プロ翻訳者の単語帳

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Attire

      2019/10/07

服装   

  • What should I wear as business attire
    in Japan?
  • What is appropriate business attire
    in Japan ?

(日本のビジネスの場では、どのような
服装をすればよいのでしょうか。)

初来日を控えた、ビジネス相手からのお問合せである。

このような質問をしてくるのは、業務委託契約を
結んでいる、フリーランス契約業者(contractors)
がほとんど。

仕事で初来日するのは、百戦錬磨のビジネス
パーソンにとっても、重圧がかかるらしい。

組織所属のサラリーマンにはめったに感じない、
張り詰めた焦慮と緊張感が、文面からひしひし伝わる。

この類の質問を初めて受けた時分、だいぶ若かった私は、
本当に冗談かと思ったものだ。

日本のビジネスウェアはこんな感じ、とビートルズ来日時の
はっぴ」姿を送ってあげようかと考えたほど。

今にして思えば、相手の焦燥感が分かっていなかった。

その後、海外顧客と関わる機会が増えるにつれ、
服装の大切さを徐々に理解していくこととなる。

基本は「郷に入れば郷に従え」である。

服装について確認を入れてくる来日予定者は、
インターネット時代の昨今も珍しくない。

検索しまくっても、相当の不安が残る模様。

外観を説明するのは難しいため、男女別、職位別に、
見本写真をいくつか用意し、案内するようにしている。

夏は「クールビズ」も忘れない。

◆ それでは、”attire” について見ていこう。

いきなり冒頭の質問をされた場合、相手の
尋ねている内容がその場でつかめるだろうか。

成否を分けるポイントは、”attire“。

これ以外は、単語も文法も基本レベル。
中級学習者ならば、わけないはず。

たとえ未習であっても、ここで覚えておけば、
次回は難なく自力でいける。

◆ “attire” には、名詞と他動詞がある。

【発音】 ətáiər

語源は、古期フランス語「装う」(atirier)。

– 名詞「服装」「衣装」
– 他動詞「装う」「盛装する」

名詞は不可算名詞。
この点、同義語の “clothing” と等しい。

同じく同義語の “clothes” は、複数扱いを
基本とする「複数名詞」(plural noun)。

3大学習英英辞典(EFL辞典)には、すべて “formal” とある。
つまり、堅めで正式な言い回し が “attire”。

“attire”

  • formal
    clothes.
    (ロングマン、LDOCE6)
  • formal
    clothes.
    (オックスフォード、OALD9)
  • formal
    clothesespecially of a particular
    or formal type.
    (ケンブリッジ、CALD4)

【発音】 ətáiər

※ 下線は引用者

シンプルこの上ない語釈。

その他3冊の英英辞典を調べたが、
いずれも “formal” の記載が見られた。

■ “clothing” と “clothes” は、普段着から衣装、
盛装まで、服装全般を幅広く指す一般名称。

■ “attire” は、特定場面での服装
(上掲 CALD4 下線部)を指すことが多い。

“dressed in – “ (~を着ている)

  • formal attire
    (フォーマルな服装)
  • holiday attire
    (晴れ着)
  • baseball attire
    (野球の装い)
  • tennis attire
    (テニスの装い)
  • formal evening attire
    (夜会服、イブニングドレス)
  • proper attire
    (ふさわしい服装)
  • casual attire
    (カジュアルな服装)
    ≒ 句自動詞 “dress down

※ いずれも男女不問

ビジネス用途なら、  男女問わずbusiness attire” 
が使える。

“business attire”背広

ジーニアス英和大辞典
※ 2018年4月16日初稿時点の最新版(2001年刊)

上記は、時代遅れの感がある。

「背広」は男性用だからである。

business attire for women” は、
昔から存在する話題であり、日本でも
女子就活生が頭を悩ませている。

したがって、「business attire = 背広」
は、言葉足らずな説明と考える。

◆ ところで、「背広」は「セビロ」の当て字
であることをご存知だろうか。

  セビロ【背広】

■(civil clothes の略訛か。また、ロンドンの
洋服商の街サヴィル・ロー(Savile Row)
からとも)
テーラード・カラーで腰丈までの上着と、共布
で作ったズボンとを一組とする男性服。本来は
チョッキを組ませた三つ揃いである。サックスーツ。
(広辞苑 第七版)

■ 語源については、
(イ)背筋に縫目がないところから背広の義
(ロ)英語 sack coat の訳語でゆったりした
—— 上衣の意
(ハ)市民服の意の英語 civil clothes から
(ニ)セビロ服を売り出した店のあるロンドン
——-の高級洋服店街 Savile Row から
(ホ)良質の羊毛・服地の産地 Cheviot から
などの説があるが、これまで(ハ)が有力と
されてきた。
(精選版 日本国語大辞典)

上掲『精選版』の本家本元に当たる『日国』はこちら。
全文である。 日本最大規模の国語辞典の名を誇る。

黄枠内で、語源をさらに深掘りしている。

image.png
日本国語大辞典 第二版』第7巻、p. 1,434、
小学館(2001年刊)より転載

語源がどうであれ、「背広」は男性服。

business attire

ビジネス向けの服装
    →  男女不問            

たとえ定評のある辞書であっても、
鵜呑みにするとまずいことがある。

その一例と考えられる。


◆ 男女差別には、普段から気をつける必要がある。

人種差別と同様、国内はもちろん、海外でもそう。
さもないと、思わぬ場面で足をすくわれかねない。

これから世界に羽ばたく若き俊英の皆様は、
特に念頭に置いておくとよいかもしれない。




【参考記事】 ※ 外部サイト

 

【関連表現】

“Don’t judge – ”
https://mickeyweb.info/archives/23068
(~を勝手に判断するな。~を勝手に評価するな。)

 

 

 

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