人種差別的な中傷
国際社会において、 あらゆる差別の中でも
深刻とされるのが、 人種差別。
人種は生来的であるため、 本人に責はない。
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◆ 人種差別は、 その行為者の 本質( 本音 )の表れ
と解釈される場合が多く、 人格面を疑われてしまいがち。
常日頃から、差別意識を抱くからこそ 生じた発言
と受け取られてしまう印象。
軽微な失言とは性質が違い、 体よく看過できないインパクト。
違法とする国もある。
信用回復が困難な失態。
それは、数々の失脚の歴史が証明している。
人種差別行為によって、 キャリアに傷をつけた
政治家・高官・組織幹部・芸能人・スポーツ選手
は枚挙に暇がない。
辞任・引退を迫られるケースもあり、 これまでの努力が台無しに。
男女差別 に似通う問題であり、 普段から念頭に置くべし。
性の多様性を尊重する 「 LGBTQI+ 」 にも配慮したい。
近年は社会的に許容されない ( socially unacceptable ) 差別となった。
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◆ 「 人種差別的な発言 」 の頻出表現はいくつかある。
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ニュースによく出てくるのは、 表題 ” a racial slur ”
に加えて、 以下3つ。
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「 人種差別的な発言 」
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a racial comment
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a racial statement
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a racial remark
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すべて、” racial ” → ” racist ” に置換え可能である。
いずれも形容詞 ( adjective )。
【発音】 réiʃəl
【音節】 ra-cial (2音節)
【発音】 réisist
【音節】 rac-ist (2音節)
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racial は、 形容詞のみだが ( 後述 )、
racist には、 可算名詞 ( countable noun ) の
「 人種差別主義者 」 もある。
他動詞 ” make ” ( ~ を行う )を伴い、
「 人種差別的な中傷をする 」。
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< 表題に “ slur ” を選んだ理由 >
他の3つは、中級以上の英語学習者なら、理解可能であり、
カタカナ語としても見聞きする。
一方、” slur ” は違う。
日本語にそぐわない、語感と発音から推察すると、
今後もカタカナ語として定着する可能性は低い。
【発音】 race (1音節)
英語の時事ニュースにはガンガン出てくる上、
意味を推測しにくいので、きちんと学びたい。
だから、 表題として ” slur ” が最適と考えた。
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◆ ” slur ” には、 他動詞・自動詞・名詞がある。
語源不詳とされるが、 有力説は、
低地ドイツ語 「 足を引きずって歩く」( slurren )。
【発音】 slə́ːr (1音節)
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比較的多義だが、 基本的意味は、
– 他動詞 「 おろそかにする 」
– 自動詞 「 もごもご話す 」
– 名詞 「 中傷 」
” racial slur ” では、可算名詞である。
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◆ なお、「 システムインテグレーター 」 の通称 ” SIer ” は、
「 スラー 」 ではなく、「 エスアイヤー 」 と読む。
名詞 ” System Integration ” の ” SI ” に、
接尾辞 ” er “( ~ する人 )をつけた 和製語。
他社のシステム開発を請け負ったりする、情報技術専門職。
【発音】 ìntəgréiʃən
【音節】 in-te-gra-tion (4音節)
” L( エル ) ” の小文字でなく、 正しくは ” I ( アイ ) ” 。
” Sler ” と書かれると、 区別不能に近いので、 蛇足ながら触れた。
一般的に、英語では ” System Integrator “。
【発音】 íntigrèitər
【音節】 in-te-gra-tor (4音節)
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◆ ” racial ” は、 形容詞 ( adjective ) のみ。
【発音】 réiʃəl
【音節】 ra-cial (2音節)
” race ” の語源は、 イタリア語 「 種族・民族 」 ( razza )。
【発音】 réis (1音節)
– 名詞 ” race ” ( 人種 )
– 接尾辞 ” ial ” ( ~ に関する )
で、 形容詞 「 人種上の 」。
” racially ” は副詞 ( adverb )で、「 人種的に 」。
” racially motivated ” は、「 人種的な動機による 」。
【発音】 réiʃəli
【音節】 ra-cial-ly (3音節)
よって、 ” racial slur ” は、「 人種上の中傷 」。
つまり 「 人種差別的な中傷 」。
特定の中傷1件なら、 単数形となる。
- ” made a racial slur ”
( 人種差別的な中傷をした )
実際は、 複数形 ” slurs ” が目立つ。
そもそも差別的なことを口にする人は、
1件のみに収まらないのかもしれない。
先述の3つの同義語でも、複数形が多用される。
スペル・発音・音節が同じ「 競走 」「 レース 」
の語源は、 古ノルド語 「 走る 」( rās )。
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◆ ウェブニュースは、次のような記事であふれている。
- “The manager resigned over racial slurs.”
(そのマネージャーは人種差別的な中傷で辞職した。)
– - “The article was full of racial slurs.”
(その記事には人種差別的な中傷が満載されていた。)–
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- “His racial slurs raised eyebrows.”
(彼の人種差別的な中傷は人々を驚かせた。)
(彼の人種差別的な中傷はひんしゅくを買った。)
– - “She apologized for racial slurs.”
(彼女は人種差別的な中傷を謝罪した。)
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- “His racial slur estranged them.”
(彼の人種差別的な中傷が、彼らの仲を引き裂いた。)
– - “He yelled racial slurs at a customer.”
(彼はお客様に大声で人種差別的な中傷をした。)
– - “The lawyer railed against these racial slurs.”
(その弁護士は、これらの人種差別的な中傷を激しく非難した。)
– - “Racial slurs were thrown at her.”
(彼女に人種差別的な中傷を浴びせた。)
– - “He shrugged off their racial slurs. ”
( 彼らの口にした人種差別的な中傷を彼は受け流した。)
– - “Using offensive racial slurs is inexcusable and disgusting.”
(侮辱的で人種差別的な中傷を使うことは、許しがたく不快である。)
– - “No one in their right mind would
openly use a racial slur.”
(人種差別語を公然と使うまともな人はいない。)
– - “We draw the line at racial slurs.”
(我々は人種的中傷を許しません。)
– - “We do not accept racial slurs.”
(人種差別的な中傷を禁じます。)
– - “He was vulnerable to racial slurs.”
(彼は人種的中傷を受けやすかった。)
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- “We need to get tough on racial slurs.”
(人種差別的な中傷への対策を強化すべきだ。)
– - “Tolerating racial slurs was a fact of life then.”
(人種的な中傷に耐えることは、当時の現実だった。)
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◆ 人種差別問題が、長らく対岸の火事だった日本。
今や時代は大きく変わっている。
2018年、訪日外国人旅行者が史上最高を更新した。
前年比 8.7%増で、 3,119万 2千人。
( 日本政府観光局 2019年1月16日 発表 )
これほど外国人を迎え入れた年は、いまだかつて存在しない。
主要20市場すべてで過去最高を記録した、2017年を上回る総人数。
統計を取り始めた1964年以降、最多となった。
国内のスポーツ会場でも、サポーターによる
人種差別行為が大きな問題となったりしている。
1990年代までの日本であれば、そう注目されなかった
事件ではないだろうか。
言語の違いはもとより明確だが、まるで違う次元で、
問題の火種はくすぶっていることに気づく必要がある。
2016年6月には「 ヘイトスピーチ対策法 」が施行された。
世界的時流と国連の見解を受けたものである。
さほど外国人慣れしていない日本人にとって、適切な接し方
の基本を学ぶ必要性は、「 異文化理解力 」と併せて、
否応なく高まっている。
「 語学力より不可欠 」 と説く論も根強い。
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