Pushback
2021/04/15
反対、 抵抗
時事ニュースとビジネス会議で、よく見聞きする名詞。
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ハイフンを挟んだ 複合名詞、 ” push-back “ とも表記する。
【発音】 pʊʃ.bæk
【音節】 push-back (2音節)
句動詞 “push back” 由来の名詞であることは、
中級学習者 なら、ひと目で予想がつくだろう。
よって、初見であっても、意味の推測は難しくない。
だが、未習のまま、耳で聞き取るのは容易でない。
句動詞に思いを馳せることは、文面であれば可能でも、
情報が瞬時に流れ去っていく有様では困難。
これが、リスニング (ヒアリング)の難しさである。
“pushback” は、ニュースや会議に年中出てくる割りに、
プライベートではあまり使われない模様。
ビジネス用語に近いと考えられる。
句動詞と合わせて、こちらで覚えてしまおう。
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◆ “pushback” は、句動詞 “push back” から派生した
不可算名詞。
- 他動詞・自動詞 ” push “
- 副詞 ” back “
句動詞 “push back” には、他動詞と自動詞がある。
それぞれ <句他動詞>、<句自動詞> と称する。
- 句動詞 ( phrasal verb )
- 句自動詞 ( intransitive phrasal verb )
- 句他動詞 ( transitive phrasal verb )
【参照】 句動詞の詳細 → ” follow through ”
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<句他動詞> 延期する → <名詞> 期日の遅延
<句自動詞> 押し返す → <名詞> 反対、抵抗
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強引に 押しやる
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■ push back the schedule
「 そのスケジュールを後ろにずらす 」
「 そのスケジュールを延期する 」
- “Japan pushes back new emperor’s enthronement
parade to Nov. 10″
(天皇陛下の即位パレードを11月10日に延期)
※ 2019年10月のニュース見出し
– - “U.S. tax filing deadline has been pushed back from
April 15 to July 15, Treasury Department says”
(税申告提出期限を4月15日から7月15日に延期、米財務省発表)
※ 2020年3月のニュース見出し
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■ push back 30 minutes
「 30分、後ろにずらす 」
- “We need to push back the meeting 30 minutes.”
- “We need to push the meeting back 30 minutes.”
(会議を30分遅らせる必要があります。)
「 30分、前にずらす 」
- “We need to move up the meeting 30 minutes.”
- “We need to move the meeting up 30 minutes.”
(会議を30分遅らせる必要があります。)
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このように、句他動詞 “push back”(延期する)の使用場面には、
「 リスケ 」 の印象 が強い。
◆ 上記の青字は、全部それなりに使われる意味。
とりわけニュースでは、名詞 「 反対、抵抗 」 が目立つ。
主な理由は、他動詞の「延期する」の意味合いには、
もっと身近な類義表現がいくつもあること。
- postpone (他動詞)
→ 堅い単語で、日程延期の公式発表に不可欠
– - defer (他動詞・自動詞)
→ 行政で多用され、納税・徴兵の「延期」が典型
— - delay (他動詞・自動詞)
→ やや堅めの表現で、交通機関の「遅延」が典型
– - put off (句他動詞)
→ 日常的な言い回しで「後回しにする」
– - hold off (句自動詞) –
→ 同じく日常使いで「後回しにする」、受け身中心
相対的に、“push back” の出番は少ない感じ。
したがって、ニュースで “pushback ” が出てきたら、
自動詞から派生した 「 反対、 抵抗 」 である可能性が高い。
そのため、本稿では自動詞中心に見ていく。
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◆ 「後ろ(背後)に押す」または「押し返す」から、”push back”。
「押し返す」
押してくるのを逆に押しもどす。
(広辞苑 第七版)
上図の通りであり、句動詞の中でもイメージしやすい部類に入る。
“pushback”
opposition or resistance to a plan,
an idea or a change.
(OALD9、オックスフォード)
negative reaction to a change or to something
new that has been introduced.
(CALD4、ケンブリッジ)
【発音】 pʊʃ.bæk
【音節】 push-back (2音節)
OALD9 も CALD4も、ハイフンなしの
“pushback” で項目立てしている。
特筆すべきは、名詞 “pushback” も “push-back” も、
次の3冊に、一切掲載されていなかった点。
- “LDOCE6″(『 ロングマン 現代英英辞典 第6版 』)
- 『 ランダムハウス英和大辞典 第2版 』
- 『 ジーニアス英和大辞典 』
項目立てされていなかったばかりでなく、
単語自体が出てこなかった。
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確かに、頻出ではない。
しかし、近頃のニュースで出会うことは珍しくない。
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先述のように、初めて接して、即座に把握するのは
不可能に近いため、今回取り上げている。
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ダメです !
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◆ 「反対、抵抗」がどのように使われているか。
今月2018年5月発表のニュース見出しを見ていこう。
- “Proposed laws met with pushback
from members of the public”
(国民から反対された法律案)
– - “Trade tensions rise amid pushback
from China, EU, Japan”
(中国、EU、日本の抵抗で貿易摩擦が強まる)
– - “Community pushback over officer conduct”
(警官の行為に地域住民の反発)
– - “School district faces pushback for
LGBTQ-centered curriculum”
(LBGTQ中心の教育課程で、学区が抵抗に直面)
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□ ” LBGTQ ” = 性的少数者 ( lesbian, gay, bisexual,
transgender and queer )
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□ ” LGBTQI+ ” = 性的少数者 ( lesbian, gay, bisexual,
transgender, queer and intersex )
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□ LGBTQI+ の人権保護を推進する文書 ( 米 ホワイトハウス )
2021年2月4日付
– - “Homeless shelters get the OK despite pushback“
(抵抗にかかわらず、ホームレス施設に許可)
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◇ 「見出し」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語
【関連表現】
◆ “push” ⇔ “pull” なので、反意語は、ひょっとして、
- 名詞 “pushback” ⇔ “pullback” ?
- 句動詞 “push back” ⇔ “pull back” ?
【結論】
完全な反義語とまでは言えないものの、その要素をかなり含む。
“pull back” の同義語に、 “ withdraw ” が挙げられる点は確実。
【発音】 wiðdrɔ́
【音節】 with-draw (2音節)
【活用形】 withdraws – withdrew – withdrawn – withdrawing
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■ 名詞 ” pullback ” ※ 原則は可算だが、不可算にもなる
「引き戻すこと」 「 (軍などの)撤退」 「 障害物」
【発音】 púlbæ̀k
【音節】 pull-back (2音節)
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■ 句動詞 ” pull back ”
- 句自動詞 「撤退する」–
- 句自動詞・句他動詞 「引き戻す」