プロ翻訳者の単語帳

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Attire

      2020/12/10

服装   

  •  What should I wear as business attire
    in Japan ?

  •  What is appropriate business attire
    in Japan ?

(日本のビジネスの場では、どのような服装をすればよいのでしょうか。)

初来日を控えた、ビジネス相手からのお問い合わせである。

このような質問をしてくるのは、業務委託契約を結んでいる、
フリーランス契約業者(contractors)がほとんど。

仕事で初来日するのは、百戦錬磨のビジネスパーソンにとっても、
重圧がかかるらしい。

組織所属のサラリーマンにはめったに感じない、
張り詰めた焦慮と緊張感が、文面からひしひし伝わる。

この類の質問を初めて受けた時分、だいぶ若かった私は、
本当に冗談かと思ったものだ。

日本のビジネスウェアはこんな感じ、とビートルズ来日時の
はっぴ」姿を送ってあげようかと考えたほど。

今にして思えば、相手の焦燥感が分かっていなかった。

その後、海外顧客と関わる機会が増えるにつれ、
服装の大切さを徐々に理解していくこととなる。

基本は「郷に入れば郷に従え」である。

服装について確認を入れてくる来日予定者は、
インターネット時代の昨今も珍しくない。

検索しまくっても、相当の不安が残る模様。

外観を説明するのは難しいため、男女別、職位別に、
見本写真をいくつか用意し、案内するようにしている。

夏は 「クールビズ」 も忘れない。

◆  それでは、”attire” について見ていこう。

いきなり冒頭の質問をされた場合、相手の
尋ねている内容がその場でつかめるだろうか。

成否を分けるポイントは、” attire “。

これ以外は、単語も文法も基本レベル。
中級学習者ならば、わけないはず。

たとえ未習であっても、ここで覚えておけば、
次回は難なく自力でいける。

◆  “attire” には、名詞と他動詞がある。

【発音】   ətáiər
【音節】  at-tire  (2音節)


語源は、古期フランス語「装う」(atirier)。

–  名詞「服装」「衣装」
–  他動詞「装う」「盛装する」

名詞は不可算名詞。
この点、同義語の “clothing” と等しい。

同じく同義語の “clothes” は、複数扱いを
基本とする「複数名詞」(plural noun)。

【発音】   kloʊðz
【音節】   clothes  (1音節)

3大学習英英辞典(EFL辞典)には、すべて “formal” とある。

つまり、 堅めで正式な言い回し が “attire”。

“attire”

  • formal
    clothes.
    (ロングマン、LDOCE6)
  • formal
    clothes.
    (オックスフォード、OALD9)
  • formal
    clothesespecially of a particular
    or formal type.
    (ケンブリッジ、CALD4)

【発音】   ətáiər
【音節】   at-tire  (2音節)

※ 下線は引用者

シンプルこの上ない語釈。

その他3冊の英英辞典を調べたが、
いずれも “formal” の記載が見られた。

■  ” clothing ” と ” clothes ” は、普段着から衣装、
盛装まで、 服装全般を幅広く指す 一般名称。

■  類語の ” outfit ” も、服装全般を表すものの、
本来は、目的別にコーディネイトされた服装一式の意。

そのため、帽子・手袋・靴・アクセサリー類も加えた、
上下揃いの服装全体を表現するのが原則。

【発音】   áutfìt
【音節】   out-fit  (2音節)

■  ” attire ” は、特定場面での服装
(上掲 CALD4 下線部) を指すことが多い。

“dressed in – “ (~を着ている)

  • formal attire
    (フォーマルな服装)
  • holiday attire
    (晴れ着)
  • baseball attire
    (野球の装い)
  • tennis attire
    (テニスの装い)
  • formal evening attire
    (夜会服、イブニングドレス)
  • proper attire
    (ふさわしい服装)
  • casual attire
    (カジュアルな服装)
    ≒  句自動詞  “dress down

※  いずれも男女不問

ビジネス用途なら、  男女問わずbusiness attire” 
が使える。

business attire”  =  背広

ジーニアス英和大辞典

※  2018年4月16日初稿時点の最新版 (2001年刊)

上記は、時代遅れの感がある。

「背広」は男性用だからである。

business attire for women” は、
昔から存在する話題であり、日本でも
女子就活生が頭を悩ませている。

したがって、「 business attire  =  背広 」
は、言葉足らずな説明と考える。

◆  ところで、「背広」は「セビロ」の当て字
であることをご存知だろうか。

  セビロ【背広】

■  (civil clothes の略訛か。また、ロンドンの
洋服商の街サヴィル・ロー(Savile Row)からとも)
テーラード・カラーで腰丈までの上着と、共布
で作ったズボンとを一組とする男性服。
本来はチョッキを組ませた三つ揃いである。
サックスーツ。

(広辞苑 第七版)

■  語源については、
(イ) 背筋に縫目がないところから背広の義
(ロ) 英語 sack coat の訳語でゆったりした上衣の意
(ハ) 市民服の意の英語 civil clothes から
(ニ) セビロ服を売り出した店のあるロンドン
の高級洋服店街 Savile Row から
(ホ) 良質の羊毛・服地の産地 Cheviot から
などの説があるが、これまで(ハ)が有力と
されてきた。

(精選版 日本国語大辞典)

上掲『精選版』の本家本元に当たる『日国』はこちら。
日本最大規模の国語辞典の名を誇る。

全文である。

黄枠内で、語源をさらに深掘りしている。

日本国語大辞典 第二版』 第7巻、p. 1434、
小学館(2001年刊)より転載

語源がどうであれ、「背広」は男性服。

business attire

ビジネス向けの服装
→  男女不問

たとえ定評のある辞書であっても、
鵜呑みにするとまずいことがある。

その一例と考えられる。


◆  男女差別には、常日頃から気をつける必要がある。

人種差別 と同様、国内はもちろん、海外でもそう。

差別された側が、受けた侮辱を根に持つこともある。
当の本人が、どのタイミングで花開くかも未知数。

ここぞとばかりに、思わぬ場面で足をすくわれかねない。

因果は巡る

これから世界に羽ばたく若き俊英の皆様は、
特に念頭に置いておくとよいかもしれない。



【参考記事】     ※  外部サイト

 

【関連表現】

“Don’t judge – ”
https://mickeyweb.info/archives/23068
(~を勝手に判断するな。~を勝手に評価するな。)

 

 

 

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