非常に明確な
” crystal clear ” は、
「 クリスタルのようにクリア 」
な状態を指す。
【発音】 ˈkrɪs·təl ˈklɪər
語頭で 韻を踏んでいる ( 押韻 ) から、
頭韻法 ( とういんほう、 head rhyme、 alliteration )。
少々しゃれた言い回しだが、 ニュースにも出てくる。
- “The requirements for this case were
crystal clear.”
(この案件の要件は、非常に明確だった。)
– - “There is one thing that is crystal clear.”
(非常に明らかなことが一つある。)
– - “His message is crystal clear.”
(彼の伝えたいことは、極めて明確である。)
– - “This product is a crystal clear testimony of
the corporation’s remarkable attention to details.”
(この製品こそ、当該企業の細部へのこだわりを示す、
明白な証拠である。)
【 頭韻の例 】
有名な頭韻の商標名・固有名詞の例は、
“ first and foremost ” にて一覧にした。
–
◆ 「 クリスタルのようにクリア 」と聞いて、
構図がイメージできれば、理解は容易になる。
クリスタル【crystal】
1. 水晶
2. 結晶
3. クリスタル・ガラスの略
–
クリア【clear】
1. 明らかなさま。明晰。澄んでいること。
冴えていること。
2. 高跳で、バーを越えること。
3. サッカーなどで、自陣ゴール近くのボール
を遠くに蹴り返すこと。
4. 難しい目標をこえること。基準を満たすこと。
5. コンピューターなどで、数値や指示が与えられて
いない状態にすること。また、画面を何も表示して
いない状態にすること。
(広辞苑 第七版)
2語とも、中型以上の主要な国語辞典にて
項目立てされている。
語釈は広辞苑と重なる。
【例】
・ 大辞林 第三版
・ デジタル大辞泉
・ 精選版 日本国語大辞典
したがって、「クリスタルのようにクリア」な状態
であると説明しても、不親切とまでは言えない。
国語辞典に掲載されるカタカナ語は、日本社会にて
一定以上に普及したものに限定されるからである。
そこで、英英辞典に移る前に、上述の広辞苑から
検討して見よう。
英語の “crystal” 及び “clear” と共通する意味ばかり
なので、国語辞典から攻める方が手っ取り早い。
–
◆ まず、” crystal clear ” の ” crystal ” から。
【発音】 ˈkrɪs.təl
【音節】 crys-tal (2音節)
名詞のみの語で、語源はギリシア語「氷」
(krystallos)。
ギリシア人は氷、雪、霜などの美しさに
心を打たれた。やがてそれらの構造が明らか
になり「結晶」の意が生まれた。
(ランダムハウス英和大辞典 第2版)
“crystal clear” において、「水晶」(=不可算名詞、時に
可算名詞)なのか、「結晶」(=可算名詞)なのかは不詳。
語源から考えて、水晶の可能性が高い。
それよりも着目すべきは、不純物のない美しい姿。
これは両者に共通するため、「水晶」か「結晶」かは
大した問題ではないだろう。
◆ 次いで、” clear “。
【発音】 klɪr
【音節】 clear (1音節)
ここでは動詞ではなく、形容詞。
形容詞 “clear” は、英単語全体から見ても、
最頻出かつ最重要。
すなわち、以下3項目にて最高ランク。
– 重要度:最上位 <トップ3000語以内>
– 書き言葉の頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
– 話し言葉の頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
( ロングマン、LDOCE6 の表記より )
表題における意味は、上掲の広辞苑の黄ハイライト通り。
語源は、ラテン語「明るい、澄んだ」(clārus)。
” clarify ” と同源である。
澄んだ美しさ、明晰さはかなり好印象。素敵だ。
“crystal” または “clear” から派生した女性名は、
昔から存在する。”crystal” は名字にも見かける。
【例】
Clarice Starling (『 羊たちの沈黙 』 主人公)
- crystal-clear river ( 透き通った川 )
- crystal-clear sound ( 澄んだ音 )
- crystal-clear air ( 澄み切った空気 )
–
※ ハイフンの説明は後述
まじりけがなく、キラキラ透き通った様子。
一点の曇りもないので、はっきり見える。
転じて、
非常に明確で、疑問の余地のない状態
を表す。
–
◆ 3大学習英英辞典( EFL辞典 )の解説も
“crystal clear” に似つかわしく、冴えている。
” crystal clear “
1. very clearly stated and easy to understand.
2. completely clean and clear.
(LDOCE6、ロングマン)
–
1. (of glass, water, etc.) completely clear and bright.
2. very easy to understand; completely obvious.
(OALD9、オックスフォード)
–
1. extremely clear.
2. very easy to understand.
(CALD4、ケンブリッジ)
【発音】 ˈkrɪs·təl ˈklɪər
どれも ” very easy to understand “。
この文言が全3冊に記載されているだけでなく、
語釈自体が押しなべて「大変分かりやすい」。
3大EFL辞典の面目躍如たる強みを見せつける。
英語の初学者でも、すっと理解できるだろう。
とりわけ、CALD4の簡潔な説明は美しい。
- 極めて澄んでいる
- 大変分かりやすい
具体的な使い方は例文に任せるしかないのだが、
意味を把握するには要領を得ている。
学習上、何よりも大枠をつかむことが大切である。
枝葉末節よりも、全体像を 優先 すべきである。
この目的から見れば、EFL辞典は実に役立つ。
英語学習上、本質的な要素に焦点を絞っているから。
初学者、中級者 のみならず、相当の英語力の持ち主
にとっても、あやふやな点の確認に有効である。
私自身、 3大学習英英辞典(EFL辞典)はもちろん、
英語ネイティブ用の英英辞典も頻繁に参照する。
弊サイトでは、双方を調べ、随時引用している。
ー
◆ 名詞などの前に置く場合は、” crystal–clear ”
とハイフンを入れる場合もある。
しかし、同じ「 複合形容詞 」( compound adjectives )
の ” well-liked ” などと異なり、ハイフンなしの方が
一般的な形容詞である。
今回調べた8点の英英辞典のうち、1冊以外
はハイフンなしで項目立てしていた。
その1冊とは、2014年発行の
” Collins English Dictionary 12th Edition ”。
英語ネイティブ向けの英英辞典である。
コウビルド( COBUILD )の「兄」のような
位置づけにある。
そもそも「コウビルド」は、“ Collins Birmingham
University International Language Database ”
の頭文字をとって ” COBUILD “ と称する。
コリンズ社( Collins )が資金を出し、バーミンガム大学
( Birmingham University )が集めた英文データベース。
大規模なコンピュータ・コーパス を活用しているのが強み。
LDOCE(ロングマン現代英英辞典) に詳述した。
- “The fact seems to be crystal clear.”
(事実はこの上なく明らかに思える。)
– - “She has made that crystal clear.”
(彼女はそれを非常に明確にしました。)
– - “His motives now became crystal clear.”
(彼の動機は今では極めて明白になりました。)
–
–- “Let me make this crystal clear.”
(はっきり説明して差し上げましょう。)
– - “We have a crystal-clear goal.”
(我々には非常に明確な目標がある。)
– - “The real truth about Jack is crystal clear now.”
(ジャックについての真相が今や明らかになった。)
– - “The water was crystal clear.”
(水は完全に透明だった。)ー
–
【関連表現】
“loud and clear”
https://mickeyweb.info/archives/2776
(はっきり聞こえています。了解です。)
“send a clear signal”
https://mickeyweb.info/archives/12260
(明確なメッセージを送る、警告を送る)