プロ翻訳者の単語帳

Professional Interpreter / Translator at Government Agency

Vulnerable to –

      2021/10/23

〜 にやられやすい、  〜 に傷つきやすい

” vulnerable ” は、形容詞  のみの単語。

ビジネス・プライベート、口頭・文面を問わず、

日常的に多用される。

ぴたりと 該当する 日本語は 見当たらない

実に和訳しにくい。

おまけに、私たち日本人の苦手な「 L 」と「 R 」込み。

【発音】  vʌ́lnərəbl
【音節】  vul-ner-a-ble  (4音節)

発音しずらいこともあり、相当とっつきにくい。

◆  定訳のひとつが「  脆弱な( ぜいじゃくな ) 」。

日本工業規格( JIS ) の一規格から引用すると、
赤字部分が  ” vulnerable ”  の要点。

3.16  危害を受けやすい状態にある 消費者( vulnerable consumer )
年齢, 理解力, 身体的・精神的な状況又は限界, 製品の安全(3.14)
情報にアクセスできないなどの理由によって, 製品又はシステムから
の危害(3.1)のより大きな リスク(3.9)にさらされている 消費者。

JIS Z 8051:2015
安全側面―規格への導入指針
https://kikakurui.com/z8/Z8051-2015-01.html

※  赤字は引用者


JIS・ISOの工業規格やIT( 情報技術 )の分野では当たり前
でも、世間一般では今ひとつ馴染みのない日本語であろう。

次いで、 『 広辞苑 』 のお出まし。

  ぜいじゃく脆弱

身体・器物・組織などが、 もろよわい  こと。


  ぜいじゃくせい脆弱性
もろくてよわい性質。コンピューターやネットワーク
などの情報システムでは、障害・事故・災害・不正使用・
攻撃・ 情報漏洩 などに対する  もろさ
ヴァルネラビリティー

『 広辞苑 第七版  』  ( アプリ版 )
新村 出(編) 岩波書店、  2018年刊


※  ヴァルネラビリティー  =  vulnerability ( 後述 )


いずれも全文なのだが、やや物足りない。

よって、日本最大の国語辞典 と名高い 『 日国 』 を援用してみる。

日本国語大辞典 第二版 』 第7巻
小学館( 2001年刊 )


ともに全文である。

詳細な「 用例 」「 語源 」「 発音 」は、さすがに立派なものの、

もろくて弱い

こちらの「 語釈 」自体は簡素すぎ。

先の『 広辞苑  第七版 』( 2018年刊 )に軍配が上がる。


◆  とにかく、

たやすく壊れがちで、
ダメージを受けやすい

こんな「 状態 」が、形容詞  ” vulnerable “。

形容詞ゆえ、「 be動詞 」(※)に続くのが基本パターンになる。

(※)  be、am、was、been、will be、is、were、are

なぜ「 be動詞 」に続くのかは、” aware ” と ” vocal about
で詳述した。

英文法の基本であるので、ぴんとくる ことがなければ、
この機会におさらいしていただくとよいかもしれない。


◆  英語の  ” vulnerable ” は、実は難しくない。

多義でなく、意味合いは一貫しているからである。

  vulnerable

1. someone who is vulnerable
can be easily harmed or hurt.

2. a place, thing, or idea that is vulnerable 
is easy to attack or criticize.
( LDOCE6、ロングマン )

  vulnerable (to somebody / something) 

weak and easily hurt physically or emotionally.
( OALD9、オックスフォード )

  vulnerable

able to be easily physically, emotionally, or mentally 
hurt, influenced, or attacked.
( CALD4、ケンブリッジ )

※  下線は引用者

【発音】  vʌ́lnərəbl
【音節】  vul-ner-a-ble  (4音節)


このように、3大学習英英辞典 ( EFL辞典 )の語釈は比較的シンプル。

にもかかわらず、

日本語の語彙にないタイプなので、
すんなり 理解しにくく、難しいと感じてしまう


形容詞  ” unsolicited “、 名詞 ” threshold ” に共通する思い違い。

ああ、もったいないわ。

  ” vulnerable ” は、多岐に渡る分野に出てくる。

日本語に馴染みのない言葉のため、

和訳がまちまち で、混乱を引き起こす。

※  例文参照


実際のところ、 単語そのものの難しさではない


◆  語源は、ラテン語「 傷つける 」 ( vulnerabilis )。

この意味は一貫しているのだが、先述の通り、
和訳は一筋縄にはいかない。

押さえるべきは、次の 弱点

◇  精神・肉体不問 で、
傷つきやすい 」  「 やられやすい

vulnerable


  反意語は、否定の接頭辞 ” in “( 無、不、非 )を加えた、
invulnerable “( 傷つくことのない )。

【発音】  invʌ́lnərəbl
【音節】  in-vul-ner-a-ble  (5音節)


  名詞は、不可算名詞の ” vulnerability “( 脆弱性 )( 脆弱さ )。

  • financial vulnerability  ( 金銭的脆弱性 )
  • cybersecurity vulnerability  ( サイバーセキュリティの脆弱性 )

【発音】  vʌlnərəˈbɪləti
【音節】  vul-ner-a-bil-i-ty  (6音節)

可算名詞扱いされる場合もあり、複数形は、” vulnerabilities “。

 

Wi-Fi の「 脆弱性 」をチェック

◆  再び、 日本工業規格( JIS ) から引用。

3.77  ぜい弱性( vulnerability )
一つ以上の脅威(3.74)によって
付け込まれる
可能性のある,資産又は管理策(3.14)の 弱点

JIS Q 27000:2019
情報技術−セキュリティ技術−情報セキュリティ マネジメントシステム−用語
https://www.kikakurui.com/q/Q27000-2019-01.html

※  赤字は引用者

◆  一般向けの「 カタカナ語辞典 」では、


『 コンサイス  カタカナ語辞典  第5版 』
三省堂編修所(編集)三省堂、  2020年刊
<三省堂HP>


語釈全文である。

この「 第5版 」は、2020年9月10日に発行された。

それから、ちょうど26年前の1994年9月10日に発行
された「 初版 」の全文はこちら。

『 コンサイス カタカナ語辞典  初版 』
三省堂編修所(編集)三省堂、  1994年刊


「 ヴァ 」でなく、「 バ 」を引き継いでいるのは、割かし新鮮。

前出『 広辞苑  第七版 』( 2018年刊 )では、「 ヴァ 」。

「 急務 」( ★ )は、1994年当時から現在に至るまで、
世界各国の課題であり続けている。


  主な同義語は、” fragile “(壊れやすい)。

【発音】  frǽdʒəl
【音節】  frag-ile  (2音節)

  主な反義語は、” resilient “(立ち直りが早い)。

【発音】  rizíliənt
【音節】  re-sil-ient  (3音節).

これまた和訳しにくいためか、両方ともカタカナで
日本のメディアに登場する機会が増えている。

すなわち、「 フラジャイル 」と「 ジリエント 」。

  さらに、その名詞形の  ” resilience ” 「 レジリエンス 」。

「 立ち直る力 」 または 「 回復力 」と訳されることが多い。

不可算名詞である。

【発音】  rizíliəns
【音節】  re-sil-ience  (3音節)

 

◆  字面を見ても、まったく手掛かりがなく、困ったカタカナ語。

” vulnerable ” と同様の理由で、どうにも和訳しがたいのである。

翻訳者として、もう情けなく、心苦しい。

けれども、「 言語が違うから、やむを得ないケース 」と考えるしかない。

integrity ” に等しく、翻訳者泣かせの厄介な英単語たち。

【参照】   日本語と英語の違い


繰り返すと、

ぴたりと 該当する 日本語は 見当たらない

実に和訳しにくい。

 

◆  ” vulnerable ” と同じく、 ラテン語由来。

  •  「 壊れやすい 」 ( frangilis )
  •  「 跳ね返る 」 ( resiliēns )

語源に忠実であり、この点も  ” vulnerable ” と一緒。

イメージは分かりやすい
イメージから会得するとよい


” vulnerable ”  に重なるイメージ

  • “Protect the  vulnerable parts  of your body.”
    ( 自分の身体の急所を守りなさい。)

vulnerable ( 傷つきやすい ) +  parts ( 部位 )

  「 急所

private parts ” ( 陰部 ) に限らず、 頭部や顔も含む。

 

◆  表題の  ” vulnerable to ” は、 対象の前置詞 ” to “( ~ に )を伴い、

  • ~ に 傷つきやすい
  • ~ に やられやすい
  • ~ に 弱い


◆  繰り返すと、” vulnerable ” は、

日本語にずばり該当する言葉がないゆえに、
混乱を招く単語の典型。

このような場合、

和訳をざっと学び、

その後は多くの英文に触れて、
イメージを強化する方が早かったりする。

なにせ日本語に存在しないのだから、その方が現実的

【参照】

 

◆  日常的によく使われる印象があるが、
こちらが形容詞 ” vulnerable ” の立ち位置。

  •  重要度 : <3001~6000語以内>
  •  書き言葉の頻出度 : <2001~3000語以内>
  •  話し言葉の頻出度 : 3000語圏外
    ( LDOCE6 の指標より )

英単語全体における位置づけなので、
そこそこ重要であると言える。

現に、ウェブサイトを 英文検索 すれば、
多彩な用法に出会える。

対となる日本語がないなら、まずは
イメージで把握してしまおう。

受験勉強や通訳翻訳者でないならば、
必ずしも和訳する必要はない。

 

これが「 英語のまま理解する 」ということかもしれない。

 

【参照】

  • perceive
    (知覚する、気づく)
  • once and for all
    (これを最後に、今度限り、きっぱりと)

◆  ” vulnerable ” は、文脈次第で和訳がかなり違ってくる。

以下の例文が理解できれば、 基本はOK

どれも頻出かつ代表的な使われ方。

和訳は一例。

 

  • “Erika was vulnerable to drug addiction.”
    (エリカは薬物依存症に弱かった。)
    (エリカは薬物依存症に負けやすかった。)
    (エリカは薬物依存症に屈しやすかった。)
    (エリカは薬物依存症に陥りやすかった。)
    (エリカは薬物依存症になりやすかった。)
    (エリカは薬物依存症にかかりやすかった。)
    (エリカは薬物依存症に冒されやすかった。)
    (エリカは薬物依存症にやられやすかった。)
    (エリカは薬物依存症にむしばまれやすかった。)
    (エリカは薬物依存症にとりつかれやすかった。)
  • “vulnerable people”
    (弱い立場の人々)
    (傷つきやすい人々)
  • “a vulnerable city”
    (攻撃を受けやすい都市)
  • “a vulnerable position”
    (弱い立場)
  • Unattended children are vulnerable.”
    (付き添われていない子たちは狙われやすい。)
  • “Every organization is vulnerable to hacking.”
    (どんな組織もハッキングに狙われやすい。)
  • “They are vulnerable to Alzheimer’s disease.”
    (彼らはアルツハイマー病にかかりやすい。)
  • “Mary’s age made her vulnerable to COVID.”
    (年齢ゆえに、メアリーはコロナウイルス感染症
    にやられやすくなっていた。)
  • “Smokers are vulnerable to lung cancer.”
    (喫煙者は肺がんになりやすい。)
  • “Your computer is vulnerable to fake websites.”
    (あなたのコンピューターは、偽サイトの被害を受けやすい。)
  • “She is vulnerable to criticism.”
    (彼女は批判に弱い。)
  • “His story was crappy and vulnerable to ridicule.”
    (彼の話はくだらなくて、馬鹿にされやすかった。)
    (彼の話はくそすぎて、笑われてもしかたなかった。)
  • We are vulnerable to a takeover.”
    (我が社は買収されやすい状態にある。)
    (我が社は乗っ取りされやすい状態にある。)
  • “Your device is vulnerable to fake websites.”
    (あなたのデバイスは偽ウェブサイトの被害を受けやすい。)
    (あなたのデバイスは偽ウェブサイトに狙われやすい。)
  • “A person’s blood type could affect how vulnerable
    they are to developing the disease.”
    (この病気にどれくらいかかりやすいかは、血液型
    が影響を与えうる。)
  • I was vulnerable to racial slurs.”
    (私は人種的中傷に弱かった。)
    (私は人種的中傷を受けやすかった。)
  • “I felt vulnerable.”
    (自分が無防備に感じた。)
  • “She is vulnerable to stress.”
    (彼女はストレスに弱い。)
    (ストレスにやられやすい。)

 

◆  最もしっくり合うのは「 やられやすい 」だと私は考えている。

本稿のすべての例文で「 やられやすい 」と訳しても、ほぼほぼ通じる。

言い回しとして、時に微妙だとしても、理解には十分役立つ。

とりあえず、「 やられやすい 」とだけ覚えておけば、気が楽。

 

 

 

 

 

Sponsored Link




Jetpack

 - 英語, 英語フレーズ