あまり好きではない
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I’m not a fan of my wrinkles.
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あるアメリカ人女優の発言である。
40歳代半ばの頃。
雑誌のインタビュー記事で目にして、
「 なに言ってるんだ 」 と思った。
「 私は自分のシワのファンではない 」?
シワ好きな女性は、ほとんどいない。
そんなの当たり前。 わざわざ言うことか。
当時の私は、まったく分かっていなかった。
” I don’t like my wrinkles. ” とのニュアンスの差。
読者に与える印象の違い。
きちんと受け入れつつ、 やんわり否定するような、
” not a fan ” の婉曲( えんきょく )作用。
なにも知らなかった。
「 シワは大っ嫌い! 」などとわめきたくなる嫌悪感も
理解した上での、しっとり落ち着いた大人の言い振り
だったのである。
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◆ 常用する辞書の独立項目に、 ” not a fan ” は存在
しなかった。
- LDOCE6 ロングマン
- OALD9 オックスフォード
- CALD4 ケンブリッジ
- COBUILD9 コウビルド
- Collins English Dictionary, 12th Edition コリンズ
- Webster’s New World College Dictionary, 5th Edition
ウェブスター - Macmillan Dictionary マクミラン
- Merriam-Webster メリアム ウェブスター
- Merriam-Webster’s Learner’s Dictionary
以上の9点すべてで、 項目立てされていなかった。
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◆ 有力辞書に載っていないため、 英語情報交換サイトで調べた。
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参考になったのは、こちら2つの英文サイト。
専門家の手による解説ではないが、概ね的確だと考える。
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https://ell.stackexchange.com/questions/74098
https://english.stackexchange.com/questions/419031
< 要約 >
(1) 相手を傷つけない目的で使う。
ーー→ ” the speaker uses in a non-derogatory fashion.”
ーーーーー※ ” derogatory ” = 軽蔑的な ( 形容詞 )
(2) 嫌っていることを露骨に言いたくないために使う。
ーー→ ” you don’t want to explicitly state that you hate
ーー→ those people. ”
(3) 「 私は好きでない 」 の慣用語
ーー→ ” idiomatic way of saying ‘ I do not like’ “
(4) ” fan ” の語義から、 無生物にも使う。
ーー→ 後述の “OALD9” の語釈を参照
(5) 堅い文脈では使われない。
ーー→ ” this expression is not used in a formal context.”
(6) ” fan ” の代わりに、 次の可算名詞も使える。
ーーー・ admirer ( 崇拝者 )
ーーー・ follower ( 信奉者 )
ーーー・ devotee ( 信者 )
ーーー・ supporter ( 支持者 )
ーー→ ※ 4語とも ” fan ” の同義語
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◆ 表題 ” not a fan ” の直訳は、「 ファンでない 」。
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” fan ” の語源は、 ” fanatic ” ( 熱狂的愛好者 ) の短縮形。
※ 扇風機 ” fan ” は、 語源が異なる別物。 発音は同じ。
【発音】 fǽn
【音節】 fan (1音節)
「 ファン 」 はカタカナでも定着している。
日常用途は完全一致。
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ファン 【fan】
[フアンとも]
芸能・スポーツなどの熱心な愛好者。また、特定の俳優・
選手・人物・団体などをひいきにする人。
(大辞林 第三版)
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“fan”
a person who admires somebody / something or enjoys
watching or listening to somebody / something very much.
(OALD9、オックスフォード)
※ 人物に加えて、” something ” ( 何か、無生物 ) も可
【発音】 fǽn
【音節】 fan (1音節)
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【英英辞典の基本表記】 スラッシュ( / )=「 または (or) 」
→ ” somebody ” または ” something ” のどちらでもよい
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◆ 意味を強調( 強意 )するため、 形容詞 ” big “( 大変な )
を加えることもある。
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” a big no-no “( ご法度 )と同じく、 強意の ” big “ なので、
趣旨は変わらない。
” a big fan ” = 「 大ファン 」 のイメージ。
表題の ” not a fan ” は、「 大ファンではない 」 が直訳。
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< 本音 >は 「 嫌い 」 に近い。
◆ ” not a fan ” は、 be動詞に続けて ” no fan ”
とも表現できる。
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「 ファンではない 」 → 「 好きではない 」 のパターンは同じ。
冒頭の一文であれば、
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I’m not a fan of my wrinkles.→ I’m no fan of my wrinkles.
be動詞 は、「 ‘m 」。
” am ” の縮約形である。
趣旨は重なり「 私は自分のシワが好きでない 」。
しかし、 ” no fan ” の方がより強い否定。
表題の 副詞 “ not ” は、 be動詞 “ am ” を否定するのに対し、
この 形容詞 “ no ” は、 名詞 “ fan ” を否定。
この場合、
” no ” の方が “ not ” より否定の度合いが強い。
” no need ” で事細かに記述した。
少し分かりにくいので、主格とbe動詞を変えてみる。
下線が be動詞。
- “She is not a fan of wrinkles.”
- “She is no fan of wrinkles.”
( 彼女はシワがあまり好きでない )
ー - “We are not fans of wrinkles.”
- “We are no fans of wrinkles.”
( 私たちはシワがあまり好きでない。)ー
副詞 ” not ” は、 be動詞( is / are )を否定。
形容詞 ” no ” は、 名詞( fan / fans )を否定。
否定が強いのは、 ” no ” の方。
「 どちらかと言えば 」の強弱で、 大差はない。
だから、 言わんとしていることは共通する。
【参照】
- “ no need ” ( 不要です )
- “ It’s no joke. ” ( 冗談ではない )
- “ not an option ” ( その選択肢はない )
- “ No strings attached. ” ( 条件なしで )
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◆ それよりも差が出るのは、 ” don’t like ” との違い。
- ” I don’t like my wrinkles. “
- ” I’m not a fan of my wrinkles “
- ” I’m no fan of my wrinkles. “
対象( シワ )を否定する意思は変わらないが、
受け手の印象は違ってくる。
一言で言えば、 ” I don’t like ” は意思表明で完結。
他者への配慮のない言い回し。
” don’t like – ” は、基本的な英語表現である。
英語学習者でなくても通じやすい英語のひとつ。
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” do not like – ” の縮約形であるが、 英語ネイティブ間でも
” don’t ” の方が日常的な感。
伝達上の工夫は含まない。
要は、 自分の「 嫌い 」な思いを 率直に 表しているだけ。
「 私は ~ が嫌いです 」。
文法も単純。
ところが、一般的なコミュニケーションでは、むき出しの
感情表現は好まれない。
特に、否定的な気持ちのあからさまな表出は避けられる。
露骨にならぬよう気遣うことは、 社会人ならば不可欠。
受け手の印象や関係者に与える影響 を考慮すれば、
ぴしゃり「 嫌いです 」などと、やたら放言できるものではない。
社会人であれば、いささか幼稚すぎる。
“don’t like – ” は、 イヤイヤ期の3歳児でも使う。
清々しい素直さがあるが、周囲に対する視点はない。
大人の場合、場面次第では注意を要する。
◆ 以下、 ” I don’t feel comfortable. ” より再掲。
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< 文否定 > は < 語否定 > より、
否定の度合いが強め
- ” I don’t feel comfortable. “( 文否定 )は、
- ” I feel uncomfortable. “( 語否定 )に比べ、
強い否定
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よって、前者( don’t )は、「 適切と思わない 」旨を、
ぐっと強調して 相手に伝えることができる。
つまり、
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【参照】
▲▲ 再掲終わり ▲▲
◆ そこで、 重要なのが 「 婉曲表現 」。
“ Could you update me on – ? ” で詳らかにしている。
「 クッション言葉 」 に似通う効用。
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遠回しに表すことによって、 角が立たないようにする。
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受け手のため、関係者のため、つまり他者のためではあるが、
最終的には自分のため。
言葉遣いを含む気遣いに欠ける社会人は、コミュニケーション
能力に難ありとみなされがち。
結果的に、本領発揮せずに終わるキャリアも多いとのこと。
「 ソフトスキル 」 の研究は、昨今盛んに行われている。
” hopefully ” にて触れた話。
大切なので、 一部再掲する。
【参考】 ※ 外部サイト、和文
- リスキリングの盲点
ハードスキルはAIが代替、 4つのソフトスキルで打ち勝つ
https://style.nikkei.com/article/DGXZQOLM281PT0Y3A320C2000000
2023年4月19日付
– - ハードスキルだけで出世する人はいない
https://japan.zdnet.com/article/35106655/
2017年9月7日付
– - 人望のない人は「 たった一言 」が添えられない
https://toyokeizai.net/articles/-/164314
2017年4月15日
– - 「 ハードスキル 」 と 「 ソフトスキル 」 を両立せよ
https://active.nikkeibp.co.jp/atclact/active/17/012600007/012600003/
2017年2月1日付
– - ソフトスキルの重要性 ” The Soft Skills Imperative ”
https://www.adeccogroup.jp/-/media/files/adeccogroup/power-of-work/026/soft-skills-imperative_japanese.pdf
( アデコ株式会社、 PDF 全12頁、 4.2MB )
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◆ 「 嫌い 」 → 「 好きではない 」。
さらに推し進めて、
「 嫌い 」 → 「 好きではない 」 → 「 ファンではない 」
日本語の例えとしては、しっくりこない気がする。
それでも、 流れとして不自然さはないだろう。
” I don’t like – “( 嫌い ) よりは、 ” I’m not a fan of – ”
( ファンではない ) と表現する方が露骨にならない。
この点さえ把握できれば、 決して難しくない。
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◆ 和訳は、 適宜状況に合わせて、 むき出しを回避する。
具体的な人物が対象の際は、 特に気を配る。
発言者が遠回しの表現を用いたのであれば、 それを勘案し、
和文にも反映させるべきである。
ネガティブ感情の翻訳は、なかなか厄介である。
<本音>の察しはつくものだが、勝手に訳出しないのが基本。
- “I’m not a big fan of those people.”
(あの人たちをそれほど好いていません。)
ー - “He is not a fan of his teacher.”
(彼は自分の先生がそれほど好きでない。)
– - “The director is not a fan of the economic recovery plan.”
(長官はその経済回復計画が気に入らない。)
ー - “I’m not a big fan of swimming.”
(水泳があまり好きでない。)
ー - “I’m not a fan of wrinkles, so I wear sunscreen everyday.”
(シワが好きでないので、日焼け止めを毎日塗ります。)
ー - “We are no fans of removing wrinkles by surgery.”
(私たちは手術でシワ取りすることを好みません。)
ー - “She is not a big fan of Botox.”
(彼女はボトックスがあまり好きでないです。)
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最後まで、 冒頭のシワ( 皺 ) を引きずってしまった。
“wrinkle”
【発音】 ríŋkl
【音節】 wrin-kle (2音節)
化粧品 「 ドモホルンリンクル 」 の 「 リンクル 」。
語源は、 形容詞 ” wrinkled “( ねじれている ) からの逆成。
ここでは可算名詞で、 通常は複数語尾 ” s ” つきの複数形。
人体については、 1本のシワを取り上げる機会はまれ。
加齢 により増える一方でもあり、 複数形が普通である。