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Downfall

      2019/10/08

転落、没落 、失脚

大企業または大物の不祥事が明るみに出た際、
決まって紙面を飾る名詞。

今月2018年12月発表のニュースから、ちゃちゃっと抽出。

見出し、計10件。

  • X’s porn ban could be its downfall
    (ポルノ禁止が招くX転落の可能性)
  • X says his own attitude led to his downfall
    (自らの態度が転落を招いたと述懐するX)
  • With X’s downfall, hosting the Oscars got harder
    (X失脚でアカデミー賞司会がますます困難に)
  • Lessons of X’s downfall
    (Xの失脚からの教訓)
  • Reasons behind X’s downfall
    (Xの転落の背後にある原因)
  • Election results indicate downfall of X
    (選挙結果が示すXの没落)
  • Arrogance, ego led to downfall
    (傲慢さとエゴが招いた没落)
  • What Can We Learn From X’s Downfall ?
    (Xの失脚から学べること)
  • Most downfall of men are caused by multiple girlfriends
    (男性の転落の大半は多数の恋人が原因)
  • PM staggers on towards eventual downfall
    (よろめく首相の向かう先は失脚)

※「見出し」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語

10分足らずで、採集完了。

“downfall” が頻出なのか。それとも、転落が多いのか。

image.png

 

◆ 今回調べた9点の英英辞典 に基づけば、重要度・頻出度とも、
特筆に値しない。

例えば、LDOCE6(ロングマン)では、全3項目ランク外。

  • 重要 :9000語圏外  
  • 書き言葉頻出3000語圏外 
  • 話し言葉頻出3000語圏外

そして、Collins オンライン辞書の頻出度は、
“10000 most commonly used words in the
Collins dictionary” (トップ10000語以内)。

以上より、”downfall” は頻出単語でない模様。

となれば、尾羽打ち枯らす大勢ひしめく師走かな。


◆ “downfall” は、単数名詞

単数名詞(singular noun)とは、
単数形で使われるのが一般的な名詞
英英辞書で “S” また “sing” 略記されたりする。

3大学習英英辞典(EFL辞典)の全部が明示する。

“downfall”

[singular]
1. complete loss of your money, moral standards,
social position etc, or the sudden failure of an organization.
2. something that causes a complete failure or loss of
someone’s money, moral standards, or social position etc.
(LDOCE6、ロングマン)

[singular]
the loss of a person’s money, power, social position, etc.;
the thing that causes this.
(OALD9、オックスフォード)

[S]
(something that causes) the usually sudden destruction 
of a person, organization, or government and their loss 
of power, money or health.
(CALD4、ケンブリッジ)

※ 下線は引用者

【発音】 dáunfɔ̀ːl

一方、同じく学習英英辞典(EFL辞典)として有力な
COBUILD(コウビルド)は、説を異にする。

「単数名詞」の代わりに、「可算名詞」(countable noun)
と表示する上、複数形 “downfalls” を添える。

“downfall”

plural  downfalls
1. countable noun [usually with poss]
The downfall of a successful or powerful person or 
institution is their loss of success or power.
2. countable noun [usually with poss]
The thing that was a person’s downfall caused them 
to fail or lose power.
(COBUILD9、コウビルド)

※ 下線は引用者

  • “plural” = 複数形
    【発音】 plúərəl
  • “usually with poss” = usually with possessive
    【和訳】通常、所有格を伴う
    <人称代名詞の所有格>
    my / your / his / her / their / our / its

「単数名詞」の辞書表記のばらつきについては、
弊サイトで何度か触れてきている。

この食い違いは「矛盾」とまでに至らないと考える。
英語学習者には厄介どころではある。

このようなケースでは、次のように理解すればよい。

原則「単数名詞」:
単数扱いされるのが一般的な名詞

例外「可算名詞」:
「複数形」もありうる

さらに、日本を代表する英和大辞典4点を調べてみた。

結果は「単数名詞」の表記も、”downfalls” も皆無。

大辞典の場合、名詞の例文には複数形を含むのが通例。
軒並みゼロということは、一様に「単数名詞」と解釈
していると推定できる。

この点、3大EFL辞典と軌を一にする。
これら3点の示す例文にも、”downfalls” は見られず、
単数 “downfall” のみ。

※ web抽出のコーパスは “downfalls” を含む

繰り返すが、「単数名詞」をめぐる辞書間の相違は珍しくない。
上記の黄枠ぐらいに把握し、神経質になりすぎないことが大切。

◆「単数名詞」の論点はさておき、中身を見ていこう。

4点のEFL辞典の語釈の共通語は “loss“(下線の青字)。
カタカナでも根付いた名詞である。

  ロス【loss】

無駄にすること。失うこと。損失。
(大辞林 第三版)

【発音】 lɔ́(ː)s

上述のEFL辞典でも、この意味合いで使われている。

では、その主体と失ったものとは何か。
EFL4点を、もれなくまとめると、この通り。

<主体>

  • person(個人)
  • organization(組織)
  • government(政府、為政者)
  • institution(機関)

<失ったもの>

  • money(資力)
  • power(権力)
  • moral standards(品性)
  • social position(社会的地位)
  • success(成功)
  • health(健康)

個人・組織を問わず、矜持を保つ上で重要なものばかり。
外聞ざらしで、プライドが根こそぎ奪われる事態である。

“downfall” の定訳が「転落」「没落」「失脚」
なのも納得できよう。

転落
1. ころびおちること。
2. おちぶれること。身をもちくずすこと。
(三省堂国語辞典 第七版)

没落
栄えていたものが衰えて滅びること。
(明鏡国語辞典 第二版)

失脚
[足を踏みはずす意]
地位や立場を失うこと。
(大辞林 第三版)

気が滅入る言葉のオンパレード。

それもそのはず、名詞 “downfall” の成り立ちは、
“fall down”(下へ落ちる)の名詞化。
(ジーニアス英和大辞典)

また、
副詞 “down”(下へ)+ 動詞 “fall”(落ちる)
の語源説もある。
https://www.etymonline.com/

どちらも大同小異。 “down” と “fall” という暗い
単語の合体語に変わりはない。

先述のように、辞書における名詞 “downfall” の
重要度・頻出度は取るに足りない。

打って変わって最強レベルなのが、副詞 “down” と
動詞 “fall”。

LDOCE6(ロングマン)の指標では、

  • 重要:最上位 <トップ3000語以内>
  • 書き言葉頻出:最上位 <トップ1000語以内>
  • 話し言葉頻出最上位 <トップ1000語以内>

全項目最上位で、英単語全体における位置づけが
最高ランクに属する。

つまり、最重要かつ最頻出の基礎単語が合わさった
“downfall”。

見た目もインパクトがある。

しかも、暗澹たる語感の組み合わせなので、非運な
イメージに行き着くのは自然の数。

高転びに転ぶ大企業や大物の格落ちを、惨めな1語
で表現するには、もってこいなのである。


◆ 実用性が高いことは、コロケーション(連語)辞書に
独立項目が設けられていることにも表れている。

代表格の『オックスフォード コロケーション辞典』がこちら。

image.png

Oxford Collocations Dictionary for
Students of English
“(アプリ版)より転載
※ 漢字は追加

続いて『新編 英和活用大辞典』(研究社、書籍版は1995年刊)。
これほど紙幅を尽くしている。

image.png
新編 英和活用大辞典』(アプリ版)より転載

既に確認してきた通り、名詞 “downfall” の
重要度・頻出度は大したことない。

にもかかわらず、堂々記載されている。

これは<実務上の需要>が高いことを示唆する。

以下に重なる持ち味である。

< コロケーションについて >
・ “aware
・ LDOCE(ロングマン現代英英辞典)
・ 辞書の「自炊」と辞書アプリ
・ 英語辞書は「紙」か「電子版」か

【実例】 ※ 辞書アプリの転載あり
threshold“、”damage“、 “scrutiny“、
backdrop“、”paperwork“、”struggle”、
bombshell“、”alternative”、“feasible”、
disparity”、”presence

 

 

 

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