き添われていない子たちは狙われやすい。)
  • “They are vulnerable to Alzheimer’s disease.”
    (彼らはアルツハイマー病にかかりやすい。)
  • “Smokers are vulnerable to lung cancer.”
    (喫煙者は肺がんになりやすい。)
  • “Your computer is vulnerable to fake websites.”
    (あなたのコンピューターは、偽サイトの被害を受けやすい。)
  • “She is vulnerable to criticism.”
    (彼女は批判に弱い。)
  • “His story was crappy and vulnerable to ridicule.”
    (彼の話はくだらなくて、馬鹿にされやすかった。)
    (彼の話はくそすぎて、笑われてもしかたなかった。)
  • We are vulnerable to a takeover.”
    (我が社は買収されやすい状態にある。)
    (我が社は乗っ取りされやすい状態にある。)
  • “Your device is vulnerable to fake websites.”
    (あなたのデバイスは偽ウェブサイトの被害を受けやすい。)
    (あなたのデバイスは偽ウェブサイトに狙われやすい。)
  • “A person’s blood type could affect how vulnerable
    they are to developing the disease.”
    (この病気にどれくらいかかりやすいかは、血液型
    が影響を与えうる。)
  • I was vulnerable to racial slurs.”
    (私は人種的中傷に弱かった。)
    (私は人種的中傷を受けやすかった。)
  • “I felt vulnerable.”
    (自分が無防備に感じた。)
  • “She is vulnerable to stress.”
    (彼女はストレスに弱い。)
    (ストレスにやられやすい。)

◆  最もしっくり合うのは「 やられやすい 」だと私は考えている。

本稿のすべての例文で「 やられやすい 」と訳しても、ほぼほぼ通じる。

言い回しとして、時に微妙だとしても、理解には十分役立つ。

とりあえず「 やられやすい 」とだけ覚えておけば、気が楽。

 

 

 

 

 

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